性器クラミジア感染症
- 性器クラミジア感染症の症状が男女でどう違い、なぜ無症状が多いのか
- 感染経路・潜伏期間・検査(PCR法)・治療薬の基本の流れ
- 放置した場合に女性は不妊、男性は精巣上体炎などのリスクがある理由
- 咽頭感染やパートナー同時治療など、見落としがちな注意点
性器クラミジア感染症とは
性器クラミジア感染症は、日本で報告数がもっとも多い細菌性の性感染症です。原因となるのは「クラミジア・トラコマティス」という細菌で、粘膜どうしの接触でうつります。
感染しても強い症状が出にくく、本人が気づかないまま相手へうつしてしまう点がこの病気の特徴です。とくに女性は自覚症状に乏しく、健診や妊娠時の検査で初めて判明する例も少なくありません。
私が診療の現場で感じるのは、「症状がないから大丈夫」という思い込みが感染を広げやすいという事実です。無症状の感染こそ、早めの検査が意味を持ちます。
感染した母親から出産時に赤ちゃんへうつる産道感染もあり、新生児の結膜炎や肺炎の原因になります。妊娠を望む方にとっても無縁ではありません。
感染は幅広い世代でみられますが、性的に活発な若い世代で比較的多く報告される傾向があります。「自分は関係ない」と思っていた方が、パートナーの検査をきっかけに受診する例も日常的にあります。
はっきりした症状が出にくいことから、クラミジアは「沈黙の感染症」とも呼ばれます。だからこそ、体調ではなく行動をもとに検査のタイミングを判断する姿勢が役立ちます。
主な症状(男女別・無症状が多い)
症状の出方は性別と感染部位で大きく異なり、共通するのは「軽い、または無い」という点です。強い痛みが出ないため、放置されやすい感染症といえます。
男性の症状
男性では感染から1〜3週間ほどの潜伏期間を経て、尿道炎の症状が現れます。ただし程度は軽いことが多く、無症状の方も一定数います。
代表的なのは排尿時の軽い痛みや、尿道のむずむずした違和感、かゆみです。尿道からサラサラとした透明〜白っぽい分泌物が出ることもあります。淋菌性尿道炎に比べると症状がおだやかで、見過ごされがちな点。淋菌との違いは淋菌感染症のページもあわせてご覧ください。
女性の症状
女性では子宮頸管炎を起こしますが、90%以上が無症状とされます。症状が出る場合でも、おりものの増加や不正出血、軽い下腹部の違和感といった、ふだんと見分けにくいものが中心です。
自覚しにくいまま感染が長引くと、菌が上のほうへ広がっていきます。気づかず放置される期間が長いほど、後述する合併症のリスクが高まります。
のど・直腸の症状
オーラルセックスやアナルセックスにより、咽頭(のど)や直腸にも感染します。これらの部位も無症状のことが多く、のどの軽い違和感や痛みにとどまります。
感染部位ごとの症状を整理すると、次の表のようになります。
| 感染部位 | 主な症状 | 無症状の傾向 |
|---|---|---|
| 男性の尿道 | 排尿時痛・違和感・かゆみ・透明な分泌物 | 症状は軽く、無症状の人もいる |
| 女性の子宮頸管 | おりもの増加・不正出血・下腹部の違和感 | 90%以上が無症状とされる |
| のど(咽頭) | 軽い喉の違和感・痛み | ほとんど無症状 |
| 直腸 | 肛門の違和感・分泌物 | 多くが無症状 |
感染経路と原因
クラミジアは、感染した人の粘膜や分泌物との接触でうつります。日常生活の何気ない接触ではなく、性的な接触が主な経路です。
具体的には、腟性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。コンドームを使わない性行為で、感染したパートナーの粘膜に触れることが原因になります。
のどに感染している人とのキスやディープキスでうつる可能性も指摘されています。感染部位が性器とは限らない点が、対策を難しくしています。
症状が乏しいため、本人も相手も感染に気づかないまま接触を重ねてしまいます。パートナー間でピンポン感染(お互いにうつし合う再感染)が起きやすいのも、この病気ならではの事情です。同じ非淋菌性尿道炎を起こすマイコプラズマ・ウレアプラズマと併発することもあります。
潜伏期間と検査・診断
潜伏期間はおおむね1〜3週間で、検査は尿やおりものを用いた遺伝子検査が中心です。症状が出る前でも、一定期間を過ぎれば検査で調べられます。
感染してすぐは菌の量が少なく、検査で正確に判定できない時期があります。心当たりの接触から日が浅い場合は、時期を見て検査を受けてください。
検査を受ける目安は、心当たりの接触からおおよそ1〜2週間後です。ただし不安が強いときは、時期にこだわらず早めに相談してもかまいません。必要に応じて、期間をあけた再検査もご案内します。
検査方法
診断にはPCR法(核酸増幅検査)を用います。菌の遺伝子を増やして検出する精度の高い方法で、少ない菌でも見つけやすい特徴があります。
男性は初尿(出はじめの尿)、女性はおりものや腟の分泌物を採取して調べます。のどや直腸の感染が疑われる場合は、その部位からも検体を採ります。当院では女性の検体採取を女性看護師が担当し、羞恥心にできるだけ配慮しています。
感染部位ごとの検査のイメージを、次の表にまとめます。
| 調べたい部位 | おもな検体 | 検査方法 |
|---|---|---|
| 性器(男性) | 初尿 | PCR法(核酸増幅検査) |
| 性器(女性) | おりもの・腟分泌物 | PCR法(核酸増幅検査) |
| のど | うがい液・咽頭ぬぐい液 | PCR法(核酸増幅検査) |
| 直腸 | 直腸ぬぐい液 | PCR法(核酸増幅検査) |
治療方法
治療は抗菌薬(抗生物質)の内服が基本で、指示どおり飲みきれば多くは治ります。手術や注射を要さず、通院の負担も比較的軽い感染症です。
使われる薬は、マクロライド系のアジスロマイシンや、テトラサイクリン系のドキシサイクリンなどです。単回で飲むタイプと、数日間続けて飲むタイプがあり、感染部位や状況に応じて医師が選びます。
自己判断で薬を途中でやめると、菌が残って再燃する原因になります。処方された分は必ず最後まで飲みきってください。市販薬での自己治療では治しきれません。
治ったかどうかの確認
治癒の判定は、治療開始からしばらく間隔をあけて再検査を行います。当院では、目安として治療開始から2〜3週間以降に再検査し、陰性を確認します。
薬を飲んだ直後は菌の残骸が検出され、正確に判定できないことがあります。あわてず時期を置いて確認する流れが、確実な治癒確認につながります。
治療中は、パートナーの治療が終わって完治を確認するまで、性行為を控えることが安全です。
のど・直腸の感染は治りにくいことがある
咽頭や直腸の感染は、性器に比べて薬が効きにくい場合があると指摘されています。感染部位によっては、薬の種類や服用期間を調整することがあります。
性器の症状だけを目安にせず、心当たりのある部位はまとめて相談してください。のどの感染を見落とすと、治療後もパートナーへうつす経路が残ってしまいます。
費用と受診のしやすさ
症状があって検査・治療を受ける場合は保険診療の対象になります。一方で、検査だけを希望する場合や、記録面での秘匿性を重視する場合は自費(実費)診療にも対応しています。
費用や診療の進め方に不安があれば、受診前にお問い合わせください。事情に合わせた形でご案内します。
放置するとどうなる
放置すると感染が奥へ広がり、女性は不妊、男性は精巣上体炎などの合併症につながることがあります。症状が軽いからと様子見を続けるのは、リスクの高い選択です。
女性のリスク
女性では、子宮頸管から子宮内膜、卵管へと菌が上っていきます。卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)を起こすと、下腹部の痛みや発熱が現れます。
炎症で卵管が傷つくと、その後の不妊症や子宮外妊娠の一因になり得ます。さらに肝臓の周囲まで炎症が及ぶ肝周囲炎(フィッツ・ヒュー・カーティス症候群)を起こすこともあります。
妊娠中の感染は、出産時に赤ちゃんへうつる産道感染の原因にもなります。
男性のリスク
男性では、尿道の炎症が精巣の隣にある精巣上体まで広がると、精巣上体炎を起こします。陰嚢の腫れや痛み、発熱をともなうことがあります。
まれに、関節炎などをともなう反応性関節炎が起こると報告されています。頻度は高くありませんが、放置のリスクとして知っておいてください。男女ともに、感染したままだと他の性感染症、とくにHIVに感染しやすくなる点も見過ごせません。
いずれの合併症も、初期に薬で治療すれば防ぎやすいものです。症状が軽いうちに手を打つほど、体への負担も治療の手間も小さく済みます。放置して困るのは、数か月から数年先の自分自身。早めの一歩が将来を守ります。
予防とパートナーの検査
予防の基本はコンドームの正しい使用と、パートナーの同時検査・同時治療です。片方だけ治しても、もう一方が感染していれば、すぐにうつし返されてしまいます。
コンドームは性器の接触による感染リスクを下げますが、のどや周辺の皮膚からの感染を完全には防げません。オーラルセックスを含めて、リスクをゼロにできない前提での対策が現実的です。
感染がわかったら、パートナーも一緒に検査と治療を受けてください。症状の有無にかかわらず、同じ時期に治療を終えることが、ピンポン感染を断ち切る近道です。
予防と早期発見のポイントを、次のように整理します。
- コンドームを最初から最後まで正しく使う
- 不特定多数との性的接触を避け、定期的に検査を受ける
- パートナーと同時に検査・治療を行う
パートナーへどう伝えるか悩む方も多くいます。責め合うのではなく、二人で治すという前提で相談すると、話が進みやすくなります。伝え方に迷うときは、受診時に医師へご相談ください。
不安を抱えたまま我慢するより、一度検査で白黒つけるほうが心の負担は軽くなります。当院は秘匿性を重視し、周囲に知られにくい形での受診にも配慮しています。男女とも診療し、女性の検体採取は女性看護師が担当します。
よくある質問
クラミジアは自然に治りますか?
自然に治ることは期待できません。抗菌薬を飲まずに放置すると、症状が消えても菌が体内に残り、感染が奥へ広がる恐れがあります。医療機関で適切な薬による治療を受けてください。
症状がなくても検査を受けたほうがいいですか?
心当たりのある接触があれば、症状がなくても検査を受けてください。クラミジアは無症状のことが多く、気づかないうちにパートナーへうつしたり、合併症が進んだりします。早期の検査が体を守ります。
治療にはどれくらいかかりますか?
薬の内服自体は単回、または数日間で終わることが多いです。ただし治ったかどうかの確認は、治療開始から2〜3週間ほど間隔をあけて再検査します。飲みきったら終わり、ではない点にご注意ください。
パートナーも治療が必要ですか?
必要です。片方だけ治療しても、もう一方が感染していれば、性行為で再びうつし合うピンポン感染が起こります。症状の有無にかかわらず、パートナーも同じ時期に検査と治療を受けてください。
のどにも感染しますか?
感染します。オーラルセックスによって咽頭(のど)にうつり、多くは無症状です。性器の治療だけでは、のどの感染が残ることがあります。心当たりがあれば、のどの検査もご相談ください。
一度治れば、もう感染しませんか?
再感染します。クラミジアに免疫はできず、治った後でも感染したパートナーとの性行為で何度でもうつります。予防と、パートナーの同時治療を続けることが大切です。
検査結果はどれくらいで分かりますか?
PCR法は精度が高い一方、結果が出るまでに数日ほどかかるのが一般的です。検査当日にすべてが確定するわけではないため、余裕を持って受診してください。詳しい日数は検査体制により異なります。
オンラインでも相談できますか?
できます。人に会わずに相談したい方や、通院の時間が取りにくい方に向けて、当院ではオンライン診療を用意しています。まずはオンライン診療のページをご確認ください。
畠中 聡(ヒロクリニックなんば心斎橋院 院長/日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医)
関連情報(検査・女性の視点)
クラミジア感染症は、性感染症検査専門サイトや女性向けの解説もあわせてご覧いただけます。
- 検査の詳細:クラミジア感染症の検査・治療(性感染症検査)
- 女性の視点:女性の性病予防(婦人科)
畠山 聡先生 (はたやま さとし)
医師・医学博士 / ヒロクリニック医師
略歴
- 2016年 大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業
- 2016年 育和会記念病院
- 2019年 大阪鉄道病院
- 2021年 大阪公立大学附属病院
- 2022年 大阪鉄道病院医長
- 2023年 ヒロクリニックなんば心斎橋院院長
資格・所属
- 日本泌尿器科学会認定の泌尿器科専門医
この記事は、ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。