この記事の概要
男性型脱毛症(AGA)は、30代以降の男性に多く見られる進行性の脱毛症です。その中でも特に目立ちやすく、多くの男性が最初に気づく症状が「M字型の生え際の後退」です。この記事では、M字型薄毛が発生するメカニズムや、AGAとの関係、進行パターン、そして医学的に証明された治療法について、最新の研究をもとに詳しく解説します。
第1章 AGAとは?M字型の薄毛とどんな関係がある?
1.1 AGA(Androgenetic Alopecia)の基本
AGAとは、「男性型脱毛症」の医学的名称で、男性ホルモン(アンドロゲン)と遺伝が関与する脱毛症です。思春期以降に発症し、徐々に生え際や頭頂部が薄くなっていきます。放置すると進行し、最終的には頭皮の広範囲にわたる脱毛へとつながります。
- 日本人男性の約30〜40%がAGAを経験
- 初期段階ではM字型に生え際が後退しやすい
- 進行には個人差があるが、自然治癒は基本的に望めない
📚 エビデンス
Kaufman KD. “Androgens and alopecia.” Dermatol Ther. 2008.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18426476/
第2章 M字型の薄毛が発生するメカニズム
2.1 DHT(ジヒドロテストステロン)の影響
AGAの最大の原因は、DHT(ジヒドロテストステロン)と呼ばれるホルモンです。これは、テストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換されることで生成されます。
- DHTは前頭部や頭頂部の毛根に作用しやすい
- 毛乳頭細胞にDHTが結合すると、毛周期(ヘアサイクル)が短縮
- 成長期が短くなり、毛が細く、短くなり、抜けやすくなる
📚 エビデンス
Randall VA. “Androgens and hair growth.” Dermatol Ther. 2008.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18426477/
2.2 遺伝的要因の影響
- AGAは遺伝的要因が強く関与することが確認されています。
- 特に母方の家系(母方の祖父など)に薄毛の人がいるとリスクが高い。
- 遺伝的にDHTに対して感受性が高い毛根を持つと、AGAを発症しやすくなります。
📚 エビデンス
Hillmer AM et al. “Genetic variation in the human androgen receptor gene is a determinant of common early-onset androgenetic alopecia.” Am J Hum Genet. 2005.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16080118/
2.3 頭皮の血流と栄養の影響
前頭部(M字部分)はもともと血流が悪くなりやすく、栄養供給が不十分になりやすい部位です。これがDHTの影響と重なり、脱毛を加速させます。
第3章 M字型薄毛の進行パターンを知ろう
3.1 進行の3段階
| 段階 | 症状の概要 |
|---|---|
| 初期 | こめかみの髪がやや後退。M字型の形状がぼんやり出始める |
| 中期 | M字が明確に見え始め、生え際全体が薄くなる |
| 重度 | 額の中央部分まで後退し、頭頂部とつながることも |
進行には個人差がありますが、ストレス・生活習慣・ホルモンバランスの乱れが加わると、急激に悪化するケースもあります。
第4章 M字型のAGAに効果的な治療法
4.1 内服薬
● フィナステリド(プロペシア)
- DHTの生成を抑える5αリダクターゼ阻害薬
- 進行を遅らせるのに有効
● デュタステリド(ザガーロ)
- フィナステリドより広範囲の5αリダクターゼを阻害
- 前頭部のM字にもより強力に作用
📚 エビデンス
Olsen EA et al. “Dutasteride vs Finasteride in the treatment of AGA.” J Am Acad Dermatol.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15596098/
4.2 外用薬
● ミノキシジル
- 血管拡張作用により、毛根の血流と栄養を改善
- 市販もされており、使いやすいが継続が重要

4.3 自毛植毛
- DHTの影響を受けにくい後頭部の毛をM字部分に移植
- 最近ではロボット植毛(ARTAS)なども普及
- 高コストだが、自然で確実な効果が期待できる
第5章 M字型の進行を抑える生活習慣改善
| 習慣 | 解説 |
|---|---|
| 栄養管理 | 亜鉛、ビタミンB群、鉄分、たんぱく質の摂取 |
| 睡眠習慣 | 成長ホルモンの分泌を促す深い睡眠を確保 |
| ストレス解消 | コルチゾール(ストレスホルモン)がDHT増加を促すため、適度な運動や趣味でコントロール |
| 正しい頭皮ケア | 洗いすぎに注意し、乾燥や皮脂のバランスを保つ |

第6章 M字型以外のAGAの進行タイプ
6.1 頭頂部型(てっぺん型)
- 頭頂部の中央から薄くなるタイプ
- 生え際は比較的残る
6.2 前頭部型
- M字ではなく、額のライン全体が均一に後退
- おでこ全体が広がる印象
6.3 総合型
- 生え際と頭頂部が同時に進行
- 見た目の変化が大きく、早期の対応が重要
6.4 後頭部型(うなじ型)
- 稀ではあるが、後頭部から進行するケースも報告あり
第7章 まとめ
- AGAは進行性であり、特にM字型の生え際の後退は初期の兆候
- 原因は主にDHTの影響と遺伝
- 内服薬・外用薬・植毛など、科学的に効果が実証された治療法がある
- 放置せず、早期にクリニックで診断と対策を行うことが重要
- 生活習慣の見直しも忘れずに取り組むことで、効果の底上げが期待できる
✅ 参考文献・研究リンク一覧
Olsen EA et al. “Finasteride vs Dutasteride.” J Am Acad Dermatol
🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15596098
Kaufman KD. “Androgens and alopecia.” Dermatol Ther. 2008.
🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18426476
Hillmer AM et al. “Genetic variation in the androgen receptor gene…” Am J Hum Genet. 2005.
🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16080118










