この記事の概要
AGA(男性型脱毛症)は、成人男性の3人に1人が経験するとされる進行性の脱毛症です。近年ではAGA治療のニーズが高まり、フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬をはじめ、ミノキシジル外用薬、植毛、注入療法など様々な治療法が登場しています。
しかし、多くのAGA治療が保険適用外であるという点が、治療の継続をためらう要因になっているのも事実です。本記事では、「AGA治療が保険適用される条件はあるのか?」「自己負担を減らす方法は?」といった疑問に答えながら、AGA治療と保険制度の現状、今後の展望、そして治療費を抑える具体的な方法について詳しく解説していきます。
AGA(男性型脱毛症)とは?
AGA(Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモンであるテストステロンが体内の酵素「5αリダクターゼ」によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、このDHTが毛根に作用して髪の成長を妨げることで起こります。
特に以下の部位から進行するのが特徴です
- 前頭部(生え際)
- 頭頂部(つむじ)
- M字やU字に広がる脱毛パターン
AGAの主な原因
- 遺伝要因:特に母方の家系からの影響が強いとされます。
- ホルモンバランスの変化:思春期以降にDHTの影響が強くなる。
- 生活習慣:栄養不足、睡眠不足、ストレスなども進行を促進します。
AGA治療の主な方法
1. 内服薬(フィナステリド・デュタステリド)
いずれも厚生労働省に認可されており、効果が科学的に実証されています。
📚 参考文献:日本皮膚科学会 AGA治療ガイドライン2023
2. 外用薬(ミノキシジル)
- 血流を促進し、毛包への栄養供給を活性化
- 男性用は5%、女性用は1%濃度が一般的
※厚労省承認外の「ミノキシジル内服」は副作用のリスクが高く、使用には医師の慎重な判断が必要です。
3. 植毛治療(自毛植毛)
- FUE法(毛根を1本ずつ採取):傷跡が目立たない
- FUT法(帯状に採取):広範囲に対応可能だが傷跡が残る
費用は30万~200万円超と高額なことがネックです。
4. 注入療法(育毛メソセラピー)
- 成長因子(EGF・FGFなど)やビタミン、ミネラルを注入
- 効果が期待できるが、1回あたり数万円の自己負担
AGA治療は保険適用されるのか?
■ 結論
健康保険制度では、生命に関わる疾患または日常生活に支障をきたす病気のみが対象。AGAは「美容的な問題」と分類されるため、原則として保険が適用されません。
■ 例外的に保険適用となるケース
以下の場合、治療の一部または併発症が保険の対象になることがあります
1. 円形脱毛症の治療
自己免疫疾患とされる円形脱毛症は、ステロイド剤や免疫抑制剤の投与が保険適用。
📚 出典:厚生労働省 難治性脱毛症の治療について
2. 頭皮の皮膚疾患の治療
脂漏性皮膚炎や湿疹、感染症など、医学的疾患が併発している場合は保険対象。
3. 心理的ストレスが原因の脱毛
精神科的なアプローチが必要と診断されれば、その治療は保険適用になる可能性があります。
AGA治療にかかる費用の目安
| 治療方法 | 月額目安(税別) | 特徴 |
|---|---|---|
| フィナステリド | 4,000〜7,000円 | 一般的なAGA治療の第一選択 |
| デュタステリド | 6,000〜10,000円 | より強力なDHT抑制 |
| ミノキシジル外用 | 3,000〜8,000円 | 発毛促進 |
| 自毛植毛 | 30〜200万円以上 | 手術による恒久的な効果 |
| 注入療法(1回) | 2〜10万円 | 成長因子やビタミンの注入 |
⚠️ いずれも自由診療扱いとなり、費用は全額自己負担。
医療費控除は受けられるのか?
結論から言えば、AGA治療は医療費控除の対象にならないケースが多いです。
国税庁の見解では、
「容姿を美化し、または容貌を変えるための費用」は医療費控除の対象外
とされています。
ただし、AGAに伴う皮膚炎などで皮膚科を受診し、保険診療を受けた場合は、その費用が控除対象になることがあります。
📚 出典:国税庁:医療費控除の対象とならない費用
AGA治療費を抑えるための4つの工夫
1. 早期治療の開始
進行が浅いうちは、内服薬や外用薬だけで対応可能。植毛や注入などの高額治療を避けられる。
2. ジェネリック医薬品を選ぶ
先発薬と同等の成分で費用が半額以下になるケースも。
3. オンライン診療の活用
診察料が割安なことが多く、通院費ゼロ・自宅配送OKと利便性も◎。
4. セット購入・定期購入割引の活用
多くのAGAクリニックが3ヶ月・6ヶ月コースの割引価格を用意しています。
今後のAGA治療と保険適用の展望
現在、日本ではAGAに対する保険適用の拡大は検討されていないものの、世界的に見れば、脱毛症が「精神的なストレス源」として公的医療の対象となる国もあります。
特に米国や韓国では、メンタルヘルスとの関連性に着目し、保険適用の議論がなされているケースがあります。

まとめ
- AGA治療は原則「保険適用外」であり、全額自己負担
- 皮膚炎や円形脱毛症などの合併症には保険適用の可能性あり
- 費用を抑えるには早期治療・ジェネリック薬・オンライン診療の活用が鍵
- 保険適用の拡大には、社会的認識の変化と制度改革が必要
AGAは放置すると進行してしまいますが、正しい知識と計画的な治療により、改善が期待できます。保険適用の条件を理解し、コストと効果のバランスを見極めた治療選択を心がけましょう。
🔗参考文献・エビデンス
PubMed『Psychological Impact of Hair Loss in Men』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
日本皮膚科学会『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2023』
https://www.dermatol.or.jp/
国税庁『医療費控除の対象とならない費用』
https://www.nta.go.jp/
PubMed『Serum zinc levels in patients with androgenetic alopecia』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/










