この記事の概要
AGA(男性型脱毛症)の毛の抜け方は、特徴的なパターンを持っています。AGAは、主にホルモン(DHT: ジヒドロテストステロン)の影響で進行する脱毛症で、以下のような段階的かつパターン化された抜け方をします。
AGAとは?
AGA(Androgenetic Alopecia)は、男性型脱毛症を指し、特に成人男性に多く見られる脱毛症の一つです。主に遺伝的な要因と男性ホルモンであるテストステロンから変化するジヒドロテストステロン(DHT)が関与しており、毛根の収縮や成長期の短縮を引き起こします。これにより、髪の毛が徐々に細くなり、最終的には抜け落ちるのです。
AGAの特徴的な部分は、毛根がDHTにより収縮し、毛髪の成長サイクルが乱れる点です。通常、髪の毛は成長期、退行期、休止期というサイクルを経て生え変わりますが、AGAではこのサイクルが異常に短縮され、髪の毛が十分に成長しないまま抜けてしまいます。その結果、髪の密度が低下し、薄毛が進行していきます。
AGAの進行パターンとその特徴
AGAの進行は、以下のように特徴的な抜け方をします。これらのパターンは、早期に把握することで、脱毛の進行を遅らせたり、改善するための対策を講じることが可能です。
M字型脱毛(前頭部の生え際後退)
AGAの初期段階で見られる典型的な症状は、額の生え際が後退する「M字型脱毛」です。額の両側(こめかみ部分)から髪が薄くなり、徐々に生え際が後退していきます。この段階では、髪の全体のボリュームがまだ保たれているため、外見的に目立ちにくいこともありますが、時間が経過するにつれて、M字型の特徴が際立つようになります。
M字型脱毛は、AGAの最も初期的な症状であり、多くの男性がこの段階で気づきます。しかし、この段階ではまだ髪の毛が生えている部分が多く、脱毛が進行していないように見えるため、多くの場合、初期段階では自覚症状が少ないことがあります。しかし、遺伝的な影響を受けて進行するため、早期に対応することが大切です。
このM字型脱毛は、一般的に遺伝的な影響が強く、父親や母親側にAGAの症状があった場合、その遺伝子を引き継ぐことがあります。特に母親の父親がAGAだった場合、そのリスクが高くなるという研究結果もあります。
O字型脱毛(頭頂部の薄毛)
AGAが進行すると、次に頭頂部における「O字型脱毛」が現れます。最初はつむじ周辺の毛髪が細くなり、薄くなっていきます。頭頂部の髪が薄くなることで、上から見たときに目立つようになり、気づくことが多くなります。このO字型脱毛もまた、AGAの典型的な症状のひとつです。
最初は軽度な薄毛に見えることがありますが、時間の経過と共にその範囲は広がり、最終的には髪が非常に薄く、地肌が目立つようになります。この段階でも、他の部位の髪が健康であれば、まだあまり目立たないことがありますが、放置すると脱毛が進行し、最終的に頭頂部と前頭部の脱毛部分がつながり、U字型の薄毛となります。
M字型とO字型の進行
AGAがさらに進行すると、M字型とO字型の脱毛部分が接続し、前頭部から頭頂部にかけて広範囲な脱毛が見られます。これは、両者が進行することにより、次第に一つの大きな脱毛部分が形成されるためです。最終的には、後頭部と側頭部にのみ髪が残り、U字型(またはクラウン型)の脱毛が目立つようになります。
髪の細さと弱さの変化
AGAによる抜け毛は、単に髪が抜けるだけでなく、髪そのものが細く、弱くなることが特徴です。具体的には、髪の毛が軟毛化し、成長期が短縮されるため、十分に育つ前に抜け落ちてしまいます。この変化は、特に頭頂部や額の部分で顕著に現れます。
髪が細くなることで、頭皮が目立つようになり、AGAの進行が一層目立つことになります。進行段階が進むにつれて、この現象が強くなり、髪全体のボリュームが失われていきます。この過程で髪の本数が減少し、全体的に髪の密度が低下するため、AGAが進行していることがより明確に見えるようになります。
AGAの進行具合の分類(ノーウッド分類)
AGAの進行具合は、ノーウッド分類(Norwood scale)に基づいて段階的に分類されます。この分類は、脱毛症の進行度を評価するための基準であり、7段階に分けて進行具合を示します。
- ノーウッド I型: 初期段階で、ほとんど脱毛が見られません。生え際が少し後退している程度です。
- ノーウッド II型: M字型に生え際が後退し始める段階です。額のこめかみ部分から薄毛が目立ち始めます。
- ノーウッド III型: M字型が目立ち始め、頭頂部にも薄毛が現れます。頭頂部の髪が薄くなるため、上から見たときに目立ちます。
- ノーウッド IV型: M字型と頭頂部の脱毛が進行し、間に髪が残っている段階です。薄毛の範囲が広がり、脱毛が目立つようになります。
- ノーウッド V型: 前頭部と頭頂部の脱毛部分がつながり、広範囲に薄毛が進行します。AGAが最も進行した状態の一つです。
- ノーウッド VI型: 頭頂部と生え際の髪が完全に接続し、後頭部と側頭部にのみ髪が残る状態です。この段階では髪がほとんど残っていません。
- ノーウッド VII型: 最も進行した状態で、髪の残っている部分はわずかに後頭部と側頭部にのみ見られます。ほとんどの部分で髪が抜け落ちます。
AGAは遺伝によって引き起こされる?
AGAは遺伝的要因に大きく影響されることが知られています。特に、母親側の遺伝子が関与していると言われることが多いですが、父親からも遺伝する可能性があります。DHT(ジヒドロテストステロン)は、髪の成長サイクルを短縮させる原因となり、毛根を縮小させることから、AGAの進行を加速させるのです。
遺伝が関与しているため、親や兄弟がAGAである場合そのリスクは高くなるとされています。特に、母親の父親(つまり、祖父)がAGAだった場合、その影響が強く現れることが多いとされています。遺伝子が引き継がれることで、髪の毛がDHTの影響を受けやすくなり、脱毛が進行するのです。
最近の研究によると、AGAの発症には複数の遺伝子が関与しており、男性ホルモン受容体(AR遺伝子)や、DHTの生成に関わる酵素の働きが重要な役割を果たしていることが分かっています。特に、AR遺伝子に変異があると、DHTが毛根に与える影響が強くなり、AGAの発症や進行が加速することが確認されています(参照:PubMedの関連研究)。

AGAの進行を防ぐためにできること
AGAの進行を完全に止めることは難しいですが、早期に対策を講じることで、進行を遅らせたり、髪の再生を促進することが可能です。代表的な治療方法には以下のものがあります:
フィナステリド(プロペシア) フィナステリドは、DHTの生成を抑制する薬剤で、AGA治療の代表的な治療法です。DHTの生成を阻害することにより、毛根が縮小するのを防ぎ、脱毛を抑える効果があります。臨床試験においても、フィナステリドの使用によりAGAの進行が遅れ、発毛が促進されることが確認されています。服用から数ヶ月で効果が現れ始めることが多いですが、副作用(性欲減退や勃起不全など)も報告されているため、使用には医師の指導が重要です。
ミノキシジル(リアップ) ミノキシジルは、血行を促進し、毛根に栄養を届けることで、毛髪の成長を促進する外用薬です。AGAによる薄毛の進行を防ぐだけでなく、新たに毛髪を生やす効果も期待できます。ミノキシジルは、市販薬としても販売されており、手軽に使用できるため、AGAの治療法として人気があります。特に頭頂部の薄毛に効果が高いとされています。
植毛手術 AGAの進行が進んでしまった場合、植毛手術が効果的な治療法となることがあります。植毛は、自分の髪の毛を薄毛部分に移植する手術で、結果として自然な仕上がりになります。手術後にしばらくは経過観察が必要ですが、長期的に見て良好な結果が得られることが多いです。髪の密度や生え際の位置を理想的に整えることができるため、高い満足度を得られるケースが多い治療法です。
生活習慣の改善 AGAの進行を遅らせるためには、生活習慣の改善も重要です。ストレスや食生活の乱れ、睡眠不足などがAGAの進行を早める要因となります。規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠とバランスの取れた食事を摂取することが、髪の健康を守るために役立ちます。また、過度なアルコール摂取や喫煙は血行を悪化させ、毛根に十分な栄養が届きにくくなるため、できるだけ控えることが推奨されます。
発毛サロンやクリニックでの治療 近年、発毛サロンやクリニックでもAGA治療が進化しています。医療機関で行われる治療は、最新の技術を駆使した治療法を提供しており、例えばHARG療法(毛髪再生医療)やPRP療法(自己血小板血漿療法)などがあります。これらの治療法は、頭皮の血行を改善し、髪の成長を促進する効果が期待されます。
AGA治療における注意点
AGA治療を始める際には、いくつかの注意点があります。まず、治療を開始する前に自分のAGAの進行状況を確認することが重要です。専門の医師に相談し、正確な診断を受けることが必要です。
また、AGAの治療には一定の期間がかかるため、焦らず継続することが大切です。特に、薬物治療の場合、効果が出るまでには数ヶ月が必要であり、最初は効果が感じられなくても、継続することが重要です。治療途中での中断や自己判断での服薬中止は、治療効果を損ねる可能性があるため、注意が必要です。
さらに、AGA治療に伴う副作用についても認識しておくことが重要です。フィナステリドなどの薬剤には副作用が報告されているため、使用前にリスクとベネフィットをよく理解しておくことが求められます。医師と相談し、最適な治療法を選ぶことが治療成功への近道です。
まとめ
AGA(男性型脱毛症)の毛の抜け方は、M字型の生え際の後退と頭頂部のO字型の薄毛が特徴的です。進行すると、最終的にU字型の薄毛になることが一般的です。AGAは遺伝的要因やホルモンの影響を受けるため、早期に治療を開始することが進行を防ぎ、髪の再生を助ける重要なポイントです。治療には、フィナステリドやミノキシジル、植毛手術などの方法がありますが、いずれも医師と相談し、自分に合った方法を選択することが大切です。
また、生活習慣を見直し、ストレス管理や食生活の改善を行うこともAGAの進行を遅らせるために役立ちます。治療を始める際は、早期に対策を講じることで、より効果的な結果を得ることが可能です。
参考資料
AGAに関する研究結果(例:PubMed論文)
ノーウッド分類に関する詳細情報










