男性ホルモンとEDの関係についての研究結果

医者

「最近性欲が減ってきた気がする」「勃起が以前より弱くなった」——そんな心当たりはありませんか?年齢のせいだとあきらめている方も多いかもしれませんが、実はそれは単なる加齢現象ではなく、男性ホルモン(テストステロン)の低下が関係している可能性があります。

テストステロンは、男性の活力や性機能を支える中心的なホルモンです。近年の医学研究により、このホルモンの分泌量が減少することが、ED(勃起機能障害)や性欲の減退、さらにはメンタル面の不調にも深く関係していることが明らかになってきました。

特に30代以降の男性においては、年齢とともに徐々にテストステロンが減少していく傾向があり、その変化が体調や気分、パートナーとの関係にも影響を与えているケースが少なくありません。「なんとなく元気が出ない」「やる気が続かない」などの症状も、実はホルモンバランスの乱れが背景にあるかもしれないのです。

この記事では、テストステロンとEDの深い関係性、加齢に伴う体内変化、最新の治療法やセルフケアの選択肢など、男性の健康を総合的に見直すための知識を専門的な視点からわかりやすく解説します。「もう年だから仕方ない」と思っている方にこそ読んでいただきたい内容です。

まずはご自身の体の声に耳を傾けてみましょう。

1. テストステロンとは?男性の活力を支えるホルモン

テストステロンは、男性の精巣から分泌される代表的な男性ホルモンで、
筋肉量や骨密度、性欲、精子形成、集中力など、男性らしさを支える多くの働きを担っています。

主な作用

  • 性欲・勃起機能の維持
  • 筋肉量・体脂肪率の調整
  • 骨強度の維持
  • メンタルバランス・意欲の維持

血中テストステロン値が低下すると、単に性機能だけでなく、全身的な疲労感・意欲低下・抑うつ傾向が現れやすくなります。

医学的にはこの状態を「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼び、
EDと並行して症状が出るケースも少なくありません。

2. テストステロンとEDの関係:血流と神経の両面で影響

勃起は、性的刺激により脳から信号が伝わり、陰茎の血管が拡張して血液が流れ込むことで起こります。
この過程には、男性ホルモンが深く関与しています。

(1)血管機能への影響

テストステロンには、一酸化窒素(NO)の産生を促す働きがあります。
NOは血管を拡張させ、陰茎内の海綿体に血液を送り込む重要な物質です。
そのため、テストステロンが低下すると血流性のEDが起こりやすくなります。

(2)神経伝達への影響

テストステロンは脳の性中枢(視床下部・下垂体)にも作用し、性的興奮の信号伝達を助けます。
低下すると「性欲がわかない」「刺激を感じにくい」といった症状を引き起こします。

(3)心理的影響

ホルモンの低下は自律神経のバランスにも影響し、うつ状態や不安感を招くことがあります。
これも間接的にEDを悪化させる一因です。

3. 年齢とともに低下するテストステロン値

30代をピークに、テストステロンは1年あたり約1〜2%ずつ減少するとされています。
50代以降になると、若年時の半分程度まで低下する人も珍しくありません。

主な症状の変化

年代テストステロンの傾向主な自覚症状
30代やや低下傾向疲れやすい、集中力低下
40代明確な低下性欲の減退、勃起力の低下
50代顕著な減少体力低下、気分の落ち込み
60代以降恒常的に低値持続的ED、筋力減少

ただし、ホルモン低下の度合いには個人差があり、生活習慣によっても大きく左右されます。

テストステロンを減らす生活習慣

  • 睡眠不足・過労
  • 過度な飲酒
  • 運動不足・肥満
  • 精神的ストレス

これらの要因を見直すだけでも、ホルモン分泌の改善が期待できます。

セックスレスとホルモン低下の関係性

日本では中高年層を中心に、夫婦間のセックスレスが社会的な課題となっています。文化的な背景や仕事の多忙さ、加齢による体力低下など複合的な要因が影響していますが、近年の研究では、男性ホルモン(テストステロン)の減少もその一因であることが明らかになっています。

テストステロンは、単に性欲や勃起機能を支えるだけでなく、「親密な関係を築く力」や「積極性」にも関わるホルモンです。そのため、ホルモン値が低下すると、性行為への関心が薄れるだけでなく、パートナーに対する感情的なつながりや関係維持への意欲も減退しがちです。

また、性行為が長期的に途絶えることでテストステロンの分泌がさらに抑制されるという悪循環が起こることもあります。これは、脳と性ホルモンがフィードバック機構でつながっているためであり、「使わないとホルモンが出なくなる」といった現象が実際に起きるのです。

逆に、スキンシップや定期的な性行為がある男性は、年齢を重ねてもテストステロン値が比較的高く保たれていることが、複数の海外研究で示されています。性生活を回復・維持することが、ホルモンバランスを整える一助になる可能性もあるのです。

性の問題を「恥ずかしいこと」「年齢のせい」と片付けず、ホルモンという生理学的観点から見直すことで、新たな改善の道が開けるかもしれません。

4. 研究が示す「ホルモン補充療法」とED改善の関係

近年、テストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)が注目を集めています。
これは血中ホルモン値が低下した男性に対して、外部からテストステロンを補う治療法です。

(1)治療方法

  • 注射剤(エナント酸テストステロンなど):2〜4週間ごとに投与
  • 経皮吸収ジェル:毎日塗布し、血中濃度を安定化
  • 経口製剤:肝代謝の影響を避ける工夫がされた新薬も登場

(2)効果

  • 勃起機能・性欲の改善
  • 筋肉量・骨密度の上昇
  • 抑うつ・疲労感の改善

(3)最新研究の知見

複数の臨床研究では、低テストステロン値の男性にTRTを行った場合、
約6割でEDスコア(IIEF-5)の改善が報告されています。
また、PDE5阻害薬との併用療法により、治療効果がさらに高まることが確認されています。

ただし、前立腺疾患や多血症の既往がある場合は慎重な適応が必要です。

5. ホルモンを自然に高めるセルフケア方法

医療的治療に加え、生活習慣の改善によって自然にホルモンを高める方法も有効です。

① 睡眠の質を改善

深いノンレム睡眠中にテストステロンが多く分泌されるため、
就寝時間を固定し、6〜7時間以上の睡眠を確保することが大切です。

睡眠 男性

② 筋力トレーニング

特に大腿四頭筋・背筋などの大きな筋肉を使う**無酸素運動(筋トレ)**は、
テストステロン分泌を一時的に高め、代謝を促進します。

③ 栄養補給

  • 亜鉛(牡蠣、レバー)
  • ビタミンD(青魚、卵黄)
  • L-アルギニン(ナッツ、鶏むね肉)
    これらをバランス良く摂取することでホルモン生成がサポートされます。

④ ストレス管理

慢性的なストレスはコルチゾールを増加させ、テストステロンを抑制します。
深呼吸・趣味・リラクゼーションを取り入れましょう。

6. まとめ:ホルモンバランスの改善がED回復の鍵

EDは単なる血管や神経の問題ととらえがちですが、実際には体内のホルモンバランス、特にテストステロンの低下が密接に関係していることがわかってきました。テストステロンの分泌量が減ると、性欲や勃起力だけでなく、体力・精神的安定・意欲など多方面に影響を及ぼします。

こうした不調を放置しておくと、日常生活の質や人間関係、そしてパートナーシップにも悪影響を及ぼす可能性があります。だからこそ、EDを単なる「加齢の現象」と軽視せず、ホルモンの観点から正しく理解することが大切です。

現在では、テストステロン補充療法(TRT)をはじめとする医学的アプローチに加えて、睡眠・運動・栄養・ストレス管理など日常生活でできるセルフケア方法も数多くあります。薬物療法と生活改善を併用することで、本来の自分らしい活力や性機能を取り戻すことが可能です。

「性機能は健康のバロメーター」とも言われるように、自身の体調変化を丁寧に観察し、必要な対策を講じることは、今後の健康維持にもつながります。年齢にとらわれず、前向きに向き合うことで、人生の質は大きく変わるはずです。

まずは、小さな違和感を見逃さず、「自分自身のホルモン状態」を知ることから始めてみましょう。

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