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ED(勃起不全)の治療薬として広く用いられるフォスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害剤には、シルデナフィル(商標名: バイアグラ)、タダラフィル(商標名: シアリス)、バルデナフィル(商標名: レビトラ)があります。これらの薬剤は作用機序は似ていますが、作用時間、服用タイミング、副作用の違いがあります。以下にそれぞれの特徴を比較して説明します。
1. タダラフィル(シアリス)
タダラフィル(Tadalafil)は、主にED(勃起不全)の治療薬として使用されるPDE5阻害薬の一種です。代表的な商品名としては**シアリス(Cialis)**が有名です。タダラフィルは、EDだけでなく、良性前立腺肥大症(BPH)や肺動脈性高血圧症(PAH)にも処方されることがあります。以下に、タダラフィルの特性や使用方法について詳しく説明します。
1. 作用機序
タダラフィルは、**PDE5(ホスホジエステラーゼタイプ5)**という酵素を阻害することで作用します。PDE5は、陰茎の血管を収縮させる物質であるcGMPを分解する酵素です。タダラフィルがPDE5を阻害すると、陰茎の平滑筋が弛緩し、血流が増加することで勃起が起こりやすくなります。
このメカニズムにより、タダラフィルは性刺激を受けた際に勃起を促す効果がありますが、性刺激がなければ勃起を引き起こすことはありません。
2. 持続時間
タダラフィルの特に優れた特徴は、作用時間が非常に長いことです。タダラフィルの効果は、服用後24~36時間程度持続します。これは、他のED治療薬であるバイアグラ(シルデナフィル)やレビトラ(バルデナフィル)と比較しても、圧倒的に長い持続時間です。そのため、「週末薬」と呼ばれることもあります。これにより、服用タイミングに関してより柔軟性を持つことが可能です。
3. 服用方法
タダラフィルは、必要時服用(性行為の約1時間前に服用)または毎日服用(一定量を毎日服用する方法)として使用されます。毎日服用する場合、より自然なタイミングで性行為を行うことができ、効果が安定して発揮されます。
一緒に飲んではいけない薬
- 硝酸薬(ニトログリセリンなど)
- ニトログリセリン、イソソルビド二硝酸、アミルニトライトなどの薬が該当します。
- リオシグアト(肺動脈性高血圧の治療薬)
- アルファ遮断薬(ドキサゾシン、タムスロシンなど)
- ケトコナゾールやリトナビル
服用中に気をつけること
- アルコール摂取
- グレープフルーツジュース
4. 適応症
タダラフィルは、以下の疾患に対して使用されます:
5. 副作用
一般的な副作用として、以下のものが報告されています:
- 頭痛
- 消化不良
- 筋肉痛
- 背中の痛み
- 鼻づまり
これらの副作用は軽度で、一時的なものであることが多いですが、稀に深刻な副作用が発生することがあります。例えば、視力の低下や持続的な勃起(持続勃起症)が挙げられます。これらの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談する必要があります。
6. 禁忌と注意点
タダラフィルは、以下の状況での使用が禁忌とされています:
- 硝酸薬を使用している患者:心臓病の治療に使われる硝酸薬と併用すると、急激な血圧低下が生じるリスクがあります。
- 重度の肝臓や腎臓の疾患がある患者
また、心臓病の既往歴がある場合は、使用前に医師に相談が必要です。
7. 他のED治療薬との比較
タダラフィルは、他のPDE5阻害薬であるシルデナフィル(バイアグラ)やバルデナフィル(レビトラ)と比較されることが多いです。特に、長い持続時間が最大の特徴であり、服用タイミングに柔軟性を持たせたい場合には最適な選択肢です。一方で、バイアグラやレビトラは、タダラフィルよりも短時間で効果が現れる傾向があります。
タダラフィル(Tadalafil)の半減期
タダラフィル(Tadalafil)の半減期は、約17.5時間です。これは、他のED治療薬と比べて非常に長く、薬が体内に長時間残ることを意味します。この長い半減期により、効果は24〜36時間持続し、服用後も長時間にわたって性行為に対応できる柔軟性を持っています。
他のPDE5阻害薬との比較では、例えばシルデナフィル(バイアグラ)の半減期は約4〜5時間と短く、タダラフィルの作用時間の長さが際立っています。
長い半減期は、タダラフィルを必要なときだけでなく、毎日服用する治療方法(毎日少量を摂取することで効果を持続させる)にも適しており、より自然な性行為のタイミングに対応できるという利点があります。
日本泌尿器科学会の見解
日本泌尿器科学会は、タダラフィル(商品名シアリス)をED(勃起不全)および前立腺肥大症の治療において推奨しています。特に、タダラフィルは2014年に前立腺肥大症(BPH)に対する治療薬としても承認され、EDの治療だけでなく、前立腺肥大症による排尿困難の改善にも効果的であるとされています 。
また、日本泌尿器科学会の男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインでは、タダラフィルが高齢者に対しても有効で安全な治療選択肢であることが報告されています。
2. シルデナフィル(バイアグラ)
シルデナフィル(Sildenafil)は、ED(勃起不全)の治療薬として広く使用されているPDE5阻害薬の一つで、代表的な商品名はバイアグラ(Viagra)です。シルデナフィルは、陰茎の血流を増加させ、勃起を促進することで、性行為をサポートするために使用されます。以下に、シルデナフィルの作用機序や半減期、適応、そして日本泌尿器科学会の見解について詳しく説明します。唯一薬局で市販されている薬です。
1. 作用機序
シルデナフィルは、PDE5(ホスホジエステラーゼタイプ5)という酵素を阻害することで作用します。PDE5は陰茎の血管で働き、血流を制限しますが、シルデナフィルがこの酵素の作用を抑えることで、陰茎の平滑筋が弛緩し、血流が増加します。これにより、勃起を促進します。ただし、性刺激が必要であり、薬の服用だけで自動的に勃起が生じるわけではありません。
2. 半減期
シルデナフィルの半減期は約4〜5時間です。これは、薬が体内で効果を持続する期間に影響し、一般的に効果は服用後4〜6時間続きます。半減期が比較的短いため、性行為の1時間前に服用し、その後数時間以内に効果を期待する形で使用されます。
この短めの半減期により、シルデナフィルは必要なタイミングで服用し、効果が終了した後は体内から比較的速やかに排出されます。これは、日常的に長時間薬の効果を必要としない場合に便利です。
3. 適応症
シルデナフィルは、主に勃起不全(ED)の治療に使用されます。EDは、陰茎が十分に勃起しない、または勃起を維持できないために性行為が困難な状態を指します。
さらに、シルデナフィルは他の適応症としても使用されています:
- 肺動脈性高血圧症(PAH):シルデナフィルは肺の血管を拡張し、血圧を下げるため、PAHの治療にも用いられます。この適応では、商品名レバチオとして処方されます。
4. 服用方法
シルデナフィルは、性行為の約1時間前に服用するのが一般的です。食事の影響を受けやすいため、空腹時に服用することで効果が最大限に発揮されます。食後に服用すると、薬の吸収が遅れ、効果の発現が遅くなる可能性があります。
作用開始: 服用後約30分〜60分で効果が現れます。
作用時間: 約4〜5時間持続します。
通常、1回の服用で効果が現れ、24時間に1回の服用が推奨されています。効果が現れなかった場合は、医師に相談し、適切な量やタイミングを再検討することが重要です。
一緒に飲んではいけない薬
- 硝酸剤: 胸痛の治療に使われる硝酸剤や一酸化窒素供与薬との併用は、血圧の急激な低下を引き起こす可能性があります。これには、ニトログリセリンやイソソルビドなどが含まれます。
- グアニル酸シクラーゼ刺激薬: リオシグアトとの併用も血圧を危険なほど下げる可能性があり、避けるべきです。
- 一部の抗生物質と抗真菌薬: クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ケトコナゾール、イトラコナゾールなど、これらの薬はシルデナフィルの体内での分解を遅らせる可能性があり、副作用のリスクを増加させることがあります。
- HIVプロテアーゼ阻害剤: リトナビルやサキナビルなどのHIV治療薬との併用は、シルデナフィルの血中濃度を高め、副作用のリスクを増加させます。
- α-遮断薬: 高血圧や前立腺肥大の治療薬として用いられるテルミサルタンやドキサゾシンなどとの併用は、血圧を下げる効果を強化し、立ちくらみや失神を引き起こすことがあります。
5. 副作用
シルデナフィルには一般的な副作用として、以下が報告されています:
- 頭痛
- 顔のほてり(紅潮)
- 消化不良
- 鼻づまり
- 視覚異常(青みがかった視界など)
これらの副作用は軽度で、一時的なものであることが多いですが、稀に重篤な副作用が発生することもあります。特に、4時間以上持続する勃起(持続勃起症)や急激な視力・聴力の喪失が起きた場合、速やかに医師に相談する必要があります。
6. 禁忌と注意点
シルデナフィルの使用にはいくつかの禁忌があります。特に以下の状況では使用を避けるべきです:
- 硝酸薬の使用者:狭心症などの治療で使用される硝酸薬とシルデナフィルを併用すると、急激な血圧低下が起こり、命に関わる危険性があります。
- 重度の心臓病患者:心臓に負担がかかる可能性があるため、注意が必要です。
7. 日本泌尿器科学会の見解
日本泌尿器科学会は、シルデナフィルをED治療の第一選択肢の一つとして推奨しています。PDE5阻害薬は、ED治療において非常に高い有効性を示しており、シルデナフィルはその中でも最も広く使用されている薬剤です。
日本泌尿器科学会が提供するED診療ガイドラインでは、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬の使用が、患者にとって安全かつ効果的であることが強調されています。また、シルデナフィルが他の健康状態(例えば、心血管疾患や糖尿病)に与える影響についても慎重に考慮する必要があるとされています。ガイドラインでは、患者の生活習慣改善や心理的サポートと並行して、薬物療法を行うことが推奨されています。
3. バルデナフィル(レビトラ)
バルデナフィル(Vardenafil)は、PDE5阻害薬の一つで、ED(勃起不全)の治療薬として広く使用されています。代表的な商品名には、レビトラ(Levitra)やステンドラがあります。バルデナフィルは、シルデナフィル(バイアグラ)やタダラフィル(シアリス)と同様に、陰茎への血流を増加させ、勃起を促進する薬です。以下に、バルデナフィルの作用機序、半減期、適応、日本泌尿器科学会の見解について詳しく説明します。
1. 作用機序
バルデナフィルは、PDE5(ホスホジエステラーゼタイプ5)を阻害することで、勃起を促進します。PDE5は陰茎の血管に働き、勃起を抑制するcGMP(環状グアノシン一リン酸)を分解する酵素です。バルデナフィルは、このPDE5を抑制し、血管を拡張させるcGMPの濃度を増加させることで、血流を増加させ、陰茎の平滑筋を弛緩させます。
ただし、バルデナフィルも性刺激が必要であり、薬の服用だけで勃起が自発的に発生するわけではありません。
2. 半減期
バルデナフィルの半減期は約4〜5時間です。シルデナフィルと同様の短い半減期を持ち、効果は服用後30分〜1時間程度で現れ、4〜6時間持続します。したがって、バルデナフィルは、必要なタイミングで服用し、短時間で効果が終了する薬として利用されます。
この短い半減期は、持続的な勃起を必要としないが、即効性を求める人に適しています。バルデナフィルは特に、高脂肪の食事の影響を受けにくいという特徴があり、食事と一緒に服用しても効果が遅れることが少ないです。
3. 適応症
バルデナフィルは、主に勃起不全(ED)の治療に使用されます。特に、糖尿病や心血管疾患を持つED患者に対しても効果が確認されています。
また、バルデナフィルはシルデナフィルと同様に、肺動脈性高血圧症(PAH)の治療にも使用されることがあります。ただし、PAH治療においては他のPDE5阻害薬の方が一般的です。
4. 服用方法
バルデナフィルは、性行為の約1時間前に服用するのが標準的です。効果が現れるまでの時間は、個人差がありますが、約30分で効果が発現し、最大4〜6時間持続します。また、バルデナフィルのもう一つの利点は、食事の影響を受けにくいことです。高脂肪の食事を摂取した場合でも、シルデナフィルほど効果が遅れることは少ないため、食事のタイミングを気にせずに服用できる点がメリットです。
1日に1回以上の服用は避けるべきで、効果が現れない場合でも、24時間を空けてから再度服用する必要があります。
食事の影響を受けにくいですが、アルコールや脂っこい食事は効果を弱める可能性があります。
一緒に飲んではいけない薬
- 硝酸剤: ニトログリセリンやイソソルビドモノニトレートなどの硝酸剤との併用は、血圧を危険なほど低下させる可能性があります。
- グアニル酸シクラーゼ刺激薬: リオシグアトなどは血圧を極端に下げる恐れがあるため、併用は避けるべきです。
- CYP3A4の強力な阻害剤: 一部のHIVプロテアーゼ阻害剤(例:リトナビル、インジナビル)、抗真菌薬(例:ケトコナゾール、イトラコナゾール)、抗生物質(例:クラリスロマイシン)などはバルデナフィルの血中濃度を増加させ、副作用のリスクを高めます。
- α-遮断薬: 高血圧や前立腺肥大の治療に用いられる薬剤(例:アルフズオシン、ドキサゾシン)との併用は、血圧を下げすぎるリスクがあります。
避けた方が良い行為
- 大量のアルコール摂取: アルコールは血管拡張作用があるため、バルデナフィルと併用すると血圧が過度に低下する可能性があります。
- 機械操作: バルデナフィルは視覚に影響を与えることがあるため、車の運転や機械操作を行う際は注意が必要です。
5. 副作用
バルデナフィルの一般的な副作用には、以下のものがあります:
- 頭痛
- 顔のほてり
- 鼻づまり
- 消化不良
- 目の充血
これらの副作用は比較的軽度で一過性ですが、稀に深刻な副作用が生じることがあります。特に、持続勃起症(4時間以上勃起が続く状態)や、突然の視覚や聴覚の喪失が発生した場合には、緊急の医療対応が必要です。
6. 禁忌と注意点
バルデナフィルの使用にはいくつかの禁忌があり、特定の患者には使用が制限されています:
- 硝酸薬の使用者:狭心症などの治療で使用される硝酸薬を服用している場合、急激な血圧低下を引き起こす可能性があるため、バルデナフィルの使用は禁忌です。
- 重度の心臓病患者:心臓病の既往歴がある患者では、心臓に負担をかける可能性があるため、医師に相談が必要です。
また、腎臓や肝臓の機能が低下している患者や、高齢者には慎重な使用が推奨されます。
7. 日本泌尿器科学会の見解
日本泌尿器科学会では、バルデナフィルをED治療の一つとして推奨しています。PDE5阻害薬全般が、ED治療において効果的かつ安全であることが確認されており、バルデナフィルもその一つです。特に、バルデナフィルは食事の影響を受けにくいため、シルデナフィルよりも使いやすいとされることがあります。
日本泌尿器科学会のED診療ガイドラインでは、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルのいずれもが第一選択肢として推奨されており、患者のライフスタイルや健康状態に合わせて、最適な薬剤が選択されます。特に、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つ患者に対しても、安全に使用できる薬剤とされています。
各薬剤の選択
- 選択基準: 治療を始める際には、作用時間の長さ、服用の便利さ、副作用の程度、個人の健康状態や他の服用薬との相互作用を考慮して選ぶ必要があります。
- 副作用: 共通の副作用には頭痛、顔のほてり、消化不良、鼻づまりなどがありますが、重篤な副作用(例:視覚障害、聴覚障害、持続的な勃起など)が発生する可能性もあるため注意が必要です。
- 医師のアドバイス: EDの治療を始める際には、必ず医師の診断とアドバイスを受けることが重要です。医師は患者の健康状態やライフスタイルに最適な薬を推薦できます。
これらの薬剤は、それぞれに利点と注意点がありますので、自分にとって最適な選択をするために、 ヒロクリニックの医師とよく相談することが重要です。