ED治療薬の副作用とは 安全に使うために知っておくべきこと

医者 注意

ED勃起不全)の治療薬は、適切に使えば性生活の質を高める有効な選択肢です。しかし一方で、副作用や禁忌を正しく理解しないまま服用すると、思わぬ健康リスクにつながる場合もあります。
本記事では、代表的なED治療薬の副作用、安全に使うための注意点、治療薬の選び方を解説します。

ED治療薬の種類と作用機序

ED治療薬の多くは、PDE5阻害薬(ホスホジエステラーゼ5阻害薬)に分類されます。
主な薬剤は以下のとおりです。

これらは、陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させることで血流を増加させ、勃起を促進します。ただし、性的刺激がなければ作用しない点が特徴です。

PDE5阻害薬は基本的に安全性が高い薬ですが、一定の副作用が報告されており、持病や併用薬によっては服用できない場合もあります。

主な副作用と頻度

ED治療薬は比較的安全性が確認されているものの、軽度から中等度の副作用が一定割合でみられます。

1. 頭痛

最もよくみられる副作用の一つで、**シルデナフィルの使用者の約10%〜15%**に発症します。
原因は一酸化窒素経路の活性化による血管拡張です。

2. 顔面紅潮

顔や首が赤くなる症状で、特に服用後1〜2時間で現れることが多いです。
多くは軽度で一過性ですが、まれに不快感が強い場合もあります。

3. 鼻づまり(鼻閉)

血管拡張により鼻粘膜が腫脹することで生じます。
頻度は薬剤によって異なりますが、シルデナフィルバルデナフィルで約5〜10%程度です。

4. 消化不良・胃部不快感

消化管平滑筋にも作用するため、胃のむかつきや胸やけを訴える方がいます。
シルデナフィルでは約5%程度報告されています。

5. 視覚異常

シルデナフィル特有の副作用で、青視症(物が青く見える)や光過敏が報告されています。
これは網膜PDE6への作用によるもので、おおむね2〜3時間で改善します。

重篤な副作用

きわめてまれですが、以下の副作用は緊急対応が必要です。

1. 持続勃起症(プリアピズム)

4時間以上持続する痛みを伴う勃起で、治療が遅れると陰茎組織が障害を受け、勃起機能の低下を残すことがあります。
発症率は10万人あたり1〜2例程度と極めて稀ですが、症状が出た場合は速やかに医療機関を受診してください。

2. 急性視力障害

非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)という視神経の血流障害が報告されています。
視野の一部が急に暗くなる場合は直ちに服用を中止し、眼科を受診する必要があります。

3. 心血管系イベント

ED治療薬は単独で冠動脈イベントを増加させるエビデンスは乏しいとされていますが、基礎疾患が重度の場合は注意が必要です。
特に硝酸薬(ニトログリセリンなど)と併用すると血圧が急激に低下し、命に関わる危険があります。

副作用を防ぐための注意点

1. 医師の診察を受ける

自己判断で入手・服用することは極めて危険です。
特に、循環器疾患、網膜疾患、重度肝障害のある方は服用が制限される場合があります。

2. 正しい用量を守る

過量服用は副作用リスクを高めるだけでなく、効果が増すわけではありません。

例:

3. 飲酒との併用に注意

アルコールには血管拡張作用があり、薬剤と相乗的に低血圧を引き起こすことがあります。

4. 海外製・偽造品を避ける

インターネット通販などで流通する偽造薬は、成分や含有量が不明で重大な健康被害を生じる例が報告されています。

副作用リスクを踏まえた治療薬の選び方

以下のポイントで治療薬を選ぶと安全性を高めることができます。

比較項目シルデナフィルタダラフィルバルデナフィル
効果持続時間約4〜6時間約36時間約4〜6時間
発現までの時間30〜60分60分20〜30分
消化不良の頻度やや多い少ない中等度
視覚異常の頻度あり(約3%)ほぼなしほぼなし
食事の影響受けやすい受けにくい受けにくい

体質や生活スタイル、既往歴に合わせて選択することが重要です。

PDE5阻害薬以外のED治療薬と副作用

PDE5阻害薬が主流ではありますが、ED治療にはほかの治療法も存在し、それぞれ特有の副作用や注意点があります。

1. 陰茎海綿体注射療法(ICI療法)

アルプロスタジル(プロスタグランジンE1)などを陰茎に直接注射する治療です。
PDE5阻害薬が無効の場合に適応されることが多いです。

主な副作用:

  • 陰茎痛(約30%)
  • 局所の腫脹・出血
  • 持続勃起症(プリアピズム)(約3〜5%)

ICI療法は即効性が高い一方で自己注射が必要で、患者教育と適切な管理が不可欠です。

2. 陰茎海綿体内ペレット療法(MUSE)

アルプロスタジルを尿道から挿入する方法です。
副作用としては局所の灼熱感や出血が知られています。

副作用頻度:

  • 陰茎痛(10%前後)
  • 排尿時痛
  • 尿道出血

3. テストステロン補充療法(TRT)

血中テストステロンが低下している場合に行う治療法です。
ED以外にも、気力・筋力低下、抑うつ症状が改善する場合があります。

主な副作用:

  • 赤血球増加症(血液粘稠度上昇)
  • 前立腺肥大の増悪
  • 肝機能障害
  • 睡眠時無呼吸の悪化

定期的な血液検査と前立腺検診が必須です。

副作用と持病のリスクマネジメント

ED治療薬の副作用は持病により影響が大きくなる場合があります。
以下に、特に注意が必要な疾患と対応を解説します。

基礎疾患注意点
虚血性心疾患・狭心症硝酸薬併用禁忌。血圧低下リスク大。医師への相談が必須。
重度の肝機能障害PDE5阻害薬の代謝が遅れ、薬物濃度が上昇し副作用リスクが増大。
網膜色素変性症PDE5阻害薬禁忌の可能性。視覚異常が重篤化することがある。
低血圧(<90/50mmHg)服用により血圧がさらに低下し失神リスクが高まる。
脳梗塞・心筋梗塞の既往発症後6ヶ月以内は使用回避推奨。心血管負荷に注意。

これらの条件に該当する場合は、必ず専門医の評価を受けることが重要です。

併用禁忌・注意薬剤

ED治療薬は他の薬剤と相互作用を起こす可能性があり、併用には厳重な注意が必要です。

サプリメント

絶対禁忌

  • 硝酸薬(ニトログリセリン、硝酸イソソルビドなど)
    • 相乗的に血圧を急激に低下させ、致命的ショックの危険
  • 可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬(リオシグアト)
    • 同様に血圧低下リスク大

注意が必要な薬剤

  • α遮断薬(前立腺肥大症治療薬)
    • 併用時に血圧低下や立ちくらみを起こしやすい
  • CYP3A4阻害薬(抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬)
    • PDE5阻害薬の代謝を抑制し、血中濃度が上昇する
  • 抗高血圧薬
    • 相乗的に血圧を下げる可能性

服用中の薬は必ず医師に報告し、適切な調整を受けてください。

偽造薬のリスク

ED治療薬は世界的に需要が大きく、偽造品が多数流通しています。

偽造薬の特徴

  • 成分が本物と異なる(有効成分が過量・不足・混入)
  • 不衛生な環境で製造
  • パッケージが粗悪

日本国内の調査では、個人輸入のED治療薬の約4割が偽造品という報告もあります。

安全性を確保するため、正規流通ルート(医療機関、薬局)からのみ入手することが必須です。

安全な治療を継続するためのポイント

  1. 医師の診断を受ける
    • EDは糖尿病、心血管疾患、神経疾患の兆候であることも。
  2. 用量を守る
    • 「多く飲めば効く」という考えは危険です。
  3. 生活習慣を改善する
    • 禁煙、適度な運動、十分な睡眠が根本的な改善に寄与します。
  4. 定期的にフォローアップ
    • 副作用や効果を継続的に確認し、必要に応じて治療方針を変更します。

よくある質問と回答

Q. 副作用が心配です。最も副作用が少ない薬はどれですか?
A. 副作用の出方は体質や併用薬により異なりますが、タダラフィルは比較的視覚異常や消化不良が少なく、持続時間も長いため使いやすいとされています。ただし個別の判断が重要です。

Q. 頭痛が強いときはどうすればいいですか?
A. 多くは水分補給や休息で軽快しますが、耐えられない場合は医師に相談し、薬剤を変更する方法もあります。

Q. 高齢でも服用できますか?
A. 年齢だけで制限されることはありませんが、腎機能・心血管リスクを評価し、適正量で使用する必要があります。

まとめ

ED治療薬は性生活の満足度を高める有効な治療手段です。しかし副作用や併用禁忌、基礎疾患への影響を理解し、医師の指導下で適切に使用することが、安心・安全な治療を続ける鍵となります。

万一異常を感じたら自己判断で服用を続けず、速やかに専門医を受診しましょう。

エビデンス・参考文献

  1. Sildenafil citrate for erectile dysfunction: a systematic review and meta-analysis
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10022720/
  2. Tadalafil for erectile dysfunction: a review of the literature
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12784733/
  3. FDA Guidance on PDE5 inhibitors
    https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2005/021368s012lbl.pdf
  4. Sildenafil Citrate for Erectile Dysfunction: A Review
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1470658/
  5. European Association of Urology Guidelines on Sexual and Reproductive Health
    https://uroweb.org/guideline/sexual-and-reproductive-health
  6. WHO Pharmaceuticals Newsletter: Counterfeit Sildenafil
    https://www.who.int/medicines/publications/newsletter/en/

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