性交時の痛みは放置していい?受診の目安

Posted on 2025年 9月 8日 ハートを持つ女性

性交時の痛み(性交痛)は、多くの女性が経験する症状ですが、その原因や対処法について正しく理解している人は少ないのが現実です。痛みが一過性のものであれば心配する必要はありませんが、継続的または強い痛みを感じる場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。本記事では、性交時の痛みの原因やその受診の目安、治療法について詳しく解説し、女性が安心して向き合える情報を提供します。

1. 性交時の痛みの原因とは?

性交痛は、多くの女性が経験することがある症状ですが、その原因は様々です。性交時の痛みが単なる一時的なものなのか、または何らかの疾患が隠れているのかを見極めることが重要です。以下では、性交痛の主な原因について詳しく説明します。

1.1. 膣の乾燥

膣の乾燥は性交痛の非常に一般的な原因の一つです。膣内が十分に潤滑されていないと、摩擦によって痛みを感じることがあります。膣の乾燥は、主にホルモンの変動に関連しています。例えば、更年期や出産後、授乳中はエストロゲンの分泌が減少し、膣内の潤滑液が不足しがちです。また、過度のストレスや薬剤(特に抗ヒスタミン薬や抗うつ薬など)も乾燥を引き起こすことがあります。乾燥が原因で性交中に痛みを感じる場合、潤滑剤の使用やホルモン補充療法が効果的です。

1.2. 膣炎や感染症

膣炎や性感染症(STI)は、性交痛を引き起こす代表的な原因です。膣炎は、膣内の感染症によって炎症が生じるもので、かゆみ、腫れ、痛みを伴うことがあります。カンジダ症(膣カンジダ)、細菌性膣炎、トリコモナスなどがその例です。性感染症(クラミジア、淋病、ヒトパピローマウイルスなど)は、性交中に痛みを引き起こすだけでなく、場合によっては不妊症の原因になることもあります。これらの感染症は、膣の異常な分泌物、強いかゆみ、尿道の痛み、発熱などの症状を伴うことが多いため、早期に治療を受けることが重要です。

1.3. 子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内膜が子宮外に異常に発生する病気です。この異常な組織は生理周期に伴って変化し、炎症や癒着を引き起こすことがあります。これにより、性交時に深い痛みを感じることがあり、特に深部性交痛として現れることが多いです。子宮内膜症は、卵巣や他の腹部臓器に影響を与えることもあり、進行すると不妊の原因にもなり得ます。子宮内膜症の治療は、薬物療法や手術が必要なことがあり、早期の診断が重要です。

1.4. 骨盤底筋の過剰な緊張

骨盤底筋の過剰な緊張も性交痛の原因となることがあります。骨盤底筋は、膀胱や子宮、直腸を支える重要な筋肉群です。過度のストレスや不安、長時間の座りっぱなし、出産後の筋肉の回復不足などが原因で、これらの筋肉が緊張し、性交時に痛みを感じることがあります。この症状は「過敏性膣症」とも呼ばれ、筋肉の緊張によって膣内が狭く感じられ、性交が痛みを伴うことがあります。骨盤底筋をリラックスさせるための物理療法や、呼吸法、ストレス管理が効果的な治療法となります。

1.5. 精神的な要因

性交痛の原因として、身体的な要因だけでなく、心理的な要因も大きな役割を果たします。特に過去の性的トラウマや、性交に対する恐怖・不安がある場合、痛みが現れることがあります。精神的な緊張や恐れが身体に影響を与え、筋肉が緊張して痛みを感じることがあるため、カウンセリングや心理療法が効果を示すことがあります。性行為自体に対する不安や心の中での葛藤が原因で痛みを感じる場合もあるため、心のケアが重要です。

1.6. 子宮筋腫や卵巣嚢腫

子宮筋腫や卵巣嚢腫などの婦人科疾患も性交痛を引き起こすことがあります。これらの疾患は、子宮や卵巣にできる良性の腫瘍で、性交中に圧力がかかることで痛みが生じることがあります。筋腫は大きさや位置によっては、性交時に直接的な痛みを引き起こすことがあり、また、筋腫の周囲の組織に炎症が起こることもあります。卵巣嚢腫が破裂した場合や捻転した場合は、急性の激しい痛みを伴うことがあり、緊急の治療が必要です。

2. 痛みが続く場合、受診のタイミング

性交時の痛みが一時的であれば、生活習慣の改善やリラックスすることで改善することもあります。しかし、痛みが長期間続く場合や他の症状が伴う場合、早期に受診することが非常に重要です。痛みの原因によっては、早期の治療が症状の改善や進行の防止に繋がります。以下では、痛みが続く場合に受診を考えるべきタイミングについて詳しく説明します。

2.1. 痛みが1ヶ月以上続く場合

性交時の痛みが1ヶ月以上続く場合、何らかの健康問題が潜んでいる可能性が高いです。特に、痛みが軽減することなく継続している場合、身体に異常があるかもしれません。たとえば、膣炎や性感染症、子宮内膜症など、早期に対処しなければ、症状が悪化したり不妊症の原因となることもあります。1ヶ月以上痛みが続く場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、婦人科の受診を強くお勧めします。

2.2. 出血を伴う場合

性交後に出血がある場合は、受診のタイミングとして非常に重要です。出血は、膣や子宮頸部、または他の婦人科疾患が関与しているサインである可能性があります。子宮頸がんや子宮筋腫、子宮内膜症などが原因となっている場合もあります。特に出血が不規則であったり、長時間続く場合は、婦人科を受診し、必要な検査を受けることが重要です。また、痛みを伴う出血は、疾患が進行しているサインであることが多いため、早期発見と早期治療が鍵となります。

2.3. 痛みが強く、日常生活に支障をきたしている場合

性交時の痛みが非常に強く、日常生活にも支障をきたすような状態が続く場合は、すぐに受診を検討しましょう。例えば、痛みが仕事や家庭生活、その他の活動に影響を与えている場合、症状が身体的または精神的な健康に重大な影響を与えている可能性があります。このような痛みは、単なる不快感ではなく、放置するとさらに深刻な問題に繋がる恐れがあるため、速やかな対応が必要です。

2.4. 痛みが性交の特定のポジションで悪化する場合

痛みが特定の体位や姿勢で悪化する場合、原因が特定の場所に限定されていることが多いです。例えば、深い挿入で痛みが強くなる場合は、子宮内膜症や子宮筋腫の可能性が考えられます。逆に、浅い挿入で痛みが生じる場合は、膣の乾燥や膣炎が原因であることがあります。特定のポジションで痛みが強くなる場合は、具体的な症状に応じた治療が求められます。婦人科では、痛みを引き起こす体位に対しても適切な診断と治療を行います。

2.5. 腰痛や腹痛を伴う場合

性交痛に加えて、腰痛や下腹部の痛みが伴う場合、婦人科系疾患や消化器系の異常が関係している可能性があります。例えば、子宮内膜症や卵巣嚢腫、子宮筋腫などが原因で腹部の痛みを引き起こすことがあります。また、腸や膀胱に問題がある場合も、下腹部に痛みを感じることがあります。これらの痛みが性交痛と関連している場合、症状を軽視せずに専門的な診察を受けることが重要です。

2.6. 精神的な負担が増している場合

性交時の痛みが続くことにより、精神的な負担が増している場合も受診のサインです。痛みが慢性的になってくると、性的な不安や恐怖感を引き起こすことがあります。これがストレスやうつ症状を引き起こすこともあり、心身の健康に悪影響を与えることがあります。痛みが続くことで精神的なストレスが増し、さらに症状が悪化することを防ぐためにも、早期に心理的なサポートを受けることが重要です。カウンセリングや心療内科での支援を受けることが、治療の一環として有効です。

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3. 性交痛の治療法と予防法

性交時の痛み(性交痛)は、原因によって異なる治療法が必要です。治療法は身体的なものだけでなく、精神的なサポートも含まれる場合があります。また、予防策を講じることで、再発を防ぐことができる場合もあります。ここでは、性交痛の代表的な治療法と予防法について詳しく解説します。

3.1. 薬物療法

薬物療法は、性交痛の治療において最も一般的なアプローチの一つです。痛みの原因に応じて、さまざまな種類の薬が使用されます。

3.1.1. 潤滑剤の使用

膣の乾燥が原因で性交痛が生じている場合、潤滑剤が非常に効果的です。潤滑剤を使用することで、摩擦を減らし、痛みを軽減できます。市場にはさまざまな潤滑剤があり、使用感や成分が異なりますので、自分に合ったものを選ぶことが重要です。また、潤滑剤の中にはホルモンを含んだ製品もあり、乾燥がホルモンバランスに起因している場合に有効です。

3.1.2. ホルモン療法

更年期や授乳中の女性など、ホルモンバランスが崩れて膣の乾燥が生じている場合、ホルモン補充療法(HRT)が有効です。エストロゲンを補充することで、膣内の潤滑液の分泌を促し、乾燥を改善します。膣内に直接塗布するタイプのエストロゲン製剤もあり、局所的に効果を発揮します。

3.1.3. 抗炎症薬や抗真菌薬

膣炎や性感染症(STI)が原因で性交痛が発生している場合、抗炎症薬や抗真菌薬が使用されます。これらの薬は、感染症を治療し、炎症を抑えることで痛みを軽減します。膣炎の原因がカンジダ菌であれば、抗真菌薬が処方され、細菌性膣炎であれば、抗生物質が使われることがあります。

3.1.4. 鎮痛薬

痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬が処方されることがあります。これらの薬は痛みを和らげるだけでなく、炎症を抑える働きもあります。性交前に服用することで、痛みを予防することも可能です。

3.2. 理学療法

性交痛が骨盤底筋の緊張や不調によって引き起こされている場合、理学療法が有効です。専門の理学療法士によるトレーニングが効果的で、痛みの軽減や再発予防に役立ちます。

3.2.1. 骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋が過度に緊張している場合、筋肉をリラックスさせるためのトレーニングが重要です。骨盤底筋を意識的に緩めることで、性交時の痛みを減らすことができます。また、筋肉を適切に鍛えることで、再発を防ぐことも可能です。専門的な理学療法士の指導の下で行うことが推奨されます。

3.2.2. 温熱療法とマッサージ

温かいパッドを使った温熱療法や、骨盤底筋周辺のマッサージは筋肉の緊張をほぐし、痛みを軽減する効果があります。温熱療法は血行を促進し、筋肉の柔軟性を高めるため、痛みが軽減されることがあります。

3.3. 心理療法とカウンセリング

性交痛が精神的な原因による場合、カウンセリングや心理療法が非常に重要です。特に、過去のトラウマや不安、性交に対する恐怖が原因で痛みが生じている場合、心理的なサポートが必要です。

3.3.1. 認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、痛みを引き起こす思考や行動を変えることを目的とした治療法です。性交に対する不安や恐怖感を軽減し、ポジティブな思考を促進することで、痛みを和らげることができます。

3.3.2. セラピーやカップルセラピー

カップルでのコミュニケーションや信頼関係の改善が、性交時の痛みの解消に繋がることもあります。セラピストによるカップルセラピーを受けることで、互いの理解が深まり、痛みの解決に向けた協力が得られる場合があります。

3.4. 手術療法

もしも、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣嚢腫などの疾患が原因で性交痛が生じている場合、手術が必要になることもあります。これらの疾患を放置すると、痛みが悪化し、不妊の原因にもなる可能性があるため、早期に手術を検討することが重要です。

3.4.1. 子宮内膜症の治療

子宮内膜症が原因の場合、薬物療法や手術が選択肢となります。内膜組織の除去や、子宮や卵巣の摘出を行うことができます。手術後は症状の改善が期待できる場合が多く、再発を防ぐためのケアが必要です。

3.4.2. 子宮筋腫の治療

子宮筋腫が原因の性交痛には、筋腫を摘出する手術が行われます。筋腫が小さい場合は、薬物療法で痛みを管理することもありますが、症状が重い場合は手術が最も効果的な治療法です。

3.5. 予防法

性交痛を予防するためには、生活習慣の見直しや、ストレス管理、体調管理が重要です。

3.5.1. 定期的な婦人科検診

定期的な婦人科検診を受けることで、早期に疾患を発見し、早期の治療が可能になります。性交痛が続く場合でも、早期に専門医に相談することが大切です。

3.5.2. ストレス管理とリラックス法

ストレスが原因で性交痛が発生することもあります。適度な運動やリラクゼーション法(ヨガや深呼吸など)を取り入れることで、心身ともにリラックスし、痛みの予防になります。

3.5.3. 十分な前戯と潤滑剤の使用

性交前に十分な前戯を行い、膣内を十分に潤滑させることが痛みを予防するために重要です。潤滑剤の使用は特に乾燥が原因の痛みに効果的です。

まとめ

性交時の痛みは、決して放置してはいけない症状です。軽度の痛みであればすぐに改善することもありますが、長引く痛みや強い痛みがある場合は、婦人科を受診して原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。自分の身体に正直に向き合い、必要なケアを行いましょう。