

生理が来ない、いわゆる無月経は多くの女性にとって悩ましい問題です。生理周期が乱れることは、単なる体調不良やストレスの影響であることもありますが、場合によっては重大な健康問題のサインかもしれません。無月経の原因はさまざまであり、ホルモンバランスの乱れや生活習慣の影響、さらには病気が関与していることもあります。本記事では、無月経の主な原因とその検査方法について詳しく解説し、早期の対策方法についてもご紹介します。
無月経の原因は様々!主な要因をチェック
無月経(生理が来ない)には、さまざまな原因が潜んでおり、生活習慣や体調の変化、さらには病気が関連していることがあります。無月経を引き起こす主な要因について、具体的に見ていきましょう。
1. ホルモンバランスの乱れ
月経はホルモンの影響を強く受けるため、ホルモンバランスの乱れが直接的な原因となります。月経周期は、脳から分泌されるホルモン(視床下部、脳下垂体)が卵巣に指令を出し、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンが分泌されることによって調整されています。これらのホルモンが適切に分泌されないと、排卵が起こらず、月経が来なくなることがあります。
特に、次のような要因がホルモンバランスに影響を与えます:
- ストレス:精神的なストレスや過度の心的負担は、脳下垂体に影響を与え、ホルモンの分泌を乱すことがあります。長期間のストレスにさらされると、月経が遅れる、または完全に停止することもあります。
- 体重変動:急激な体重の増減や過度のダイエットもホルモンに影響を与えることがあり、特に体脂肪が極端に減少すると、月経が止まることがあります。
2. 体重の変動や過度のダイエット
体重はホルモンバランスに大きな影響を与えます。特に、以下のような体重変動が無月経を引き起こすことがあります:
- 過度のダイエットや低体重:極端なダイエットや栄養不足によって体脂肪が減少すると、体はエネルギー不足を感じ、月経を止めることがあります。これは、体が「生存の危機」と判断し、繁殖機能を停止させるためです。
- 肥満:反対に過度の肥満もホルモンバランスを乱し、特にエストロゲンの過剰分泌が原因で無月経を引き起こすことがあります。肥満によるインスリン抵抗性が卵巣の働きに影響を与え、排卵が起こりにくくなることもあります。
3. 卵巣機能の異常
卵巣は月経における重要な役割を果たす臓器であり、卵巣が正常に機能しないと排卵が起こらず、月経が来なくなることがあります。代表的な疾患として以下が挙げられます:
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):PCOSは卵巣に小さな嚢胞が複数できる疾患で、ホルモンバランスが乱れ、排卵が抑制されることがあります。これにより、月経が不規則になる、または無月経になることがあります。
- 卵巣機能不全:卵巣が正常に機能せず、卵子の成熟や排卵が起こらない場合、無月経が発生します。この場合、ホルモン療法などで治療が必要になることがあります。
4. 高い運動量や過度なストレス
過度の運動や極端なトレーニングは、女性の体に大きな負荷をかけ、ホルモンバランスを乱す原因となります。特にアスリートや過度なトレーニングを行っている人に多く見られます。体が過度にエネルギーを消費し、ストレスが蓄積されることで、生理が遅れたり、完全に止まったりすることがあります。
- アスリート無月経:特に運動量が多い女性アスリートに見られる現象で、体脂肪が減少し、月経が停止します。これは過度な運動と低体脂肪が引き起こすホルモンの不均衡によるものです。
- 過度な精神的・身体的ストレス:精神的なストレスや過度の身体的負荷が長期間続くと、脳がホルモン分泌を抑制することがあります。これにより、月経が不規則または停止することがあります。
5. その他の疾患や健康状態
無月経は、ホルモンの異常だけでなく、さまざまな健康状態にも関係しています。以下の疾患が無月経を引き起こすことがあります:
- 甲状腺疾患:甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症など、甲状腺ホルモンの異常が月経に影響を与え、無月経を引き起こすことがあります。
- 高プロラクチン血症:プロラクチンというホルモンが過剰に分泌されると、月経が止まることがあります。プロラクチンは授乳に関連したホルモンですが、異常があると無月経を引き起こします。
- 子宮や卵巣の病気:子宮内膜症や子宮筋腫など、子宮や卵巣の疾患が無月経を引き起こすことがあります。これらの疾患は治療を要する場合があります。
無月経の検査方法と診断
無月経(生理が来ない)を解決するためには、原因を正確に特定することが最も重要です。無月経の背後にある病気やホルモンの異常を確認するため、さまざまな検査が行われます。ここでは、無月経の診断に役立つ主な検査方法と、それぞれの特徴について詳しく説明します。
1. 血液検査
血液検査は無月経の最初のステップとして非常に重要です。ホルモンの異常が無月経の原因であることが多いため、特定のホルモンの値を測定することで、問題の根本原因を明らかにすることができます。以下は、血液検査でチェックする主なホルモンです:
- FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)
これらのホルモンは、月経周期を調整する重要な役割を担っています。FSHとLHの値が異常であれば、卵巣機能や脳下垂体の異常を示唆する可能性があります。特に、FSHが高い場合は卵巣機能不全や早発閉経の可能性があります。 - エストロゲン
エストロゲンは月経を起こすために必要なホルモンで、これが低いと無月経を引き起こす原因となります。エストロゲンのレベルを測定することで、ホルモンバランスが適切かどうかを評価します。 - プロゲステロン
プロゲステロンは排卵後に分泌され、妊娠の維持にも重要な役割を果たします。このホルモンの値が低い場合、排卵が正常に行われていない可能性があるため、無月経の原因として調べます。 - プロラクチン
プロラクチンは乳腺を刺激するホルモンですが、過剰分泌(高プロラクチン血症)により無月経が引き起こされることがあります。プロラクチンの過剰分泌は、視床下部や脳下垂体の異常が原因であることもあります。 - 甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)
甲状腺ホルモンの異常は月経に大きな影響を与えるため、甲状腺疾患の有無を確認するために、TSH(甲状腺刺激ホルモン)やT3、T4のレベルを測定します。甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症が原因で無月経が起こることがあります。
2. 超音波検査
超音波検査は、卵巣や子宮の状態を直接確認できる非侵襲的な検査方法です。無月経が続く場合、卵巣や子宮に異常がある可能性を調べるために使用されます。以下のような状態をチェックします:
- 卵巣の大きさや嚢胞の有無
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの卵巣の疾患が疑われる場合、超音波で卵巣内の嚢胞の数や大きさを確認します。PCOSでは卵巣に小さな嚢胞が複数見られ、ホルモンバランスが乱れることが多いです。 - 子宮内膜の状態
子宮内膜が正常に厚くなっているか、異常があるかを確認します。子宮内膜症や子宮筋腫などが無月経の原因となることがあるため、これらの病変がないかを調べます。 - 子宮の形態や位置
子宮の形態や位置が異常であれば、月経不順や無月経の原因となることがあります。子宮筋腫や子宮奇形などが原因で生理が来ないこともあるため、詳細に調べます。
3. 子宮内膜検査(内膜生検)
子宮内膜検査は、子宮内膜の状態を調べるために行われる検査で、ホルモンの影響や内膜の異常を評価するために使用されます。この検査では、細い器具を使って子宮内膜の一部を採取し、顕微鏡で分析します。
- 内膜の厚さや変化
月経周期によって子宮内膜の厚さが変化しますが、ホルモン異常があると内膜の厚さが正常でなくなることがあります。例えば、エストロゲンの不足により内膜が薄くなることがあります。 - 異常細胞の有無
子宮内膜に異常が見られる場合、癌や子宮内膜症などの疾患が関連している可能性があるため、細胞診を行い、異常細胞がないかを確認します。
4. 画像診断(MRIやCT)
無月経の原因として、脳下垂体や視床下部の異常が疑われる場合、MRIやCTを用いて画像診断を行うことがあります。これにより、脳内の腫瘍や異常を発見することができます。
- 脳下垂体や視床下部の異常
脳下垂体腫瘍や視床下部の障害が無月経を引き起こすことがあります。特に、プロラクチン分泌過剰が原因で無月経が続く場合、画像診断を通じて腫瘍の有無を調べます。
5. 妊娠検査
無月経が続く場合、妊娠の可能性も考慮する必要があります。妊娠していると、月経が止まるため、最初に妊娠検査を行うことが推奨されます。妊娠検査薬や血液検査で妊娠の有無を確認します。
無月経の治療法と対策
無月経(生理が来ない)は、女性にとって大きな悩みの一つですが、その原因に応じて適切な治療を行うことで、月経を正常に戻すことができます。治療は原因ごとに異なり、生活習慣の改善から薬物療法、さらには手術まで様々なアプローチが取られます。ここでは、無月経の原因別に、どのような治療法や対策が有効であるかを詳しく見ていきます。
1. ホルモンバランスの乱れに対する治療
ホルモンバランスの乱れが無月経の原因である場合、ホルモン療法が中心となります。ホルモン療法にはさまざまな種類があり、原因や症状に応じて選択されます。
- エストロゲンとプロゲステロン療法
月経不順や無月経がホルモン不足によるものである場合、エストロゲンやプロゲステロンのホルモン補充が行われます。これにより、月経周期を正常化させることができます。特に、更年期前後や早発閉経の場合、ホルモン補充療法(HRT)を行い、月経を再開させることが期待できます。 - 排卵誘発剤
卵巣が正常に機能していない場合や排卵が起こらない場合、排卵を促す薬(クロミフェンなど)を使用することがあります。これにより、排卵を促進し、月経を再開させることができます。 - 低用量ピル(経口避妊薬)
ホルモンバランスの調整には、低用量ピルが使用されることがあります。特に、無月経が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などホルモンの不均衡によるものである場合、ピルが有効です。ピルは月経を定期的に起こさせ、ホルモンの調整にも役立ちます。
2. 体重管理と生活習慣の改善
体重の増減や不規則な生活習慣が原因で無月経が引き起こされることもあります。このような場合、生活習慣の改善が最も効果的な治療となります。
- 健康的な体重の維持
急激な体重減少や過度なダイエットが無月経を引き起こすことが多いため、健康的な体重を維持することが重要です。過度な食事制限を避け、バランスの取れた食事を摂ることが求められます。特に、体脂肪が一定の範囲を保つことが月経周期を安定させるために必要です。 - 適度な運動
適度な運動を行うことで、ホルモンのバランスが整いやすくなります。激しい運動は無月経を悪化させることがありますが、ウォーキングやヨガ、軽いジョギングなど、ストレスを減らし、身体を動かすことが月経を正常化させる助けになります。 - ストレス管理
精神的なストレスは、ホルモンのバランスを崩し、無月経を引き起こす原因となります。リラックスできる時間を設け、ストレス管理を行うことが重要です。マインドフルネスや瞑想、趣味に時間を使うことも有効な対策となります。


3. 病気や疾患に対する治療
無月経が病気や疾患による場合、原因となる疾患を治療することが最も重要です。以下は、代表的な病気に対する治療法です。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは無月経の一般的な原因の一つです。治療には、ホルモン療法や排卵誘発剤が用いられます。また、インスリン感受性を改善する薬(メトホルミンなど)を使用することで、PCOSの症状を改善し、月経を再開させることができます。 - 甲状腺疾患
甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症が原因で無月経が起こる場合、甲状腺ホルモンの調整が必要です。適切な甲状腺ホルモン治療を行うことで、月経が再開することが期待できます。 - 高プロラクチン血症
高プロラクチン血症による無月経には、ドパミン作動薬(カベルゴリンなど)が処方され、プロラクチンの分泌を抑えることで月経を再開させることができます。 - 子宮内膜症や子宮筋腫
子宮内膜症や子宮筋腫が原因で無月経が発生している場合、手術や薬物療法が行われます。特に、内膜症がひどくなる前に治療を行うことが大切です。必要に応じて、ホルモン治療や手術による治療が検討されます。
4. 外科的治療
まれに、無月経が卵巣や子宮に関連する病気による場合、外科的治療が必要になることがあります。これには以下の治療法があります。
- 卵巣や子宮の手術
卵巣や子宮に腫瘍や異常がある場合、手術でこれを取り除くことが必要となることがあります。特に、卵巣腫瘍や子宮内膜症の治療には手術が有効です。 - 生殖補助技術(ART)
排卵がない場合や卵巣機能が低下している場合、人工授精や体外受精などの生殖補助技術(ART)を利用することも一つの選択肢です。
無月経の予防と対策
無月経を予防するためには、生活習慣の見直しや定期的な婦人科検診を受けることが重要です。健康的な体重の維持、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけ、ストレスを減らすことが基本的な対策となります。また、無月経が続く場合や異常を感じた場合には、早期に専門医を受診し、原因に応じた治療を受けることが大切です。
無月経は早期に適切な対応をすることで、改善が期待できることが多いため、あきらめずに自分の体の状態をしっかりと把握し、専門的なサポートを受けることが重要です。







