不正出血が続くときに受診すべき理由

Posted on 2025年 9月 5日 お腹にハート

不正出血は珍しい症状ではありませんが、放置すると子宮頸がんや子宮体がん、子宮内膜症、子宮筋腫、ホルモン異常などの疾患が隠れていることがあります。軽視すれば、不妊や流産、早産、さらには生命に関わるリスクへとつながる可能性もあります。妊娠中の不正出血は切迫流産や胎盤異常のサインであることもあり、将来の妊娠を望む女性にとって早期受診は欠かせません。超音波検査やホルモン検査などによる早期発見は治療の選択肢を広げ、妊娠経過の管理にも役立ちます。

また、近年注目されるNIPT(新型出生前診断)とも関わりがあり、不正出血を正しく理解・対応することは、妊娠や出産、胎児検査においても安心につながります。少しの出血でも自己判断せず、早めに受診することが大切です。

1. 不正出血とは何か

不正出血とは、月経周期とは関係なく発生する出血のことを指します。医学的には「器質性出血」と「機能性出血」に大別されます。

  • 器質性出血:子宮や卵巣などに器質的な異常(腫瘍、炎症、ポリープなど)が原因。
  • 機能性出血:ホルモンバランスの乱れや排卵異常などが原因。

また、不正出血は出血量や期間によっても異なります。少量の茶色い出血が数日続く場合もあれば、大量の出血で貧血を伴う場合もあります。

よくある出血のタイプ

  • 排卵期出血(排卵時のホルモン変動による)
  • 着床出血(妊娠初期にみられることがある)
  • 更年期の不正出血(女性ホルモンの分泌低下による)

一見すると大きな問題がなさそうに思えても、繰り返す・続く不正出血は病気のサインである可能性が高いため、軽視できません。

2. 不正出血が続くときに考えられる病気

子宮頸がん

不正出血の代表的な原因の一つ。性交後の出血(接触出血)が特徴で、進行すると大量出血や下腹部痛を伴います。早期発見には子宮頸がん検診(細胞診・HPV検査)が重要です。

子宮体がん

特に閉経後の不正出血では子宮体がんの可能性が高くなります。早期発見により予後は良好ですが、放置すれば進行しやすい疾患です。

子宮内膜症

子宮内膜組織が子宮外に発生し、周期に伴って出血と炎症を繰り返す疾患。慢性的な不正出血や強い生理痛、不妊の原因となります。

子宮筋腫・ポリープ

良性腫瘍やポリープも不正出血の原因になります。大きさや位置によっては月経量増加や貧血を引き起こすことがあります。

性感染症(クラミジア・淋菌など)

感染による炎症が子宮頸管や内膜に広がると、不正出血やおりものの異常を伴います。放置すると骨盤内炎症性疾患(PID)を経て不妊に至ることもあります。

3. 受診すべき理由と放置のリスク

不正出血が数日で収まらずに続く場合、自己判断で「そのうち治まるだろう」と放置するのは危険です。なぜなら、不正出血は単なるホルモンバランスの乱れだけでなく、子宮頸がんや子宮体がんといった悪性疾患や、子宮内膜症、子宮筋腫などの慢性的な病気が背景にある可能性があるからです。これらは早期発見が治療の成否を左右するため、見逃しは大きなリスクになります。

特に、がんや内膜症は初期には自覚症状が乏しく、「出血だけ」で気づくケースが少なくありません。そのため、不正出血は「体からの重要なサイン」と受け止めることが大切です。

放置した場合に起こり得るリスクには以下が挙げられます。

  • 子宮頸がんや子宮体がんの進行
    初期段階で発見できれば治療効果も高く、負担の少ない方法を選べます。しかし放置すると進行し、手術や抗がん剤治療が必要になり、生命予後にも影響します。
  • 貧血や慢性疲労の悪化
    出血が長期間続くことで鉄分不足による貧血が進み、立ちくらみ、動悸、集中力低下といった症状を引き起こします。仕事や日常生活に支障が出るだけでなく、全身の健康状態を損なう原因となります。
  • 不妊や流産リスクの増大
    子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患は、受精卵の着床を妨げたり妊娠の継続を困難にしたりします。将来妊娠を望む女性にとって、不正出血の放置は妊娠の可能性を狭める深刻なリスクになります。
  • 妊娠合併症(早産・胎盤異常)
    妊娠中の不正出血は、切迫流産や前置胎盤、胎盤早期剥離といった重大なトラブルの初期サインであることがあります。これらは母体と胎児双方の命に関わるため、早急な受診が不可欠です。

「少量の出血だから問題ないだろう」と軽く考えてしまうのは自然な心理ですが、実際には危険な病気のサインであることが少なくありません。とくに不正出血が2回以上続く、あるいは出血量が多い・鮮血が見られる・痛みを伴うといった場合には、速やかに婦人科を受診することが強く推奨されます。

不正出血をきっかけに病気を早期に見つけられれば、治療の選択肢が広がり、妊娠や将来の健康への影響を最小限に抑えることができます。つまり、受診は「今の安心」だけでなく「未来の備え」にも直結しているのです。

婦人科 診察

4. 診断方法と治療の選択肢

診断方法

  • 問診:出血のタイミングや量を確認
  • 内診:子宮や卵巣の状態を直接確認
  • 超音波検査:筋腫や内膜の厚さを評価
  • 子宮内膜組織診:がんや過形成の有無を確認
  • 血液検査:ホルモン値や貧血の有無を調べる

治療法

原因によって異なります。

  • ホルモン療法(機能性出血や内膜症に有効)
  • 抗菌薬(感染症が原因の場合)
  • 手術(筋腫・ポリープ・がんに対して)
  • 鉄剤投与(貧血改善のため)

5. 妊娠・不妊との関連、そしてNIPT

不正出血が続く背景には、ホルモン異常から悪性腫瘍まで多様な原因が存在しますが、特に注意すべきは「妊娠や不妊との関わり」です。出血そのものが子宮や卵巣の異常を示唆していることが多く、放置すれば妊娠の成立や妊娠の継続に大きく影響する可能性があります。

不妊との関連性

子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的疾患は、受精卵の着床を妨げる要因となります。たとえば、子宮内膜症では骨盤内の癒着により卵管の通過障害が起き、卵子と精子が出会いにくくなります。また、卵巣チョコレート嚢胞は卵子の質を低下させ、不妊治療でも妊娠率が下がることが報告されています。

子宮筋腫については、大きさや部位によって影響が異なります。特に子宮腔内に突出する粘膜下筋腫は、子宮内膜環境を悪化させ、受精卵が着床できない原因になります。筋腫が複数ある場合には、妊娠しても流産や早産のリスクが上がるため、妊娠希望の女性には治療を含めた慎重な判断が求められます。

また、子宮腺筋症も強い不正出血や生理痛を伴うだけでなく、子宮そのものが硬く大きくなることで妊娠しにくくなります。たとえ妊娠が成立しても、流産や胎盤異常のリスクが増加するため、早期の診断と治療が不可欠です。

妊娠中の不正出血とリスク

妊娠が成立した後も、不正出血は無視できないサインとなります。妊娠初期の出血は、絨毛膜下血腫や切迫流産の可能性を示すことがあり、適切な安静や治療が必要です。妊娠中期以降の出血は、前置胎盤や胎盤早期剥離といった母体・胎児ともに生命に関わる病態と関連する場合もあるため、妊婦にとって不正出血は「受診を遅らせてはならない症状」です。

また、性感染症や子宮頸部の病変による出血は、妊娠経過や分娩にも影響します。子宮頸がんが妊娠中に見つかるケースもあり、母体と胎児双方の安全を考慮した治療方針が必要です。

NIPTとのつながり

こうした婦人科疾患と妊娠リスクを背景に、近年ではNIPT(新型出生前診断)を検討する女性が増えています。NIPTは妊娠10週以降、母体の血液を採取して胎児の染色体異常リスクを調べる検査であり、従来の羊水検査や絨毛検査に比べて母体・胎児への負担が少ないことが特徴です。

不正出血が続く女性は、潜在的に婦人科疾患を抱えている可能性があり、妊娠できたとしても「高リスク妊娠」として扱われることがあります。例えば、子宮内膜症を持つ女性が高齢妊娠に至った場合、母体の健康管理と胎児の染色体異常リスク評価が同時に必要となり、NIPTはその一助となります。

さらに、NIPTの結果によっては追加の羊水検査が推奨されることもあり、事前に婦人科疾患が管理されているかどうかで検査・治療の選択肢が変わります。言い換えれば、不正出血を契機に疾患を早期に見つけておくことが、安心してNIPTを受け、妊娠を安全に継続する基盤になるのです。

まとめ

不正出血は単なる月経不順や一時的な体調変化ではなく、妊娠や不妊、さらに妊娠後の胎児診断まで影響を及ぼすサインです。将来の妊娠を考える女性にとって、不正出血の精査は「妊娠準備の第一歩」であり、妊娠成立後にNIPTを選択する場面にも直結します。

6. まとめ:不正出血を放置せず、未来を守るために

不正出血は一時的な体調の変化と思われがちですが、子宮頸がんや子宮体がん、子宮内膜症、子宮筋腫、ホルモン異常などの病気が隠れている可能性があります。放置すれば、不妊や流産、早産、さらには命に関わるリスクへとつながることもあります。

大切なのは、「少量だから大丈夫」と自己判断しないことです。2回以上続く不正出血がある場合には、必ず婦人科を受診し、必要な検査を受けましょう。早期発見・早期治療は、健康の維持だけでなく、将来の妊娠や出産にも直結します。

また、妊娠を希望する女性や妊娠中の方にとって、不正出血は妊娠の経過や胎児の安全にも関わるサインです。適切な検査と治療を受けておくことで、安心して妊娠期を過ごし、必要に応じてNIPT(新型出生前診断)などの検査を活用する基盤にもなります。

不正出血は「体からのSOS」です。そのサインを見逃さず、早めに医師へ相談することが、未来の自分と大切な家族を守る最良の一歩となります。