「ただのシミや虫刺され跡だと思っていたのに、なかなか治らない…」そんな皮膚のトラブルが、実は皮膚がんのサインであることがあります。特に基底細胞癌(きていさいぼうがん)は、日本でも増えている皮膚がんの一種です。進行はゆっくりですが、放置すると広がり、治療が難しくなることも。本記事では、皮膚トラブルから基底細胞癌を早めに見つけるためのポイントを、わかりやすく解説します。
基底細胞癌とは?よくある皮膚がんのひとつ
基底細胞癌は、皮膚の一番外側にある細胞ががん化して起こる皮膚がんです。皮膚がんの中で最もよく見られるタイプで、特に顔や首、手の甲など、日差しをよく浴びる部分にできやすいのが特徴です。
基底細胞癌の特徴
- ゆっくり進行するが、放置すると大きくなる
- 遠くの臓器に転移することはまれ
- 高齢者に多いが、若い人にも起こることがある
- 紫外線をたくさん浴びた部分に出やすい
皮膚トラブルで気づける初期症状
基底細胞癌は、見た目がホクロやシミ、湿疹などとよく似ています。そのため「ただの皮膚トラブル」と思って放置されることが少なくありません。次のような症状があるときは要注意です。
1. 治らない赤みやただれ
虫刺されの跡や小さな傷のように見えて、何週間も治らない。かさぶたになってもすぐ取れて、またただれる。
2. シミやホクロに似た黒っぽい斑点
ホクロやシミのように見えて、少しずつ大きくなる。形がいびつで、境界がはっきりしないのも特徴です。
3. 光沢のある小さなしこり
つやつやと光って見える、半球状の小さなコブ。真珠のような見た目をしていることから「真珠様結節」と呼ばれることもあります。
4. 繰り返す潰瘍やかさぶた
表面がただれてかさぶたができるが、しばらくするとまた剥がれて出血する。その繰り返しをするのも典型的なサインです。
どのように診断するの?
皮膚に気になるできものがあるとき、皮膚科では以下のような方法で調べます。
- 目で見る検査(視診)
拡大鏡(ダーモスコピー)を使って、血管の模様や形を詳しく確認します。 - 組織検査(生検)
皮膚の一部を小さく切り取って顕微鏡で確認する方法。これで確定診断がつきます。 - 画像検査
広がりが大きい場合は、CTやMRIで深さや広がりをチェックすることもあります。
受診から治療までの流れ
- 皮膚科で診察
気になる部分を見せると、まず医師が視診とダーモスコピーで観察します。 - 組織検査(生検)
確定診断が必要なときは小さく切り取って検査。局所麻酔をするので痛みは最小限です。 - 治療方針の決定
大きさ・場所・年齢・体の状態などを考えて手術や放射線、外用薬などを選びます。 - 治療後の経過観察
半年~1年ごとに再発や新しい病変がないかチェックします。
このように、受診から治療、そして経過観察まで一連の流れがしっかりと決まっています。

治療の方法
基底細胞癌の基本的な治療は「手術で切り取る」ことです。ただし部位や大きさによって治療法は変わります。
外科的切除(もっとも一般的)
腫瘍とその周囲の皮膚をまとめて切除します。顔など目立つ場所では、形成外科の手技でできるだけ傷跡が目立たないように工夫されます。
放射線治療
高齢者や手術が難しい場合に選択されることがあります。
光線力学療法や塗り薬
ごく小さい病変では、特殊な光を使った治療や、イミキモドという塗り薬を使うこともあります。
新しい薬(進行例)
ごくまれに広がってしまった基底細胞癌には、「分子標的薬」という飲み薬が使われることもあります。
予後(治療後の見通し)と再発
基底細胞癌は治療すれば命に関わることはほとんどなく、5年生存率はほぼ100%といわれています。ただし再発や新しく別の場所にできることがあるため、治療後も経過観察が大切です。
- 鼻や耳など、完全に切り取るのが難しい部位は再発しやすい
- 一度治っても、数年後に別の場所に新しくできることがある
- 治療後は半年~1年ごとの定期検診が安心
生活の中でできる予防と工夫
完全に防ぐことはできませんが、リスクを減らす生活習慣があります。
- 紫外線対策を習慣にする
- 日焼け止め(SPF30以上)を毎日使う
- 帽子や日傘、サングラスを活用する
- 真昼の強い日差しを避ける
- 日焼け止め(SPF30以上)を毎日使う
- セルフチェックをする
- 鏡で皮膚を定期的に観察する
- ホクロやシミの大きさ・形の変化に気づく
- 治らない皮膚トラブルを放置しない
- 鏡で皮膚を定期的に観察する
- 皮膚科での定期検診
基底細胞癌を治療した人、家族に皮膚がんがある人は特に定期的な診察が安心です。
季節ごとの紫外線対策
- 春・初夏:紫外線が急に強くなる時期。まだ油断しやすいので早めに日焼け止めを習慣に。
- 真夏:日傘や帽子に加え、薄手の長袖シャツなどで物理的に遮るのがおすすめ。
- 秋:涼しくても紫外線は意外と強い。スポーツや行楽シーズンこそ注意が必要。
- 冬:雪山や高地では紫外線が反射して強くなるため、スキーや登山ではサングラスや日焼け止めが必須。
食生活でのサポート
直接的な予防効果は証明されていませんが、皮膚の健康には栄養バランスが大切です。ビタミンCやE、βカロテンを含む野菜や果物、魚に含まれるオメガ3脂肪酸は肌の健康を助けます。
体験談に学ぶ:小さな異変を見逃さない
実際の患者さんのケースからも、早めの受診の大切さがわかります。
事例1:虫刺されだと思っていたら…
70代の男性は、鼻の横に「虫に刺されたような赤いポチ」ができました。かさぶたになってはまた出血し、半年以上治らなかったため受診。検査の結果、基底細胞癌と診断され、手術で切除しました。術後は大きな問題なく過ごせています。
事例2:シミだと思って放置していたら…
60代の女性は、頬にあった小さな黒い斑点をシミと思い込んでいました。しかし2年ほどで少しずつ大きくなり、医師に相談したところ基底細胞癌でした。幸い転移はなく、早期の手術で完治しました。
どちらも「もっと早く受診していれば」と感じたそうです。
Q&A:よくある疑問に答えます
読者がよく感じる疑問をまとめてみました。
Q1:基底細胞癌って命にかかわりますか?
→ 基本的には命にかかわることはほとんどありません。ただし放置すると皮膚や骨を壊して大きな手術が必要になることがあります。
Q2:ホクロやシミとどう見分ければいいの?
→ ホクロやシミは大きさや形が変わらず、痛みもありません。基底細胞癌は「少しずつ大きくなる」「かさぶたが繰り返しできる」などの特徴があります。
Q3:手術のあとは大きな傷が残りますか?
→ 顔など目立つ部位では、形成外科の技術を組み合わせてできるだけ目立たないように縫合されます。
Q4:再発しないようにするには?
→ 完全に防ぐことはできませんが、紫外線対策と定期的な皮膚チェックが効果的です。
Q5:皮膚科に行くタイミングは?
→ 「2週間以上治らない皮膚トラブルがあるとき」「ホクロやシミが大きくなってきたとき」は受診をおすすめします。
受診のときの心構えと伝え方
皮膚科を受診するときは、次のような工夫をすると診断がスムーズになります。
- 症状が出てからの期間をメモする
「3か月前から」「かさぶたが繰り返しできる」など、時間の経過を伝えると診断に役立ちます。 - 写真を撮っておく
スマートフォンで症状の変化を記録しておくと、医師に見せて経過を説明できます。 - 既往歴や服薬を伝える
他の病気や飲んでいる薬によっては治療方法が変わることがあります。
こうした準備は、患者さん自身の安心にもつながります。
家族や周囲が気づけるポイント
本人では気づきにくい背中や頭皮にできるケースもあります。家族が入浴のときなどに「同じ場所にかさぶたが繰り返しできていないか」「黒っぽいシミが広がっていないか」をチェックしてあげるのも大切です。
特に高齢の方は「たいしたことない」と思って受診を後回しにしがちです。家族の声かけが早期発見につながることもあります。
まとめ
- 治らない皮膚トラブルを放置しない
- 紫外線対策を毎日の習慣にする
- 定期的に皮膚をチェックする
- 気になったら早めに皮膚科で相談
この4つを意識するだけでも、早期発見や再発防止につながります。小さなサインを見逃さず、健康な皮膚を守りましょう。
基底細胞癌はもっとも多い皮膚がんで、進行はゆっくりですが放置すると広がります。治療すれば予後は良好なので、早く気づくことが何より大切です。
「長引く皮膚トラブル」「形が変わってきたホクロやシミ」など、小さな異変を見逃さずに皮膚科で相談してみましょう。日常的な紫外線対策とセルフチェックが、健康な皮膚を守る第一歩です。














