もしも巻き爪(親指)になった時は【医師監修】

親指の巻き爪

巻き爪は爪の端の部分が内側深くに入り込んだ状態です。 その発症原因としては、生まれつきの先天性である場合、足の指の筋力が健常よりも脆弱であるなどが挙げられます。
今回は、巻き爪とはどのような病気か、その原因、症状、治療などを中心に解説します。

巻き爪とはどのような病気か

皆様は、「巻き爪」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

もし、あなたが足の爪がふとした瞬間に変化している、あるいは知らぬ間に足の指に痛みを覚えるなどの症状を自覚した時にどのような病気になっているか気になりますね。

「巻き爪」という言葉は日常的に多くの方が使用されていますが、爪が単純に巻いているというだけでは一般的には患部に強い痛みを自覚しません。

爪のまわりの辺縁部分がその横に位置する皮膚(爪郭と呼ばれる部位)にもぐり込んで、爪の組織自体が周辺皮膚部を強く圧迫しだすと特に強度の痛みが生じることになります。さらに、段々と症状がひどくなり放置すると、爪が物理的にあたっている皮膚の周囲部分から自然とは異なる不良な肉芽組織が形成されて、その後に指が変形することもあります。

巻き爪は、通常であれば5本の足の指の中で外的な物理力が掛かりやすい第1趾爪(親指爪)に多く発症すると言われていますが、他の指趾にも認められることもあります。

本疾患では、日常におけるセルフケアに前向きに取り組む事で指の痛みを軽減させることが可能であり、普段から正しい歩き方や理想的な靴選びを心がけると良いでしょう。

巻き爪は、爪の端の部分が内側方向へ巻き込まれて周囲の爪の下に該当する部位や周りの皮膚組織を損傷しやすく、同時に細菌が侵入して患部に感染を引き起こして強い炎症を起こし爪囲炎を合併することもあります。

また、類似した病気として、爪の端の部分がその周辺の皮膚部位に局所的に刺さって刺激を起こして炎症状態に陥る「陥入爪」が知られており、巻き爪とは一般的に区別されて認識されています。

陥入爪は、巻き爪の有無に関わらず起こることが知られており、時には巻き爪と陥入爪が合併して引き起こされることもあわせて想定されており、そのようなケースではフェノール法という治療策が適応になることが指摘されています。

巻き爪が出来る原因

巻き爪が引き起こされる原因としてはこれまでの研究で色々なものが指摘されていますが、主たる原因のひとつは爪に加重される物理的外力のバランスが破綻する事と考えられています。

仮に、爪の部分が横の方向から圧迫される、あるいはその逆で爪が下のベクトル方向から受けるストレスが弱くなると、爪の端部分が内側にある皮膚や周囲組織の方向へ巻いていく動きに繋がります。

また、普段のセルフケアのなかで爪を切る際に爪を切り過ぎて深爪になる、もしくはその逆に爪を伸ばし過ぎて爪が巻かれていくことも可能性として想定されます。

特に、爪を短く切りすぎて深爪になってしまうと、爪の両端が皮膚に埋もれて歩行するたびに両側から皮膚に圧される結果、巻き爪が知らず知らずのうちに悪化すると指摘されていますので、足の爪は深爪にならないよう、切り過ぎないことを認識しておきましょう。

さらに、靴選びを誤ると巻き爪を助長することになります。特に、自分のサイズとまったく合っていないハイヒールやパンプスなど先端がシャープに細くなっている靴を日常的に履いていると爪が自然と圧迫されます。

また、その逆の場合として、ゆるいぶかぶかの大きすぎるサイズの靴では靴の中で足が前方に滑ってしまうことで爪を圧迫することになってしまいます。

したがって、自分の足のサイズに適したシューズを選ぶことによって、巻き爪のみならず骨格変形、靴ずれ、ウオノメなどを始めとする皮膚のトラブルを回避することが出来ると考えられます。

そして、体重の過剰な肥満体形の方が激しい運動などを実施する際には足への負担が多大となり、自然と爪にも強度の圧がかかって巻き爪を発症させることが懸念されます。

あるいは、爪白癬という病気にかかり、爪の部分が組織的に肥厚して変形が起こることに伴って巻き爪が悪化することも考慮されていますので、変形爪を診た際には白癬と呼ばれる真菌に感染しているかどうかを同時に調べることも往々にしてあります。

巻き爪の症状

巻き爪の初期症状としては、足のつま先先端部分の炎症による疼痛、あるいは発赤(赤みを帯びる)所見が認められ、足を踏ん張る、もしくは歩行するたびに特に高度肥満の方では重い体重負荷がかかって患部に激痛を呈することも経験されます。

患部に炎症反応が引き起こされると、自然にその患部の組織は浮腫と呼ばれるむくみを呈することで次第に爪の食い込みが余計に悪化するという悪循環に陥ることになりますし、爪の横の部分に該当する皮膚組織に不良肉芽を形成して疼痛を助長させます。

さらに、炎症が重篤化すると足先の患部が化膿して、皮膚発赤の変化のみならず、腫れあがって膿が排出されることがあり苦痛を覚えることに繋がります。 

巻き爪の治療

靴のつま先部分が鋭く狭小化するような形のシューズを履く際には、特に足の第1趾(母趾)と第5趾(小趾)の両方のサイドから強い外的圧力がかかることによって、巻き爪になってしまうので、できるだけ自分に合った靴を履くように心がけましょう。

巻き爪になった際には、まずは医療機関では変形した爪がその周辺組織に悪影響を与えないことを目的として患部にテーピングを巻くことで爪と皮膚にスペースを作ります。それと同時に、鑷子などを用いて爪の創縁部に綿球を充填して爪自体が皮膚に食い込み痛みが発生するのを抑える工夫を講じます。

また、細菌による感染所見を合併しているケースでは、抗生物質の内服およびステロイド軟こうや抗菌薬含有入りクリームの外用療法を実施しますし、爪白癬に陥っている場合には真菌に対して有効的に働く薬物治療を併用することもあります。

そして、外科的な手術介入によって巻き爪の状態を改善することを期待した治療方法としてフェノール法が知られております。

この治療策では、爪が皮膚に深く刺さっている該当部位を切除して、同部からフェノールという薬品を塗布することによって再度将来的に爪が生えないように処置します。

一方で、フェノール法のデメリットとしては足先にかけて血流不全や虚血症状があって下肢動脈に障害を認める場合には、フェノールの使用はできずに本治療を受けることができないのが難点と言えます。

その他、プレート法と呼ばれる形状記憶式のメタリック金属を患部における爪の部分に貼り付けて矯正する方法や、爪が陥入している部位にプラスチックの管を挿入して爪と皮膚の間に緩衝材を設ける治療手段も挙げられます。 

まとめ

巻き爪は、爪が彎曲してその周辺部に位置する皮膚に食い込んでいる状態を指します。

基本的には、足の親指である第1趾の爪によくみられることが知られており、深爪、あるいは適切ではない靴の選択、爪白癬などを中心として様々な原因で引き起こされます。

本疾患では、患部に炎症を起こして感染すると強い痛みを伴って歩行困難になりますので、早期的に専門医療機関を受診して確実な治療を行うことが求められます。

もし仮に自分が巻き爪かなと思われた人は、その状態を確認するために一度形成外科受診を検討しましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


【参考文献】

記事の監修者

ヒロクリニック 岡博史 先生

ヒロクリニック 岡博史 先生

“医療にITを組み合わせることで常に時代にアンテナをはり、
医療の可能性を最大限に広げ、新しい医療サービスの提供に取り組んでいます。”

経歴

1996 慶應義塾大学医学部 卒業             
2002 慶応義塾大学病院 皮膚科            
2008 ヒロ皮フ形成クリニック(H27年8月ヒロクリニックへ名称変更) 開院・院長就任
2010 医療法人社団福美会 設立・理事長就任
2011 株式会社Hiro Japan 設立・取締役就任(兼任)

資格

1996 医師免許取得
2003 皮膚科専門医 取得
2017 産業医 取得

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