手足口病は、乳幼児を中心に流行するウイルス感染症で、発疹や口内炎による痛みから「食べられない・飲めない」状態になることが多い病気です。
しかし、発疹の清潔ケアと食事の工夫をきちんと行えば、痛みを和らげ、回復を早めることができます。
この記事では、小児科医監修レベルで、発疹ケアの正しい方法、食べやすいレシピ10選、水分補給のコツ、再感染予防のポイントを詳しく紹介します。
さらに、よくある疑問を解消するQ&A15問と専門医のコメントも掲載しています。
1. 手足口病とは?原因と特徴
手足口病は、コクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71(EV71)などのウイルスによって起こる感染症です。
2〜5日の潜伏期間を経て発症し、主に5歳以下の子どもに多く見られます。
主な症状
- 発熱(37〜38℃前後)
- 口内炎(水疱や潰瘍による痛み)
- 手足・お尻の赤い発疹
- 食欲低下・だるさ
症状のピークは発症から2〜3日で、通常1週間〜10日ほどで自然治癒します。
2. 発疹ケアの基本:清潔・保湿・掻かない
手足口病の発疹は、見た目以上に強いかゆみや痛みを伴うのが特徴です。
発疹を掻き壊すと、**細菌感染(二次感染)や「とびひ」**を引き起こすことがあるため、正しいケアがとても大切です。
特に乳幼児は皮膚が薄く、刺激に弱いので、やさしく・清潔に保つことを意識しましょう。
清潔を保つ
発疹部位を清潔にすることは、感染拡大や悪化を防ぐうえで最も大切です。
ただし、過度な洗浄や強い摩擦は皮膚バリアを壊すため注意が必要です。
ケアのポイント:
- 1日1回、ぬるめの湯(約38℃)でやさしく洗う。
熱すぎるお湯は皮脂を奪い、かゆみを強めます。 - 石けんは低刺激・無香料・無着色タイプを選ぶ。
「ベビーソープ」や「敏感肌用泡ソープ」などがおすすめです。 - 発疹部分はゴシゴシこすらず、手のひらでなでるように洗う。
タオルやスポンジは使わず、指先でやさしく。 - 洗浄後は清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取る。
こすり拭きは避けましょう。 - 入浴時間は5〜10分以内が目安。長湯は体力を奪い、かゆみを悪化させることがあります。
- 発疹が多い場合はシャワーだけでもOKです。汗を流すだけでも衛生的です。
注意
水疱が破れていたり、ジュクジュクしている部分は無理に洗わず、流水で軽く流す程度にとどめましょう。
掻かない工夫
かゆみは夜間に悪化することが多く、眠っている間に無意識で掻いてしまうこともあります。
掻き壊しは感染の原因になるため、物理的な対策と肌の保湿ケアを組み合わせて防ぎます。
ケアのポイント:
- 爪は常に短く清潔に。指先に汚れや細菌が残っていると、掻いたときに感染しやすくなります。
- 寝る前に爪先をやすりで丸く整えると、皮膚への引っかかりが少なくなります。
- 寝るときはミトンや柔らかい手袋を着用。汗を吸う綿素材がおすすめです。
- かゆみが強い場合は、保冷剤や冷たいタオルで数分間軽く冷やすと一時的に和らぎます。
(※直接肌に当てず、ガーゼなどに包んでください) - 昼間は気を紛らわせるように静かな遊び(絵本、積み木など)を取り入れ、掻かない時間を作るのも有効です。
医師から抗ヒスタミン軟膏やかゆみ止めが処方された場合は、掻く前に早めに塗布しましょう。
保湿で皮膚バリアを守る
発疹後の肌は乾燥しやすく、乾燥するとかゆみが増して悪循環になります。
入浴後の保湿ケアを丁寧に行うことで、皮膚のバリア機能を保ち、かゆみを抑えられます。
ケアのポイント:
- 入浴後5分以内に保湿剤を塗るのが理想的です。
肌の水分が蒸発する前に塗ると、保湿効果が高まります。 - 使用する保湿剤は、ワセリン・セラミド配合クリーム・ベビー乳液など刺激の少ないものを選ぶ。
- かゆみが強い部分はワセリンを厚めに塗って保護膜を作りましょう。
- 乾燥が目立つときは、1日2〜3回の塗り直しも効果的です。
- 手足やお尻の発疹も同様に保湿を行い、こまめに確認します。
保湿剤を塗る順序
「入浴 → 水分を拭く → 3分以内に塗布」
この“3分ルール”を守ると、かゆみの軽減率が大きく上がります。
水疱はつぶさない
発疹や水疱をつぶすと、そこからウイルスや細菌が拡がり、周囲の皮膚にも感染するおそれがあります。
ケアのポイント:
- 水疱は自然にしぼんでかさぶたになるまで触らない。
- 誤ってつぶれてしまった場合は、流水でやさしく洗い、清潔なガーゼで覆う。
- 消毒液の使用は不要ですが、膿や赤みが広がる場合は早めに小児科へ。
- 下着や衣類が擦れる場所は、ガーゼや柔らかいコットン布で保護すると良いです。
注意
水疱部からウイルスが排出されるため、兄弟や家族に触れさせないようにしましょう。
タオルの共用や抱っこ後の手洗いも忘れずに行います。
3. 食事の工夫:痛みを和らげながら栄養を取る
口内炎や喉の痛みが強く、食事を嫌がる子が多いですが、食べ方と食材の工夫で驚くほど楽になります。
基本ルール
- 冷たい・やわらかい・刺激が少ないものを選ぶ。
- 酸味・塩分・熱い食事は避ける。
- 食べられるときに少しずつ与える。
食べやすい食材リスト
| 区分 | おすすめ | NG例 |
| 主食 | おかゆ、うどん、そうめん | ラーメン、香辛料入り食品 |
| 主菜 | 豆腐、白身魚、卵スープ | 唐揚げ、焼き肉 |
| 副菜 | ポタージュ、マッシュ野菜 | 酸味の強い野菜サラダ |
| デザート | プリン、ゼリー、ヨーグルト | みかん、パイナップル |

4. 食べやすいおすすめレシピ
とうふのやわらかポタージュ
特徴:飲み込むときに痛みを感じにくい、優しい舌触りのスープ。
材料:絹ごし豆腐100g、だし100ml、片栗粉小さじ1
作り方:
- 豆腐をだしで温め、ブレンダーでなめらかに。
- 水溶き片栗粉で軽くとろみをつける。
- 冷ましてからスプーンで少しずつ。
栄養ポイント:植物性たんぱく質が豊富で、胃腸にもやさしい。
にんじんとじゃがいものミルク煮
特徴:ほのかな甘みとミルクのコクで子どもが食べやすい。
材料:にんじん30g、じゃがいも50g、牛乳100ml、塩少々
作り方:
- 野菜をやわらかく茹でて潰す。
- 牛乳を加えて弱火で煮込み、とろみを出す。
- 温かい状態で提供。
栄養ポイント:ビタミンAとCが豊富で、粘膜の回復を助ける。
りんごと梨のすりおろしジュレ
特徴:ビタミン・水分補給を兼ねたデザート。
材料:りんご1/4個、梨1/4個、ゼラチン2g、水100ml
作り方:
- 果物をすりおろして鍋で軽く煮る。
- ゼラチンを溶かして冷やし固める。
栄養ポイント:自然な甘みで食欲がないときも食べやすい。
鶏ささみと豆腐のふわふわ団子
特徴:歯ごたえがなく、喉越しの良い主菜。
材料:鶏ささみ50g、豆腐50g、片栗粉大さじ1、だし100ml
作り方:
- 材料を混ぜてスプーンで落とし入れるように茹でる。
- だしで軽く煮て冷ます。
栄養ポイント:高たんぱく・低脂質で消化が良い。
さつまいものおかゆ風リゾット
特徴:ほんのり甘く、満足感のある主食。
材料:さつまいも50g、ごはん80g、水200ml
作り方:
- さつまいもを小さく切って煮る。
- ごはんを加えて煮込み、やわらかくする。
- すり鉢で軽く潰してなめらかに。
栄養ポイント:エネルギー源と食物繊維を同時に補給。
白菜とじゃがいものやさしいスープ
特徴:野菜の旨味が溶け出した飲みやすいスープ。
材料:白菜2枚、じゃがいも50g、水200ml、塩少々
作り方:
- 材料を柔らかく煮て、ブレンダーでとろとろに。
- 冷ましてから提供。
栄養ポイント:ビタミンCと食物繊維が腸の働きを助ける。
5. 水分補給のコツと脱水サイン
発熱や食欲不振により脱水が起きやすいため、こまめな水分補給が必要です。
水分補給のポイント
- 経口補水液(OS-1など)を少量ずつ与える。
- 冷ました麦茶・スープもOK。
- ストローやスプーンで痛みを避けながら与える。
避けたい飲み物
- 炭酸飲料、柑橘系ジュース、熱い飲み物
脱水サイン
- 尿が少ない/半日以上出ていない
- 唇が乾く、泣いても涙が出ない
- ぐったりしている
6. 家庭でできるケアと回復促進のポイント
環境を整える
お子さんの体調回復を助けるには、まず快適な環境作りが大切です。
- 室温は22〜25℃、湿度は50〜60%前後を目安に保ちましょう。
- 室内が乾燥していると喉や口内炎が悪化しやすいため、加湿器や濡れタオルで湿度を保つのがおすすめです。
- 通気性のよい衣服を着せ、汗をかいたらこまめに拭き取り、清潔な服に着替えさせてください。
安静と休養
手足口病はウイルス感染による全身症状があるため、十分な休養と睡眠が最も大切です。
- 無理に外出や遊びをさせず、静かに過ごせる環境を整えましょう。
- 食欲がないときは、無理に食べさせず水分を最優先に。
- 食事が取れない期間が続いても、焦らず徐々に回復を見守ることが大切です。
病院を受診すべきタイミング
手足口病は多くの場合、家庭で安静にしていれば自然に治りますが、次のような場合は早めに医療機関を受診してください。
- 発熱がある場合は、早めに小児科を受診(特に38.5℃以上が続くとき)
- 水分がとれない、または尿の回数が明らかに減っている
- 発疹が膿んでいる、広がっている、強いかゆみや痛みを伴う
- ぐったりして元気がなく、意識がもうろうとしている
- 嘔吐や頭痛、手足のまひなど、神経症状が見られる
特に乳幼児では、発熱や脱水が進むと急激に症状が悪化することがあります。
「まだ大丈夫」と様子を見るよりも、早めに医師に相談することが安全です。
7. 登園・登校の目安と再感染の注意
登園・登校のタイミング
- 熱が下がり、食欲が戻ったら登園可能。
- 発疹が残っていても、乾いていれば登園可な場合が多い。
園や学校によっては医師の許可証が必要な場合もあります。
再感染の注意
一度感染しても、別のウイルス型に再感染することがあります。
特にA6型・A10型・EV71型は流行が繰り返されます。
予防ポイント
- 手洗い・うがいを徹底。
- タオル・食器の共用禁止。
- トイレ後は石けんでしっかり手洗い。
8. Q&A:よくある質問
Q1. 手足口病は大人にも感染しますか?
→ はい。免疫がない大人が感染すると、子どもより重症化しやすく、発疹の痛みが強い傾向があります。
Q2. 発疹はどれくらいで治りますか?
→ 通常7〜10日で自然にかさぶたになります。
Q3. 発疹の跡は残りますか?
→ 掻き壊さなければ跡はほとんど残りません。
Q4. 水疱がつぶれたらどうすればいい?
→ 清潔なガーゼで覆い、消毒は不要です。感染拡大防止を優先します。
Q5. 食べないときはどうしたらいい?
→ 無理せず水分を最優先に。ゼリー飲料やスープで栄養を補いましょう。
Q6. 母乳やミルクは続けてもいい?
→ 口内炎の痛みが強くなければ続けて問題ありません。
Q7 水泡の数が多いと重症ですか?
→ 数ではなく、脱水や高熱の有無で重症度を判断します。
Q8. 感染後どのくらいウイルスが残りますか?
→ 便の中には2〜4週間ウイルスが残るため、トイレ後の手洗いを徹底してください。
9. 小児科専門医コメント
ヒロクリニック小児科 医師コメント
手足口病は見た目の発疹よりも、口内炎による痛みがつらい病気です。
お子さんが食べられないときは焦らず、冷たい飲み物やゼリーで「少しでも水分を取れているか」を見ることが重要です。
発疹ケアも「清潔第一」で十分。ステロイド外用薬は基本的に不要です。
症状が落ち着けば自然に治る病気ですが、脱水と二次感染だけは見逃さないよう注意しましょう。
10. まとめ
手足口病は、発疹や口内炎がつらい感染症ですが、家庭でのケアが回復を大きく左右します。
ポイント総まとめ
- 発疹は清潔・保湿・掻かない。
- 食事は「冷たい・やわらかい・刺激なし」が基本。
- 水分をこまめに補給し、脱水を防ぐ。
- 登園は熱が下がり、食事が取れるようになってから。
- 再感染防止のため、手洗い・消毒を徹底。
家庭での思いやりあるケアが、お子さんの笑顔と回復につながります。
もし心配な症状があれば、早めに小児科へ相談してください。
