子どもの手足口病 泣き止まない…口内炎の痛みへの水分補給と対症療法

2025.10.17

手足口病は、夏を中心に乳幼児に流行するウイルス性疾患です。特に厄介なのが、口内炎による強い痛み。食事どころか、水分すら摂れずに泣き止まないお子さんの姿に、親御さんも心を痛めてしまうことでしょう。本記事では、そんなつらい時期を少しでも楽に乗り越えるために、口内炎による痛みへの具体的な対処法と、水分補給の工夫について、小児科の視点からわかりやすく解説します。

1. 手足口病とは?原因と症状の基礎知識

手足口病は、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどが原因となるウイルス性疾患です。生後6か月頃から小学校低学年までの子どもに多くみられ、毎年夏に流行のピークを迎えます。

主な症状

  • 口内炎(口の中の潰瘍)
  • 手のひらや足の裏に小さな水疱性発疹
  • 軽度の発熱
  • 食欲不振や機嫌不良

口腔内にできる潰瘍が非常に痛く、水分補給も困難になるため、脱水症状を起こすリスクがあります。発疹や発熱が軽度でも、口内炎による不快感が強く、夜泣きや不機嫌が長引くことがよくあります。

2. なぜ子どもは泣き止まない?口内炎の痛みの特徴

手足口病で最もつらい症状の一つが「口内炎」です。特に乳幼児では、この痛みによって水分や食事が取れなくなり、昼夜問わず泣き続けてしまうことがあります。

● 口内炎の発生メカニズムと部位

手足口病の原因ウイルスは、口腔内の粘膜にも感染し、粘膜が壊されることで小さな潰瘍(びらん)ができます。これが「アフタ」と呼ばれるもので、直径は1〜3mm程度ながら、非常に強い痛みを伴います。できやすい部位は次のとおりです。

  • 舌の側面や先端
  • 頬の内側
  • 上あごの裏側(硬口蓋)
  • 喉の奥
  • 唇の裏側

特に舌や上あご、喉奥に潰瘍ができると、水や食べ物を口に入れた瞬間に「ビリッ」としみるような痛みを感じるため、摂取を拒否しがちになります。

● 言葉で痛みを説明できない幼児期

2歳未満の子どもは「ここが痛い」「しみる」といった言語表現ができません。そのため、痛みや不快感をすべて「泣く」「ぐずる」といった行動で表現します。痛みで食べられない・飲めない → 空腹や脱水でさらに不快 → より泣く、という悪循環に陥るケースも多くあります。

また、眠りが浅くなったり、夜泣きが増えたりするのも、口腔内の違和感や唾液の増加が関係しています。特に夜間は唾液の流れが減少するため、潰瘍部位に刺激が長時間加わることになり、痛みが強く出やすいのです。

● 親が見落としがちなポイント

小さな潰瘍は見た目に目立たず、「口の中を見ても異常がない」と思ってしまうこともあります。しかし、口をあけた瞬間に泣いて暴れてしまうのは、口内炎の痛みのサインかもしれません。無理に見ようとせず、症状から総合的に判断しましょう。

3. 水分補給が困難なときの工夫とポイント

口内炎がつらくなると、食べ物どころか水分も拒否してしまうケースが少なくありません。しかし、発熱や汗による水分喪失がある中で、水分が摂れない状態が続くと「脱水症状」に陥ってしまいます。これは命に関わることもあるため、適切な水分補給の工夫が不可欠です。

● 脱水のサインを見逃さない

まず、以下のような脱水症状が見られたら要注意です。

  • 6時間以上、尿が出ていない
  • 口の中が乾いている
  • 泣いても涙が出ない
  • 唇がカサカサ、乾燥
  • ぐったりして元気がない
  • 手足が冷たい

このような症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。

● 飲みやすい飲み物の選び方

痛みが強いときは、できるだけ刺激の少ない飲料を少量ずつ摂取するのが基本です。

飲み物の種類特徴
麦茶(冷たい)カフェインなし・刺激少なめ
経口補水液(OS-1など)脱水リスクが高いときに最適
白湯(ぬるめ)刺激を抑えつつ、身体にやさしい
薄めたイオン飲料味が濃い場合は2〜3倍に薄める
果汁ゼリーを凍らせたもの舐めることで口腔内が冷やされる

甘味料が強い清涼飲料水や柑橘系ジュースは、逆にしみる原因になるため避けましょう。

● 飲ませ方の工夫

  • スプーン1杯ずつ与える:赤ちゃんには特に有効
  • ストローで吸わせる:のど奥へ直接運べてしみにくい
  • スポイトやシリンジ(注射器型)で少しずつ口に入れる:口内炎を避けて飲ませるのに便利
  • 冷やして与える:痛みが強いときは常温よりも冷たい方がマイルドに感じる

子どもの様子に応じて、無理のない方法を選びましょう。少しでも口にできたらしっかり褒めて、安心感を与えることも重要です。

水

4. 家庭でできる対症療法の基本と応用

手足口病は基本的に自然治癒する病気ですが、症状がつらい間は「いかに痛みや不快感を和らげてあげるか」が家庭での重要なケアポイントになります。

● 解熱鎮痛剤の使用について

子どもが熱や痛みでぐったりしている場合は、解熱鎮痛剤の使用が推奨されます。日本で一般的に使用されるのは以下の薬です。

  • アセトアミノフェン(市販名:カロナールなど)
    • 発熱や口内炎の痛みに有効
    • 体重に応じた適切な量を使用する
    • 解熱目的だけでなく、「眠れるようにしてあげる」ために使うケースも多い

※解熱剤は使いすぎると体力を消耗しやすくなるため、医師の指示に従って使うことが大切です。

● 食事の工夫とレシピ例

痛みで咀嚼や嚥下が困難な時期は、「しみない」「冷たい」「やわらかい」ことを重視します。

食事例調理ポイント
おかゆ塩分を控え、なめらかに仕上げる
冷製ポタージュじゃがいも、かぼちゃベースが人気
ヨーグルトプレーンタイプ+少量はちみつ(1歳以上)
冷たいプリンやゼリー手作りなら甘さ・固さを調整できる
冷奴(豆腐)そのままスプーンでつぶして食べさせる

※熱いものや塩気が強い料理、揚げ物などは避けましょう。

● 口の中を清潔に保つケア

  • 歯磨きは無理せず休止してOK
  • 濡らしたガーゼで口角や唇を軽く拭う
  • 口臭が気になるときは、水分摂取を意識
  • うがいができる子なら、「ぬるま湯うがい」が有効

口内炎が悪化しないよう、刺激を避けながら口腔内を清潔に保ちましょう。

● 睡眠環境の整備

夜間の痛み・不快感で眠れない子どもには、以下のような配慮が有効です。

  • 室温・湿度を快適に(温度24℃前後・湿度50〜60%)
  • 寝る前に少量の冷たい水を飲ませる
  • アセトアミノフェンを使用するタイミングを就寝前に合わせる
  • 添い寝で安心感を与える

「夜にしっかり休むこと」が免疫回復に大きく貢献します。

5. 受診の目安と医療機関での対応について

通常の手足口病は数日で自然に回復しますが、以下のような場合は必ず受診しましょう。

受診の目安

  • 高熱が3日以上続く
  • 水分がほとんど摂れない(尿が12時間以上出ていない)
  • 嘔吐やぐったりがある
  • 意識がもうろうとしている
  • 発疹の数が急激に増えた、または変化してきた

医療機関で行われる対応

  • 診察と経過観察
  • 必要に応じた解熱剤処方
  • 点滴などの脱水補正(水分摂取が難しい場合)

6. 再感染・周囲への感染予防のポイント

手足口病はウイルスが複数存在するため、一度かかっても再感染の可能性があります。家庭内での感染予防もしっかり行いましょう。

感染経路

  • 飛沫感染(くしゃみ、咳)
  • 接触感染(おもちゃ、ドアノブなど)
  • 糞口感染(おむつやトイレ)

予防法

  • 手洗いを徹底(特におむつ交換後)
  • おもちゃの消毒
  • タオルは共用しない
  • 登園は症状が落ち着いてから(医師と相談)

7. Q&A:よくある質問とその回答

Q1. 食事が一切とれません。病院に行くべき?
→水分がまったく摂れず、尿が出ていない場合はすぐに受診を。食事が取れなくても水分が摂れていれば様子見でもOKです。

Q2. 他の兄弟にうつりますか?
→うつる可能性は十分あります。感染力が高いため、兄弟間でも予防対策を徹底してください。

Q3. 何日くらいでよくなりますか?
→軽症であれば3〜5日、重症でも1週間ほどで自然に回復するケースが多いです。

Q4. お風呂に入ってもいいですか?
→発熱がなく、元気があれば入浴OK。ただし発疹をこすらないように注意しましょう。

Q5. 保育園にはいつから行けますか?
→口内炎や発疹などの症状が改善し、食事・水分がとれるようになったタイミングが目安。医師の診断に従いましょう。

8. まとめ:痛みをやわらげ、安心して回復を待つために

手足口病は見た目以上につらく、特に口内炎の痛みによって泣き止まない子どもを前にすると、親御さんも不安になります。しかし、正しい水分補給の方法や家庭での対症療法を知っていれば、安心して見守ることができます。

最も大切なのは「脱水を防ぐこと」。そして、痛みでつらいときこそ、無理に食べさせようとせず、「食べられるものを少しでも」「飲めるものを少しずつ」という視点でケアしていくことです。

必要なときには医療機関の力も借りながら、子どもが一日も早く元気を取り戻すよう、やさしく見守っていきましょう。