「おたふくかぜって子どもがかかる病気でしょ?」
そう思っている方も多いかもしれません。しかし、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、発熱や耳の下の腫れだけでなく、髄膜炎・難聴・不妊症などの合併症を起こすことがある感染症です。
これらを予防するために開発されたのが「おたふくかぜワクチン」。任意接種ではありますが、小児科学会をはじめ多くの医療機関で接種が推奨されています。
本記事では、おたふくかぜの基礎知識・ワクチンの効果・推奨される接種時期・副反応や注意点について、やさしく詳しく解説します。
おたふくかぜとは?どんな病気?
ウイルスによる感染症
おたふくかぜは「ムンプスウイルス」というウイルスによって起こる感染症です。主に飛沫感染や接触感染で広がり、潜伏期間は約2〜3週間。
発症すると、**耳の下(耳下腺)やあごの下(顎下腺)**が腫れて痛みが出ます。腫れは片側だけのこともあれば、両側に及ぶこともあります。
主な症状
- 38〜39℃の発熱
- 耳下腺・顎下腺の腫れと痛み
- 食事や会話時の痛み
- 倦怠感や頭痛
発熱と腫れは3〜7日で落ち着きますが、合併症を起こすこともあり、注意が必要です。
合併症に注意:おたふくかぜの怖さ
おたふくかぜは多くの場合自然に治りますが、合併症が起こると長期的な後遺症を残すこともあります。
主な合併症
| 合併症名 | 主な症状 | 頻度・特徴 |
| 無菌性髄膜炎 | 発熱・嘔吐・頭痛・首のこわばり | 約1〜10%に発症 |
| 難聴 | 片耳の感音性難聴(治らない場合あり) | 約1,000人に1人 |
| 精巣炎(男児・思春期以降) | 高熱・陰嚢の腫れ・痛み | 思春期以降で多い |
| 卵巣炎(女児・女性) | 下腹部痛・発熱 | 稀だが成人女性で発症あり |
| 膵炎 | 上腹部痛・嘔吐 | 稀に発症 |
特にムンプス難聴は一度発症すると回復しないことが多く、予防接種による予防が非常に重要です。
ワクチンで防げるおたふくかぜの合併症
ワクチンの仕組み
おたふくかぜワクチンは生ワクチン(弱毒化されたウイルス)です。
接種することで体がウイルスに対する抗体を作り、感染しても重症化しにくくなります。
効果と持続期間
- 1回の接種で約80%が免疫を獲得
- 2回接種で約95%が長期間の免疫を維持
ワクチンを受けた人が感染しても、軽症で済むことが多く、耳下腺炎の腫れや高熱の期間も短くなります。
おたふくかぜワクチンの接種時期と回数
推奨される接種時期
日本小児科学会では、以下のように2回接種を推奨しています。
| 回数 | 推奨年齢 | 接種間隔 |
| 1回目 | 1歳(MRワクチン・水痘ワクチンと同時期) | – |
| 2回目 | 小学校入学前(5〜6歳頃) | 1回目から5年以上あけるのが目安 |
※自治体によっては助成制度があるため、かかりつけ医や市町村の情報を確認しましょう。
おたふくかぜワクチンは任意接種?それでも必要な理由
定期接種ではない現状
おたふくかぜワクチンは現在、日本では任意接種(自己負担)です。
しかし、感染による合併症の重さや集団感染リスクから、医師会や小児科学会では定期接種化を強く推奨しています。
任意接種でも受けておきたい理由
- 自然感染では合併症のリスクが高い
- ワクチン接種で重症化を大幅に防げる
- 家族・保育園・学校などでの集団感染を予防
- 思春期以降の精巣炎や不妊症リスクを軽減
おたふくかぜは流行周期が3〜5年で、毎年数万人が感染しています。
軽視されがちな病気ですが、予防の価値は非常に高いといえます。

副反応と安全性:気になるポイントを解説
主な副反応
| 症状 | 発生時期 | 頻度 |
| 発熱・耳下腺の腫れ | 接種後1〜3週間 | 約5〜10% |
| 発疹・倦怠感 | 接種後数日 | まれ |
| 無菌性髄膜炎様症状 | 接種後3週間前後 | 約1万〜10万接種に1例程度 |
以前は副反応の報告が問題視された時期もありましたが、現在の製品は改良され、安全性が確立しています。
ワクチン後の対応
発熱や腫れが出た場合は、無理せず安静にし、十分な水分をとりましょう。
高熱や強い頭痛などが続く場合は、早めに医療機関へ相談を。
自然感染とワクチン接種の違い
| 比較項目 | 自然感染 | ワクチン接種 |
| 免疫の強さ | 強い(長期免疫) | 2回接種で同等レベル |
| 合併症のリスク | 高い(髄膜炎・難聴など) | きわめて低い |
| 感染拡大のリスク | あり(登園・登校禁止) | なし |
| 費用 | 医療費・休園対応が発生 | 任意接種(助成あり) |
自然感染を待つより、ワクチンで安全に免疫をつける方が、圧倒的に安心です。
接種できない・注意が必要なケース
以下のような場合は、接種を控えるか医師と相談が必要です。
- 明らかな発熱(37.5℃以上)があるとき
- 重い急性疾患にかかっているとき
- 以前ワクチンで重いアレルギー反応を起こしたことがある
- 妊娠中または妊娠の可能性がある場合
- 免疫不全やステロイド治療中の場合
接種可否は個々の体調によるため、かかりつけ小児科医の判断が大切です。
家族で守る「おたふくかぜ予防」
家族全員で意識を
おたふくかぜは、兄弟間・家庭内での感染が多い病気です。
特に小学生未満の兄弟がいる家庭では、家族全体での予防意識が重要です。
予防の基本
- ワクチン接種の記録を家族で共有
- 感染者との濃厚接触を避ける
- 手洗い・うがいを習慣化
- 免疫の有無を母子手帳で確認
感染を完全に防ぐことは難しいですが、**「家族の免疫バリア」**を築くことが最大の予防策になります。
まとめ:おたふくかぜワクチンは“打つ価値がある”ワクチン
おたふくかぜは「かかっても大丈夫」と誤解されがちですが、
実際には難聴・不妊・髄膜炎など、長く影響を残す合併症を起こす可能性があります。
ワクチン接種により、これらの合併症をほぼ完全に防ぐことが可能です。
1歳での初回接種、5〜6歳での2回目接種を忘れずに行いましょう。
小児科医としても、家族全員での予防接種を強くおすすめします。
安心して健やかに成長できるように、今できる予防を一歩ずつ進めていきましょう。
【まとめポイント】
- おたふくかぜは合併症が重い感染症
- ワクチン2回で95%以上の予防効果
- 任意接種でも推奨される理由は「重症化防止」
- 副反応は少なく、安全性は確立
- 家族で接種歴を確認し、予防意識を高めることが大切
