子どもが「水疱瘡(すいほうそう)」にかかると、発疹やかゆみでつらいだけでなく、「いつから登園してよいのか」「兄弟にうつるのでは」といった心配も尽きません。
水疱瘡はウイルス性の感染症で、感染力が非常に強く、家庭や保育園・幼稚園などで広がりやすい疾患です。この記事では、水疱瘡の症状の経過や治療法、家庭でのケアのポイント、そして登園再開の目安を小児科の観点から詳しく解説します。
1. 水疱瘡とは?原因と感染経路
水疱瘡(正式名称:水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。このウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、成人後に「帯状疱疹」として再発することがあります。
感染経路は主に以下の3つです。
- 飛沫感染:咳やくしゃみなどで空気中に拡散されたウイルスを吸い込むことで感染します。
- 空気感染:ウイルスは空気中を漂い、距離が離れていても感染する可能性があります。
- 接触感染:水疱の中の液に触れることで感染します。
感染力は非常に強く、発疹が出る2日前からすべての水疱がかさぶたになるまで感染させる可能性があります。そのため、保育園・幼稚園では早期の登園停止が必要です。
2. 水疱瘡の主な症状と経過
感染後、通常10〜21日間の潜伏期間を経て症状が現れます。典型的な経過は次の通りです。
① 発熱・全身倦怠感
発症初期には、微熱〜38℃程度の発熱や全身のだるさが見られます。発疹が出る1日ほど前から発熱することもあります。
② 発疹(水疱)の出現
体幹(おなか・背中)から顔・頭皮・四肢にかけて、赤い小さな発疹が出現し、数時間のうちに水ぶくれ(小さな水疱)になります。かゆみが強く、掻き壊すととびひ(二次感染)を起こすこともあるため注意が必要です。
③ 水疱の乾燥とかさぶた化
2〜3日経つと水疱が破れて乾燥し、かさぶたになります。新しい発疹が出なくなり、すべてがかさぶた化するまでが感染期間とされています。
④ 治癒までの目安
発疹が出てからおよそ7〜10日程度で治癒しますが、個人差があります。発疹が重度の場合や免疫力が低い場合は治癒まで2週間以上かかることもあります。
3. 登園できるのはいつから?保育園・学校での基準
水疱瘡(水痘)は感染力が非常に強いため、保育園や幼稚園・学校などの集団生活では登園・登校のタイミングがとても重要です。
症状が落ち着いていても、まだウイルスを排出している時期に登園してしまうと、他の園児や児童に感染を広げてしまう可能性があります。
ここでは、法律上の出席停止期間、再登園の目安、医師の判断基準を詳しく解説します。
1. 学校保健安全法による出席停止の基準
文部科学省が定める「学校保健安全法施行規則(第19条)」では、水疱瘡は第2種感染症に分類されています。
第2種感染症とは、学校や園などの集団生活で容易に感染が拡がるおそれのある疾患を指します。
この法律では、登校・登園再開の基準を次のように定めています。
「すべての発疹がかさぶたになるまで出席停止とする」
つまり、発疹がまだ水疱や膿疱の状態にある間は登園できません。
見た目が乾いていても、一部にまだ水泡が残っている場合は感染力が残っている可能性があるため注意が必要です。
2. 登園・登校再開の目安時期
水疱瘡の経過は個人差がありますが、おおよそ次のような目安で再登園が可能になります。
| 経過日数 | 状態 | 登園の可否 |
| 発疹出現から1〜3日目 | 新しい発疹が次々出る/発熱あり | 登園不可 |
| 発疹出現から4〜6日目 | 水疱が乾き始めるが、一部に新しい発疹あり | 登園不可 |
| 発疹出現から7〜10日目 | すべての発疹がかさぶたに/熱が下がる | 登園可能(医師の許可があれば) |
一般的には、発疹が出てから7〜10日後が再登園の目安とされています。
ただし、症状の重さや免疫状態、体力の回復度によってはそれ以上かかることもあります。
3. 医師による登園許可の判断ポイント
再登園には、医師の診察・許可が必要な場合があります。
診察時に医師が確認する主なポイントは次の通りです。
- 発疹がすべてかさぶた化しているか
→ まだ一部に水泡が残っていないか確認します。 - 新しい発疹が出ていないか
→ 新しい発疹が出ている間はウイルスが体内で活発に増殖中。 - 発熱がないか
→ 平熱に戻ってから24時間以上経過していることが望ましい。 - 全身状態が安定しているか
→ 食欲、元気、睡眠のリズムが戻っているかを確認。
これらを満たしていれば、医師は「登園・登校可」と判断し、登園許可証(治癒証明書)を発行します。
4. 登園許可証(治癒証明書)について
保育園・幼稚園・学校では、感染症からの復帰時に「登園(登校)許可証」または「治癒証明書」を求められることがあります。
これは、他の子どもへの感染拡大を防ぐために、医師が治癒を確認した証明書です。
主な記載内容
- 子どもの氏名・生年月日
- 診断名(例:水痘)
- 発症日
- 登園(登校)可能日
- 医療機関名・医師の署名
発行のタイミング
診察時に「そろそろ治ったかな?」と思ったら、医療機関を受診して医師に確認してもらいましょう。
園や学校によっては書式が異なる場合があるため、事前に配布された書類やホームページで確認しておくとスムーズです。
5. 登園再開のチェックリスト
再登園前には、家庭で次のポイントを確認しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
| 🔹 発熱がない | 平熱に戻ってから24時間以上経過している |
| 🔹 すべての発疹がかさぶたに | 新しい発疹・水疱が出ていない |
| 🔹 食欲・元気が戻っている | 体調が安定している |
| 🔹 医師の許可を得ている | 治癒証明書を提出できる |
この4項目をすべて満たしていれば、再登園の準備が整っています。
6. 登園を急がないことの大切さ
家庭や園の事情で「早く登園させたい」と考える保護者も多いですが、完治前の登園は感染拡大の原因になるだけでなく、子どもの体調を悪化させることもあります。
体力が戻りきっていない状態で無理をすると、以下のようなリスクが生じます。
- 水疱の治りが遅れる
- 掻き壊しによる「とびひ(二次感染)」が悪化
- 発熱や倦怠感の再発
- 他の感染症(風邪・中耳炎など)にかかりやすくなる
特に園児はまだ免疫力が発達途中のため、十分に休ませることも治療の一部と考えましょう。
7. 登園後の注意点
登園再開後も、皮膚が完全に再生するまでには数日かかります。
そのため、次のような点に気をつけましょう。
- 汗をかいたらこまめに着替える(湿気でかゆみが再発することがある)
- かさぶたを無理に剥がさない(跡が残る原因に)
- 爪は短く保つ(掻き壊し防止)
- 担任の先生にも経過を伝える(かゆみや疲れがある場合に配慮してもらえる)
家庭では入浴を再開しても問題ありませんが、皮膚を強くこすらず、ぬるま湯で優しく洗うようにしましょう。
8. 家族や兄弟がいる場合の登園判断
兄弟姉妹のどちらかが水疱瘡にかかった場合、同居家族は感染していない限り高確率で感染します。
潜伏期間が約2週間あるため、上の子が登園を続けていても、数日後に下の子が発症するケースが非常に多く見られます。
そのため、園側には「家族内で水疱瘡が発生している」旨を伝えておくとよいでしょう。
園によっては、潜伏期間中の登園自粛を推奨する場合もあります。
9. ワクチン接種を受けている場合の登園目安
水痘ワクチンを2回接種している子どもが感染した場合は、「軽症水痘(breakthrough varicella)」と呼ばれます。
この場合、発疹が少なく、熱も出ないことが多いですが、感染力がゼロではありません。
そのため、ワクチン接種済みでも登園基準は同じです。
すべての発疹がかさぶたになってから再登園するようにしましょう。
登園再開は“かさぶた完成”が合図
水疱瘡は感染力が非常に強いため、発疹がすべてかさぶたになるまで登園不可が原則です。
おおむね発疹が出てから7〜10日で登園可能となりますが、医師の確認を受けてからが安心です。
焦らずに体調の回復を待ち、家庭でしっかり休ませることが再発防止にもつながります。
登園再開後も、皮膚の保湿・清潔を続け、跡を残さないよう丁寧なケアを心がけましょう。

4. 水疱瘡の治療法:抗ウイルス薬と対症療法
水疱瘡の治療は、症状を和らげる対症療法と、重症化を防ぐ抗ウイルス療法を中心に行います。
抗ウイルス薬
発症から48時間以内に内服を開始すると、症状の重症化を防げる可能性があります。
- 主な薬:アシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)
- 服用期間:5日間程度
重症例では点滴治療が行われることもあります。
かゆみや発熱への対応
- かゆみ:抗ヒスタミン薬やかゆみ止めローション(カチリなど)を使用
- 発熱:アセトアミノフェンなどの解熱剤を使用(イブプロフェンは避ける)
- 入浴:熱がなければ入浴可能。石けんは低刺激性のものを選びましょう。
5. 家庭でのケア:かゆみ・発疹・感染対策
① 掻かないように工夫する
掻き壊しによる感染(二次感染)を防ぐため、爪は短く切り、手袋やミトンを使用します。寝具は清潔に保ち、毎日交換が理想です。
② 清潔を保つ
ぬるま湯で短時間の入浴を行い、やさしく泡で洗います。発疹部分を強くこすらないよう注意してください。
③ 保湿と衣類
入浴後はワセリンなどで肌を保湿し、通気性の良い綿素材の衣類を選びましょう。
④ 感染拡大を防ぐ
兄弟がいる場合、別の部屋で過ごす・食器やタオルを分ける・換気をこまめに行うことが大切です。水疱の中には大量のウイルスが含まれているため、触れた物の消毒も忘れずに。
6. 水痘ワクチンによる予防
現在、水痘ワクチンは定期接種として生後12〜36か月未満の間に2回接種が推奨されています。
ワクチン接種により、感染しても軽症で済むことが多く、重症化を防ぐ効果があります。
ワクチン接種スケジュール
- 1回目:生後12〜15か月
- 2回目:1回目から6〜12か月後(3歳までに)
予防接種を受けていても感染する場合がありますが、発疹が少なく熱も軽度で済む「不顕性感染」が多くなります。
7. 合併症と注意すべき症状
通常の水疱瘡は自然に治癒しますが、まれに以下の合併症を起こすことがあります。
- とびひ(細菌感染):掻き壊しが原因で発疹部が化膿
- 肺炎:高熱・息苦しさ・咳が続く場合
- 脳炎:けいれん・意識障害などが出現した場合はすぐに受診
- 帯状疱疹:ウイルスが体内に潜伏し、後年に再発することがあります。
特に、免疫力が低下している子どもや乳児では重症化リスクが高いため、早めの受診が重要です。
8. 登園前のチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 |
| 発熱がない | 体温が平熱に戻っている |
| すべての発疹がかさぶたになった | 新しい発疹が出ていない |
| かゆみ・倦怠感が改善している | 元気があり食欲も戻っている |
| 医師の許可を得た | 登園許可証をもらった |
9. まとめ
水疱瘡はほとんどの子どもが一度は経験する感染症ですが、感染力が非常に強いため集団生活では注意が必要です。
登園再開の目安は、「すべての水疱がかさぶたになった時点」で、体調が良好であることが条件です。
家庭では、掻き壊しを防ぎ、清潔と保湿を心がけましょう。また、兄弟や家族への感染を防ぐため、タオル・衣類の共有を避け、こまめな換気・消毒を行うことが大切です。
定期接種としての水痘ワクチンも感染予防に大きく寄与します。予防・早期治療・正しいケアを意識して、安心して登園再開できるようサポートしましょう。
