手足口病は、子どもがかかりやすいウイルス感染症で、口の中に水ぶくれや潰瘍ができ、食事を取るのがつらくなる病気です。
発熱や喉の痛み、倦怠感などで食欲が落ちることも多く、「何を食べさせればいいの?」と悩む保護者は少なくありません。
しかし、回復には適切な水分補給と栄養摂取が欠かせません。
本記事では、手足口病にかかった子どもが食べやすい食事のポイントや、家庭でできる優しいレシピをまとめました。医師監修の情報をもとに、**「避けるべき食材」「調理の工夫」「回復期の栄養管理」**まで詳しく解説します。
1. 手足口病の症状と食欲が落ちる理由
手足口病は、コクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型などの感染で発症します。
口の中や喉、手足に水疱性の発疹ができるのが特徴で、特に口内炎のような潰瘍ができると、痛みで飲食が難しくなります。
- 発熱:38〜39℃の発熱が1〜2日続く
- 口内炎:舌や喉、頬の内側に潰瘍ができて痛む
- 発疹:手のひら・足の裏・口まわりなどに出る
- 倦怠感・食欲低下:痛みと発熱による全身のだるさ
特に幼児は「痛いから食べたくない」「飲みたくない」と拒否することも多く、脱水や低栄養のリスクが高まります。
そのため、「無理に食べさせる」よりも「少しずつ食べられる形に整える」ことが大切です。
2. 手足口病のときに避けたい食べ物
炎症を悪化させたり、痛みを強めたりする食べ物は控えましょう。
| 区分 | 避けたい食品 | 理由 |
| 酸味が強いもの | みかん、キウイ、トマト、酢の物 | 傷口を刺激して痛みを増す |
| 塩分・香辛料が強いもの | カレー、味噌汁、ポテトチップス | 炎症を悪化させやすい |
| 熱いもの | 熱いスープ、熱々のおかゆ | 熱刺激で口内炎が悪化する |
| 硬い食べ物 | パンの耳、生野菜、スナック類 | 口内を傷つけやすい |
| 炭酸飲料・果汁100%ジュース | 刺激が強く痛みを誘発 |
特に「酸っぱい」「しょっぱい」「熱い」「硬い」の4つは避けるのが基本です。
3. 痛みを和らげるための調理の工夫
痛みのある口内でも食べやすくするための調理ポイントは次の通りです。
柔らかく・小さく
野菜や肉はよく煮込んで柔らかくし、口の中でつぶせる程度にします。
味は薄め・優しい風味に
塩分や酸味を控え、出汁のうま味を活かします。
温度は「常温」または「やや冷たい」程度
冷やすことで痛みが軽くなりますが、冷たすぎると刺激になる場合も。
飲み込みやすくとろみをつける
とろみをつけたスープやゼリーは誤嚥防止にも役立ちます。
噛まずに食べられる形にする
おかゆ、スープ、プリンなど、スプーンでつぶせる柔らかさが目安です。
4. 回復を早める栄養バランスの考え方
手足口病では、エネルギーと栄養をバランスよく摂取することが重要です。
■ 糖質(エネルギー源)
ごはん、おかゆ、うどん、じゃがいも、バナナなど。
発熱や体力消耗を補う役割を果たします。
■ タンパク質(免疫力アップ)
豆腐、白身魚、卵、ヨーグルトなど。
体の修復と免疫力強化に役立ちます。
■ ビタミン・ミネラル(粘膜の回復)
かぼちゃ、にんじん、りんご、ほうれん草など。
皮膚や粘膜の修復をサポートします。
特に口の中の傷を治すには、ビタミンB2・B6・Cを含む食材(卵、豆乳、野菜)が効果的です。
手足口病のときの食事レシピ
すりおろしリンゴゼリー
材料:りんご1/2個、ゼラチン3g、水200ml
作り方:
- りんごをすりおろして鍋に入れ、水と一緒に軽く加熱。
- 火を止めてゼラチンを加えて溶かす。
- 冷やして固める。
→ やさしい甘さで、ビタミン補給に最適。痛みが強いときの定番。
とろとろ卵雑炊
材料:ご飯100g、卵1個、だし200ml、しょうゆ少々
作り方:
- ご飯をだしでやわらかく煮る。
- 溶き卵を流し入れてふんわり仕上げる。
- 味をうすく整えて適度に冷ます。
→ 飲み込みやすく、体力回復にもぴったり。
五分粥〜全粥に調整すると、痛みの程度に合わせやすいです。
→ 食べやすくてこぼれにくい。OS-1などで水分を補いつつ食べると◎
白身魚のとろみスープ煮
材料:たら1切れ、だし200ml、水溶き片栗粉少々
作り方:
- たらを煮て、骨を取り除いてほぐす。
- 片栗粉で軽くとろみをつける。
→ たんぱく質・亜鉛が豊富で、粘膜の回復を助けます。
野菜入りやわらかリゾット風ごはん
材料:ご飯100g、ブロッコリー・コーン少々、牛乳100ml、粉チーズ少々
作り方:
- 材料を鍋に入れて煮る。
- チーズを加えて風味づけ。
→ ビタミンとカルシウムが摂れる、洋風の優しい食事。
さつまいもとりんごのコンポート
材料:さつまいも1/2本、りんご1/4個、水100ml
作り方:
- 材料を一緒に煮て、柔らかくなったらつぶす。
→ 自然な甘さで、食後のデザートにもぴったり。
OS-1ゼリーとフルーツヨーグルト風デザート
材料:OS-1ゼリー50g、プレーンヨーグルト50g、バナナ1/4本
作り方:
- バナナをつぶし、ヨーグルトと混ぜる。
- OS-1ゼリーを加えて軽く冷やす。
→ 水分+電解質+栄養補給が同時にできる「食べられる補水食」。
5. 水分補給のポイントと注意点
食事が進まないときは、脱水予防を最優先にしましょう。
■ 理想的な水分補給法
- 経口補水液(OS-1など)を少量ずつ、こまめに
- 麦茶や白湯など、刺激のない飲み物を選ぶ
- スプーンやストローを使って少しずつ飲ませる
- 常温またはやや冷たい温度が◎
■ 注意点
- 炭酸飲料や果汁100%ジュースは刺激が強くNG
- スポーツドリンクも糖分が多いため、薄めて使うのがベター

6. よくある質問Q&A
Q1. 食欲がまったくないときはどうすればいいですか?
A. 無理に食べさせる必要はありません。水分が取れていれば数日は問題ありません。
ゼリーやスープ、経口補水液(OS-1など)を少しずつ与えましょう。
「食べない=悪化」ではなく、回復に向けた一時的な反応です。焦らず見守ってください。
Q2. アイスクリームを食べても大丈夫?
A. バニラなど刺激の少ないものならOKです。冷たさで痛みが軽減することもあります。
ただし、冷たすぎるものやチョコ・フルーツ入りなど酸味・糖分の強いものは避けましょう。
冷えたOS-1ゼリーの方が安全で栄養・水分補給に優れています。
Q3. 水分が取れない場合はどうしたらいい?
A. 唇の乾きや尿の減少、ぐったりしている様子があれば脱水のサインです。
少量ずつでも**経口補水液(OS-1やアクアソリタなど)**を5〜10分おきに与えましょう。
それでも飲めない場合は点滴が必要なこともあるため、早めに小児科を受診してください。
Q4. ミルクや離乳食はいつ再開すべき?
A. 口内の痛みが落ち着いてから再開します。
再開初日はスプーン1〜2口から。熱すぎず、常温〜ぬるめに調整してあげましょう。
無理に戻さず、体調に合わせて段階的に進めるのが大切です。
Q5. おかゆが嫌いで食べてくれません。代わりになるものは?
A. すりおろしりんご、豆腐スープ、かぼちゃのポタージュ、ミルクプリンなどもおすすめです。
「柔らかく・なめらかで・冷やしても食べやすい」ことを意識すると良いでしょう。
無理に主食を食べさせず、食べやすいものから始めましょう。
Q6. 果物は食べさせても大丈夫?
A. 酸味の強い果物(みかん・キウイ・いちご)は避けましょう。
痛みを刺激します。
おすすめはりんごのすりおろし・バナナ・洋なしのコンポートなど刺激の少ない果物です。
Q7. OS-1は何歳から飲めますか?
A. OS-1は生後3か月以上であれば使用可能とされています(厚労省・大塚製薬推奨基準)。
ただし、乳児の場合は医師の指導のもとで与えるのが望ましいです。
1歳以上なら小さじ1〜2杯から少しずつ与え、嫌がらないようにしましょう。
Q8. 手足口病のときに避けるべき食べ物は?
A. 酸味・塩分・香辛料が強いもの、硬い食材、熱い食べ物です。
カレー、レモン、みかん、ポテトチップス、炭酸飲料などは口内を刺激し、痛みが悪化します。
「やわらかい・薄味・常温」が基本です。
Q9. 登園や登校はいつから可能ですか?
A. 解熱し、口の中の痛みが軽くなって、食事や水分が摂れるようになってからが目安です。
厚生労働省では「発熱や水疱が落ち着けば登園可」としていますが、登園許可証が必要な園もあるため、医師に確認しましょう。
Q10. 何日くらいで食事が戻りますか?
A. 通常、発症から3〜7日程度で食欲が戻ります。
ただし、口内炎が長引く場合はもう少し時間がかかることも。
「昨日より少し食べられた」など、少しずつの回復を目安にしましょう。
Q11. 回復期におすすめのメニューはありますか?
A. 豆腐ハンバーグ・卵雑炊・野菜スープ・バナナヨーグルトなどが理想的です。
やわらかく、栄養バランスがよく、たんぱく質とビタミンを補給できます。
食欲が戻ってきたら、少しずつ通常の食事に近づけていきましょう。
7. 家庭でのケアチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
| ☐ 水分補給できているか | 経口補水液や麦茶をこまめに与える |
| ☐ 食べやすい食事にしているか | 柔らかく・薄味・常温を意識 |
| ☐ 発熱・痛みが強くないか | つらそうなら医師に相談 |
| ☐ 発疹の変化を観察しているか | 膿んだり広がったりしていないか確認 |
| ☐ きょうだいへの感染予防 | 食器・タオルの共用を避ける |
| ☐ 安静を確保できているか | 無理に登園・外出させない |
8. まとめ:焦らず、子どものペースで回復をサポート
手足口病の回復には、「無理をさせない」「痛みを刺激しない」「少しずつ栄養を補う」ことが大切です。
一時的に食欲が落ちても、水分と少量の栄養が摂れていれば心配ありません。
特に、柔らかく・優しい味つけの食事を心がけることで、子どもも安心して食べやすくなります。
回復期には、豆腐・卵・野菜スープなどを中心に栄養を整えましょう。
そして何より、**「食べることより休むことも治療の一部」**です。
家庭でのケアを丁寧に行いながら、体力が戻るのをゆっくり見守ってください。
