重症化すると危険なおたふくかぜ 後遺症を残す可能性

2026.01.19

「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」は、頬や耳の下が腫れる特徴的なウイルス感染症です。多くは軽症で自然に治りますが、まれに重い合併症や後遺症を残すことがあるため、注意が必要です。特に思春期や成人で感染すると、症状が強く、合併症のリスクも高くなります。
本記事では、おたふくかぜの原因や症状、後遺症のリスク、そして予防のためのワクチンについて、小児科の視点からやさしく解説します。

1. おたふくかぜとは?原因と感染経路

おたふくかぜは、ムンプスウイルスというウイルスによる感染症です。
主に子どもに多く、感染力が非常に強いため、保育園や学校などで集団感染が起こりやすい病気です。

主な感染経路

  • 飛沫感染:咳やくしゃみでウイルスが飛び散り、他人が吸い込むことで感染します。
  • 接触感染:ウイルスがついた手や物を介して口や鼻から体内に入ることもあります。

潜伏期間

感染から症状が出るまでの潜伏期間は2〜3週間。この間も感染力があり、症状が出る前から他人にうつす可能性があります。

主な症状

  • 耳の下や頬が腫れて痛む
  • 発熱(38〜39℃程度)
  • 食事や会話のときに痛みを感じる
  • 全身のだるさ・頭痛

通常は1週間ほどで回復しますが、体内でウイルスが広がると合併症を引き起こすことがあります。

2. 放っておくと危険!おたふくかぜの主な合併症

多くの子どもは自然に治りますが、重症化すると後遺症を残すリスクがあります。
特に次のような合併症には注意が必要です。

① 髄膜炎・脳炎

おたふくかぜのウイルスが中枢神経に侵入すると、無菌性髄膜炎脳炎を起こすことがあります。
発熱が長引く、頭痛、嘔吐、けいれん、意識の低下などが見られた場合はすぐに医療機関を受診してください。
後遺症としてまれにてんかん学習障害が残ることもあります。

② 難聴(ムンプス難聴)

片耳の感音性難聴を引き起こすことがあり、一度発症すると回復が難しい後遺症です。
厚生労働省の報告では、数千人に1人の割合で発症するとされています。
早期に発見しても治療法が確立されていないため、予防が最も重要です。

③ 精巣炎・卵巣炎

思春期以降の男性が感染すると、約20〜30%の確率で精巣炎を起こすといわれています。
高熱とともに陰嚢が腫れて強い痛みを伴い、まれに不妊の原因になることもあります。
女性ではまれに卵巣炎が起こることがありますが、こちらは不妊につながることはほとんどありません。

④ 膵炎(すいえん)

食欲不振や腹痛、吐き気を伴う急性膵炎を起こす場合もあります。
重症化すると入院治療が必要になることもあるため、症状が強いときは早めの受診を。

3. おたふくかぜの後遺症とは?長期的な影響に注意

重症化した場合、回復後も次のような後遺症が残ることがあります。

難聴

前述のとおり、ウイルスが内耳に炎症を起こすことで聴力が低下します。
片耳のみのことが多いですが、生活上の支障(方向感覚の低下・会話の聞き取りづらさなど)を感じる方も少なくありません。

不妊リスク

精巣炎が両側に起こった場合、精子の産生機能が低下し、将来的な不妊の原因になることもあります。
思春期以降の感染では特に注意が必要です。

神経後遺症

脳炎や髄膜炎の後、まれに集中力の低下やてんかん発作などの神経学的な後遺症が残るケースがあります。
一見回復したように見えても、長期的な経過観察が大切です。

医者

4. 自宅でのケアと登園・登校の目安

自宅でのケア

  • 安静を保つ:無理せず十分な休息をとりましょう。
  • 水分・栄養補給:咀嚼時の痛みが強い場合は、プリン・おかゆ・スープなどやわらかい食事がおすすめです。
  • 清潔の維持:口の中を清潔に保つことで二次感染を防ぎます。

登園・登校の再開時期

おたふくかぜは耳下腺などの腫れが出てから5日以上経過し、全身状態が良好であれば登園可能とされています(学校保健安全法による)。
ただし、感染力は発症の数日前からあるため、家族内での感染予防も重要です。

5. 予防の決め手はワクチン接種

おたふくかぜワクチン(ムンプスワクチン)は、唯一有効な予防手段です。
日本では任意接種ですが、多くの小児科医が接種を推奨しています。

接種スケジュール

  • 1回目:1歳になったら接種可能
  • 2回目:5〜6歳(就学前)

1回の接種でもある程度の免疫が得られますが、2回接種でより確実に予防効果が高まります
ワクチンは生ワクチンであり、他の生ワクチン(MRや水痘など)との接種間隔にも注意が必要です。

ワクチンの効果と安全性

2回接種により発症予防効果は約90%とされ、重症化や後遺症を防ぐ効果も確認されています。
副反応としては一時的な発熱や軽い腫れがみられることがありますが、重篤なものはまれです。

6. 家族でできる感染予防と早期対応

おたふくかぜは家庭内感染が多い病気です。
次のような基本的な対策を徹底することで、感染拡大を防ぐことができます。

家庭での感染予防

  • こまめな手洗い・うがい
  • 咳エチケットの徹底(マスク・ティッシュ使用)
  • 食器やタオルの共用を避ける

家族内に感染者が出た場合、兄弟姉妹や大人も潜伏期間中に感染している可能性があるため、症状の有無にかかわらず注意深く観察することが大切です。

7. 医療機関を受診すべきサイン

次のような症状がみられた場合は、早めに小児科を受診してください。

  • 高熱が続く
  • 嘔吐や激しい頭痛がある
  • けいれんや意識がもうろうとする
  • 耳の聞こえに異変を感じる
  • 男の子で陰嚢の腫れや痛みがある

これらは合併症のサインであり、早期治療によって後遺症を防げる可能性があります。

まとめ:予防と早期対応で後遺症を防ぐ

おたふくかぜは子どものうちにかかることが多い病気ですが、「軽い病気」と侮るのは危険です。
髄膜炎、難聴、精巣炎などの重い合併症や後遺症を防ぐためには、以下の3点が重要です。

  1. ワクチンで確実に予防する
  2. 発熱・腫れの経過を丁寧に観察する
  3. 異変を感じたら早めに医療機関へ相談する

子どもの元気な笑顔を守るために、「予防」と「早期対応」を意識しましょう。