1. フラクショナルレーザーとは何か? 治療原理と種類
フラクショナルレーザーは、肌表面に微細な「ドット状」の点状穴を多数照射し、創傷治癒反応を利用してコラーゲンやエラスチンの生成を促す美容医療技術です。
主に以下のタイプがあります:
- 蒸散型(Ablative):CO₂やEr:YAGレーザーにより表皮から真皮上層まで削る方式。効果は高いがダウンタイムや色素沈着リスクもやや高め。
- 非蒸散型(Non‑ablative):1550nm 程度の波長で熱ダメージを与えながら表皮は温存。ダウンタイムは短く適応も広い。
最新モデルでは照射密度、パルス幅、スタック回数などをきめ細かく調整できる機器が登場し、症例に応じた個別治療が可能です。
2. 主な適応と美容効果:ニキビ跡、毛穴、しわ、肌質改善
ニキビ跡・傷跡の改善
クレーター状〜ボックスカー型のニキビ跡には蒸散型レーザーが非常に有効です。熱凝固点を設けて皮膚を再構築することで、凹凸を改善し滑らかな肌触感を取り戻します。
1550nm 非蒸散型でも紅斑や瘢痕が改善した報告があり、5〜6ヶ月をかけて50%以上の外観改善が期待できます。
毛穴の引き締め・質感向上
毛穴の開きや肌のザラつきには、レーザー照射によるコラーゲン生成が効果的です。ただし出力不足や回数不足では効果を感じにくく、3〜5回以上の治療が推奨されています。
小じわ・たるみ予防
額・目元・頬などの小じわには、微小な熱作用を利用したリジュビネーション効果が作用し、肌のハリ・弾力を回復します。コラーゲン再構築に伴い、しわの軽減が期待できます。
色ムラ・シミ改善
ピコ秒フラクショナルやルビーフラクショナルなど、色素に特化したレーザー照射方法では、シミ・そばかす、くすみやADM(後天性メラノサイトーシス)などに対して、自然に薄くする改善が可能です。
3. 治療の進行と効果が出るまでの期間
治療を開始してから1ヶ月程度で肌のハリや質感の改善を感じる方が多く、3〜5回、場合によっては5〜10回のセッションを数ヶ月かけて継続することでより明らかな効果が得られます。
特にニキビ跡や毛穴開きなどは、回数を重ねるごとにコラーゲン再構築が進むため、中長期的な肌変化を意識した継続治療計画が重要です。
4. 施術の流れとアフターケアの重要性
施術前後の流れ
- カウンセリングで肌状態や目的を確認
- 麻酔クリーム塗布または空気冷却などにより痛みを軽減
- 約15〜30分のレーザー照射(部位により異なる)
- アフターケア指導:十分な保湿、紫外線対策、刺激性スキンケアの回避など
アフターケアのポイント
5. リスク・副作用と安全対策
主な副作用には、赤み・腫れ・乾燥・かさぶた形成・ピリピリ感・色素沈着・内出血などがあり、通常数日~1週間程度で自然に軽快します。
色白肌でも色黒肌でも、特にFitzpatrickタイプ IV〜VIでは色素沈着リスクが高まるため、非蒸散型や低出力の設定が推奨されます。
適切な機器選定、照射設定、冷却・麻酔の併用、十分なカウンセリングと施術後ケアが、安全性を確保する鍵です。

6. レーザースタッキングや次世代デバイス(ピコフラクショナルなど)
レーザースタッキング
韓国発のレーザースタッキング技術は、異なる波長のレーザーを同日に組み合わせ照射し、色ムラ・毛穴・質感・たるみといった複数の悩みに効率的に対応します。これにより複数回のセッションを1日でまとめることが可能ですが、専門医の管理が不可欠です。
ピコ秒フラクショナル(例:PicoWay リゾルブフュージョン532nm)
ピコ秒レーザーをマイクロビームに分割して照射することで、表皮損傷ほぼゼロ、痛み最小、ダウンタイム短縮が実現。毛穴縮小・肌質改善・くすみ・ニキビ跡への効果が期待されます。
ルビーフラクショナルも同様に色素トラブルに対応し、かさぶたの発生が少なく翌日からメイク可能な症例も増えています。
7. フラクショナルレーザーの費用相場と保険適用の可否
フラクショナルレーザーは、**基本的に自由診療(保険適用外)**で行われる美容皮膚治療です。治療目的が「美容・見た目の改善」であるため、健康保険の対象にはならず、費用はすべて自己負担となります。
● 治療1回あたりの費用目安(2025年現在)
以下は日本国内のクリニックにおける一般的な費用相場です(顔全体の場合):
| レーザーの種類 | 費用の目安(1回) |
| 炭酸ガスフラクショナル | 30,000〜60,000円 |
| エルビウムYAGレーザー | 40,000〜70,000円 |
| 非蒸散型レーザー(1550nm等) | 35,000〜65,000円 |
| ピコフラクショナル | 40,000〜80,000円 |
| プレミアム複合施術 | 80,000〜150,000円以上 |
※部位が限定的(鼻・頬など)の場合、1回15,000円〜30,000円程度の設定もあります。
● コース契約による割引
多くのクリニックでは、3回・5回・10回のコース契約によって1回あたりの単価が20〜30%程度割引される場合があります。これは複数回の施術が前提となる治療の性質を反映した料金設計です。
● 保険適用となるケースは?
ごくまれに、火傷や外傷による瘢痕治療、手術後のケロイドや肥厚性瘢痕の治療で、フラクショナルレーザーを使用し、その目的が「機能改善・再発防止」である場合には、保険が適用されることがあります。ただし、こうしたケースは医師の判断と病院の保険審査部門の承認が必要であり、すべての施設で対応できるわけではありません。
8. 他の美容治療との組み合わせによる相乗効果
近年では、フラクショナルレーザー単独ではなく、**他の治療法と併用(コンビネーション治療)**することで、より高い美肌効果や持続性を追求する施術が注目されています。
● ケミカルピーリングやマイクロダーマブレーションとの併用
フラクショナルレーザー前にピーリングや角質除去を行うことで、レーザーの熱エネルギーがより深部まで届きやすくなり、治療効果の向上が期待できます。また、角質ケアによってダウンタイム中の「肌荒れ」も軽減されることがあります。
● 成長因子導入や幹細胞上清液との併用
レーザー照射後の「微細な穴(マイクロチャネル)」を利用して、EGF(上皮成長因子)やPRP(自己多血小板血漿)などの有効成分を導入する“ドラッグデリバリー”が行われることもあります。これにより創傷治癒と肌再生のスピードが加速し、ダウンタイム短縮にもつながります。
● 高周波(RF)やHIFUとの併用でたるみケア
肌のハリやたるみが主な悩みである場合は、フラクショナルRF(例:モザイク、イントラセル)やHIFU(ハイフ)との組み合わせが有効です。異なる深さに熱刺激を届けることで、コラーゲン生成と皮膚引き締めの両面からアプローチすることができます。
● IPL・フォトフェイシャルとの併用で美白ケアも同時に
色ムラやくすみの改善を求める場合には、IPL(光治療)との併用でメラニン除去と肌再生を同時に行うケースもあります。特に肌全体のトーンアップやシミの改善には効果的です。
このように、目的別に治療を組み合わせることで、単独治療では得られない相乗効果が期待できるのが現在の美容皮膚科治療の大きな進化です。
ただし、照射順や使用タイミング、肌質に合わせた出力調整が極めて重要なため、専門医の指導のもと安全に行うことが大前提となります。
まとめ:効果を最大化するポイント
- ニキビ跡、毛穴、しわ、肌の質感改善など、多岐にわたる肌悩みに対して高い効果が見込まれる
- 治療効果は回数と継続性に依存し、概ね1ヶ月後から実感し、3〜5回程度でより大きな改善
- 安全性を左右するのは機器の種類と照射設定、術前・術後のケア
- 色素沈着リスクのある肌タイプでは、非蒸散型や低出力照射が有効
レーザースタッキングや最新リゾルブ機器なら、短時間で複合的な美肌効果が得られる可能性あり














