ワキガ(腋臭症)は、アポクリン汗腺からの分泌液が皮膚の常在菌により分解されて発生する特有の臭いが原因です。皮膚科では、**手術療法(剪除法など)と最先端の非手術療法(ミラドライ、高周波・超音波、高濃度外用薬など)**を用いた治療が可能です。本記事では、各治療法の効果・費用・リスク・適応を専門家の視点で比較し、あなたにとって最適な選択肢をご提示します。
1. ワキガの原因と診断ポイント
ワキガ(医学的には「腋臭症」)は、アポクリン汗腺からの分泌液がエクリン汗や皮脂とともに皮膚上の常在菌に分解されることで特有の臭いを生じます。アポクリン汗腺の数や分泌量には個人差があり、多い人ほど臭いが強くなりやすいです。
皮膚科では、問診に加え実際の臭いの程度や多汗の有無を診断し、適切な治療法を選定します。保険適用の判断も、医師の診察によります。
2. 皮膚科で扱う手術療法の種類と特徴
◆ 剪除法(直視下手術法)
皮膚を3〜5cm切開し、裏返した状態でアポクリン汗腺を一つずつ除去する方法です。再発リスクが極めて低く、最も確実な効果を期待できます。保険適用が可能で、自己負担は数万円程度です。治療時間は約1時間、抜糸や圧迫固定などで通院1ヶ月程度必要です。
◆ 皮下組織吸引法(非直視下手術法)
脇に小さな穴(傷跡は数mm〜1cm)を開け、カニューレで汗腺や皮脂腺を吸引除去します。傷が目立ちにくくダウンタイムが短いのが特徴ですが、直視下で取り残しがあるため再発の可能性は多少残ります。自費診療で費用は15〜30万円程度です。
◆ 超音波吸引法(非直視下)
超音波で熱を発生させながら汗腺を破壊しつつ吸引する方法。傷跡は小さく、回復が早いですが、焦熱による皮膚壊死や色素沈着のリスクがあります。費用は20〜30万円、自費診療となります。
3. 非手術(切らない)治療の種類と特徴
◆ ミラドライ(マイクロ波照射療法)
マイクロ波を皮膚から照射し、アポクリン汗腺およびエクリン汗腺を破壊します。傷跡が残らず、日帰りで実施でき、効果は半永久的とされるケースが多いです。治療時間は約1時間、費用は両脇19〜22万円程度(自由診療)です。
◆ ビューホット(高周波針治療)
極細針を皮膚に刺入し、高周波でアポクリン汗腺を熱破壊します。針深度を0.1mm単位で調整でき、ダウンタイムも小さく傷跡は目立ちません。効果は半永久的で、両脇30〜40万円程度です。
◆ ウルセラドライ(高密度焦点式超音波)
超音波を焦点式にアポクリン汗腺へ照射し破壊します。針を使わないため痛みや感染リスクが低く、治療後2週間程度で症状が落ち着きます。費用は30万円前後です。
◆ ボツリヌストキシン注射(ボトックス)
神経伝達物質アセチルコリンを遮断し、汗の分泌を一時的に抑制します。効果の持続は約3〜6ヶ月。軽度のワキガに効果がありますが、持続性は限られ、再施術が必要です。費用は3〜4万円/回程度です。
◆ 外用塩化アルミニウム溶液
高濃度の塩化アルミニウムを脇に塗布し、汗腺の出口を塞ぐことで発汗を抑制します。発汗量は減少しますが、臭いの根本的改善にはやや効果が限定されます。2〜3週間で効果が出ることが多く、肌荒れの副作用に注意が必要です。
4. 治療の通院頻度・術後ケア・日常への影響
- 手術療法:初診→手術→抜糸・圧迫固定あり→1ヶ月程度通院(再診含む)
- ミラドライ/ビューホット/ウルセラ:当日治療→日常生活に復帰→1〜数回程度の経過診察
- ボトックス/外用薬:定期的(数ヶ月〜毎日)使用・診察が必要
日常生活への制限は、切開を伴う手術では圧迫固定・入浴制限がある一方、非手術療法はほぼ治療当日から普段通り可能です。
5. 選び方のポイントとケース別のおすすめ治療法
◎ 軽度〜中等度で傷跡を避けたい方
→ ミラドライまたはビューホットが第一候補。傷跡が残らず、効果も長期的で日常生活への影響が少ないです。
◎ 確実に再発を防ぎたい方(中重度)
→ 剪除法などの保険適用手術が最も効果的で、再発リスクが極めて低い方法です。
◎ 一時的ににおい・汗を抑えたい方/試してみたい方
→ ボトックス注射や高濃度塩化アルミニウム溶液外用薬が適します。ただし持続性は限定的です。

6. よくある質問と注意点
Q. 傷あとが目立たない手術ってある?
A. 非直視下手術(クワドラカット法、皮下吸引法、超音波吸引法)は小さな穴から除去するため傷は目立ちにくいですが、再発率が手術よりやや高くなります。どうしても跡が気になる方は、ミラドライやビューホットの非手術方法を検討する価値があります。
Q. 保険診療は誰でも受けられる?
A. ワキガ治療で保険適用となるのは主に「剪除法(反転剪除法)」などで、香りが他人の生活に支障をきたす程度の症状があると医師が判断した場合に限られます。
Q. 副作用やリスクは?
A. 手術は瘢痕・色素沈着・血腫や皮膚壊死、術者の技術依存性などがあります。非手術では腫れ・熱感や軽度の皮膚刺激、内出血などが起こり得ます。特に高周波や超音波を用いる治療は熱傷のリスクにも留意が必要です。
結論:最適な治療法を選ぶには
あなたの臭いの程度(軽度・中程度・重度)、傷跡の許容範囲、ダウンタイムの有無、費用負担、将来的な持続性を考慮すると、以下の選択肢がお勧めです:
- 効果重視・保険適用希望で確実に治す → 剪除法(保険手術)
- 傷跡なし・迅速な日常生活復帰を優先 → ミラドライやビューホットなどの非手術療法
- まず試してみたい/治療に慎重な方 → ボトックス注射や高濃度外用薬
ワキガ治療は個別性が非常に高いため、まずは皮膚科・形成外科でのカウンセリングを受け、専門医と相談しながら最適な治療法を選択することを強くお勧めします。














