大人になってから胸やお腹に赤い斑点が増え、写真で調べても血管腫かどうか判断がつかない。そんな相談は少なくありません。成人にできる血管腫の多くは、老人性血管腫(チェリー血管腫)と呼ばれる良性のものです。ただし、なかには急速に大きくなる、出血しやすいといった注意すべきサインを伴うケースもあります。本記事では、大人にできる血管腫の種類と見た目の特徴を解説します。乳児の血管腫との違い、受診の目安、治療法についても、皮膚科専門医の監修のもと紹介します。
目次
この記事でわかること
- 大人にできる血管腫(老人性血管腫)の色・大きさ・できやすい部位
- 乳児にできるイチゴ状血管腫との違いと混同しやすいポイント
- 写真だけで自己判断せず、受診を検討すべきサイン
- 皮膚科・形成外科で受けられる治療法と費用の考え方
1. 血管腫とは?大人と乳児でタイプが異なる理由
血管腫は、血管の内皮細胞が増殖してできる良性の腫瘍の総称です。発症する年齢によって性質が大きく異なります。
国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)の分類では、血管の病変は大きく2つに分けられます。「血管腫(Tumor)」と「血管奇形(Malformation)」です。血管腫は血管内皮細胞そのものが異常増殖するタイプで、乳児期に多いイチゴ状血管腫が代表例です。一方の血管奇形は、血管の構造が形成過程で異常な形になったもの。増殖ではなく、構造上の問題である点が異なります。
大人になってから気づく血管腫は、この2つの分類とは別に、加齢に伴って新たに生じる老人性血管腫が中心です。次章から、大人に多いタイプを詳しく見ていきましょう。
2. 大人に多い「老人性血管腫(チェリー血管腫)」の特徴
大人になって気づく赤い斑点の多くは、老人性血管腫(チェリー血管腫)と呼ばれるタイプです。写真で比較する前に、見た目の特徴を押さえておきましょう。

| 項目 | 特徴の目安 |
|---|---|
| 色 | 鮮やかな赤色〜赤紫色 |
| 大きさ | 1mm程度の点から、大きくても5mm前後が中心 |
| 形 | 初期は平坦な点状。時間とともにドーム状に盛り上がることがある |
| 好発部位 | 胸・お腹・背中など体幹に多く、腕にもみられる |
| 数 | 1個から始まり、加齢とともに数が増えていく傾向 |
| 発症年齢 | 30歳前後から出現しはじめ、中高年以降に目立ちやすい |
診察の場では、「昔からあったホクロが急に増えた気がする」と相談される方の多くが、実際には老人性血管腫だったというケースを何度も経験しています。ホクロ(母斑細胞性母斑)は茶色や黒色で、触れると硬いのが特徴です。一方の老人性血管腫は赤色で、やや弾力があります。この色と硬さの違いが、見分けの手がかりです。
老人性血管腫という名称ですが、20歳代から生じることもあります。名前の印象だけで高齢者特有の症状と思い込まないよう注意してください。
3. 乳児に多い「イチゴ状血管腫」との違い
血管腫と聞くと、乳児にできる赤いあざを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。大人の血管腫とは経過が大きく異なるため、混同しないよう整理しておきます。
イチゴ状血管腫(乳児血管腫)は、生後1年未満の乳児の5〜10%にみられるとされます(MSDマニュアル家庭版)。生後3〜6か月ごろに急速に増大するのが特徴です。1歳前後で増大が落ち着き、その後数年かけて自然に縮小していくケースが多くみられます。
| 比較項目 | 老人性血管腫(大人) | イチゴ状血管腫(乳児) |
|---|---|---|
| 発症時期 | 成人以降、加齢とともに増加 | 生後数週間〜数か月 |
| 経過 | 自然消退はほぼなく、徐々に増える | 多くは1歳前後で増大が止まり、数年で自然消退 |
| 主な部位 | 胸・腹・背中などの体幹 | 顔面・頭頸部に多い |
大人になってから急に増えた赤い斑点が、乳児期からずっとあったものでなければ、老人性血管腫である可能性が高いと考えられます。乳児期に発症した血管腫の経過について詳しく知りたい方は、成長とともに変化する先天性血管腫とはの記事もあわせてご覧ください。
4. 海綿状血管腫・血管奇形など皮下にできるタイプ
皮膚の表面ではなく、皮下の深い位置にできる血管の病変もあります。老人性血管腫とは触感も対処法も異なります。
海綿状血管腫は、深部の血管が拡張してできる病変です。皮膚の表面は青紫色や暗赤色に見えることがあります。触れると柔らかく、押すと一時的にへこむのが特徴です。ISSVA分類では、多くの海綿状血管腫は増殖ではなく構造上の異常です。「静脈奇形」に分類されます(横浜市立大学附属病院 形成外科)。
- 色:青紫色または暗赤色
- 触感:柔らかく弾力があり、圧迫で一時的にへこむことがある
- 部位:四肢や口唇・まぶたなどの粘膜近くにもみられる
- 経過:自然消退は少なく、時間とともに緩やかに大きくなることがある
毛細血管奇形(単純性血管腫、いわゆる赤あざ)のように、生まれつき平坦な赤い痕として存在し続けるタイプも血管奇形の一種です。名称に「血管腫」とついていても、増殖性の腫瘍とは異なる病態です。この違いを知っておくと、治療方針への理解が深まります。
5. 写真だけで自己判断しない|受診が必要なサインのセルフチェック
インターネットの写真と見比べるだけの自己判断は避けたい場面もあります。以下のサインが一つでもあれば、早めの受診を検討してください。

| セルフチェック項目 | 該当する場合の対応目安 |
|---|---|
| 数週間単位で急速に大きくなっている | 早めに皮膚科を受診 |
| 触れていないのに出血を繰り返す | 早めに皮膚科を受診 |
| 1つの病変の中で色が不均一・境界が不明瞭 | 早めに皮膚科を受診 |
| 表面が崩れる、潰瘍のようになっている | 早めに皮膚科を受診 |
| 数か月以上、大きさや色に変化がない | 経過観察でよいことが多い |
老人性血管腫のほとんどは良性で、心配のいらないものです。ただし、ごくまれに血管肉腫という皮膚の悪性腫瘍が、赤みや紫斑として似た初期症状を示すことがあります(国立がん研究センター中央病院)。血管肉腫の診断には、ダーモスコピーや超音波検査が用いられます。必要に応じて病理組織検査も行われ、専門的な診断ガイドラインも整備されています(日本皮膚科学会 皮膚血管肉腫診療ガイドライン2021)。
写真だけでの良性・悪性の判断は、専門医であっても慎重を要するもの。気になる変化があれば、自己判断で様子を見続けず、実際に診察を受けることをご検討ください。
6. 大人に血管腫ができる主な原因
老人性血管腫がなぜ大人になってから増えるのか、原因のすべてが解明されているわけではありません。複数の要因が関係すると考えられています。
- 加齢に伴う血管新生の変化:年齢とともに毛細血管が増生しやすくなる
- 紫外線の蓄積:長年の紫外線ダメージが血管の変化に関わるとされる
- ホルモンバランスの変化:妊娠中に一時的に増えることが報告されている
- 遺伝的な体質:家族内に同様の傾向がみられることがある
まれに、肝臓の状態や生活習慣との関連が指摘されることもありますが、明確に断定できる段階ではありません。数が急に増えた場合でも、多くは加齢に伴う自然な変化の範囲内です。
7. 何科を受診する?診断方法とヒロクリニックの対応
血管腫が疑われる場合は、皮膚科・形成外科での受診が基本です。見た目だけでなく、専門的な視点での診察が安心につながります。
診察では、まず視診で色・形・触感を確認します。判断が難しい場合はダーモスコピー(拡大鏡による観察)で血管のパターンを詳しく調べます。深さや広がりの確認が必要なら、超音波(エコー)検査を追加することもあります。
ヒロクリニック皮膚科・形成外科では、2008年8月から2026年6月までの累計で皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部)を5,946件実施してきました。小さな病変であれば、診察のうえ即日での対応が可能な場合もあります。
実際の診療でも、「念のため見てほしい」と来院され、視診だけで診断がつき安心して帰られる方を数多く経験しています。
8. 治療法(レーザー・電気凝固・切除・硬化療法)
老人性血管腫は、必ずしも治療が必要なものではありません。気になる場合や、衣服や装身具でこすれて出血を繰り返す場合に治療を検討します。

レーザー治療
赤色の表在性の血管腫には、パルス色素レーザー(PDL)が広く使われます。血管に選択的に反応する波長のため、周囲の皮膚への影響を抑えやすいのが特長です。
電気凝固・切除
小さな病変であれば、電気メスによる焼灼や、局所麻酔下での切除で対応することもあります。出血を繰り返す病変や、診断のために組織を調べたい場合に選択されます。
硬化療法
海綿状血管腫や静脈奇形など、皮下の深い病変には、血管内に硬化剤を注入して縮小を促す硬化療法が選択肢に入ります。
老人性血管腫の除去は、美容目的とみなされ自由診療になることが一般的です。一方、出血や潰瘍化などの症状があり治療の必要性が認められる場合は、保険診療の対象になることがあります。費用の詳細は血管腫治療に必要な費用と通院期間の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。レーザー治療の詳細はレーザー治療で目立たなくなる血管腫の記事で紹介しています。
9. 日常生活での注意点とセルフケア
治療を受けない場合でも、日常生活のなかで意識しておきたいポイントがあります。
- 紫外線対策:日焼け止めや衣服で紫外線の蓄積を避ける
- 外傷予防:衣服やアクセサリーとの摩擦を避け、出血や感染を防ぐ
- 入浴後の保湿:皮膚バリアを保ち、乾燥による刺激を減らす
写真による記録も、自己判断の材料としてではなく、医師に経過を伝えるための手段として活用すると役立ちます。1〜2か月おきに同じ角度で撮影しておくと、変化の速さを客観的に振り返ることができます。
定期的な観察を続けながら、変化に気づいたときに相談できる医療機関を持っておくと安心です。
10. よくある質問(FAQ)
大人の血管腫について、診療でよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 老人性血管腫は放置しても自然に消えますか?
A1. 乳児にできるイチゴ状血管腫とは異なり、老人性血管腫は自然に消えることはほとんどありません。加齢とともに数が増える傾向があります。
Q2. 血管腫か血管肉腫かは、写真だけで見分けられますか?
A2. 写真だけでの判断は困難です。急速な拡大や出血、色の不均一さなど気になる変化があれば、ダーモスコピーなどを用いた診察を受けてください。
Q3. 老人性血管腫の除去は保険適用になりますか?
A3. 美容目的での除去は自由診療となることが一般的です。出血や潰瘍化など治療の必要性が認められる場合は、保険診療の対象になることがあります。
Q4. 老人性血管腫は若い人にもできますか?
A4. 名称に「老人性」とありますが、20歳代から生じることもあります。年齢だけで判断せず、見た目の特徴で確認してください。
Q5. 何科を受診すればいいですか?
A5. 皮膚科・形成外科での受診が基本です。手術的な処置が必要な場合も、形成外科を併設した医療機関であれば同日中に相談できます。
Q6. 治療後に再発することはありますか?
A6. レーザーや切除で治療した病変自体が再発することはまれです。ただし、体質的にできやすい方では、別の場所に新しくできることがあります。
11. まとめ:大人の血管腫は写真判断より特徴の理解と受診を
大人になってから気づく血管腫の多くは、老人性血管腫と呼ばれる良性のもの。色・大きさ・部位といった特徴を知っておくことで、過度に不安になる必要がないケースも多いとわかります。
一方で、急速に大きくなる、出血を繰り返す、色が不均一といったサインがあれば話は別です。写真での自己判断に頼らず、皮膚科・形成外科への相談を検討してください。
乳児期の血管腫について詳しく知りたい方は成長とともに変化する先天性血管腫とはの記事をご覧ください。ホクロとの見分け方が気になる方は足の裏のほくろは危険?見分け方と受診目安の記事も参考になります。
本記事は、ヒロクリニック皮膚科・形成外科の土屋海士郎医師が監修しています。土屋医師は川口院の皮膚科医で、日本皮膚科学会専門医・難病指定医・小児慢性特定疾病指定医です。
川口院・池袋駅前院の両院で、血管腫をはじめとする皮膚のできもの・腫瘍の診察に対応しています。
【参考文献】
- MSDマニュアル家庭版 – 血管腫
- 横浜市立大学附属病院 形成外科 – 血管腫・血管奇形 ー診断と治療についてー
- 国立がん研究センター中央病院 – 血管肉腫の治療について
- 公益社団法人日本皮膚科学会 – 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版 皮膚血管肉腫診療ガイドライン2021













