多汗症(手足、脇)

「人と握手をするのが怖い」「紙に文字を書こうとすると汗で破れてしまう」「冬でも脇汗がひどく、服の色に気を使う」——。
当院には、こうした「汗」に関する深いお悩みを抱えた患者様が数多くご来院されます。診察室に入ってからのわずか5分間で、手からポタポタと滴り落ちるほどの汗をかかれている方も決して珍しくありません。

多汗症は、決して「気にしすぎ」や「性格の問題」ではありません。交感神経の働きなどが過敏になることで引き起こされる、立派な「疾患」です。にもかかわらず、周囲に理解されにくいため、一人で思い悩み、日常生活や学業、お仕事に支障をきたして(QOLの低下)苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。

ヒロクリニック皮膚科・形成外科では、患者様のライフスタイルや症状の重症度に合わせて、塗り薬、電気治療、注射、そして手術まで、幅広い選択肢の中から最適な治療法をご提案いたします。「たかが汗」と諦めず、まずは私たち専門医にご相談ください。
【 多汗症とは 】

人間の体には体温調節のために汗をかく機能が備わっていますが、多汗症とは、気温や運動の有無に関わらず、日常生活に支障をきたすほど大量の汗をかいてしまう状態を指します。

全身の汗が増える「全身性多汗症」と、特定の部位(手、足、脇、顔など)だけ汗が増える「局所性多汗症」に分けられますが、当院にご相談にいらっしゃる方の多くは、手足や脇の「原発性局所多汗症」でお悩みです。

当院でよくご相談いただく症状(こんなお悩みはありませんか?)
手掌(手のひら)の多汗

テスト中や仕事中、紙が汗で湿ってよれよれになったり、破れたりしてしまう。

パソコンのキーボードやマウス、スマートフォンの画面が汗で濡れて操作しづらい。

人と手をつないだり、握手をしたりすることに強い抵抗感や恐怖感がある。

足底(足の裏)の多汗

常に靴下が湿っており、フローリングを裸足で歩くと足跡がくっきりと残ってしまう。

靴の中が蒸れやすく、雑菌が繁殖していやなニオイ(悪臭)が発生しやすい。

サンダルやミュールを履くと、汗で滑って歩きにくい。

腋窩(脇)の多汗

夏場だけでなく、冬場でもトレーナーやセーターまで濡れてしまうほど脇汗が出る。

シャツに黄色い汗ジミができやすく、着る服の色や素材が制限されてしまう(グレーなどが着られない)。

脇を伝って汗が流れ落ちる感覚が常にあり、仕事や勉強に集中できない。

当院では、患者様のご希望や症状に合わせて以下の4つの柱を中心に治療を行っております。

塩化アルミニウムの外用(塗り薬)

イオントフォレーシス(電気治療)

手術(剪除法:※脇のみ対応)

汗止め注射(※当院3階 美容皮膚科での自費治療)

それぞれの治療法について、メカニズムやメリット、注意点を詳しく解説いたします。

1. 塩化アルミニウムの外用(塗り薬)
最も手軽に始められる多汗症の第一選択となる治療法です。手・足・脇のどの部位にも使用可能です。

【治療のメカニズム】
塩化アルミニウムには強い「収斂(しゅうれん)作用」があります。この成分を含んだ液を皮膚に塗布すると、汗腺(汗の出口)の細胞に働きかけて角層のタンパク質と結合し、汗の出る穴(汗管)を物理的に塞ぐフタのようなものを形成します。これにより、汗が皮膚の表面に出るのを物理的に防ぎます。

【当院の処方と使用方法】
当院では、患者様の肌質や部位に合わせて10%から20%の濃度の塩化アルミニウム液をご用意しております。

導入期(最初の2週間): 毎晩、就寝前に1日1回、患部に塗布してください。就寝中は汗をかきにくいため、薬の成分が汗腺にしっかりと浸透しやすくなります。

維持期(効果が現れた後): 汗が減ってきたと実感できたら、1週間に1〜2回程度の外用に減らしていきます。

より効果を高めるためのコツ: 手足に塗る場合、塗布後にラップで覆い、その上から綿の手袋や靴下をして就寝する「ODT(密封療法)」を行うと、成分がより深く浸透し高い効果が期待できます。

【注意点・副作用】
塩化アルミニウムは刺激がやや強いため、塗った部位に「かぶれ」「赤み」「ヒリヒリとした痒み(刺激性接触皮膚炎)」が生じることがあります。
傷がある場所や、除毛・剃毛直後の皮膚への使用は控えてください。もし強いヒリヒリ感や赤みが出た場合は、無理をせずに使用を中止し、速やかに医師にご相談ください(必要に応じて炎症を抑える軟膏を併用することがあります)。

【 イオントフォレーシス 】
お薬を塗るのが合わない方や、手足の多汗症(特に手掌多汗症)に非常に効果的な物理療法です。

【治療のメカニズム】
掌(てのひら)や足の裏などの多汗が気になる部位を、水道水を張った専用のトレイに浸し、そこに微弱な電流(直流電流)を流します。
水の中で電流を流すことで生じる「水素イオン」が、汗の出口である汗腺(汗管)の内部に作用し、汗を作る細胞の働きを抑制するとともに、汗の通り道を狭くすることで発汗を抑えると考えられています。

【治療の流れと頻度】
所要時間: 1回の治療時間は約10〜20分程度です。

痛み: 電流を流す際に「ピリピリ」「チクチク」とした軽い刺激を感じることがありますが、強い痛みはありません。患者様に合わせて電流の強さを調整します。

通院の目安:

開始時: まずは週に1回程度のペースで通院していただきます。数回繰り返すうちに、徐々に汗の量が減ってくるのを実感できます。

維持期: 治療による効果の持続性(永続性)はないため、1ヶ月程度間隔を空けると再び汗が増えてきます。そのため、症状が落ち着いた後も、1週間から2週間に1度のペースで継続的な通院(メンテナンス)をおすすめしております。

【メリットと注意点】
メリット: お薬を使わないため、アレルギーや全身性の副作用がほとんどありません。小さなお子様(小学生頃〜)や、初めて多汗症治療を受ける方にも安心してお勧めできる安全性の高い治療です。

禁忌(受けられない方): 心臓ペースメーカーをご使用の方、体内に金属が入っている方、妊娠中の方、患部に大きな傷がある方は、この治療を受けることができません。

【 手術 】
脇の多汗症(腋窩多汗症)や、ニオイを伴うワキガ(腋臭症)に対して、根本的な解決を望む方に行う外科的治療です。

【治療のメカニズム】
脇の下には、水っぽい汗を出す「エクリン汗腺」と、ニオイの元となる汗を出す「アポクリン汗腺」が集中しています。剪除法(皮弁法とも呼ばれます)は、これらの汗腺を直接目で見て取り除く手術です。

【手術の流れ】
局所麻酔: 脇の下にしっかりと局所麻酔を行い、痛みをなくします。

切開: 脇の中心部分のシワに沿って、約4cmほど皮膚を切開します。

反転と切除: 皮膚を裏返し(反転させ)、皮膚の裏側にびっしりと付着している汗腺(つぶつぶとした組織)を、医師が専用のハサミで丁寧に取り除いていきます(剪除)。

縫合と固定: 汗腺を綺麗に取り除いた後、皮膚を縫合します。術後に血が溜まる(血腫)のを防ぐため、ガーゼを丸めたものを患部に当てて糸で強く縛り付ける「タイオーバー固定」という圧迫固定を数日間行います。

【メリットと注意点】
メリット: 「一度の治療で確実に済ませたい」「毎日の薬の塗布や通院から解放されたい」という方にとって、最も確実で根治性の高い治療法です。汗だけでなく、強いニオイの悩みも同時に解消できます。

注意点(ダウンタイム): 手術自体は日帰りで終わりますが、術後の安静が非常に重要です。術後約1週間は腕を高く上げる動作や重いものを持つことが制限されます。また、脇の下に4cm程度の切開創の傷跡が残ります(時間の経過とともに脇のシワに馴染んで目立ちにくくなります)。

汗止め注射(ボツリヌストキシン注射)
※当院3階の「美容皮膚科」にて、自費診療(保険適用外)として行っております。

【治療のメカニズム】
多汗症の部位(手掌、足底、腋窩)の皮膚に、ごく細い針で「ボツリヌストキシン」という薬剤を細かく注射していきます。
汗腺は、交感神経から分泌される「アセチルコリン」という神経伝達物質の指令を受け取って汗を出します。ボツリヌストキシンは、このアセチルコリンの放出を強力にブロックする働きがあるため、注射をした部位の汗腺に「汗を出せ」という指令が届かなくなり、ピタリと汗が止まります。

【効果と持続期間】
効果の現れ方: 注射後、早い方で2〜3日、遅くとも1週間程度で劇的に汗の量が減るのを実感できます。「大変よく効く」と患者様からの満足度が非常に高い治療です。

持続期間: 効果は永久ではなく、最大で約4〜6ヶ月間持続します。そのため、効果を維持するためには半年に1回程度のペースで継続して治療を受ける必要があります。

【こんな方におすすめ】
夏の間だけ、あるいは大切なイベント(結婚式や就職活動など)の期間だけ確実に汗を止めたい方。

手術には抵抗があるが、塗り薬や通院治療では効果が不十分な方。

(※注射時の痛みについては、必要に応じて麻酔クリームなどを使用し、最小限に抑える工夫を行っております。詳しくは3階美容皮膚科のスタッフにお尋ねください。)

日常生活でできる多汗症のセルフケア
クリニックでの治療と並行して、日常のちょっとした工夫で症状を和らげることができます。

通気性の良い衣服の選択: 綿や麻など、吸水性・通気性の高い天然素材の下着や靴下を選びましょう。脇汗パッドの活用も効果的です。

刺激物の摂取を控える: カフェイン(コーヒーやエナジードリンク)や辛い食べ物(香辛料)は、交感神経を刺激して発汗を促すため、過剰な摂取は控えましょう。

ストレスコントロール: 精神的な緊張や不安(精神性発汗)が多汗を引き起こす大きな要因です。「汗をかいたらどうしよう」という不安がさらなる汗を呼ぶ悪循環に陥りやすいため、深呼吸やリラックスできる趣味の時間を持つことが大切です。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 多汗症は完全に治りますか?
A. 手術(剪除法)以外は、汗腺そのものをなくすわけではないため「完治」させる治療ではありません。しかし、外用薬やイオントフォレーシス、注射を適切に組み合わせることで、汗の量を「日常生活に全く支障のないレベル」までコントロールすることは十分に可能です。

Q. 脇の手術(剪除法)をすると、他の場所から汗が増える(代償性発汗)と聞いたのですが?
A. 「他の部位の汗が増える(代償性発汗)」という副作用は、主に胸部の交感神経そのものを切断する手術(ETS手術)で起こりやすい現象です。当院で行っている「剪除法(脇の皮膚の裏の汗腺を直接切り取る手術)」や「注射」「塗り薬」においては、そのような代償性発汗が起こるリスクは極めて低いためご安心ください。

Q. 治療は痛いですか?
A. 塩化アルミニウム外用は痛みがありません(かぶれた場合のヒリヒリ感を除く)。イオントフォレーシスは軽いピリピリ感程度です。手術は局所麻酔をしっかり行うため術中の痛みはありません。注射はチクッとした痛みがありますが、冷却や表面麻酔で痛みを和らげます。

Q. 保険は適用されますか?
A. 塩化アルミニウム液の外用、イオントフォレーシス、および脇の剪除法(医師がワキガ・多汗症と診断した場合)は健康保険が適用されます。汗止め注射(ボツリヌストキシン)は当院では美容皮膚科での自費診療となります。また近年、保険適用となる新しい多汗症の外用薬(ゲル状のお薬や拭き取りタイプのお薬など)も登場しておりますので、患者様の状態に合わせてご提案させていただきます。

最後に:一人で悩まず、まずはご相談を
多汗症は、他人に理解されにくい分、精神的な負担が非常に大きい疾患です。
「たかが汗で病院に行くなんて大げさだろうか…」とためらう必要は一切ありません。当院では、小さなお子様からご年配の方まで、年齢や性別を問わず多くの方が汗の治療に通われています。

患者様お一人おひとりの生活背景や、どこまで汗を減らしたいかというゴールに合わせて、無理のない治療計画を一緒に立てていきましょう。少しでも生活の不便さや心の負担を軽くするお手伝いができれば幸いです。

どうぞお気軽に、ヒロクリニック皮膚科・形成外科の扉を叩いてみてください。スタッフ一同、温かくお迎えいたします。

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