別名・関連疾患名
- Chromosome 15q14 deletion syndrome(15q14欠失症候群) (NCBI)
- Monosomy 15q14 / del(15)(q14)(15q14部分単体性/15q14欠失) (NCBI)
- Cleft palate–congenital heart defect–intellectual disability syndrome due to 15q14 microdeletion(15q14微小欠失による「口蓋裂+先天性心疾患+知的発達の障害」症候群)
※本症候群の中核表現型(口蓋の異常・心奇形・発達/知的の課題)を強調した呼称として扱われます。 (MalaCards)
MEIS2 haploinsufficiency-related phenotype(MEIS2半量不全関連表現型)
※15q14欠失でしばしば含まれる MEIS2 の機能低下が主要症状に関与すると考えられています。
対象染色体領域
15番染色体 長腕(q)15q14領域の微小欠失(microdeletion)が原因となります。欠失の大きさ(kb〜Mb)やブレイクポイントは症例ごとに異なり、15q14単独の欠失として報告される場合もあれば、周辺領域(例:15q13〜15q15)まで及ぶ場合もあります。
代表的に関与が議論される遺伝子・領域
- MEIS2(15q14):15q14欠失で頻繁に含まれ、口蓋の異常(粘膜下口蓋裂を含む)、特徴的顔貌、先天性心疾患、発達遅延/ASD などの中核症状に関与する可能性が高いとされています。
- RareChromo(Unique)資料では MEIS2 の座標例として GRCh37/hg19: 37,183,222–37,393,500、GRCh38/hg38: 36,889,204–37,101,311 が示されています(遺伝子座標は参照アセンブリに依存)。
- ACTC1:より広い欠失で含まれることがあり、先天性心疾患(例:ファロー四徴など)との関連が議論される症例報告があります。 (サイエンスダイレクト)
なお、15q14欠失が MEIS2を含まない 例もあり、その場合は他の欠失遺伝子が症状に影響している可能性があります。
発生頻度
非常に稀(超希少)で、正確な出生頻度・有病率は確立していません。MedGen(Orphanet由来の記載を含む)でも、疾患定義は示される一方で、一般集団における確定的な頻度値は示されていません。 (NCBI)
一方で、RareChromo(Unique)の資料では「15q14単独欠失」として医学文献上 少なくとも30例が報告され、Uniqueにも追加の登録例がある、という趣旨の記載があります(時点依存)。
頻度が定まりにくい理由として、
- 欠失サイズと含まれる遺伝子が症例ごとに異なる
- 症状の軽重が幅広く、軽症例は診断に至りにくい
- CMA(染色体マイクロアレイ)など検査普及とともに検出が増えうる
といった点が挙げられます。
臨床的特徴(症状)
15q14 microdeletion syndrome の表現型は幅が広いものの、特に MEIS2を含む欠失では、以下の組み合わせが繰り返し報告されています。
1) 発達・学習(神経発達)
- 発達遅延(乳幼児期からの運動・言語の獲得の遅れ) (NCBI)
- 知的発達の遅れ/知的障害:軽度〜中等度まで幅があり得ます。 (NCBI)
- 言語発達の課題:構音の問題、鼻咽腔閉鎖不全(口蓋の異常に関連)による鼻声、学童期以降の読み書きの困難などが症例報告に見られます。 (PMC)
2) 自閉スペクトラム・行動面
- 自閉スペクトラム症(ASD)、社会的コミュニケーションの課題、こだわり行動などが報告されています。 (PMC)
- かんしゃく、易刺激性、自傷などの行動面の困りごとが併存することもあります(個人差が大きい)。 (PMC)
3) 口蓋の異常・摂食(哺乳)
- 口蓋裂/粘膜下口蓋裂、口蓋垂裂、鼻咽腔閉鎖不全 など、口腔・咽頭の形成異常が中核所見として扱われます。 (PMC)
- 乳児期に 哺乳障害・嚥下の課題、反復する中耳炎(滲出性中耳炎)などがみられることがあります。 (PMC)
4) 先天性心疾患
- 心房中隔欠損(ASD)/心室中隔欠損(VSD) などの中隔欠損が、臨床特徴として挙げられています。 (NCBI)
- より広い欠失では、心奇形(例:ファロー四徴など)を伴う症例報告もあります。 (サイエンスダイレクト)
5) 成長・体格、顔貌
- 低身長(short stature)、成長の個人差が報告されます。 (NCBI)
- 顔貌の特徴(facial dysmorphism):具体像は症例により幅があるものの、「特徴的顔貌」を伴うことがあるとまとめられています。 (NCBI)
6) その他(筋緊張・耳鼻科領域など)
- 筋緊張低下(hypotonia)が臨床特徴として挙げられています。 (NCBI)
耳の形態異常(低位耳、後方回転耳)などがHPO項目として列挙されています。 (NCBI)
原因
1) 遺伝学的機序(なぜ起こるか)
原因は 15q14領域の欠失(コピー数減少)で、欠失により該当領域の遺伝子が 1コピーしか存在しない(半量不全:haploinsufficiency) 状態となることが、症状につながると考えられます。特に MEIS2 の半量不全は、口蓋・心臓・神経発達にまたがる症状の中核に関与するとする報告が複数あります。 (PMC)
2) 発生形式(de novo/遺伝)
- de novo(新生突然変異):両親に欠失が見つからず、本人に新たに生じたと考えられる例が報告されています。 (PMC)
- 遺伝性:家系内で伝わる可能性も理論上あり得ます。RareChromo資料では、親が同じ欠失を持つ場合、次の妊娠で子に受け継がれる確率は理論上 50% と説明されています(ただし表現型は予測困難)。
治療方法
15q14 microdeletion syndrome に対して、欠失そのものを元に戻す 根本治療は確立していません。そのため、診療の中心は 合併症の治療と、発達・生活の質を上げる 早期支援になります。
1) 口蓋裂・鼻咽腔閉鎖不全への対応
- 口蓋裂(粘膜下口蓋裂を含む)の評価:形成外科/口腔外科/耳鼻科の連携
- 必要に応じて外科的治療(口蓋形成など)、構音訓練
- 滲出性中耳炎や難聴評価:耳鼻科フォロー、鼓膜チューブなど適応判断
口蓋の問題は言語発達や摂食にも影響するため、早期評価が重要です。 (PMC)
2) 先天性心疾患の管理
- 心エコーなどで病型を確定し、小児循環器で経過観察
- VSD/ASDなどは自然閉鎖する場合もある一方、治療介入が必要な例もあるため個別判断
症例報告ではVSDが後に自然閉鎖した例も記載されています。 (PMC)
3) 発達支援(療育・リハビリ・教育支援)
- 乳幼児期からの早期介入:理学療法、作業療法、言語療法
- 学童期以降:特別支援教育や学習支援、環境調整
- コミュニケーション支援(代替コミュニケーション含む)
15q14欠失では言語・社会性の課題が目立つことがあり、支援の効果が生活機能に直結します。 (PMC)
4) ASD/行動面への対応
- 行動療法、ペアレントトレーニング、学校との連携
- 併存症(不安、注意の課題など)に対しては児童精神科・発達外来で個別に評価し、必要なら薬物療法も含めて検討
ASD特性や行動の困りごとは症例で報告があり、環境調整が重要です。 (PMC)
5) 遺伝カウンセリング
- 欠失範囲(どの遺伝子を含むか)と症状の関係、再発リスクの整理
- 家族内検査の検討(特に遺伝性が疑われる場合)
将来の妊娠・出生前検査に関する情報提供
欠失の影響は個人差が大きいため、「予後の幅」を前提に、家族の不安を具体的に減らす説明が重要です。
まとめ(サイト向け)
15q14 microdeletion syndrome は、15番染色体長腕の 15q14領域の微小欠失により生じる超希少疾患です。欠失範囲は個人差があり、とくに MEIS2 を含む欠失では、口蓋の異常(口蓋裂・粘膜下口蓋裂、鼻咽腔閉鎖不全)、先天性心疾患(ASD/VSDなど)、発達遅延・知的発達の課題、自閉スペクトラム症(ASD)などが主要な臨床像として報告されています。頻度は確立していませんが、文献報告自体が限られており非常に稀と考えられます。治療は欠失そのものの根本治療ではなく、口蓋裂や心疾患の専門的管理、療育・言語訓練などの早期支援、行動面への支援を組み合わせる支持療法が中心です。加えて、欠失がde novoの場合も遺伝性の場合もあり得るため、検査結果を踏まえた 遺伝カウンセリングが重要になります。 (NCBI)
参考文献元
- NCBI MedGen: 15q14 microdeletion syndrome(C4305230) (NCBI)
- Shimojima K, et al. A 15q14 microdeletion involving MEIS2 identified in a patient with autism spectrum disorder. (2017) (PMC)
- Louw JJ, et al. MEIS2 involvement in cardiac development, cleft palate, and intellectual disability. (2015) (PubMed)
- Unique / RareChromo.org: 15q14 deletions(情報ガイド)
- Chen CP, et al. Prenatal diagnosis… microdeletion in 15q14 encompassing ACTC1 and MEIS2… (2016) (サイエンスダイレクト)
- MalaCards: Chromosome 15q14 Deletion Syndrome(関連情報の集約) (MalaCards)


