別名・関連疾患名
- 15q24 microdeletion syndrome — 15q24欠失症候群とも呼ばれる代表名。(KEGG)
- Witteveen-Kolk syndrome — 欠失領域に含まれる SIN3A のハプロ不全により神経発達障害を呈する症状として認識される名称で、15q24微小欠失症候群と強く関連。(ウィキペディア)
- 15q24 interstitial deletion — 15q24付近に中間的欠失を示す染色体異常全般を指すことがある。(Unique)
(A-D という表現は、一般に欠失ブレイクポイントの位置の区別(例:15q24.1/15q24.2/15q24.3 など)や大きさの違いにより、A〜D のようなサブタイプ的呼び方がされることがあるため付記してあります。)
対象染色体領域
ヒト第15番染色体の長腕(q)の 15q24 領域が微小欠失することにより発症します。欠失は 約0.5〜6 Mb という大きさで個人差があり、欠失が含む領域により臨床像に幅があります。(square.umin.ac.jp)
この領域には SIN3A をはじめとする発達関連遺伝子が含まれており、それらのハプロ不全(1コピー欠失)が主な病因と考えられています。(マイクロアレイ染色体検査の診断・診療体制の構築|東京女子医科大学ゲノム診療科)
発生頻度
15q24 deletion syndrome は 極めて稀な染色体異常疾患です。
- これまでに世界で報告された症例は 60例を超える程度 とされるが、正確な出生頻度は不明です。(PMC)
- 一般集団における推定発生率は約 1/42,000 とする報告があり、知的障害や先天奇形をもつ患者集団では約 1/1,751 という推定値もあります。(PMC)
- 家族内での遺伝例は極めてまれで、ほとんどが de novo(新生突然変異) として発症します。(KEGG)
臨床的特徴(症状)
15q24 deletion syndrome の臨床像は 多系統に及ぶ表現型の幅が広いものの、共通して示される主要な症状と合併所見は以下のとおりです。
1. 神経発達 / 知的機能
- 発達遅延(developmental delay) — 運動・言語の獲得が遅れる。(A〜D 全般)(PMC)
- 知的障害(intellectual disability) — 軽度〜中等度が多い。(PMC)
- 自閉スペクトラム症(ASD)を含む神経行動特徴 — 発達外来で ASD などの診断を伴うことあり。(PMC)
- 注意欠如/多動性障害(ADHD) や情緒面の問題も報告。(スプリンガー・ナATURE)
2. 顔貌異常(Dysmorphic features)
特徴的な顔貌が報告されており、以下のような形態特徴があります:
- 額が高い / 髪の生え際が後退気味 (ヒロクリニック)
- 眉が濃い、眉間が広い (ヒロクリニック)
- 広い鼻梁、長い人中 / 平坦な顔面構造 (ヒロクリニック)
- 眼間開離、上まぶたが下がり気味(下向き眼裂)など (ヒロクリニック)
これらの特徴は “15q24 共通顔貌” として報告され、診断のヒントになります。(ヒロクリニック)
3. 身体的特徴・骨格
- 成長遅延(低身長、低体重) — 生後早期から観察されることが多い。(PMC)
- 小頭症(microcephaly) — 脳成長の遅れを反映。(PMC)
- 短指 / 指趾異常 — 指が短い、関節が緩いなど。(ヒロクリニック)
- 筋緊張低下(hypotonia) — 筋肉の張りが低く、遅い運動獲得につながることがある。(KEGG)
4. 合併奇形・器官異常
- 先天性心奇形 — 心室中隔欠損(VSD)などが報告。(PMC)
- 泌尿生殖器異常(hypospadias 等) — 男児での症例に見られることあり。(research.rug.nl)
- 横隔膜ヘルニア、腸閉鎖や難聴、成長ホルモン欠損の報告例あり — 症例により多様。(東京・ミネルバクリニック)
5. その他の症状
原因
15q24 deletion syndrome の主な原因は、染色体 15 の q24 領域における微小欠失(microdeletion) です。
- 欠失は 非アレル同源組換え(NAHR: non-allelic homologous recombination) によるもので、低コピー反復配列(LCR)が多い領域で発生しやすい。(KEGG)
- 欠失領域に含まれる SIN3A(switch-insensitive 3 transcription regulator family member A) のハプロ不全は、神経発達症や知的障害の中核的な原因として大きな役割を果たすと考えられています。(KEGG)
- 欠失サイズは 0.5 Mb〜6 Mb と広く、欠失範囲に含まれる他遺伝子も影響し、臨床像の多様性を説明するとされています。(square.umin.ac.jp)
- ほとんどの症例は de novo(新生突然変異) であり、親は正常な染色体構造を持っています。(KEGG)
治療方法
現在、15q24 deletion syndrome の根本的な治療法(欠失領域を治す治療)は存在しません。
治療は 症状ごとの支持療法と合併症への対応 が基本です。以下のような多職種によるケアが望まれます。
発達支援・療育
- 早期療育:理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語療法(ST)などによる運動・言語・社会性の発達支援。
- 発達外来プログラム:発達評価に基づく包括的支援計画。
医療的管理
- 心臓奇形の外科的/内科的治療:必要に応じ循環器専門医の管理。
- 泌尿生殖器の異常:小児外科・泌尿器科での評価および手術的修正。
- てんかん・神経症状:抗てんかん薬や神経科による評価・管理。
行動・心理支援
- 行動療法、心理カウンセリング、教育支援計画(IEP)による社会性支援。
- 自閉スペクトラムやADHD類似症状への支援。
定期フォロー
- 継続的な発育・健康評価、視覚/聴覚評価、栄養管理、免疫評価。
- 多職種(小児科、遺伝子専門医、発達医療チーム)による長期フォロー。
遺伝カウンセリング
- 欠失の性質、再発リスク、出生前検査(CMA/羊水検査など)の説明。
- 家族計画および支援リソースの案内。
まとめ
15q24 deletion syndrome (A-D) は、15番染色体の 15q24 領域の微小欠失 による極めて稀な染色体異常です。臨床像は 発達遅延、知的障害、特徴的な顔貌、成長遅延、筋緊張低下、先天性奇形(心臓/泌尿生殖器)、行動面の課題 などを含み、欠失の範囲と含まれる遺伝子によって重症度が異なります。欠失領域に含まれる SIN3A のハプロ不全は特に神経発達面への影響が大きいとされ、Witteveen-Kolk症候群という関連症候群としても認識されています。治療は症状ごとのサポートと多職種連携が中心で、根本治療はありません。
参考文献元
- Chromosome 15q24 microdeletion syndrome (Witteveen-Kolk syndrome) — rare microdeletion syndrome の疾患概要、遺伝子/SIN3A の役割。(KEGG)
- Zhang Y ら “15q24 microdeletion: Molecular and phenotypic characteristics” — 発生頻度、発達遅延、臨床スペクトル。(PMC)
- Mefford HC ら “Further clinical and molecular delineation…” — 15q24欠失臨床と遺伝子解析。(jmg.bmj.com)
- Minerva Clinic / 15q24 微小欠失症候群 — 詳細な所見と身体形態の特徴。(東京・ミネルバクリニック)
- UMIN CMA資料 “15q24微細欠失症候群” — 症状、欠失サイズ、支持療法概要。(square.umin.ac.jp)


