別名・関連疾患名
- 15q25.2 microdeletion syndrome — 15q25.2 領域の微小欠失による染色体異常症候群の一般名。 (DoveMed)
- Chromosome 15q25 deletion syndrome — 15番染色体 q25 領域欠失症候群として関連情報で扱われる名称。 (MalaCards)
- 症例報告では 15q25.2 proximal deletion と明記されることがあり、特に欠失が近位側に限局する場合の表記として使われます。 (ヒロクリニック)
対象染色体領域
第15番染色体 長腕(q)の 25.2 領域における 微小欠失(microdeletion) が本症候群の原因です。
この領域は 15q25.2A〜15q25.2D など 低コピー反復配列(LCR) を介した再編成が起こりやすい部位で、欠失は通常 1.4 Mb 〜 数 Mb の大きさになることがあります。 (PubMed)
欠失領域には CPEB1、AP3B2、SCARNA15、HOMER2、RPS17 など複数の遺伝子 が含まれ、神経発達や細胞機能に関連する遺伝子が影響を受けることが表現型と関連すると考えられています。 (ClinGen)
発生頻度
15q25.2 deletion (proximal) syndrome は 極めて稀な染色体異常疾患であり、報告例は非常に限られています。
- 世界的な症例数は 10例未満〜数十例程度 とされ、正確な集団レベルの発生頻度は確立していません。 (DoveMed)
- 軽度の症状例は診断されないまま一生を過ごすこともあり、実際の頻度は報告値より高い可能性も指摘されています。 (DoveMed)
- 多くは 新生突然変異(de novo) として発生しますが、まれに家族内伝播例も報告されています。 (ClinGen)
臨床的特徴(症状)
15q25.2 deletion (proximal) syndrome の臨床像は多彩であり、個体差が大きいものの、以下のような主要な特徴が複数の報告で示されています。 (PubMed)
1. 発達遅延・知的障害
多くの患者で 発達遅延(developmental delay) と 知的障害(intellectual disability) が報告されています。特に 言語発達と運動発達の遅れ が目立つことがあります。
幼児期におけるスピーチ遅延や協調運動の課題、学童期での学習面での困難が観察されます。 (PubMed)
2. 行動・神経発達症状
欠失患者では 行動問題や情緒面の課題(例えば注意力欠如、社会性の困難など)が報告されることがあり、自閉症スペクトラム障害(ASD)の類似症状や不安傾向が見られる場合もあります。
これらは多くの染色体微小欠失症でも共通する特徴ですが、15q25.2欠失でも同様に観察されます。 (PubMed)
3. 身体的特徴
15q25.2 欠失例には 特徴的な顔貌(軽度の異常顔貌) が見られることがあります。これには眼の距離が広い、下眼瞼裂の形状異常などが含まれる場合がありますが、すべての患者に共通するわけではありません。 (MalaCards)
4. 身長・体格の異常
低身長(short stature) が報告される例があります。また、筋緊張や骨格の構造に関連する異常が観察されることがあります。 (MalaCards)
5. 先天性奇形
15q25.2欠失の症例の一部では、以下のような先天性奇形が見られています。
- 先天性横隔膜ヘルニア(congenital diaphragmatic hernia; CDH) — この領域の欠失と関連した報告が示されています。 (PMC)
- 陰嚢裂・鼠径ヘルニア — 一部症例で観察されています。 (PubMed)
- 貧血や赤血球関連の異常(例:Diamond–Blackfan貧血傾向) — 特定遺伝子欠失に関連する可能性が示唆されています。 (PMC)
- 性腺機能低下/早発卵巣不全 — 場合によっては欠失に含まれる BNC1 遺伝子の影響で生殖機能に課題が出る例も報告されています。 (SpringerLink)
6. その他の機能異常
欠失例には 貧血、臓器の形成異常、胸部変形 など、多彩な身体所見が報告されることがありますが、これらは欠失範囲や含まれる遺伝子によって個体差が大きいです。 (PubMed)
原因
本疾患は、15番染色体長腕 q25.2 領域の 一部が欠失すること によって発症します。この欠失は通常 染色体マイクロアレイ解析(CMA)/array-CGH により検出される微小欠失で、環境因子や生活習慣とは関連しない 遺伝的構造変化 です。 (DoveMed)
欠失は多くの場合 de novo(新生突然変異) として生じますが、まれに親からの遺伝として伝わる例もあります。欠失される遺伝子が重要な機能を持つ場合、その ハプロ不全(haploinsufficiency) によって神経発達や身体発達の機能が影響を受けると考えられています。 (ClinGen)
拡大された症例研究では、欠失領域内の遺伝子として CPEB1、AP3B2、SCARNA15 が知的発達に関連する候補として提唱されています。 (ClinGen)
治療方法
15q25.2 deletion (proximal) syndrome に対する 根本的な治療(欠失そのものを修復する治療)は存在しません。そのため、治療は主に 症状ごとの支持療法とリハビリテーション になります。
発達支援・療育
- 早期介入(理学療法、作業療法、言語療法)による運動・言語発達支援。
- 学童期以降は 個別教育計画(IEP) を作成し、教育支援サービスを適用。
行動・神経支援
- ASD や ADHD 類似の行動療法・心理支援。
- 情緒不安定や不安症状がある場合には心理カウンセリング。
先天奇形の医療管理
- 先天性横隔膜ヘルニア や各種奇形に対しては外科的修正・専門医フォロー。
- 性腺や生殖機能への影響がある場合は 内分泌・婦人科/泌尿器科評価。
健康・合併症の管理
- 貧血管理や栄養評価。
- 定期的な成長・発達評価。
- 感覚機能(視覚・聴覚)フォロー。
遺伝カウンセリング
- 欠失の性質、再発リスクの評価と説明。
- 出生前検査オプションと妊娠計画の相談。
まとめ
15q25.2 deletion (proximal) syndrome は、15番染色体長腕の q25.2 領域の微小欠失 による非常に稀な先天性染色体異常症候群です。症状は 発達遅延・知的障害、行動面の課題、身体的特徴、先天性奇形、性腺機能異常、貧血傾向 など多彩で個人差が大きいことが特徴です。欠失に含まれる複数の遺伝子が神経発達や他の身体機能に関わっていると考えられ、治療は根本治療ではなく 症状ごとの支持療法と多職種支援 が基本になります。
参考文献元
- Palumbo O, et al. An emerging phenotype of interstitial 15q25.2 microdeletions: clinical report and review — 発達遅延・行動異常・軽度異常など。 (PubMed)
- Wat MJ, et al. Recurrent microdeletions of 15q25.2: congenital diaphragmatic hernia, cognitive deficits, anemia — 15q25.2欠失と関連合併症。 (PMC)
- Chen Z, et al. 15q25.2 microdeletion phenotype: premature ovarian failure case report — 欠失と生殖機能障害。 (SpringerLink)
- ClinicalGenome/ISCA Region Summary 15q25.2 — 欠失に含まれる候補遺伝子と発達関連。 (ClinGen)
- Hiro Clinic / NIPT Summary: 15q25.2 Deletion (Proximal) Syndrome — 原因と基本症状概要。 (ヒロクリニック)


