7p deletion syndrome

Posted on 2026年 1月 21日

別名・関連疾患名

  • 7p欠失症候群
  • 7p-症候群(7p minus syndrome)
  • 7番染色体短腕欠失症候群
  • 7pモノソミー(Monosomy 7p / Partial monosomy 7p)
  • 関連:グレイグ・セファロポリシンダクティリー症候群(Greig Cephalopolysyndactyly Syndrome; GCPS)
    • ※7p14.3領域のGLI3遺伝子が欠失に含まれる場合、この疾患の特徴(多指・合指・巨頭)が現れます。
  • 関連:ゼーツレ・チョコット症候群(Saethre-Chotzen syndrome)
    • ※7p21.1領域のTWIST1遺伝子が欠失に含まれる場合、この疾患の特徴(頭蓋骨縫合早期癒合症)が現れます。
  • 7p21欠失症候群(7p21 deletion syndrome)

対象染色体領域

7番染色体 短腕(p)領域

本疾患は、ヒトの7番染色体の短腕(pアーム)の一部が欠失すること(コピー数が1つになる:ハプロ不全)によって生じる染色体異常症候群の総称です。

「7p」とひとくくりにされますが、欠失する場所(バンド)や大きさによって症状は大きく異なります。大きく分けて以下の2つの重要な領域(クリティカルリージョン)が知られています。

1. 7p21領域(TWIST1遺伝子を含む):

  • 染色体の先端に近い領域です。
  • ここには、頭蓋骨の形成に重要なTWIST1遺伝子が含まれています。この領域が欠失すると、頭の骨の継ぎ目が早く閉じてしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症」や、特徴的な顔貌が見られます。

2. 7p13-p14領域(GLI3遺伝子を含む):

  • 染色体の中間付近の領域です。
  • ここには、手足の指や脳の形成に重要なGLI3遺伝子が含まれています。この領域が欠失すると、指が多い(多指症)、指がくっついている(合指症)、頭が大きい(巨頭症)といった特徴が見られます。

【隣接遺伝子症候群としての性質】

7p欠失症候群の多くは、上記の重要な遺伝子だけでなく、その周りの遺伝子もまとめて欠失しています。そのため、遺伝子単体の変異(点変異)による疾患(GCPSやゼーツレ・チョコット症候群単独)に比べて、**「知的障害」や「発達遅滞」**が重くなる傾向があります。これを「隣接遺伝子症候群(Contiguous gene syndrome)」と呼びます。

発生頻度

稀(Rare)

正確な発生頻度は確立されていません。

世界的な医学文献における報告数は、領域ごとに異なりますが、数百例規模です。

頭蓋骨縫合早期癒合症や多指症という目に見える特徴があるため、比較的診断されやすい疾患ですが、微細な欠失の場合は見逃されている(過少診断)可能性もあります。

性別による発生頻度の差はなく、男児にも女児にも発生します。

臨床的特徴(症状)

7p deletion syndromeの症状は、**「頭蓋顔面の特徴」「手足の異常」「発達遅滞」**が3大特徴です。

欠失部位によって症状の出方が大きく異なるため、ここでは代表的な症状を解説します。

1. 頭蓋顔面の特徴(Craniofacial features)

欠失部位により、「頭が大きくなるタイプ」と「頭の形が変わるタイプ」に分かれます。

  • 頭蓋骨縫合早期癒合症(Craniosynostosis):
    • 主に**7p21欠失(TWIST1欠失)**で見られます。
    • 赤ちゃんの頭の骨の継ぎ目(縫合線)が、脳が成長しきる前に閉じてしまう状態です。
    • 閉じる場所によって、短頭(絶壁)、舟状頭(前後に長い)、三角頭(おでこが尖る)などの変形が生じます。
    • 放置すると脳圧が上がり、発達に影響することがあるため、手術が必要になることがあります。
  • 大頭症(Macrocephaly) / 前頭部突出:
    • 主に**7p13-14欠失(GLI3欠失)**で見られます。
    • おでこが広く、前に張り出しており、頭囲が大きいことが特徴です。
    • 大泉門(頭のてっぺんの柔らかい部分)が大きく、閉じるのが遅い傾向があります。
  • 顔貌:
    • 眼間開離(Hypertelorism): 目と目が離れている。
    • 眼瞼下垂: まぶたが下がっている。
    • 鼻根部が低く広い。
    • 低位付着耳、耳介の変形。

2. 手足・四肢の異常(Limb anomalies)

診断の重要な手がかりとなります。

  • 多指症(Polydactyly):
    • 手や足の指が6本以上ある状態です。特に親指側(軸前性)や小指側(軸後性)に見られます。
  • 合指症(Syndactyly):
    • 指と指の間が水かき状にくっついている状態です。
    • 手だけでなく、足の指にも見られます。
  • 多合指症(Polysyndactyly):
    • 多指と合指が合併している状態です。これはGLI3遺伝子の影響によるグレイグ症候群様の特徴として典型的です。
  • 指の特徴:
    • 親指や足の親指が幅広い(Broad thumbs/halluces)。

3. 神経発達・認知機能

欠失範囲が広いほど、症状は重くなる傾向があります。

  • 発達遅滞(DD) / 知的障害(ID):
    • 軽度から重度まで幅広いです。
    • GLI3TWIST1遺伝子の単独変異では知能が正常なことも多いですが、染色体欠失(deletion)の場合は周辺の遺伝子も失われるため、多くの場合で中等度〜重度の知的障害を伴います。
  • 言語発達遅滞:
    • 言葉の理解・表出ともに遅れます。
  • 運動発達遅滞:
    • 筋緊張低下(Hypotonia)があり、首すわりや歩行開始が遅れます。

4. その他の合併症

  • 骨格: 側弯症、関節の緩さ、あるいは関節拘縮。
  • 心疾患: 心室中隔欠損症(VSD)、動脈管開存症(PDA)などの先天性心疾患(約10〜20%)。
  • 泌尿生殖器: 停留精巣(男児)、水腎症、膀胱尿管逆流症など。
  • 眼科: 斜視、屈折異常。

原因

7番染色体短腕(7p)における微細欠失が原因です。

1. 発生機序

  • De novo(新生突然変異):
    • 7p欠失症候群の多くは、両親からの遺伝ではなく、受精の過程(精子や卵子が作られる時、または受精直後)で偶然生じた突然変異です。
    • 親の年齢や妊娠中の環境が原因で起こるものではありません。
    • この場合、両親の染色体は正常であり、次子への再発リスクは非常に低い(1%未満)とされています。
  • 家族性(親の転座):
    • 親が「均衡型転座(染色体の場所が入れ替わっている)」などの構造異常を持っている場合があります。
    • この場合、親は健康ですが、子に不均衡な欠失が生じます。
    • 親が転座保因者の場合、きょうだいへの再発リスクが高くなります。

2. ハプロ不全(Haploinsufficiency)と責任遺伝子

  • TWIST1(7p21.1): * 頭蓋骨の縫合線を制御する遺伝子です。これが半分になると、骨の成長シグナルが乱れ、早期癒合が起こります。
  • GLI3(7p14.3):
    • 手足の指の数や形、脳の形を決める「ソニック・ヘッジホッグ(SHH)シグナル」の調節因子です。これが半分になると、指の形成停止がうまくいかず多指になったり、指の分離ができず合指になったりします。

診断方法

「頭の形や大きさの異常」「多指・合指」「発達遅滞」の組み合わせから疑われます。

  • マイクロアレイ染色体検査(CMA):
    • 本症候群の診断における**ゴールドスタンダード(第一選択)**の検査です。
    • 7p領域の欠失を検出し、その正確なサイズ(bp単位)と、TWIST1GLI3といった重要遺伝子が含まれているかを特定できます。
    • これにより、予後(手術の必要性や発達の見通し)をより正確に予測できます。
  • 頭部CT / 3D-CT:
    • 頭蓋骨縫合早期癒合症の診断と、手術計画のために行われます。縫合線の閉鎖状況を立体的に確認します。
  • レントゲン検査:
    • 手足の骨の構造(多指・合指の骨の状態)を確認します。
  • 両親の染色体検査:
    • 診断確定後、次子のリスク評価のために行われることがあります。

治療方法

欠失した染色体を修復する根本的な治療法はありません。

治療は、頭蓋骨や手足の形態異常に対する外科的治療と、発達を促す療育が中心となります。

1. 頭蓋顔面外科・脳神経外科的治療

7p21欠失(頭蓋骨縫合早期癒合症)の場合、非常に重要です。

  • 頭蓋形成術:
    • 脳の成長に必要なスペースを確保し、頭蓋内圧亢進を防ぐため、また整容面(見た目)を改善するために手術を行います。
    • 時期は変形の程度や脳圧によりますが、生後数ヶ月〜1歳頃に行われることが多いです。
    • 内視鏡手術や、骨延長器を用いた手術など、お子さんの状態に合わせた術式が選択されます。

2. 手足の形成外科的治療

  • 多指症・合指症の手術:
    • 手の機能獲得と整容面の改善を目的に、余分な指の切除や、くっついている指の分離手術を行います。
    • 通常、1歳前後から就学前に行われることが多いですが、指の使い勝手などを考慮して時期を決定します。

3. 発達・療育的支援

  • 早期療育:
    • 診断後、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)を開始します。
  • 理学療法(PT):
    • 筋緊張低下に対し、運動発達を促します。
  • 作業療法(OT):
    • 手指の手術後など、手の機能(つまむ、握るなど)を高めるリハビリを行います。
  • 言語聴覚療法(ST):
    • 言葉の遅れに対し、コミュニケーション指導を行います。

4. 合併症の管理

  • 眼科: 斜視や屈折異常に対し、眼鏡装用などの治療を行います。
  • 心疾患: 定期的な経過観察や、必要に応じた手術を行います。

5. 遺伝カウンセリング

  • 情報の整理:
    • 「7p欠失」といっても、GLI3欠失(グレイグ型)とTWIST1欠失(チョコット型)では症状が異なります。お子さんのタイプに合わせた正確な情報提供を行います。
  • 家族支援:
    • 次子再発リスクや、将来の生活設計について相談に乗ります。

まとめ

7p deletion syndromeは、7番染色体の一部が欠けることで起こる疾患です。

この疾患のお子さんは、生まれつき頭の形が少し特徴的だったり、手足の指が多かったりくっついていたりすることがあります。

これらは、赤ちゃんがお腹の中で体を作るときに必要な「設計図(遺伝子)」の一部が不足していたために起こったものです。

「頭の手術」や「指の手術」と聞くと、ご家族はとても不安に思われるかもしれません。しかし、現在の医療技術では、これらの手術は確立されており、適切な時期に行うことで、脳の発達を守り、手の機能を十分に引き出すことができます。

また、発達に関してはゆっくりとしたペースで進んでいきますが、療育を通じて「できること」は着実に増えていきます。

手術を乗り越え、リハビリを頑張るお子さんの姿は、ご家族に多くの勇気を与えてくれるはずです。

この疾患は、欠けている場所によって症状が一人ひとり違います。インターネット上の情報だけで判断せず、遺伝子検査の結果をもとに、その子自身の「特徴」を正しく理解することが大切です。

脳神経外科医、形成外科医、小児科医、療育スタッフ、そして遺伝カウンセラーとチームを組み、お子さんの健やかな成長を、長く、温かく支えていきましょう。

参考文献

  • Cai, J., et al. (2003). A spectrum of 7p deletions: clinical phenotype and molecular characterization.
    • (※7p21(TWIST1)と7p13(GLI3)を含む様々な7p欠失症例を比較し、欠失部位と臨床症状(頭蓋癒合 vs 巨頭・多指)の明確な相関(Genotype-Phenotype Correlation)を示した重要論文。)
  • Johnston, J.J., et al. (2002). Molecular analysis of the GLI3 gene in 107 cases of polysyndactyly.
    • (※GLI3遺伝子の異常が多指・合指症の原因であることを詳細に解析し、微細欠失も含めた遺伝学的背景を明らかにした研究。)
  • El-Gharbawy, A.H., et al. (2006). Molecular characterization of a patient with 7p21 deletion and Saethre-Chotzen syndrome.
    • (※TWIST1を含む7p21欠失患者の症例報告。隣接遺伝子症候群としての発達遅滞と、頭蓋骨縫合早期癒合症の関連について詳述。)
  • Unique (Rare Chromosome Disorder Support Group): 7p deletions (2018).
    • (※患者家族向けに、頭蓋骨の手術、手足のケア、発達の目安、療育のアドバイスなどを平易にまとめたガイドブック。)
  • GeneReviews® [Internet]: Greig Cephalopolysyndactyly Syndrome / Saethre-Chotzen Syndrome.
    • (※本症候群の主要な表現型であるGCPSおよびSCSの診断基準、最新の管理指針、遺伝カウンセリング情報を網羅した、臨床現場で最も信頼されるデータベース。)

詳しくは ヒロクリニック全国のクリニック一覧 をご覧ください。