Edward’s syndrome

Posted on 2026年 1月 22日

別名・関連疾患名

  • 18トリソミー(Trisomy 18)
    • ※遺伝学的に最も正確で、臨床現場で最も一般的に使用される名称です。
  • Eトリソミー
    • ※染色体の大きさによる分類(A〜Gグループ)に基づいた呼称です。
  • 18番染色体三体性

対象染色体領域

18番染色体 全体

通常、ヒトの細胞には18番染色体が2本存在しますが、エドワーズ症候群ではこの18番染色体が3本存在します。

【ゲノム上の詳細と影響】

18番染色体は、約7,800万個の塩基対で構成されており、数百の遺伝子が含まれています。この染色体が1本過剰になることで、そこに含まれる遺伝子の産物(タンパク質など)のバランスが崩れます。これを「遺伝子量効果」と呼び、胎児の全身の臓器形成において複雑かつ深刻な影響を及ぼします。特に脳、心臓、腎臓、消化器、骨格系において、極めて高い頻度で先天性の形成異常が引き起こされます。

発生頻度

出生児 3,500人 〜 8,500人に1人

  • 頻度: ダウン症候群(21トリソミー)に次いで2番目に多い常染色体トリソミーです。
  • 母体年齢との相関: 母親の出産年齢の上昇に伴い、発生頻度が高くなる傾向があります。
  • 性差: 出生時の男女比は、女児の方が男児よりも圧倒的に多く(約3:1)、特に長期生存例の多くは女児です。これは、男児のトリソミー胎児の方が流産に至る確率が高いためと考えられています。
  • 胎児期の予後: 妊娠中に18トリソミーと診断された場合、その約70〜90%が残念ながら自然流産または死産に至ります。

臨床的特徴(症状)

エドワーズ症候群の症状は、全身のほぼすべての臓器に及びます。出生時に認められる特徴的な身体所見は、診断の強力な手がかりとなります。

1. 外表的な特徴(特徴的顔貌・四肢)

  • 頭部・顔面:
    • 後頭部突出: 頭の後ろ側が突き出している。
    • 小顎症: 下あごが非常に小さい。
    • 耳介低位・変形: 耳の位置が低く、形が独特(尖っているなど)。
    • 眼瞼裂短小: 目が小さい。
  • 四肢の特徴:
    • 重なり指(Overlapping fingers): 人差し指が中指の上に、小指が薬指の上に重なるようにして手を握る、本症候群に極めて特異的な所見です。
    • 揺り椅子状足底(Rocker-bottom feet): 足の裏が揺り椅子の脚のように丸く突出している。
    • 爪の低形成: 手足の爪が非常に小さい。
  • 体格:
    • 胎内発育不全: 在胎週数に比して著しく小さく生まれます。
    • 筋緊張の異常: 初期は筋緊張低下が見られ、徐々に亢進(硬くなる)することがあります。

2. 内臓の合併症(生命予後に直結する因子)

  • 先天性心疾患(90%以上に合併):
    • 心室中隔欠損症(VSD)、心房中隔欠損症(ASD)、動脈管開存症(PDA)、肺動脈弁狭窄症など。
    • 肺高血圧症を早期に合併しやすいことが特徴です。
  • 消化器疾患:
    • 臍帯ヘルニア、食道閉鎖症、鎖肛。
  • 泌尿生殖器疾患:
    • 馬蹄腎、多嚢胞性異形成腎、停留精巣(男児)。
  • 呼吸器疾患:
    • 喉頭軟化症、中枢性無呼吸。これらは出生直後の呼吸不全の主な原因となります。

3. 神経発達

  • 重度の発達遅滞: 運動、知能ともに発達は著しくゆっくりです。
  • 知的障害: 最重度の知的障害を伴うことが一般的です。

原因

エドワーズ症候群は、染色体の過剰が生じるメカニズムによって3つのタイプに分けられます。

1. 標準型18トリソミー(約94%)

  • メカニズム: 精子または卵子が作られる過程(減数分裂)での「染色体不分離」が原因です。
  • 発生: ほとんどが偶然に起こる新生突然変異であり、両親の染色体は正常であることが一般的です。

2. 転座型(約2%)

  • メカニズム: 18番染色体の一部が他の染色体と入れ替わり、実質的に18番の特定の領域が3つ分存在することになるタイプです。
  • 遺伝リスク: 親が「均衡型転座保因者」である場合があり、その場合は次子への再発リスクを考慮する必要があります。

3. モザイク型(約4%)

  • メカニズム: 受精後の細胞分裂(体細胞分裂)の段階で不分離が起こり、18トリソミーの細胞と正常な細胞が混在するタイプです。
  • 特徴: 正常細胞の割合によっては、症状が比較的マイルドであったり、生存期間が長くなったりすることがあります。

診断方法

1. 出生前診断

  • 非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT): 母体血中の胎児由来DNAを解析。
  • 超音波検査: 胎内発育不全、後頭部突出、心奇形、臍帯ヘルニア、重なり指、単一臍帯動脈などの所見から疑われます。
  • 確定的検査: 羊水検査または絨毛検査による染色体核型分析。

2. 出生後診断

  • 染色体核型分析(Gバンド分染法): 新生児の血液細胞を用いて染色体構成を確認し、確定診断を下します。
  • FISH法: 迅速に18番染色体の数を確認するために行われることがあります。

治療方法・ケアの考え方

エドワーズ症候群の治療方針は、近年大きく変化しています。以前は「予後不良」であることを理由に、積極的な治療(手術など)を控える傾向がありましたが、現在は**「個別の状況とご家族の意向を尊重した意思決定」**が重視されています。

1. 支持療法(緩和ケア・療育)

  • 呼吸管理: 酸素投与や、場合によっては人工呼吸器の使用。
  • 栄養管理: 哺乳力が弱いため、経管栄養(鼻チューブ)や胃瘻によるサポート。
  • 感染症対策: 肺炎などを起こしやすいため、迅速な抗生剤治療。

2. 外科的治療(積極的治療)

  • 心臓手術: 心不全のコントロールが困難な場合、姑息術(肺動脈絞扼術など)や根治術が検討されることがあります。
  • 腹壁破裂・食道閉鎖の手術: 生存を維持するために出生直後に行われることがあります。
  • ※手術を行うことで生存期間が延び、自宅へ退院できる可能性が高まるという報告が増えています。

3. 発達支援・ハビリテーション

  • 理学療法(PT)や作業療法(OT)を通じ、お子様の持つ可能性を引き出し、家族とのふれあいを豊かにするための支援を行います。

予後

  • 生存率: かつては「1歳までの生存率は10%未満」と言われていました。
  • 現在の知見: 近年の集中治療や外科的介入の進歩により、生存期間は延びる傾向にあります。1年以上生存するケースも珍しくなくなり、10歳を超えて学校生活を送っているお子様もいらっしゃいます。
  • 死因: 心不全、無呼吸発作、感染症などが主な原因となります。

まとめ

Edward’s syndrome(エドワーズ症候群)は、18番染色体が3本あることで、全身の多くの臓器に深刻な合併症を伴って生まれてくる疾患です。

ご家族にとって、告知の瞬間は言葉にできないほどの衝撃と悲しみに包まれることでしょう。しかし、知っていただきたいのは、18トリソミーのお子様たちは、限られた時間の中でも確かに家族の愛を感じ、喜びを表現し、力強く生きる力を持っているということです。

現代の医療は、ただ「予後が悪い」と決めつけるのではなく、お子様が家族と共に過ごす時間をいかに豊かにするか、という視点にシフトしています。手術を選択することもあれば、穏やかな看取りを選択することもあります。正解はありません。

小児科医、看護師、医療ソーシャルワーカー、そして遺伝カウンセラーとチームを組み、ご家族にとって、そして何よりお子様にとって最善の道を一緒に模索していくことが大切です。

参考文献

  • Edwards, J. H., et al. (1960). A new trisomic syndrome. The Lancet.
    • (エドワーズ博士らによる本症候群の最初の報告。)
  • Cereda, A., & Carey, J. C. (2012). The trisomy 18 syndrome. Orphanet Journal of Rare Diseases.
    • (疫学、臨床像、管理に関する包括的なレビュー。)
  • Kosho, T., et al. (2006). Neonatal management of trisomy 18: Clinical details of 24 patients. American Journal of Medical Genetics.
    • (日本国内における積極的治療と予後に関する重要な研究。)
  • National Organization for Rare Disorders (NORD): Trisomy 18.
    • (希少疾患の世界的データベースによる管理ガイド。)
  • GeneReviews® [Internet]: Trisomy 18. (NCBI).
    • (最新の分子遺伝学、診断、遺伝カウンセリングに関するリファレンス。)
  • 日本18トリソミーの会: 家族へのサポートと実態調査報告.
    • (国内の患者家族コミュニティによる生活実態に即した情報源。)

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