Frias syndrome

Posted on 2026年 1月 22日

別名・関連疾患名

  • Frias型低身長・顔面・指趾異常症候群
  • 眼瞼下垂・短指・低身長症候群
  • 関連:Aarskog症候群(アースコグ症候群)
    • ※臨床的な特徴(低身長、顔貌、手指の異常)が一部重なるため、鑑別診断の対象となります。
  • 関連:Robinow症候群(ロビノフ症候群)
    • ※顔貌の特徴(広い額、離れた目など)が似ていますが、骨格の異常の程度で区別されます。

対象染色体領域

不明(あるいは特定の候補領域の検討段階)

Frias syndromeは、その極めて高い希少性ゆえに、世界的に確定された「単一の原因遺伝子」や「対象染色体領域」は、現在も研究の途上にあります。

【最新の研究動向】

多くの症例報告において、常染色体顕性(優性)遺伝の形式が疑われています。近年の次世代シーケンサーを用いた網羅的解析では、骨形成や神経発達に関わる複数のパスウェイが検討されています。

  • 一部の症例では、染色体の一部に微小な重複や欠失が疑われる報告がありますが、全患者に共通する「フリアス領域」の特定には至っていません。
  • 臨床像が他の骨系統疾患や発達遅滞症候群と重複するため、遺伝子パネル検査等で他の疾患が除外された上で、臨床診断としてこの名称が用いられることが多いのが現状です。

発生頻度

極めて稀(Ultra-rare)

  • 頻度: 世界的な統計データは存在しませんが、これまでに医学文献で報告された症例数は、世界全体でも数十例に満たないと考えられています。
  • 分布: 特定の地域や人種に偏るというデータはなく、散発的に報告されています。
  • 性差: 男性・女性ともに発症が確認されており、男女差はないと考えられています。

臨床的特徴(症状)

Frias syndromeは、主に「顔貌」「骨格(低身長)」「手指」の3つの領域に顕著な特徴が現れる症候群です。

1. 特徴的な顔貌(Craniofacial features)

診断の大きな手がかりとなる、独特の顔立ちが見られます。

  • 眼瞼下垂(Ptosis): まぶたが垂れ下がり、目が十分に開きにくい状態です。これは本症候群の最も一貫した特徴の一つです。
  • 眼間開離(Hypertelorism): 両目の間隔が通常よりも広く離れています。
  • 広い額(Broad forehead): 前頭部が張り出し、額が広く見えます。
  • 鼻の異常: 鼻根部が平坦で、鼻先が上を向いている(獅子鼻様)ことが見られます。
  • 耳の異常: 耳の位置が低い(低位付着耳)、あるいは耳介の形が独特であることがあります。

2. 成長と体格(Growth and Stature)

  • 低身長(Short stature): 出生時の体格は正常に近い場合もありますが、幼児期から成長の遅れが顕著になります。
  • 胎内発育不全(IUGR): 一部の症例では、お母さんのお腹の中にいる時から成長がゆっくりであると指摘されることがあります。
  • 骨年齢の遅延: レントゲン検査において、実際の年齢よりも骨の成熟が遅れていることが確認されます。

3. 四肢・手指の異常(Hand and Foot anomalies)

  • 短指症(Brachydactyly): 手の指、足の指が全体的に短い。
  • 第五指の内湾(Clinodactyly): 小指が薬指側に曲がっている状態。
  • 手のひらの変化: 手のひらが幅広く、指の付け根の間隔が広いなどの特徴が見られることがあります。
  • 足の変形: 扁平足や、足の指の重なりなどが報告されています。

4. 知能および発達

  • 軽度から中等度の発達遅滞: 多くの症例で、言葉の遅れや運動発達の遅れが認められます。
  • 知的障害: 知能指数(IQ)には個人差が大きいですが、軽度の知的障害を伴うことが多いとされています。一方で、知能が正常範囲内に留まる症例も報告されており、重度の知的障害は稀です。

5. その他の合併症

  • 眼科的異常: 眼瞼下垂に伴う弱視や斜視。
  • 歯科的異常: 歯の生え代わりが遅い、歯並びの異常など。
  • 皮膚: 皮膚の弾力性が高い(過伸展性)ことが一部で報告されています。

原因

遺伝的要因が強く示唆されているが、未解明

  • 遺伝形式:
    • 多くの家系報告から、常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとる可能性が高いと考えられています。これは、親がこの体質を持っている場合、50%の確率で子供に受け継がれることを意味します。
    • 一方で、健康な両親から突如として生まれる「新生突然変異(De novo mutation)」のケースも多いと推測されています。
  • 分子生物学的メカニズム:
    • まぶたを挙げる筋肉や神経、あるいは四肢の骨の末端を形成するプロセスのどこかに、発生初期のシグナル伝達ミスが起きていると考えられていますが、具体的な分子(タンパク質)は特定されていません。

診断方法

非常に稀な疾患であるため、診断は「除外診断」および「臨床所見の総合評価」によって行われます。

  • 臨床診断:
    • 低身長、眼瞼下垂、短指症の3つが揃っている場合に強く疑われます。
  • 画像検査:
    • 手のレントゲン: 骨の形、指の短さ、骨年齢を評価します。
    • 頭部MRI: 下垂体の異常や、脳の構造に異常がないかを確認します(多くは正常です)。
  • 遺伝学的検査:
    • 染色体マイクロアレイ検査: 染色体の微小な過不足がないかを確認します。
    • 全エクソーム解析(WES): 他の既知の症候群(Aarskog症候群など)を除外するために行われます。
    • ※現在、Frias syndromeを「これだけで確定させる」特異的な遺伝子マーカーは存在しません。
  • 眼科的評価:
    • まぶたの下がり具合と視力への影響(弱視リスク)を評価します。

治療方法

根本的な「遺伝子を修正する治療」はありません。現れる症状に合わせて、それぞれの分野の専門医が連携してサポートする**「対症療法」**が基本となります。

1. 外科的治療

  • 眼瞼下垂の手術:
    • まぶたが視界を遮り、弱視の原因となる場合は、まぶたを持ち上げる形成手術を行います。これは機能面だけでなく、外見的な自信にもつながります。
  • 手指の矯正:
    • 生活に支障が出るほどの指の曲がりや変形がある場合は、整形外科的な処置を検討することがありますが、多くの場合、手術までは必要としません。

2. 内分泌学的治療

  • 成長ホルモン療法:
    • 低身長に対して成長ホルモンを投与することが検討される場合があります。Frias syndromeの患者においてどの程度効果があるかは個別の判断が必要ですが、骨年齢の遅れがある場合には効果が期待できることがあります。

3. 発達支援・療育

  • 早期介入:
    • 言葉の遅れや不器用さに対して、言語療法(ST)や作業療法(OT)を早期から開始します。
  • 教育的配慮:
    • 学習面での特性に合わせ、個別の支援計画に基づいた教育環境を整えます。

4. 定期的な検診

  • 歯科検診: 歯の生え方や噛み合わせのチェック。
  • 眼科検診: 手術後も視力の発達をモニタリングします。

予後

Frias syndromeの予後は、一般的に良好です。

  • 生命予後: 重篤な内臓奇形(心臓や腎臓など)を伴うことは稀であるため、寿命そのものには影響しないと考えられています。
  • 生活の質(QOL): 低身長や外見上の特徴に対する心理的なケア、および学習面での適切なサポートがあれば、自立した社会生活を送ることが十分に可能です。
  • 成人期: 身体的な成長はゆっくりですが、思春期を経て安定します。

まとめ

Frias syndrome(フリアス症候群)は、まぶたの垂れ下がり、低身長、そして指の短さを特徴とする、世界でも極めて報告が少ない希少な先天性疾患です。

「なぜうちの子が」という不安、そして情報の少なさに戸惑われるご家族も多いことでしょう。しかし、この疾患のお子様たちは、それぞれに独自の歩みで一歩ずつ確実に成長していきます。

大切なのは、お子様の個性を理解し、まぶたのケアや成長のサポート、そして言葉や学習の支援など、必要な時に必要な手助けをしてあげることです。

原因となる遺伝子はまだ完全には解明されていませんが、医学は日々進歩しています。小児科、形成外科、内分泌科、そして療育のスタッフとチームを組み、お子様が笑顔で自信を持って成長していけるよう、長く温かく支えていきましょう。

希少疾患ゆえに、同じ悩みを持つ家族を見つけることは難しいかもしれませんが、専門の遺伝カウンセラーなどのサポートを受けることで、孤独感を和らげ、将来への見通しを立てることができます。

参考文献

  • Frias, J. L., et al. (1982). A new syndrome of ptosis, brachydactyly, and short stature. American Journal of Medical Genetics.
    • (Frias博士らによる最初の症例報告。本疾患の定義となった基盤論文です。)
  • Castilla, E. E., et al. (1990). Frias syndrome: Report of a second family. American Journal of Medical Genetics.
    • (二例目の家族例の報告。遺伝形式が常染色体顕性である可能性を示唆しました。)
  • Jones, K. L., et al. (2013). Smith’s Recognizable Patterns of Human Malformation. Elsevier Health Sciences.
    • (世界的な奇形症候群の成書。Frias syndromeの特徴と鑑別疾患について記述されています。)
  • OMIM (Online Mendelian Inheritance in Man): #612444 FRIAS SYNDROME.
    • (遺伝性疾患の世界的データベース。最新の症例報告や遺伝学的考察がまとめられています。)
  • Orphanet: Frias syndrome (ORPHA:2558).
    • (希少疾患の情報ポータル。概要と臨床症状のリストが提供されています。)
  • GeneReviews®: Approach to Visual Impairment in Pediatric Syndromes. (NCBI).
    • (眼瞼下垂を伴う症候群へのアプローチに関する医学的資料。)

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