Turner syndrome

Posted on 2026年 1月 22日

別名・関連疾患名

  • ターナー症候群
  • モノソミーX (Monosomy X)
  • 45,X
  • Ullrich-Turner症候群
  • ボンネヴィー・ウルリッヒ症候群 (Bonnevie-Ullrich syndrome)
  • モザイク・ターナー症候群 (45,X/46,XXなど)

対象染色体領域

X染色体の全体、または短腕(p)の一部欠失

通常、女性の細胞内には2本のX染色体(46,XX)が存在しますが、ターナー症候群では1本のX染色体が完全に欠失しているか、あるいは一部が失われています。

【ゲノム上の詳細と責任遺伝子】

X染色体には多くの重要な遺伝子が含まれていますが、ターナー症候群の主要な症状に関わるのは以下の遺伝子群と考えられています。

  • SHOX遺伝子 (Short Stature Homeobox):
    • 領域:X染色体およびY染色体の末端(偽常染色体領域1:PAR1)に位置します。
    • 役割:長管骨(手足の骨)の成長を制御します。
    • 影響:この遺伝子が1つしかない(ハプロ不全)ことが、ターナー症候群における低身長の最大の原因です。
  • 卵巣維持に関わる遺伝子群:
    • X染色体の短腕(p)および長腕(q)には、卵巣の機能を維持し、卵子の成熟を助ける遺伝子が散在しています。これらの欠失により、早期卵巣不全(閉経)が引き起こされます。
  • リンパ系・循環器系に関わる領域:
    • X染色体上の特定の微小な欠失領域が、翼状頸(首の皮膚のたるみ)や心奇形(大動脈縮窄症など)に関連していると推測されています。

発生頻度

女性出生児 約2,500人に1人

  • 頻度: 女性における性染色体異常症としては比較的頻度が高く、世界中で人種を問わず認められます。
  • 胎児期の状況: 実は受精卵における頻度はさらに高く、全受精卵の約3%が45,Xであると推定されています。しかし、その約99%が胎児期に自然流産となり、出生に至るのはわずか1%未満です。
  • 性差: 女性のみに発症します。

臨床的特徴(症状)

ターナー症候群の症状は非常に多岐にわたりますが、すべての患者にすべての症状が現れるわけではありません。

1. 特徴的な外見的所見

  • 低身長: 最も普遍的な特徴です。治療を行わない場合の日本人女性の平均最終身長は約139cm前後とされています。
  • 翼状頸(よくじょうけい): 首から肩にかけて皮膚が膜のように広がっている状態。
  • 楯状胸(じゅじょうきょう): 胸幅が広く、乳頭の間隔が離れている。
  • 外反肘(がいはんちゅう): 腕を伸ばした際、肘から先が外側に曲がっている。
  • 低い生え際: 後頭部の髪の生え際が低い。
  • 多数の色素性母斑: 全身に小さな「ほくろ」が多く見られることがあります。

2. 性機能と生殖器

  • 性腺発育不全: 卵巣が索状(ストリーク卵巣)となり、機能しないことが多いです。
  • 二次性徴の欠如: 乳房の発達や初経(生理)が自然には起こらないことが一般的です(約90%)。
  • 不妊症: 自然妊娠の確率は極めて低い(約2〜5%)ですが、現在は卵子提供などによる出産の選択肢も検討されます。

3. 合併症(全身管理が必要なポイント)

  • 循環器異常 (約30〜50%): 大動脈二尖弁、大動脈縮窄症、大動脈弓の異常など。成人期には大動脈解離のリスクにも注意が必要です。
  • 腎異常 (約30%): 馬蹄腎、腎欠損など。通常は機能に問題ありませんが、尿路感染症を起こしやすいことがあります。
  • 聴覚・耳の異常: 中耳炎を繰り返しやすく、加齢とともに感音難聴が進みやすい傾向があります。
  • 自己免疫疾患: 橋本病(甲状腺機能低下症)やセリアック病の合併率が高いです。

4. 知能と心理的特性

  • 知能: 全般的な知能(IQ)は通常範囲内です。
  • 認知の偏り: 視空間認知(図形や地図の理解)や算数、複雑な社会的情動の理解に、微小な困難を感じることがあります。一方で、言語能力は高い傾向にあります。
  • 心理: 非常に真面目で協調性が高い性格の方が多い一方で、低身長や不妊に対する心理的なサポートが必要となる時期があります。

原因

X染色体の不分離または構造異常(新生突然変異)

ターナー症候群は親から遺伝するものではなく、精子や卵子が作られる過程での「偶然のミス」によるものです。

  1. 45,X (モノソミー): 約50%
    精子または卵子の形成時にX染色体がうまく分かれず、一方が欠けた状態で受精した結果です。
  2. モザイク (45,X/46,XXなど): 約20〜30%
    受精後の細胞分裂の過程で、一部の細胞からX染色体が失われた状態です。正常な細胞が混ざっているため、症状が軽度になることがあります。
  3. X染色体の構造異常: 約20%
    等腕染色体(短腕がなく長腕が2つあるなど)や、リング状の染色体、短腕の微小欠失などが含まれます。
  4. Y染色体成分の混在: 稀にY染色体の一部が細胞内に残っていることがあり、その場合は性腺腫瘍(性腺芽細胞腫)のリスクが高まるため、卵巣摘出が検討されます。

診断方法

多くの場合、成長の遅れや思春期の遅れをきっかけに診断されます。

  • 染色体核型分析(Gバンド法):
    血液検査で染色体の数と形を調べます。45,Xやモザイクを確定させるための必須検査です。
  • マイクロアレイ染色体検査(CMA):
    通常の検査では見つからない微小な欠失や、Y染色体由来の微小断片がないかを精密に調べます。
  • 画像診断:
    • 心エコー・MRI: 大動脈や心臓の異常を評価します。
    • 腹部エコー: 腎奇形や索状卵巣の確認。
  • 血液検査:
    • LH・FSH: 性腺刺激ホルモンの数値を調べ、卵巣機能を評価します。
    • IGF-I: 成長ホルモンの分泌状態を間接的に評価します。

治療方法

根本的に染色体を増やすことはできませんが、ホルモン補充療法によって、成長の促進や二次性徴の誘導が可能です。

1. 成長ホルモン療法

  • 目的: 低身長を改善し、最終身長を伸ばします。
  • 時期: 身長が成長曲線の下限を割り込んだ時期(通常4〜6歳頃)から開始し、骨端線が閉鎖するまで継続します。

2. 女性ホルモン補充療法

  • エストロゲン補充: 通常12〜15歳頃から開始し、乳房の発達や子宮の成熟を促します。
  • カウフマン療法: その後、黄体ホルモンを加え、周期的な月経(消退出血)を起こさせます。これは将来の骨粗鬆症予防にも重要です。

3. 各合併症への対応

  • 循環器フォロー: 生涯にわたる定期的な心エコーやMRIによる大動脈の監視。
  • 甲状腺機能チェック: 定期的な血液検査。
  • 聴力検査: 難聴の早期発見。

4. ライフステージに合わせた支援

  • 移行期医療: 小児科から内科(婦人科・循環器科)へのスムーズな引き継ぎ。
  • 不妊治療・生殖医療: 結婚を考える時期に、妊娠の可能性やリスクについての専門的なカウンセリング(卵子提供や養子縁組など)。

予後

  • 生活の質 (QOL): 適切なホルモン補充と合併症管理が行われれば、一般の女性と変わらない社会生活、学業、就労が可能です。
  • 寿命: 心血管合併症の適切な管理が寿命を左右します。定期的なフォローアップを受けている場合、予後は良好です。
  • 心理的適応: 自身の体質を正しく理解し、前向きに受け入れるためのサポートが成人期にかけて重要になります。

まとめ

Turner syndrome(ターナー症候群)は、女性の成長や成熟に関わる「X染色体」の設計図が一部変化している、女性特有の染色体の体質です。

主な特徴として「小柄であること」や「思春期の訪れがゆっくりであること」が挙げられますが、これらは成長ホルモンや女性ホルモンを補うことで、自分らしく健やかに成長していくことが十分に可能です。

心臓や耳のチェックなど、定期的な病院への受診は必要ですが、多くのターナー症候群の女性が、学校で学び、社会で活躍し、豊かな人生を送っています。

診断がついたとき、ご家族は不安を感じられるかもしれませんが、それはお子様がより良いサポートを受けるための「鍵」を手に入れたということです。専門医のチームと共に、お子様の歩幅に合わせた素敵な未来を一緒に作っていきましょう。

参考文献元

  • Turner, H. H. (1938). A syndrome of infantilism, congenital webbed neck, and cubitus valgus. Endocrinology.
    • (ターナー博士による最初の症例報告。本症候群の歴史的基礎。)
  • Gravholt, C. H., et al. (2017). Clinical practice guidelines for the care of girls and women with Turner syndrome: proceedings from the 2016 Cincinnati International Turner Syndrome Meeting. European Journal of Endocrinology.
    • (現在の国際的な標準治療ガイドライン。最も信頼性の高いソースです。)
  • Bondy, C. A. (2007). Care of girls and women with Turner syndrome: a guideline of the Turner Syndrome Study Group. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism.
    • (長年にわたり指針とされてきた包括的な管理ガイドライン。)
  • GeneReviews® [Internet]: Turner Syndrome. (NCBI).
    • (最新の医学的知見、遺伝学的背景、管理指針が網羅されている世界的データベース。)
  • Unique (The Rare Chromosome Disorder Support Group): Turner Syndrome: A guide for families.
    • (染色体異常支援団体による、家族向けの実践的ガイド資料。)
  • 日本小児内分泌学会: ターナー症候群の診療ガイドライン.
    • (日本国内における標準的な診断・治療の指針。)
  • Sybert, V. P., & McCauley, E. (2004). Turner’s syndrome. New England Journal of Medicine.
    • (本症候群の病態、遺伝学、心理的側面を網羅したレビュー。)

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