血液検査でがんはわかる?腫瘍マーカーでわかることと限界を解説

Posted on 2024年 11月 13日

📌 この記事でわかること

  • 血液検査(腫瘍マーカーなど)でがんの何がわかり、何がわからないのか
  • 代表的な腫瘍マーカーと関連するがんの種類を一覧表で確認できる
  • 「マーカー高値=がん」ではない理由と、正常値でも安心できない理由
  • 異常値が出たときに、次にどう動けばよいか

血液検査は、がんの可能性を早く見つける手がかりにはなりますが、それだけでがんを確定できる検査ではありません。腫瘍マーカーの測定や一般的な血液検査は、体からの小さなサインを拾い上げるスクリーニングの一助です。この記事では「血液検査でわかる病気のうち、がんについて何がどこまでわかるのか」を、腫瘍マーカーの種類や限界、そして異常値が出たあとの動き方まで、医療現場の視点でわかりやすく整理します。

血液検査でがんはわかる?まず知っておきたい前提

血液検査でわかるのは「がんの可能性が高いかどうか」であり、がんの有無を確定する検査ではありません。これは、がんの相談を受けるうえで最初にお伝えしている大切な前提です。

国立がん研究センターがん情報サービスによると、日本人が生涯でがんに罹患する確率は男性61.1%・女性50.1%と、およそ2人に1人にのぼります。だからこそ、早く気づく手段として血液検査に関心が集まります。まずは、その血液検査で何がどこまでわかるのかを正しく知っておきましょう。

採血だけで体への負担が少なく、健康診断や人間ドックのオプションとして手軽に受けられる。これが血液検査の大きな魅力です。ただし、血液中の数値は食事・炎症・喫煙・加齢など、がん以外のさまざまな要因でも動きます。だからこそ、数値だけを見て一喜一憂するのではなく、画像検査や組織の検査と組み合わせて総合的に判断していきます。

整理すると、血液検査でわかるのは「がんが疑われるかどうかの手がかり」までです。どこにどのくらいの大きさのがんがあるのか、良性か悪性かといった診断の核心は、血液検査だけでは判断できません。この線引きを知っておくだけで、結果を受け取ったときの不安がずいぶん和らぎます。

血液検査でわかる病気は多い—がんはその一部

血液検査でわかる病気は幅広く、がんはそのうちの一つとして手がかりが得られる領域です。1本の採血から、思っている以上に多くの情報が読み取れます。

一般的な健康診断の血液検査では、次のような項目から体の状態を確認します。がんに関わる腫瘍マーカーは、これらに追加するオプションとして測定されることが多いものです。

  • 貧血・血液の病気:赤血球やヘモグロビン、白血球の数から、貧血や白血病などの手がかりを確認します。
  • 肝機能・腎機能:AST・ALT・クレアチニンなどで、臓器の負担や病気のサインを見ます。
  • 糖尿病・脂質:血糖やHbA1c、コレステロールから生活習慣病のリスクを評価します。
  • 炎症・感染症:CRPなどの数値から、体内の炎症や感染の有無を推測します。

このように、血液検査は体全体をざっくり見渡す健康チェックの土台です。がんのサインもこの延長線上にありますが、がんに特化した情報を得るには腫瘍マーカーなどの専用の検査を組み合わせます。ここからは、がんの可能性を調べる3つの方法を順番に見ていきましょう。

血液検査でがんの可能性を調べる3つの方法

看護師がやさしく採血し、試験管を扱うイラスト

がんに関わる血液検査は、腫瘍マーカー検査・一般的な血液検査・リキッドバイオプシーの3つに整理できます。目的によって使い分けられ、単独ではなく補い合う関係にあります。

1. 腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、がん細胞が作り出す物質や、がんの影響で体内に増える物質のことです。血液中のこれらの濃度が上がると、特定のがんが疑われます。がんの種類ごとに測るマーカーが違う点が特徴で、たとえば前立腺ならPSA、肝臓ならAFPといった具合に使い分けられます。次章の一覧表で代表的なものを確認できます。

もう一つ知っておきたいのが、1回の数値より「時間の経過での変化」が重視される点です。基準値をわずかに超えているかどうかより、前回から急に上がっていないか、治療後に下がっているかといった動きが手がかりになります。だから定期的に同じ検査を受け、自分の数値の流れを持っておくことに意味があります。

2. 一般的な血液検査

健康診断でおなじみの血算や生化学検査からも、がんの間接的なサインが読み取れる場合があります。血液のがんである白血病では白血球の数や種類に異常が現れ、大腸がんや胃がんによる慢性的な出血があると、赤血球やヘモグロビンが下がって貧血として現れることがあります。

また、CRPなどの炎症マーカーが高い状態が続くケースも、体のどこかで起きている変化を知る一つの入り口です。あくまで間接的なサインですが、いつもと違う数値の変化に早く気づける点に価値があります。

ただし、これらの数値の異常はがん以外の原因でも起こります。貧血は鉄不足でも起こりますし、炎症反応は風邪や感染症でも上がります。だからこそ、一般的な血液検査でひっかかった場合も、原因を一つに決めつけず、医師とともに次の検査へつないでいく姿勢が欠かせません。

3. リキッドバイオプシー(新しい血液検査技術)

近年注目されているのが、がん細胞が血液中に放出するDNA(ctDNA)などを解析するリキッドバイオプシーです。少量の採血で、がんに関わる遺伝子の変化を捉えようとする技術で、治療方針の決定や再発のモニタリングなどで実用化が進んでいます。早期発見への応用も研究段階で進み、これからのがん医療を支える技術として期待されています。

組織を採取する従来の生検にくらべ、体への負担が小さく、繰り返し検査しやすい点がリキッドバイオプシーの利点です。一方で、検査できるがんの種類や精度にはまだ課題も残ります。過度な期待は禁物ですが、採血一つでここまで踏み込めるようになった進歩には、私も現場で驚かされる場面が増えました。

血液から得られる情報は年々広がっています。遺伝子レベルでがんのリスクを捉える動きについては、がんのリスクは遺伝子で決まる?複数のがんと関連する“rs6983267”とはもあわせてご覧ください。

代表的な腫瘍マーカーと関連するがんの一覧

腫瘍マーカーはがんの種類ごとに使い分けられ、1つの数値だけでがんを断定するものではありません。代表的なマーカーと、主に関連するがん、そして押さえておきたい注意点を表にまとめました。

腫瘍マーカー主に関連するがん注意点
CEA(癌胎児性抗原)大腸がん・胃がん・肺がんなど喫煙者や加齢でも上がりやすい
CA19-9膵臓がん・胆道がん体質により作られない人もいる
PSA(前立腺特異抗原)前立腺がん前立腺肥大や炎症でも上昇
AFP(α-フェトプロテイン)肝臓がん肝炎・肝硬変・妊娠でも上昇
CA125卵巣がん子宮内膜症や月経でも変動
CA15-3乳がん進行がんで上がりやすく早期は低め
代表的な腫瘍マーカーと関連するがん・注意点(マーカー高値=がんとは限りません)

表を見てわかるとおり、どのマーカーにも「がん以外の理由で上がる」注意点があります。数値が基準を超えても、それだけでがんと決まるわけではありません。反対に、早期のがんではマーカーが動かないことも多く、正常値だから安心とも言い切れないのです。

腫瘍マーカーの限界—「高値=がん」ではない理由

医師が患者に穏やかに検査結果を説明するイラスト

腫瘍マーカーは、がんがなくても上がることがあり、がんがあっても上がらないことがあります。この2つの限界を理解しておくことが、不要な不安や見落としを防ぐ鍵になります。

1つ目は、いわゆる偽陽性です。炎症・喫煙・良性の病気・体質などでマーカーが上がることは珍しくありません。編集部にも「基準値を少し超えていた」と不安を抱えてご相談くださる方が多くいらっしゃいます。実際にX上では、CA19-9が高値だったため胃カメラや大腸カメラを受けたものの異常が見つからず、次はMRIへ進んだという体験を綴る投稿(@mojury_halfmoonさん)もありました。原因がはっきりしないまま追加検査が続く不安は、決して他人事ではありません。

2つ目は偽陰性です。早期がんや一部のがんでは、マーカーがほとんど上がらないことがあります。正常値でもがんを完全には否定できない、という事実は覚えておいてください。とくに自覚症状があるのに数値だけを見て「大丈夫」と判断してしまうと、受診が遅れる原因にもなりかねません。

この点は専門家も繰り返し発信しています。乳腺科医の寺田満雄先生(@MamMa_mimumemo)は、ASCO(米国臨床腫瘍学会)の乳がん術後フォローアップ指針を紹介しながら、腫瘍マーカーやctDNAの定期的な測定、転移確認目的の定期的な画像検査は基本的に勧められないと述べています。私自身も、数値の上下だけを追いかけるより、医師と一緒に必要な検査を選ぶ姿勢が大切だと感じています。腫瘍マーカーは、あくまで診断を助ける一つの材料。主役ではありません。

がんの早期発見に血液検査をどう活かすか

健康診断で医師が来院者を迎えるイラスト

血液検査は「定期的に受ける」「異常が出たら精密検査につなげる」という2つの使い方で、早期発見の力を発揮します。検査を受けること自体がゴールではなく、その後の行動までを見据えることが大切です。

まず取り組みたいのが、定期的な検診です。特にがんの家族歴がある方や、生活習慣にリスクを感じる方は、健康診断や人間ドックで継続的に数値を追いましょう。1回の値そのものより、経過の中での変化が手がかりになります。血液検査だけに頼らず、年齢や性別に応じた胃・大腸・乳房・子宮などのがん検診を組み合わせると、見落としを減らせます。国が推奨するがん検診の内容は国立がん研究センターの検査ページでも確認できます。それぞれの検査が苦手とする部分を、別の検査が補い合う関係にあるからです。

次に、異常が見つかったときの動き方です。マーカーが高くても、まずは落ち着いてください。自己判断で結論を出さず、必ず医師に相談し、内視鏡・CT・MRI・組織診などの精密検査で確認していきます。血液検査はスタート地点であって、ゴールではありません。

不安なときほど、ネットの情報だけで結論を急ぎたくなるものです。けれど、同じ数値でも、その人の年齢・症状・既往歴によって意味は変わります。だからこそ、検査結果は必ず医師と一緒に読み解いてください。数値の背景まで説明を受けることで、次に何をすべきかがはっきりします。

さらに、体質的なリスクをあらかじめ把握したい場合には、遺伝子検査という選択肢もあります。がんの検査全体の流れはがんの検査方法—早期発見に向けたさまざまなアプローチで、遺伝子情報からリスクを捉える考え方は遺伝子情報とがんリスクの早期発見で詳しく解説しています。臨床で行われている検査の全体像は臨床現場で行われている遺伝子検査についてもご参照ください。

よくある質問(FAQ)

血液検査だけでがんはわかりますか?

血液検査だけでがんを確定することはできません。腫瘍マーカーなどはがんの可能性を示す手がかりにはなりますが、確定診断には画像検査や組織の検査(生検)が必要です。血液検査はあくまでスクリーニングの入り口とお考えください。

腫瘍マーカーが基準値より高いと、がんの可能性は高いですか?

高値だからといって、必ずしもがんとは限りません。炎症や良性の病気、喫煙、加齢、体質などでも上昇します。数値が気になる場合は自己判断せず、医師に相談して必要な追加検査を受けてください。

腫瘍マーカーが正常なら、がんの心配はいりませんか?

正常値でもがんを完全に否定はできません。早期のがんや一部のがんでは、マーカーがほとんど上がらないことがあります。気になる症状があるときは、マーカーの数値にかかわらず医療機関を受診してください。

リキッドバイオプシーは健康診断で受けられますか?

現時点では、主に治療方針の決定や再発モニタリングなど医療機関での特定の目的で用いられています。早期発見への一般的な応用は研究が進んでいる段階です。受けられる範囲は施設によって異なるため、医療機関に確認してください。

がんの家族歴があります。どんな検査を受ければよいですか?

定期的な健康診断や人間ドックに加え、体質的なリスクを知る手段として遺伝子検査という選択肢があります。どの検査が適しているかは状況によって変わるため、遺伝カウンセリングを含めて医師と相談しながら選ぶと安心です。

ヒロクリニックでは、遺伝子検査や遺伝カウンセリングを通じて、一人ひとりのリスクに向き合う体制を整えています。検査の選び方や費用は遺伝子検査の費用や精度は?信頼できるサービスの選び方もご覧ください。

医師監修 監修日:2024年11月13日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、ヒロクリニック遺伝子検査の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年11月13日

堤 修一

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格・所属

  • 元・東京大学先端科学技術研究センター 准教授

この記事は、ヒロクリニック遺伝子検査の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。