11p13 duplication syndrome

Posted on 2026年 1月 19日

別名・関連疾患名

  • 11p13 重複症候群(11番染色体短腕のp13領域の重複による症候群)
  • 11p13 microduplication(11p13 ミクロ重複)
  • 11p13 CNV(Copy Number Variation; 11p13コピー数変異)

※本疾患は染色体領域の 重複(duplication) によるもので、従来よく研究されている 11p13欠失症候群(WAGR症候群) とは機序・症状が異なります。欠失とは逆に染色体領域が コピー増加 するため、遺伝子発現が増える影響で症状が出現することになります。

対象染色体領域

ヒト第11番染色体 短腕(p)13領域の一部が重複している状態(11p13 duplication)
この重複は微細なコピー数変異(microduplication)として検出されることが多く、通常 数百kb〜数Mb の範囲に渡って染色体領域が 本来1コピーであるところを2コピー以上(重複) している構造異常です。

この11p13領域は眼や腎臓、神経発達に関与する複数の遺伝子を含む部位として知られ(欠失ではWAGR症候群に関連)ますが、重複によっては Silver–Russell症候群様の表現型や発達異常 など多様な臨床像が報告されています。(PMC)

発生頻度

11p13 duplication そのものが稀な疾患であり、欠失(WAGR症候群)のように多数例が報告された疾患とは異なり、重複症例は 比較的少数であり頻度は確立していません
遺伝子重複症候群全般(染色体の一部が重複する疾患)は 希少なコピー数変異疾患(rare copy number variant) と考えられ、しばしば 新生変異(de novo) として発生します。
11p13重複については単独疾患の疫学データは存在せず、症例報告ベースでその存在が確認されています。(PMC)

臨床的特徴(症状)

11p13重複症候群では 重複される遺伝子の種類や重複領域の大きさによって症状が変動しますが、症例報告から以下のような主な臨床的特徴が示唆されています。

1) 発達・神経

  • 発達遅延(global developmental delay):運動・言語・社会的な発達が通常発達より遅れることがある。
  • 知的障害:重度から軽度まで幅広い知能発達の影響がみられる可能性。
  • 行動異常・神経発達障害様表現型:自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動傾向など行動面の特徴が出ることがある。
    これらは 重複によって遺伝子発現量が増えることで神経回路形成に影響が出ると考えられています。(PMC)

2) 顔貌・体格

  • Silver–Russell症候群(SRS)様の 低身長、体重不足、特徴的な顔貌 が報告された症例があります。これは11p13領域の重複が SRS関連表現型との鑑別診断になると報告されています。具体例として長い顔、狭い顎、低栄養状態が挙げられます。(PMC)
  • 顔貌異常などの身体的特徴が出現するかどうかは、重複部位や背景遺伝子によって大きく異なると考えられます。

3) その他身体症状

  • 発達遅延にともなって 筋緊張異常(低緊張 / hypotonia) がみられることがありますが、11p13重複単独で必ず出る症状ではありません。
  • 重複領域内の遺伝子によっては成長、代謝などに影響する可能性があります。
    なお、他の染色体重複症候群ではしばしば 先天性心疾患や骨格異常 など多臓器に影響が出ることもあるため、11p13重複でも関連する器官系の影響がある可能性を念頭に置く必要があります。(NIFTY by GenePlanet)

原因

11p13 duplication syndrome の主な原因は 染色体11のp13部位の一部が本来1コピーである領域に対して追加コピー(重複)が生じることです。
これは コピー数変異(Copy Number Variation: CNV) の一種で、DNAの特定領域が 2コピーより多くなる(通常は3コピー以上) ことにより、その領域に存在する遺伝子の発現が増加する結果として、発達や機能に異常をもたらします。(PMC)

このような染色体重複は、多くの場合 de novo(新生変異) として発生し、両親には同じ重複がない場合が一般的です。まれに家族性に遺伝する例もありますが、この点は個別の症例ごとに遺伝カウンセリングで評価されます。

重複領域に含まれる遺伝子の具体的影響について研究は進行中ですが、11p13領域は 神経発達や成長関連遺伝子を含む部位 であり、欠失ではWAGR症候群に関連する領域でもあることから、重複でも発達・身体表現型に影響を与えると考えられています。(PMC)

治療方法(治療・管理)

11p13 duplication syndrome には 根本的な治療法は確立していません。重複症候群全般の方針としては 症状ごとの支持療法と多職種による包括的支援 が中心となります。

1) 発達支援

  • 理学療法(Physical therapy):運動発達の促進、筋緊張異常への対応
  • 言語療法(Speech therapy):言語遅延、コミュニケーション困難に対する介入
  • 作業療法(Occupational therapy):日常生活技能や感覚統合支援

これらは 早期介入が予後改善に寄与する とされています。

2) 行動・学習支援

  • 特殊教育・行動療法:自閉症スペクトラムや注意欠如・多動症傾向がある場合の行動面支援
  • 心理的サポート/カウンセリング:本人および家族の心理的負担への対応

3) 医療的評価・モニタリング

  • 発達の経過や合併症の有無を確認するため、定期的な医療的評価が推奨されます。
  • 身体的異常が疑われる場合は各専門科(心臓、成長・内分泌、整形など)での評価・治療が必要になります。

4) 遺伝カウンセリング

  • 重複領域の解釈および再発リスク評価 のための遺伝カウンセリングが重要です。
  • 家族性のコピー数変異がある場合は、親族への影響評価も行われます。

まとめ

11p13 duplication syndrome は 11番染色体短腕 p13 領域の一部が重複することによる稀な染色体重複症候群で、発達遅延、知的障害、行動異常や SRS様表現型などを示すことが報告されています。原因は染色体のコピー数増加(重複)であり、治療法は確立していないため、症状に応じた支持療法と包括的支援が治療の中心となります。

参考文献元

  • 11p13 microduplication: a differential diagnosis of Silver–Russell related phenotypes(症例報告) (PMC)
  • 11p13 microduplication症例に関する別報告 (ResearchGate)