別名・関連疾患名
- Monosomy 11q22.2q22.3
- Del(11)(q22.2q22.3)
- 11q22.2-q22.3 deletion syndrome(11番染色体長腕q22.2〜q22.3領域の欠失症候群)
※現在の理解では、ヒト染色体の11番染色体長腕内の比較的狭い領域が欠失することで発症する 極めて稀な微小欠失(microdeletion) です。(Orpha.net)
対象染色体領域
ヒト第11番染色体 長腕(q)22.2〜q22.3 の一部が欠失する染色体異常です。
この領域は、複数の正常発達に関わる遺伝子を含む領域で、欠失があるとそれらの遺伝子が 1コピー欠損(ハプロ不全) となります。
欠失の範囲は症例によって異なりますが、一般的に この領域をまたぐ連続欠失(contiguous deletion) として見つかることが多いです。(Orpha.net)
発生頻度
11q22.2-q22.3 microdeletion syndrome は 極めて稀な染色体疾患 です。
- 世界的な疫学データでは、 発生頻度は 1,000,000人に1人未満 と推定されています(0.0001%未満)。(Orpha.net)
- 実際の患者例は非常に少なく、症例報告や希少疾患データベースに散見される程度で、一般出生集団における正確な頻度は確立されていません。(MalaCards)
このような希少性のため、病態や表現型は完全には明らかになっておらず、個々の症例を積み重ねて理解が進められている段階です。
臨床的特徴(症状)
11q22.2-q22.3 microdeletion syndrome の症状は多岐にわたり、神経発達、身体的特徴、行動面などに影響を及ぼすことが報告されています。以下は複数の情報源に基づく主な臨床的特徴の概要です。
1. 発達・知的機能面
- 発達遅延(Developmental delay):乳児期〜幼児期にかけて運動機能や言語発達の遅れがみられることがあります。(希少疾患情報センター)
- 軽度〜中等度の知的障害(Intellectual disability):知的機能が平均より低く、学習や日常の適応面に困難を抱えることが報告されています。(MalaCards)
- 注意持続困難(Short attention span) や 不安傾向(Anxiety) が併発することもあります。(希少疾患情報センター)
これらの神経発達症状は、欠失領域内に存在する遺伝子のハプロ不全が神経縁発達やシナプス形成、学習/記憶機能に影響を与えることが原因と考えられています(詳細な候補遺伝子は現在のデータベースでは特定例が限られていますが、研究の対象として挙がっています)。(MalaCards)
2. 身体成長・筋緊張
- 低身長(Short stature):出生後の成長が平均より遅れることがあります。(希少疾患情報センター)
- 筋緊張低下(Hypotonia):全身の筋肉が通常より緩く、動作がゆっくりである、首が座りにくい、姿勢の保持が困難などの症状を示すことがあります。(希少疾患情報センター)
筋緊張低下は他の多くの微小欠失症候群でも見られる症状で、運動発達の遅延につながることがあります。
3. 顔貌・形態的特徴
- 特徴的な顔貌異常(Dysmorphic facial features):平坦な顔つき、眼の位置異常、低い耳、短い顎などの微妙な形態変化がみられることがあります。(希少疾患情報センター)
これらは診断の決め手になるほど明瞭でない場合もあり、個々の症例によって表現型にはばらつきがあります。症状が重なる別の染色体異常疾患との鑑別が必要なこともあります。
4. 行動・心理面
- 注意欠如、落ち着きのなさ や 不安傾向 など行動面の課題が報告されています。(希少疾患情報センター)
- 自閉症スペクトラム様行動 を示す例も含まれていますが、確立的ではなく 可変的な症状 として扱われます。(モナークイニシアチブ)
原因
11q22.2-q22.3 microdeletion syndrome の根本的な原因は 染色体 11 の q22.2〜q22.3 領域の欠失(microdeletion) です。
1. 染色体欠失によるハプロ不全
欠失が起こると、欠失領域内に含まれている複数の遺伝子が 1コピー不十分(ハプロ不全) の状態になります。この遺伝子コピー数の変化が以下のような影響を及ぼします:
- 神経発達に関与する遺伝子の不足 → 発達遅延や知的障害
- 成長制御に関与する経路の変化 → 低身長や筋緊張低下など
- 表現型形成に寄与する遺伝子の欠如 → 顔貌異常や行動面への影響
なお、欠失はほとんどの場合 de novo(新生突然変異) として発生します。これは両親の染色体配列が正常であっても、受精卵形成時や初期発生過程で突発的に欠失が生じることを意味します。家族性伝播は極めて稀です。(Orpha.net)
2. 欠失の検出
この欠失は非常に小さいため、通常の染色体検査(Gバンド染色体分析)では検出が困難です。微細欠失を確定するには、染色体マイクロアレイ解析(CMA)や比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)などの 高解像度ゲノム検査 が必要です。
治療方法(管理・支援)
11q22.2-q22.3 microdeletion syndrome に対して 根本的な治療法は存在しません。治療は 症状に応じた支持療法(supportive care) と 多職種連携の包括的支援 が中心となります。
1. 発達支援
- 理学療法(Physical therapy)
筋緊張低下や運動発達遅延に対する介入。 - 言語療法(Speech therapy)
言語遅延やコミュニケーション支援。 - 作業療法(Occupational therapy)
日常生活動作の習得支援。
早期からの療育・支援が、運動・言語能力の発達を促し、生活の質の向上に寄与します。
2. 行動・心理支援
- 行動療法 や 心理カウンセリング
注意困難や不安傾向がある場合、専門職による行動面のサポートが有効です。 - 教育支援
発達レベルに合わせた特殊教育や学習プログラムの導入が推奨されます。
3. 健康管理・合併症対応
- 定期的な 身体発育評価
成長曲線や栄養状態を評価し、必要に応じて医療的介入を行います。 - 他の合併症がある場合は、該当専門科(心臓、耳鼻咽喉、眼科等)と連携して治療計画を立てます。
4. 遺伝カウンセリング
- 欠失の原因、将来の妊娠・家族計画について 専門的な遺伝カウンセリング を受けることが重要です。
- 欠失は通常 de novo であるため、親への再発リスクは低いですが、個別評価が必要です。(Orpha.net)
まとめ
11q22.2-q22.3 microdeletion syndrome は、ヒト染色体11番の長腕(q)22.2〜q22.3領域の微小欠失によって生じる極めて稀な染色体異常症候群です。主に 軽度〜中等度の知的障害、発達遅延、低身長、筋緊張低下、特徴的な顔貌 などの症状が報告されています。また、注意欠如や不安傾向など心理・行動面の課題もみられる一方、症状の程度には大きな個人差があります。
現在のところ 根本治療法はなく、支援は 症状に応じた多職種による支持療法 が中心です。理学療法・言語療法・作業療法などの発達支援に加え、行動面や学習支援、定期的な健康モニタリングが必要です。また、遺伝カウンセリングを通じて欠失の由来や将来の家族計画について理解を深めることが推奨されます。
参考文献元
- NIH Genetic and Rare Diseases Information Center (GARD): 11q22.2q22.3 microdeletion syndrome — Summary and clinical features. (希少疾患情報センター)
- Orphanet: 11q22.2q22.3 microdeletion syndrome (ORPHA:444002) — Prevalence, definition, and phenotype. (Orpha.net)
- Malacards: 11q22.2q22.3 microdeletion syndrome — Rare disease profile including symptoms and traits. (MalaCards)
- NCBI MedGen: 11q22.2q22.3 microdeletion syndrome description via SNOMED CT.


