別名・関連疾患名
- 12q14微小欠失症候群(12q14 microdeletion syndrome)
- Del(12)(q14)(12番染色体長腕q14欠失)
- Osteopoikilosis-Short Stature-Intellectual Disability Syndrome(骨密度異常・短身・知的障害症候群) — 一部の患者でみられる骨関連合併症に由来する名。(MalaCards)
本症候群は染色体の領域 12q14 に1コピーの欠失(微小欠失)が認められることで発生するまれな先天性疾患で、欠失される範囲や含まれる遺伝子によって症状の幅が生じます。(希少疾患情報センター)
対象染色体領域
ヒト第12番染色体 長腕 q14 領域の微小欠失 が病態の原因です。
- 欠失される領域の 大きさは症例によって異なり、通常数百キロベース〜数メガベースの間で報告されています。
- この領域には HMGA2、LEMD3、GRIP1、IRAK3、DCTN2、KIF5A などの遺伝子が含まれることがあり、これらの遺伝子欠失が病態形成に寄与すると考えられています。(Unique)
特に HMGA2(High Mobility Group AT-hook 2)遺伝子は 成長(身長)調節 に重要で、欠失されると著しい成長制限が見られることが多いとされています。(Unique)
発生頻度
12q14 microdeletion syndrome は 非常に稀な微小欠失疾患 です。
- 世界規模での疫学データは少ないものの、推定では 100〜1000名程度の既報例が存在する とされます(データベース調査ベース)。(厚生労働科学研究成果データベース)
- 全ゲノムから見ても 100万人に1人未満の極めて低い頻度 と推測され、希少疾患の一つです。(MalaCards)
- 症例の多くは de novo(新生突然変異) とされ、家族内での遺伝例はまれです。欠失が遺伝性の場合、優性(dominant)パターン で現れることもあります。(希少疾患情報センター)
臨床的特徴(症状)
12q14微小欠失症候群は、欠失される染色体範囲とそこに含まれる遺伝子の影響により多様な症状を呈しますが、主に以下のような臨床像が報告されています。(希少疾患情報センター)
◆ 1. 成長・栄養・発育
低出生体重、成長遅延、短身(short stature)、failure to thrive(栄養不良・発育不良) は本症候群を特徴づける症状で、出生前後の発育制限がみられます。(希少疾患情報センター)
- HMGA2 遺伝子のハプロ不全 が身長発育に大きく影響すると考えられており、欠失例では出生前後から成長曲線が平坦化することが多いです。(Unique)
- 場合によっては 摂食困難(feeding difficulties) を伴い、哺乳・離乳・栄養摂取に支援が必要なケースもあります。(希少疾患情報センター)
◆ 2. 知的機能と発達
- 軽度〜中等度の知的障害(intellectual disability) が報告例の多くに認められます。
- 発達遅延(global developmental delay) ― 運動・言語など複数領域での遅れがみられます。(MalaCards)
学習困難や行動面の影響 が散発的に報告され、特に GRIP1 遺伝子欠失がある場合は神経シナプス形成・認知機能への影響が疑われています。(Unique)
◆ 3. 骨・皮膚の特徴
いくつかの症例報告では 骨密度に異常(osteopoikilosis) を認める例があり、これは LEMD3 遺伝子 欠失と関連している可能性が指摘されています。(MalaCards)
- Osteopoikilosis は骨X線上の点状の骨硬化病変 などの所見として現れることがあり、臨床的には目立たないこともありますが、12q14欠失と一致することがあります。(MalaCards)
◆ 4. 顔貌・身体形態
本症候群の患者では一般的に非特異的な顔貌異常(facial dysmorphism) がみられます。
具体的には、軽度の顔立ちの特徴、頭囲や顔形の差異などが報告されていますが、12q14欠失に特異的な顔貌パターンは確立されていません。(MalaCards)
◆ 5. その他の合併症
報告例の一部には以下のような合併症が示唆されています:
- 内臓・心臓奇形(欠失領域が拡大する場合に見られることがある)(Unique)
- てんかん(epilepsy)や発作傾向 が含まれることがあるとする報告もありますが、確立的ではありません。(UMIN SQUARE)
ただし、これらは欠失の大きさと影響する遺伝子の差によって現れる例がまちまちで、必ずしも全例に共通するわけではありません。
原因
12q14 microdeletion syndrome の原因は 染色体 12 番長腕 q14 領域の微小欠失(chromosomal microdeletion) です。
- 欠失は 連続した複数の遺伝子領域を含むことがあり、1コピー欠失(ハプロ不全)によって正常な遺伝子発現が阻害 されることが発症機序です。(希少疾患情報センター)
- 欠失領域には 成長・骨発達関連の HMGA2、骨密度関連の LEMD3、認知機能関連の GRIP1 などが含まれるため、これらのハプロ不全がそれぞれの症状に寄与していると考えられています。(Unique)
- 12q14 microdeletion は通常 de novo(新生突然変異) として生じますが、まれに家族性遺伝の報告もあり得ます。(希少疾患情報センター)
染色体欠失は 染色体マイクロアレイ解析(CMA)や比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、全エクソーム解析(WES) などの高解像度遺伝子検査によって確定診断されます。(希少疾患情報センター)
治療方法(治療・管理)
12q14 microdeletion syndrome に対する 根本的な治療法は確立されていません。
治療と管理は主に 個々の症状に対する支持療法・多職種による包括的支援 が中心です。(希少疾患情報センター)
◆ 1. 成長支援
- 栄養管理と内分泌評価
発育不全や短身に対して 栄養評価、ホルモン評価(例:成長ホルモン) を行います。 - 最近の症例報告では、成長ホルモン補充療法(rhGH) が成長促進に有益であったケースが報告され、成長支援の一選択として検討されることがあります。(NCBI)
◆ 2. 発達・教育支援
- 早期療育(Early intervention)
発達遅延に対して理学療法・作業療法・言語療法などを組み合わせて支援します。
特殊教育・学習支援
知的障害や学習困難を補うための個別教育計画が有効です。
◆ 3. 行動・心理支援
- 行動療法・心理的支援
行動面の問題、不安・情緒面の課題に対応します。 - 必要に応じて 精神科・心理療法 を導入します。
◆ 4. 医療的対応
合併症の評価と治療
内臓奇形や追加の発達障害がある場合は、各専門科(循環器、整形外科、神経内科)等と連携し治療・フォローを行います。
◆ 5. 定期フォロー
- 発育、認知発達、身体機能の経過観察を継続的に行い、必要に応じて支援内容を調整します。
- 感覚機能(視覚・聴覚)の評価を含めることが推奨されます。
◆ 6. 遺伝カウンセリング
- 病因の説明、(再発リスク)や家族計画への支援を行います。
- de novo の場合でも、家族の染色体構造評価を含めた遺伝学的相談が重要です。(希少疾患情報センター)
まとめ
12q14 microdeletion syndrome は、12番染色体 q14 領域の微小欠失 によって生じる稀な先天性疾患です。代表的な特徴には 出生前後の成長遅延、短身、発達遅延、軽度〜中等度の知的障害、失敗性発育(failure to thrive) が含まれ、欠失領域に含まれる HMGA2、LEMD3、GRIP1 などの遺伝子のハプロ不全がその原因と考えられています。症状は欠失の大きさと関与遺伝子によって異なりますが、成長支援、療育、教育・行動支援、合併症管理を含めた 多職種による包括的治療 が必要です。遺伝カウンセリングも重要な支援の一部です。
参考文献元
- NIH GARD: 12q14 microdeletion syndrome — general disease summary including growth delay, short stature, feeding difficulties.(希少疾患情報センター)
- NCBI MedGen: 12q14 microdeletion syndrome — phenotype features including intellectual deficit, failure to thrive, osteopoikilosis.(NCBI)
- Rare Chromosome Information Group: 12q14 microdeletions PDF — candidate genes and phenotypic associations.(Unique)
- Scientific literature (Heldt F et al., Eur J Med Genet 2018; case reviews and phenotype descriptions).(Nature)
- Malacards: 12q14 microdeletion syndrome profile summarizing key traits and associated genes.(MalaCards)


