13q12.3 microdeletion syndrome

Posted on 2026年 1月 19日

別名・関連疾患名

一部の広い 13q deletion syndrome(13q欠失症候群) の亜型・症例として扱われることもありますが、13q全域欠失とは異なる微小欠失単独の疾患として認識されています。(ウィキペディア)

対象染色体領域

ヒト第13番染色体 長腕(q)の 12.3 領域(13q12.3) における 微小欠失(microdeletion) が原因です。
この欠失は、染色体の局所的なコピー数の減少で、該当領域に含まれる複数の遺伝子が一部欠けてしまうことで発症します。(希少疾患情報センター)

欠失される遺伝子として論文や症例報告に挙げられることがあるものには、HMGB1(high mobility group box 1)、KATNAL1(katanin catalytic subunit A1)、および非コードRNA遺伝子 LINC00426 などが含まれており、これらのハプロ不全(1コピーの欠失)が症状形成に寄与しているとされています。(PubMed)

発生頻度

13q12.3 microdeletion syndrome は 非常にまれな染色体異常疾患 で、疫学データとしての明確な出生頻度は公表されていませんが、世界的にも 極めて低頻度(<1/1,000,000) と考えられています。(MalaCards)

米国遺伝性希少疾患情報センター(GARD)によると、米国では1000人未満の患者が存在すると見積もられていますが、これも確定値ではなく、臨床的な未診断例や報告されていない症例が含まれる可能性があります。(希少疾患情報センター)

欠失そのものはほとんど 新生突然変異(de novo) として発生することが多く、親から子へ遺伝する例はまれとされています。(希少疾患情報センター)

臨床的特徴(症状)

13q12.3 microdeletion syndrome は、欠失領域に含まれる遺伝子の機能喪失によって 神経発達、身体発達、および皮膚・感覚系などに多彩な症状 を呈します。症例数自体が限られているため全ての症状が一定であるわけではありませんが、報告されている主要な臨床特徴は次の通りです:

1. 知的機能・発達遅延

  • 中等度〜軽度の知的障害(intellectual disability) が一般的に報告されています。これは欠失領域に含まれる遺伝子のハプロ不全が脳の発達に影響するためです。(希少疾患情報センター)
  • 全般性発達遅延(運動・言語・社会性の発達の遅れ)も多くの症例で観察されており、早期介入や療育が推奨されます。(希少疾患情報センター)

2. 言語遅延・コミュニケーションの困難

  • 言語発達の遅れは本症候群の特徴のひとつで、話し言葉や発音の取得が平均より遅くなることが報告されています。(希少疾患情報センター)

3. 小頭症(Microcephaly)

  • 出生後の小頭症(postnatal microcephaly) が報告されており、脳の成長遅延が頭囲にも反映されることがあります。(希少疾患情報センター)

4. 特徴的顔貌(Facial dysmorphism)

多くの報告例で顔貌異常が指摘され、以下のような特徴がみられることがあります:

  • 頬部の平坦化(malar flattening)
  • 目立った鼻(prominent nose)
  • 発育不全の鼻翼(underdeveloped alae nasi)
  • 平坦な上唇人中部(smooth philtrum)
  • 薄い上唇紅色帯(thin vermillion of the upper lip)(MalaCards)

これらは13q12.3微小欠失に特徴的な顔貌パターンとして報告されています。(MalaCards)

5. 皮膚症状・アトピー傾向

  • 湿疹(eczema)やアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis) が一部の患者で認められています。(希少疾患情報センター)

6. 痛覚の低下

  • 痛みに対する感受性低下(reduced sensitivity to pain) の例が報告されており、外傷時などにも痛みの認識が通常より低い傾向がみられることがあります。(MalaCards)

7. 摂食・栄養関連の課題

Bartholdiらの症例報告では、乳児期の摂食困難や離乳の難しさ が観察されており、初期栄養管理が必要になるケースも報告されています。(PubMed)

8. 行動面・その他の合併症

  • 場合によっては 多動性(hyperactivity)行動面の課題 といわれる症状が見られることがあり、症例によっては追加の評価・支援が必要です。(上原記念生命科学財団)

最近の症例報告では、てんかんや肥満などを伴う例が記載されているものもあり、微小欠失領域や遺伝的背景の差によって多様な表現型となることが示唆されています。(Wiley Online Library)

原因

13q12.3 microdeletion syndrome の原因は、13番染色体の q12.3 領域に生じる微小欠失(chromosomal microdeletion)です。

  • この欠失によって、13q12.3領域内に存在する複数の遺伝子が1コピー欠失(haploinsufficiency)となり、その遺伝子産物が通常量では不足することにより正常な発達や機能が阻害されます。(希少疾患情報センター)
  • 欠失は多くの場合 de novo(新生突然変異) であり、子どもで見られても両親に同じ欠失がないことが一般的です。(希少疾患情報センター)
  • 当該領域に含まれる HMGB1 は細胞の核内でDNA結合タンパク質として広く機能し、脳の発達や神経細胞機能に重要であることが示唆されています。欠失によってこれらの機能が低下すると、発達遅延や小頭症に寄与すると考えられています。(上原記念生命科学財団)

染色体欠失は、通常の染色体分析では検出が困難な微小欠失であるため、染色体マイクロアレイ解析(CMA)比較ゲノムハイブリダイゼーション(array CGH) など高解像度な遺伝子検査により確定診断が行われます。(希少疾患情報センター)

治療方法(治療・管理)

13q12.3 microdeletion syndrome に対して 根本的な治療法は確立されていません。治療は主に 症状に応じた支持療法(supportive care)と包括的支援 が中心です。

1. 発達支援と療育

  • 理学療法(Physical therapy):運動発達の遅れや筋緊張の課題に対する支援
  • 作業療法(Occupational therapy):日常生活技能や感覚統合支援
  • 言語療法(Speech therapy):言語遅延や発音・コミュニケーション機能の支援
    これらの療育は早期から継続的に行うことが、発達促進に寄与するとされています。(希少疾患情報センター)

2. 教育支援

  • 個別化教育プログラム(IEP):学習支援が必要な場合、教育機関での個別支援計画
  • 特別支援教育や専門講師による学習フォローなど

3. 皮膚症状・アトピー管理

  • 湿疹やアトピー性皮膚炎には スキンケア、保湿、抗炎症薬(ステロイド外用薬など)
  • 症状の程度によっては皮膚科でのモニタリングが推奨されます

4. 感覚・行動支援

  • 痛覚低下 に対しては、安全性の配慮や日常生活でのケア指導
  • 行動面の課題 がある場合は心理・行動療法や専門医との連携

5. 栄養・成長管理

  • 摂食困難や成長遅延が見られる場合は小児栄養専門医と連携
  • 必要に応じ栄養補助や摂食リハビリテーション

6. 定期的な医療フォロー

  • 発達状況、視覚・聴覚・神経機能などの定期評価
  • 必要に応じて内科・小児科を含む多職種フォロー

7. 遺伝カウンセリング

  • 欠失の原因、再発リスク、家族計画の相談
  • 両親・家族に対する情報提供と支援計画の共有

まとめ

13q12.3 microdeletion syndrome は、13番染色体の q12.3 領域における微小欠失(microdeletion) により発症する極めて稀な先天性疾患です。主な臨床特徴として 中等度の知的障害、言語遅延、小頭症、特徴的な顔貌、湿疹/アトピー性皮膚炎、痛覚低下、摂食・発達の課題 などがみられます。欠失領域内の重要遺伝子(例:HMGB1, KATNAL1)の1コピー欠失が神経発達や身体機能に影響すると考えられており、これが主要な病態機序です。治療は症状を緩和し、発達支援・教育支援・皮膚管理などを含む 支持療法と包括的ケア が中心となります。

参考文献元

  • NIH GARD: 13q12.3 microdeletion syndrome — 概要・症状・表現型特徴。(希少疾患情報センター)
  • Malacards: 13q12.3 microdeletion syndrome — 稀少疾患情報、臨床特徴。(MalaCards)
  • Bartholdi D. et al. (2014) — 13q12.3微小欠失の臨床報告(知的障害、小頭症、湿疹など)。(PubMed)
  • Monarch Initiative: 13q12.3 microdeletion syndrome — 症候群分類・表現型。(モナークイニシアチブ)
  • Wang M. et al. (2020/2024) 症例報告 — 微小欠失の多様な臨床像。(link.springer.com)