14q24.1-q24.3 microdeletion syndrome

Posted on 2026年 1月 19日

別名・関連疾患名

対象染色体領域

  • 14番染色体 長腕(q)14q24.1〜14q24.3 の微小欠失(microdeletion)が原因となる症候群です。多くは染色体の末端欠失ではなく、染色体内部の一部が抜ける間質欠失(interstitial deletion)として報告されています。 (PubMed)
  • 欠失サイズは症例により異なり、報告例では2.3〜5.4Mb程度の重なり合うde novo欠失が示されています(いずれも親から受け継がれず新たに生じた欠失)。 (PubMed)
  • 研究では、重複する共通欠失区間に含まれる遺伝子候補としてACTN1、DCAF5、SLC39A9、SRSF5、SLC10A1、SMOC1、SLC8A3、COX16、SYNJ2BPなどが挙げられ、欠失によるハプロ不全(haploinsufficiency)が症状に関与すると考えられています。 (PubMed)
  • 別の症例報告では、欠失領域に含まれる遺伝子のうちNUMB、PSEN1などが表現型との関連候補として議論されています。 (Springer)

発生頻度

  • 本症候群は非常に稀で、症例報告ベースで疾患概念が整理されてきた領域です。初期の報告では、14q24.1–q24.3の間質欠失は「非常に稀」で、重なり合うde novo欠失をもつ3例が提示されています。 (PubMed)
  • その後も報告は限られており、GARD(米国NIH系の希少疾患情報)では、米国での患者数推定として「1,000人未満」といった規模感で紹介されています(希少疾患のため推定)。 (希少疾患情報センター)
  • 疫学的に母集団を置いた明確な出生頻度(例:○万人に1人)は確立されていません。報告の集積が進むにつれ、表現型の幅(軽症〜複合症状)がより明確になる可能性があります。 (PubMed)

臨床的特徴(症状)

本症候群は「症候性の知的発達症(syndromic intellectual disability)」として整理され、発達・心臓・四肢(手指)・顔貌など複数系統にまたがる所見が組み合わさることが特徴です。 (希少疾患情報センター)

1)発達・神経発達(知的機能、言語、運動)

  • 代表的な中核所見として、軽度の知的障害が報告されています。 (希少疾患情報センター)
  • 言語発達の遅れ(speech developmentの遅延)がよくみられます。 (希少疾患情報センター)
  • 症例によっては「軽度」よりも複雑な神経学的問題を伴うことがあり、ある報告では精神運動発達遅滞に加えて、けいれん(seizures)、脳の異常所見を含む複合的表現型が示されています。 (Springer)
  • 乳幼児期からの筋緊張低下(hypotonia)、哺乳不良などが早期徴候としてみられた症例もあり、発達遅れの背景に運動・摂食面の課題が関与する可能性があります。 (Springer)

2)先天性心疾患(Congenital heart defects)

  • 3例の重複欠失報告では、全例に先天性心疾患が認められ、具体例として総動脈幹(truncus arteriosus)肺動脈閉鎖(pulmonary atresia)心房中隔欠損(ASD)、心室中隔欠損(VSD)などが挙げられています。 (PubMed)
  • GARDの要約でも、主要所見として先天性心疾患が明記されています。 (希少疾患情報センター)
    心疾患は生命予後や生活の質に影響し得るため、診断後は循環器専門医の評価が重要です。

3)四肢・骨格(特に手指)

  • 典型所見として短指症(brachydactyly)が挙げられ、複数例で共通しています。 (希少疾患情報センター)
  • 症例報告では骨格系の異常がより広範にみられることがあり、個々の欠失範囲や併存所見により重症度は変動します。 (Springer)

4)顔貌の特徴(dysmorphic facial features)

  • 共通して報告されている顔貌所見として、眼間開離(hypertelorism)幅広い鼻梁(broad nasal bridge)、上口唇が薄い(thin upper lips)などがあります。 (PubMed)
  • GARDでも「dysmorphic facial features」が主要所見に含まれています。 (希少疾患情報センター)

5)その他(症例により出現)

  • 3例の報告では、全例共通ではない所見として腸回転異常(intestinal malrotation)停留精巣(cryptorchidism)、異所性腎(ectopic kidney)などが単独症例で観察されています。 (PubMed)
  • 別の症例報告では、気管支肺系の問題、脳異常、骨格異常などを含むより複雑な表現型が記載されており、同じ領域欠失でも臨床像が広がり得ることが示唆されます。 (Springer)

原因

  • 原因は、14q24.1〜14q24.3領域の微小欠失です。遺伝子が1コピー失われることで、関連遺伝子の発現量が不足するハプロ不全が病態に関与すると考えられています。 (PubMed)
  • 既報例では、欠失は多くがde novo(新生)として報告されています。 (PubMed)
  • 分子遺伝学的には、共通欠失区間に含まれる複数遺伝子のうち、どの遺伝子(または遺伝子群)が主要所見(心疾患・短指症・発達遅れなど)に強く寄与するかは、現在も症例蓄積と機能解析で検討される領域です。 (PubMed)
  • 検出には染色体マイクロアレイ(CMA/array-CGH)などのコピー数解析が用いられ、通常の核型検査では微小欠失が検出されない場合があります(症例報告でもarray-CGHで同定)。 (PubMed)

治療方法

本症候群に「欠失そのものを元に戻す」根本治療は確立されていません。治療の中心は、合併症・発達課題に対する症状別の管理(支持療法)と、継続的なフォローです。疾患の主要所見が多領域にわたるため、初期から多職種連携が重要になります。 (希少疾患情報センター)

1)先天性心疾患への対応

  • 心エコーなどで病型と重症度を評価し、必要に応じて心臓外科的治療薬物治療、長期フォローを行います。先天性心疾患は本症候群の主要所見として複数例で一貫しており、診断後の最優先評価項目となります。 (PubMed)

2)発達遅延・言語遅延への介入

  • 乳幼児期からの早期療育(発達評価に基づく個別支援)が重要です。
  • 言語療法(コミュニケーション支援、発語・構音の訓練)、作業療法(日常生活動作・巧緻運動)、理学療法(粗大運動、筋緊張・姿勢、歩行)を組み合わせます。
  • 症例により知的機能は軽度とされますが、学習面・社会適応面の支援ニーズは個別性が高いため、就学前から学校期まで一貫した支援設計が望まれます。 (希少疾患情報センター)

3)けいれん・神経学的問題への対応(該当例)

  • けいれんがある場合は小児神経科で評価し、必要に応じて抗てんかん薬を使用します。神経症状は全例に必発ではないものの、複合表現型の症例報告があるため注意が必要です。 (Springer)

4)四肢・骨格(短指症など)への対応

  • 機能障害の程度により、整形外科評価、リハビリ、補助具の検討を行います。短指症は主要所見として報告されますが、日常生活での困りごとは個別性が高いため、生活場面に即した支援を組みます。 (PubMed)

5)消化管・泌尿生殖器などの合併症評価(該当例)

  • 腸回転異常、停留精巣、腎の位置異常などが報告されているため、臨床症状や健診所見に応じて画像検査・専門科紹介を検討します。 (PubMed)

6)遺伝カウンセリング

  • 多くがde novoと報告されますが、再発リスクの評価(両親検査を含む)や、今後の妊娠における検査選択肢の説明のため、遺伝カウンセリングが推奨されます。 (PubMed)

まとめ

14q24.1-q24.3 microdeletion syndromeは、14番染色体長腕の14q24.1〜14q24.3に生じる微小欠失による、非常に稀な先天性疾患です。中核所見として、軽度の知的障害言語発達遅延先天性心疾患短指症(brachydactyly)、および特徴的顔貌が報告されています。 (希少疾患情報センター)
欠失は多くがde novoで、共通欠失区間に含まれる複数遺伝子のハプロ不全が症状に関与すると考えられています。 (PubMed)
治療は根本治療ではなく、心疾患の評価と治療発達支援(言語・作業・理学療法)、必要に応じた神経学的管理や合併症対応を組み合わせる支持療法が中心です。 (希少疾患情報センター)

参考文献元

  • GARD(Genetic and Rare Diseases Information Center, NIH系):14q24.1q24.3 microdeletion syndrome(疾患概要、別名、主要症状、患者規模推定) (希少疾患情報センター)
  • Oehl-Jaschkowitz B, et al. Deletions in 14q24.1q24.3 are associated with congenital heart defects, brachydactyly, and mild intellectual disability. Am J Med Genet A. 2014(3例の重複欠失、主要症状、候補遺伝子群) (PubMed)
  • Tassano E, et al. Phenotypic and genetic characterization of a patient with a de novo interstitial 14q24.1q24.3 deletion. Molecular Cytogenetics. 2014(複合表現型、けいれん、心疾患、候補遺伝子議論) (Springer)