15q13.3 deletion syndrome (BP4 to BP5)

Posted on 2026年 1月 19日

15q13.3 deletion syndrome (BP4 to BP5) は、ヒト第15番染色体長腕の特定領域 BP4 と BP5 の間の微小欠失 によって引き起こされる 先天性の染色体構造異常症候群 です。神経発達や行動面・認知機能などに関与する複数の遺伝子がこの領域に存在するため、欠失による幅広い臨床像を呈します。(NCBI)

別名・関連疾患名

  • 15q13.3 microdeletion syndrome BP4-BP5
  • Chromosome 15q13.3 recurrent deletion syndromes
  • 15q13.3 recurrent deletion
  • OMIM 登録名にも類似した移行名あり — OMIM:612001(15q13.3 deletion syndrome)
    ※欠失の位置や範囲により BP4–BP5 外や BP3–BP5 などの亜型もありますが、本項では BP4–BP5 に典型的に生じる欠失 について扱います。(PMC)

対象染色体領域

本疾患は、染色体15の長腕(q)の BP4 と BP5 と呼ばれる反復配列領域の間(15q13.3)欠失(microdeletion) することで発症します。
この欠失は、非アレル同源組換え(NAHR: non-allelic homologous recombination)という染色体の不均衡な再編成によって生じ、欠失領域はおおむね 約1.5〜2メガベース(Mb) です。(Nature)

欠失領域には神経系・発達に関連した遺伝子群が含まれており(含まれるとされる主要遺伝子例: CHRNA7 等)、これらの遺伝子の両アリルのうち1コピーが失われる ハプロ不全(haploinsufficiency) が病態形成に影響すると考えられています。(東京・ミネルバクリニック)

発生頻度

15q13.3 deletion は比較的頻度の高い再発性 Copy Number Variation(CNV)として知られ、いくつかの集団研究が発生頻度を推定しています:

  • 一般集団(出生者全体)では 約 1/4,865 〜 1/5,525 と推定されるとの報告があります。
  • 無作為の新生児コホートでは 約 1/2,500 という報告もあり、比較的高頻度な再発性欠失であることが示唆されています。
  • 知的障害を持つ集団に注目すると、約 1/347 という高い割合が示されています。(Orpha.net)

なお、この欠失は 浸透率(penetrance)や表現型の幅に個人差が大きい とされ、欠失があっても症状が出ない人(無症状キャリア)も報告されています。(NCBI)

臨床的特徴(症状)

15q13.3 deletion syndrome は非常に 表現型の幅が広い ため、同じ欠失を持つ人でも症状の有無や重症度が大きく異なることがあります。主に以下のような特徴が報告されています。(NCBI)

● 発達遅延 / 知的障害

  • 多くの患者で 知的障害(intellectual disability) が観察され、一般に軽度〜中等度が多いです。
  • 発達遅延、とくに 言語獲得の遅れ(speech delay) や認知機能の低下が日常的に見られます。
  • 多くの集団研究では、全体の半数以上(約 50〜60% 前後)で発達遅延または知的障害が報告されています。(NCBI)

● てんかん・痙攣

  • 欠失を持つ人の複数例で てんかん が合併し、若年性ミオクロニー型、欠神発作、全般性発作など様々なてんかん発現が報告されています。
  • てんかんの発症頻度は症例により異なりますが、報告では 約25%前後 の患者で痙攣が見られるというデータがあります。(UMIN SQUARE)

● 自閉症スペクトラム障害(ASD)・行動異常

  • ASD や自閉症関連の行動(社会性困難、反復行動など)を呈する患者が報告されています。
  • 欠失と行動面の関連を指摘する研究では、注意欠陥多動性障害(ADHD) や情緒面の課題など複合的な行動問題がみられることもあります。(Nature)

● 精神疾患 / 神経精神症状

  • 統合失調症や気分障害、知覚異常などの神経精神疾患が合併する報告があります。
  • 欠失は neurodevelopmental disorder のリスク因子として幅広い影響を持つとされています。(UMIN SQUARE)

● 筋緊張低下・運動機能

  • 筋緊張低下(hypotonia) による初期の運動発達の遅れや協調運動の困難などが見られます。(NCBI)

● その他の身体的特徴

  • 一部の患者に 特徴的な顔貌(例:眼間開離、眼瞼裂異常、短い人中など)が報告されていますが、必ずしも全例に共通するわけではありません。
  • 小頭症や先天性奇形(心疾患や指趾異常など)を呈するケースもまれながら報告されています。(UMIN SQUARE)

原因

15q13.3 deletion syndrome の原因は、15番染色体の BP4–BP5 領域の微小欠失(recurrent microdeletion) によるものです。

この領域は、低コピー反復配列(segmental duplications)が存在し、非アレル同源組換え(NAHR)によって欠失が起こりやすい脆弱部位(hotspot) になっています。(Nature)

欠失領域に含まれる重要遺伝子の代表としては、CHRNA7(α7 ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット) が挙げられており、神経発達・シナプス機能・発作閾値の制御などに関連するとされています。欠失によるハプロ不全がこれらの機能を阻害しうることが、てんかんや行動異常、認知障害と関連すると示唆されています。(東京・ミネルバクリニック)

ただし、欠失があっても症状のない人も存在することから、浸透率の不完全性(incomplete penetrance) や修飾遺伝子・環境因子の影響が臨床的表現型に寄与している可能性があります。(NCBI)

診断はゲノムワイドな 染色体マイクロアレイ解析(array-CGH / CMA) によって行われ、BP4–BP5 欠失が確認されます。

治療方法(支持療法・管理)

15q13.3 deletion syndrome の根本的な「欠失そのものを修復する治療法」は現在ありません。そのため治療は症状と合併症への対応・支持療法が中心となります。(NCBI)

対症療法

  • てんかんの管理:抗てんかん薬(ASM)の適切な選択と投与。バルプロ酸などが有効例として報告されていますが、薬剤選択は患者ごとに異なります。(NCBI)
  • 精神科/心理的支援:行動治療・心理療法、情緒面のサポート。
  • 精神疾患の治療:必要に応じて抗精神病薬・抗うつ薬の検討。

発達支援・リハビリ

  • 理学療法(Physical Therapy):運動遅延・筋緊張低下への対応。
  • 作業療法(Occupational Therapy):日常生活動作の支援。
  • 言語療法(Speech Therapy):言語発達遅延へ対応。
  • 発達療育:早期介入教育や特殊教育支援。

継続的モニタリング

  • 定期的な発達評価、身体検査、神経学的評価。
  • 視覚・聴覚検査:感覚機能の評価と補助具活用。
  • 合併症の管理(心疾患等のある場合)。

多職種協働サポート

社会福祉サービス、学校教育支援、遺伝カウンセリングなど、多職種・多領域での支援計画が不可欠です。

まとめ

15q13.3 deletion syndrome (BP4 to BP5) は、15番染色体上の BP4 と BP5 の間の 15q13.3 欠失 による神経発達・認知障害系の染色体異常症候群です。代表的な症状には知的障害、発達遅延、言語障害、てんかん、自閉症スペクトラム関連症状、精神疾患などが含まれますが、欠失を持つ全ての人が症状を呈するわけではなく、表現型の幅が広い ことが特徴です。欠失部位に含まれる遺伝子の機能喪失が発症に関与すると考えられ、治療は根本治療は存在しないため、症状ごとの支持療法と包括的支援が重要です。(NCBI)

参考文献元

  1. GeneReviews / NCBI Bookshelf: 15q13.3 Recurrent Deletion — 臨床像、診断と管理。(NCBI)
  2. Lowther C, et al. (2015): Delineating the 15q13.3 microdeletion phenotype — 欠失範囲と神経発達症状の包括的レビュー。(PMC)
  3. Orphanet: 15q13.3 microdeletion syndrome — 発生頻度と症候群概要。(Orpha.net)
  4. Minerva Clinic (Japan): 15q13.3欠失症候群 — 症状と関連遺伝子。(東京・ミネルバクリニック)
  5. Clinical and Genetic Heterogeneity of 15q13.3: 15q13.3 欠失と多彩な表現型。(karger.com)