別名・関連疾患名
- 15q13.3 microduplication syndrome — 同様の領域の重複を指す名称で用いられることがあります。 (MDPI)
- Reciprocal duplication of 15q13.3 — 15q13.3 反復領域の相補的な重複という意味で文献に出現します。 (NCBI)
- 15q11-q13 duplication (一部) — 広い 15q11-q13 領域の重複に含まれるタイプとして扱われることもありますが、本項は BP4-BP5 の範囲に着目しています。 (ヒロクリニック)
- 一部報告では CHRNA7 duplication など、含まれる遺伝子を強調する表現が用いられることがあります。 (MDPI)
対象染色体領域
第15番染色体 長腕 q の 13.3 領域(BP4-BP5)における 微小重複(microduplication) によって引き起こされる疾患です。
この領域は反復配列を介した構造変異が起こりやすいホットスポットであり、重複は一般的に CHRNA7 遺伝子 を含む部分的なコピー数増加として検出されることが多いです。 (NCBI)
重複はゲノムの コピー数バリアント(CNV) の一種で、片方の染色体 15 の BP4-BP5 間にある DNA が 3 コピー以上になることで発症に関与します。
臨床ラボで検出されるケースでは、BP4-BP5 重複は染色体マイクロアレイ解析(array-CGH / CMA)などによって確認されます。 (NCBI)
発生頻度
15q13.3 重複症候群の 正確な出生頻度は未確立 ですが、以下のような研究が示唆しています:
- 15q11-q13 全体の重複は、ある大規模集団スクリーニングで 0.0069%(約1/14,500) と報告されており、重複全体の一部として15q13.3重複が含まれる可能性があります。 (PMC)
- 15q13.3 重複は 15q13.3 欠失に比較すると かなり報告例が少なく、症例数も限定的 であり、臨床的に症状ありとして認識されるケースは稀です。 (NCBI)
- GeneReviews の 15q13.3 欠失のレビューには、15q13.3 重複が欠失ほど明確な頻度データを持っていないが、一般集団のコピー数バリアントとしてみられていると注記されています。 (NCBI)
また、重複は 遺伝性(親からの遺伝) または 新生突然変異(de novo) の両方で生じることがあり、いずれも個体差の背景になっています。 (NCBI)
臨床的特徴(症状)
15q13.3 duplication syndrome の 表現型は幅が広く、欠失と比較して浸透率が低い(全員に症状が出るわけではない)ものの、報告例から以下のような主な症状・特徴が挙げられています:
神経発達・認知機能関連
- 発達遅延(developmental delay)
重複を持つ患者において、言語や運動能力の発達が遅れることが報告されています。 (MDPI) - 知的障害(intellectual disability / ID)
軽度〜中等度の知的機能低下を示すケースがあり、特に複数の神経発達課題を併発することがあります。 (MDPI) - 言語発達の遅延
表現言語・理解言語共に遅れがみられ、自閉症スペクトラム関連のコミュニケーション特性が報告されています。 (MDPI)
行動障害・自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 15q13.3 重複群では 自閉症スペクトラム障害に関連する行動特性(社会性の困難、反復行動など)が観察され、ASD と関連する表現型が確認されています。 (MDPI)
- 行動面では注意欠如/多動性障害(ADHD)や衝動性、感覚過敏などの行動課題がみられることもあります。 (NCBI)
筋緊張・運動機能
神経精神症状
- 報告例では 行動異常、情緒症状、社会的適応の課題 など、精神面の多様な課題がみられることがあります。 (NCBI)
- 一部では 叙情障害 や感情調節の課題が診断につながる場合もありますが、これらは明確に重複のみに起因する特異的症状とは言い切れません。 (NCBI)
てんかん / 痙攣
- 15q13.3 重複におけるてんかんの頻度は一定しませんが、報告された患者群の一部では重複を持つケースでも てんかん発作または異常な電気生理所見 を示すことがあります。 (NCBI)
- 欠失とは異なり、重複単独で明確なてんかん傾向が高率に出るとは限らないため、個別評価が必要です。 (NCBI)
肥満・耳鼻・その他の合併
- 一部の研究では 肥満や耳の感染症の頻度上昇 が示唆されるものの、因果関係が必ずしも明確化されているわけではありません。 (NCBI)
- 典型的な特徴的顔貌や再発性奇形パターンは欠失ほど明確ではなく、表現型はより緩やかで多様です。 (NCBI)
原因
15q13.3 duplication syndrome の原因は、15番染色体 15q13.3 領域の一部が重複すること(遺伝子のコピー数増加)によるものです。
重複は 非アレル同源組換え(NAHR) の結果として生じ、BP4-BP5 間に位置する遺伝子を 3 コピー以上にすることで、神経発達やシナプス機能・行動制御に関与する遺伝子発現が過剰になると考えられます。 (NCBI)
重複領域に含まれる主な遺伝子候補としては次が挙げられます:
- CHRNA7(ニコチン性アセチルコリン受容体 α7 サブユニット遺伝子) — 神経シグナル伝達や認知機能に関与すると示唆されています。 (MDPI)
重複は de novo(新生突然変異) で生じる場合もあれば、親から遺伝する場合もあります。遺伝性のケースでは、親に同じ重複を持ちながら症状が軽度または無症状のこともあり、浸透率が不完全(low penetrance)である ことが特徴です。 (NCBI)
治療方法(支持療法・管理)
15q13.3 duplication syndrome に対しては、根本治療(重複そのものを修復する方法)は存在しません。治療は主に 症状ごとの支持療法と包括的支援 になります。
発達支援・療育
- 早期療育プログラム:運動、認知、日常生活力を高める支援
- 言語療法:コミュニケーションと発話の支援
- 作業療法:感覚統合、生活技能訓練
これらは早期から継続的に行うことで生活の質改善に寄与します。
行動・心理支援
- 行動療法:ASD や ADHD など行動面の課題に対応
- 心理支援・支援グループ:情緒面のケアと社会性支援
- 個別教育計画(IEP)など教育支援
医療的管理
- てんかん がある場合は小児神経科などで抗てんかん薬を用いた管理
- 肥満や合併症 がある場合は内科的フォロー
- 定期的な発達・健康評価
家族支援・遺伝カウンセリング
- 重複の性質と 再発リスク評価
- 出生前検査での説明と計画
- 家族・学校・福祉機関との連携
まとめ
15q13.3 duplication syndrome は、15番染色体の 15q13.3 領域(BP4-BP5)の微小重複 によって生じる多様な神経発達症状を呈する疾患です。主な臨床特徴は 発達遅延、知的障害、言語遅延、ASD や ADHD など行動障害、筋緊張低下 であり、てんかんや肥満などが合併することもあります。個体差が大きく、欠失に比べて浸透率は低いものの、神経発達や行動に影響を及ぼすことが示されています。治療は 症状緩和・支援重視 の支持療法が中心で、早期の介入と支援が生活の質向上に重要です。 (NCBI)
参考文献元
- NCBI GeneReviews: 15q13.3 region 重複と欠失の関連。15q13.3 duplication の記述と症状候補。 (NCBI)
- Budisteanu M ら (2021): 15q13.3 region duplication に関する文献レビュー。言語遅延、筋緊張低下、ASD、知的障害との関連。 (MDPI)
- Hiro Clinic: 15q13.3 重複症候群の症候と支援概要(和文)。 (ヒロクリニック)
- Orphanet / 15q11-q13 microduplication syndrome: 関連症状と疫学情報。 (Orpha.net)
- Population screening 15q11-q13 duplications: 母性重複と臨床像関連データ。 (PMC)


