15q24 duplication syndrome (A-C)

Posted on 2026年 1月 19日

別名・関連疾患名

  • 15q24 microduplication syndrome — 15q24領域の微小重複による症状全般を指す用語。
  • Reciprocal duplication of 15q24 region — 15q24欠失と相補的な構造異常として扱われることがある。 (NCBI)
  • 医学文献では症例ごとに dup(15)(q24)15q24 CNV と表記されることがあります。 (NCBI)

なお、(A-C) という表記は LCR(low copy repeat / 低コピー反復配列)によるブレイクポイント位置のバリエーションを示すことがあり、15q24領域には複数のLCRが存在するため A〜D といった区分が設定されています(重複/欠失が生じやすい領域)。 (search.clinicalgenome.org)

対象染色体領域

第15番染色体 長腕(q)15q24 領域の微小重複(microduplication) が原因です。
この領域は低コピー反復配列が複数存在し(LCR15q24A〜LCR15q24D など)、染色体再編成が起こりやすい“ホットスポット”になっています。 (search.clinicalgenome.org)

具体的には 15q24.1〜15q24.3 程度の範囲が対象となることが多く、重複の範囲や大きさによって臨床像や重症度が個体差を示します。 (NCBI)

発生頻度

15q24 duplication syndrome は 世界的にも極めて稀な染色体異常 とされ、正確な発生頻度は未確立です。

  • 重複の例は 症例報告がごく限られているレベル で、通常の集団疫学データに基づく数字はありません。
  • 15q24欠失の報告に比べて、重複の報告はかなり少なく、これは 重複の方が臨床表現型が軽い/不顕性の場合もあり得る という一般的な傾向と一致します(他の微小重複症でも重複は欠失よりも表現型が軽い・見逃されやすいとされる)。 (PMC)
  • 症例報告では、新生突然変異(de novo) として生じる例と、親からの遺伝が報告されていますが、家族内での複数例という報告は極めてまれです。 (サイエンスダイレクト)

臨床的特徴(症状)

15q24 duplication syndrome は現在まで症例報告が限られているため、以下は 報告症例の特徴と、逆の欠失症候群の臨床像との比較から得られている知見 をもとに整理しています。重複の患者は欠失症状と一部共通する臨床像を示すことがあり、発達・神経・身体形態など多方面に影響が出ると考えられています。 (サイエンスダイレクト)

1) 神経発達・認知機能

  • 全般的な発達遅延(global developmental delay) が報告されており、特に幼児期に運動・言語発達の遅れが認められています。 (サイエンスダイレクト)
  • 言語獲得の遅延認知機能低下 といった知的・発達面の課題が観察されることがあります。 (SAGE Journals)
  • ASD(自閉症スペクトラム障害)類似の行動パターンや社会的相互作用の課題が報告された症例もあり、神経発達症の1つとして評価されることがあります。 (SAGE Journals)

※重複は欠失の逆であり、欠失症候群が強い神経発達症候群として広く報告されているため、重複でも神経機能への影響が予想されるという意味で共通する側面があります。 (NCBI)

2) 行動面・情緒面

  • 一部症例では、行動の反復性、不安・情緒不安定、注意力の問題 など行動特性が指摘されています。
  • ASD関連の行動パターンが観察されるケースもありますが、重複の臨床像は欠失に比べて一般に柔らかい場合が多いという見解があります。 (PMC)

3) 身体的特徴・顔貌

重複患者では 欠失症候群と一部似た身体的特徴 が見られることが報告されていますが、必ずしも全例に共通するわけではありません。症状は個体差が大きいです。 (ThinkGenetic Foundation)

観察されることがある特徴:

  • 頭蓋・顔貌の変化:眼間距離の広さ(hypertelorism)やまぶたの形態異常などが報告されています。 (ThinkGenetic Foundation)
  • 四肢・指趾の異常:手指の形態異常などが報告される場合があります。 (サイエンスダイレクト)
  • 性器の発達異常(hypospadias など) が男性でみられる例も報告されています。 (ThinkGenetic Foundation)

4) その他の合併所見

一部症例では 免疫系や感覚器系(視覚・聴覚)への影響 があり、発育・生活機能評価で確認されることがありますが、これらは症例ごとに相違が大きいため包括的な症候群像として一般化するデータは限られています。 (ThinkGenetic Foundation)

原因

15q24 duplication syndrome の原因は、15番染色体長腕 q24 領域の一部が重複してコピー数が増加することです。これは染色体再編成(CNV:コピー数バリアント)の一種であり、重複により遺伝子のコピー数が通常の2コピーから3コピーになることで 遺伝子発現量が変化し、発達・機能に影響を与えると考えられています。 (NCBI)

遺伝的機序

  • 重複は 非アレル同源組換え(NAHR) によって発生すると考えられており、15q24領域の 低コピー反復(LCR) が構造異常を起こしやすい部位になっているためと推測されます。 (search.clinicalgenome.org)
  • 15q24欠失症候群では多数の候補遺伝子(例:SIN3A、CYP11A1、SEMA7A、ARID3B 等)が欠失部位に含まれることで重い表現型が生じるとされますが、重複では これらの遺伝子が過剰発現する可能性 があり、中枢神経発達などに機能影響を与えると考えられます(欠失/重複双方で機能障害が現れる例として観察)。 (NCBI)

発生形式

  • 多くの重複例は de novo(新生突然変異) であり、親には見られない変異として現れます。 (NCBI)
  • まれに遺伝性のケースがある可能性は否定されませんが、症例数が限られるため明確な遺伝パターンの統計的確立はありません。

治療方法

現在、15q24 duplication syndrome 自体を根本的に修復する治療(欠失部分の補填や遺伝子レベルで修正する治療)は確立されていません。
治療/管理は 症状ごとの支持療法(supportive care) と、発達・生活機能の向上を目指す多職種チームによる介入が中心です。

発達支援・療育

  • 理学療法(Physical therapy):筋緊張低下や運動発達遅延への対応。
  • 言語療法(Speech therapy):言語獲得の遅れに対する介入。
  • 作業療法(Occupational therapy):日常生活動作・感覚統合の支援。

早期から包括的な療育を開始することで、機能獲得と生活の質の改善につなげます。

行動・心理支援

  • 行動療法:ASD / ADHD 類似症状や行動面の課題に対応。
  • 心理カウンセリング:情緒支援や対人関係機能の強化。

医療的管理

  • 必要に応じて 神経科評価小児科フォロー
  • 合併症の有無を評価し、必要なら 専門医療(例:眼科・耳鼻科) との連携。

教育支援・社会的支援

  • 個別教育計画(IEP) や特別支援教育の提供。
  • 家庭・学校・福祉との連携による支援環境の構築。

遺伝カウンセリング

  • 検査結果に基づく 再発リスク の評価。
  • 出生前検査や家族計画の情報提供。

まとめ

15q24 duplication syndrome (A-C) は、15番染色体長腕 q24 領域の微小重複により生じる極めて稀な染色体異常症候群です。臨床像は報告例が限られるものの、主に 発達遅延、言語遅延、行動面の特徴、神経発達症状、身体的変化 を呈するとされます。重複が欠失症候群と比較して一般に軽度/変異性が高い傾向があるものの、生活機能に影響を及ぼすため、多職種による 療育・医療・教育支援 が重要です。診断は染色体マイクロアレイ(CMA)などで行われ、欠失症候群との鑑別と合わせて総合的な支援計画が求められます。 (NCBI)

参考文献元

  1. NCBI MedGen: Chromosome 15q24 duplication syndrome — 重複の報告例と基礎情報。 (NCBI)
  2. Spiegel M ら: A 15q24 microduplication reciprocal to 15q24 microdeletion — 初期の重複症例報告。 (サイエンスダイレクト)
  3. A Cámara-Domínguez 2025: Clinical case of neurodevelopmental delay associated with 15q24 duplication. (PubMed)
  4. RareChromo 15q duplications説明 — 15q領域重複全般の背景情報。 (Unique)
  5. Microduplications一般レビュー(Weise 2012) — 重複の表現型傾向について。 (PMC)