別名・関連疾患名
- 15q25 distal microdeletion / distal 15q25.2–q25.3 microdeletion(15q25 遠位微小欠失)
- 15q25.2q25.3 recurrent region deletion (distal, LCR C–D deletion)(LCR-C〜LCR-D 間の再発性欠失)
※本疾患は、15q25.2q25.3 に存在する低コピー反復配列(LCR)を介した再発性コピー数変異(CNV)のうち、遠位(distal)領域=LCR-C〜LCR-D 間の欠失を指します。(ClinGen)
対象染色体領域
15番染色体 長腕(q)15q25.2–q25.3:LCR-C〜LCR-D 間の再発性欠失(distal)(ClinGen)
- 代表的なゲノム座標(ClinGen Dosage Sensitivity)
- GRCh37/hg19:chr15: 85,139,652–85,713,001
- GRCh38/hg38:chr15: 84,596,421–85,169,770 (ClinGen)
- この領域には LCR(低コピー反復配列)が複数存在し、減数分裂時の組換え(recombination)で“ずれ”が起きやすく、非アリル間同源組換え(NAHR)により、LCR に挟まれた区間が欠失することで発生しやすい「ホットスポット」とされています。
- 重要な注意点として、ClinGen は「領域内の遺伝子はランドマークであり、原因遺伝子と断定できない」としており、特定の単一遺伝子ではなく“領域欠失”としての影響、さらに可変表現性(症状の幅)が前提となります。(ClinGen)
発生頻度
一般集団での正確な出生頻度は確立していません(検査普及とデータ蓄積に依存)。
ただし、臨床集団(発達遅延/知的障害、先天異常などで検査された集団)での「検出頻度」について、以下のケースコントロール研究が報告されています。
- Coe ら(2014)の大規模ケースコントロール:
15q25 distal(LCR C–D)欠失は 7/29,085(症例) vs 0/19,584(対照)で、臨床集団での偏り(enrichment)が示されています。(ClinGen)
※上記は「出生頻度」ではなく、「検査対象となった臨床集団でのCNV検出頻度」に近い指標です。現実には、無症状〜軽症で見逃される例もあり得るため、頻度の解釈には注意が必要です。(ClinGen)
臨床的特徴(症状)
本疾患の特徴は、神経発達・神経精神症状が中心で、同じ欠失でも個人差が大きい(可変表現性)点です。ClinGen のまとめでは、複数例に共通して報告されている所見として以下が挙げられています。(ClinGen)
1) 発達・知的機能
- 発達遅延(developmental delay):複数症例で報告(例:5/11 など)(ClinGen)
- 知的障害(intellectual disability)/学習の困難:軽度〜中等度が多いとされ、学校生活や言語発達に影響し得ます(15q25欠失全体のまとめとしても主要所見)。
- 筋緊張低下(hypotonia):複数症例で報告され、粗大運動の遅れ・疲れやすさにつながる場合があります。(ClinGen)
2) 自閉スペクトラム・行動/精神症状(遠位欠失で相対的に多いとされる)
- 自閉スペクトラム症(ASD):複数症例で報告(例:4/11、別解析では 2/5 など)。(ClinGen)
- 統合失調症などの神経精神症状:報告例があり、ClinGen は「表現型は非特異的で変動する」としています。(ClinGen)
- RareChromo(Unique)の情報では、“神経精神疾患は遠位領域を含む欠失でより多い可能性”が示唆されています。
3) けいれん・てんかん
- 発作/けいれん(seizures):複数症例で報告(例:2/11)。(ClinGen)
- RareChromo でも、“発作は遠位領域を含む欠失でより多い可能性”とされています。
4) 眼科(斜視など)
- 斜視(strabismus):RareChromo にて、遠位領域を含む欠失で比較的多い可能性が示されています。
5) 形態・その他(例:報告に基づく“起こり得る”所見)
- ClinGen に引用された症例報告の具体例として、発達遅延・知的障害・筋緊張低下・発作に加え、頭蓋形態(斜頭/小頭)、顔貌、手指拘縮(camptodactyly)、停留精巣、感染を繰り返す、などが報告されています。ただし、この例は他のCNVも併存しており、単独欠失の所見としては慎重に解釈されます。(ClinGen)
原因
15q25.2–q25.3(distal:LCR-C〜LCR-D)領域の微小欠失(コピー数減少)が原因です。(ClinGen)
- 発生機序:15q25 には LCR が存在し、減数分裂の組換え時に“ずれ”が生じることで、NAHR(非アリル間同源組換え)により LCR に挟まれた領域が欠失し得ます。
- 遺伝形式:de novo(新生)も遺伝も両方あり得ます。ClinGen では、遠位欠失が家族内で遺伝していた例も示され、浸透率が不完全(持っていても症状が目立たない場合)で、可変表現性が大きいことが重要な特徴です。(ClinGen)
治療方法
現時点で、この欠失そのものを元に戻す根本治療(原因治療)は確立していません。治療の中心は、症状に応じた多職種連携による支持療法・合併症管理です(以下はサイト掲載向けに整理)。
1) 発達支援(早期介入が重要)
- 乳幼児期からの発達評価(運動・言語・認知)
- 理学療法(PT):粗大運動、筋緊張低下への対応
- 作業療法(OT):日常生活動作、感覚面の課題
- 言語療法(ST):言語発達・コミュニケーション支援
発達遅延や学習の困難が主要所見として報告されているため、早期から支援計画を立てることが実務上重要です。(ClinGen)
2) 行動・発達特性(ASD/注意・情緒面)の評価と支援
- ASD などのスクリーニング、心理評価
- 環境調整(学校・家庭)、行動療法、カウンセリング
- 必要に応じて児童精神科/発達外来で薬物療法(症状に応じ個別判断)
遠位欠失では神経精神症状が相対的に多い可能性が示唆されているため、定期的な評価が推奨されます。
3) てんかん(発作)の管理
- 発作が疑われる場合:脳波(EEG)評価
- 診断された場合:発作型に応じた抗てんかん薬(AED)
発作は本疾患で複数報告があり、遠位欠失で多い可能性が示唆されています。(ClinGen)
4) 眼科フォロー(斜視など)
- 斜視の評価、視力・屈折検査
- 必要に応じて眼鏡、視能訓練、外科的治療の検討
斜視が遠位欠失で多い可能性が示唆されています。
5) 遺伝カウンセリング
- 欠失の範囲(CMA 等での座標)と表現型の幅の説明
- 家族検査(必要に応じて)
- 次回妊娠時の再発リスク評価
本領域は遺伝例もあり、無症状保因の可能性も含めて説明が必要です。(ClinGen)
まとめ(サイト向け)
15q25.2-q25.3 deletion (distal) syndromeは、15番染色体15q25.2〜15q25.3の遠位(distal)領域=LCR-C〜LCR-D間に生じる再発性の微小欠失によって起こる先天性疾患です。欠失はLCRを介した非アリル間同源組換え(NAHR)で生じやすく、同じ欠失でも症状が軽い例から支援を要する例まで幅がある可変表現性が特徴です。主な臨床像は発達遅延、知的障害/学習の困難、ASDなどの神経発達・神経精神症状、筋緊張低下で、さらに発作(けいれん)や斜視は遠位欠失を含む例で比較的多い可能性が示唆されています。一般集団での出生頻度は未確立ですが、臨床集団の大規模解析では本欠失が症例群で検出され、対照群で検出されないという偏りが報告されています。治療は欠失そのものを治す根本治療ではなく、療育(PT/OT/ST)、行動・心理支援、てんかん管理、眼科フォローなど症状に応じた多職種連携の支持療法が中心となります。(ClinGen)
参考文献元
- ClinGen Dosage Sensitivity Curation:15q25.2q25.3 recurrent region (distal, LCR C–LCR D)(座標、機序、症例集積、ケースコントロール結果の要約)(ClinGen)
- RareChromo / Unique:15q25 deletions(2022)(LCRとNAHRの説明、15q25欠失の共通特徴、遠位欠失で多い特徴の示唆)
- Doelken SC, et al.(2013)Proximal and distal 15q25.2 microdeletions…(症例報告と既報症例のまとめ:発達遅延、ASD、発作など)(PubMed)


