ディジョージ症候群(22q11.2欠失症候群)とは|症状・原因を解説

Posted on 2026年 1月 22日

この記事でわかること

  • ディジョージ症候群と22q11.2欠失症候群、CATCH22の関係
  • 先天性心疾患・免疫の弱さ・低カルシウム血症など主な症状と特徴
  • 22q11.2の微小欠失とTBX1遺伝子が関わる、発症のしくみ
  • FISH法やマイクロアレイ染色体検査による診断の流れ
  • チーム医療による治療・支援と、家族が日々大切にしたいこと

ディジョージ症候群(22q11.2欠失症候群)とは

ディジョージ症候群は、22番染色体q11.2領域のわずかな欠失によって、心臓・免疫・内分泌など全身に症状があらわれる先天性疾患です。日本では「22q11.2欠失症候群」という名称で指定難病203に定められ、小児慢性特定疾病の対象にもなっています。

同じ病気が、時代や着目する症状によって複数の名前で呼ばれてきました。今は「22q11.2欠失症候群」が包括的な名称として使われます。それぞれの呼び方が何を指すのか、まず整理してみます。

名称主に指す病態
22q11.2欠失症候群現在もっとも一般的に使われる包括的な名称
ディジョージ症候群(DGS)免疫不全・低カルシウム血症・先天性心疾患が中心の呼称
口蓋心臓顔面症候群(VCFS)口蓋裂・心疾患・特徴的な顔貌・学習面の課題が中心の呼称
円錐動脈幹異常顔貌症候群(CAFS)心臓流出路の奇形と特徴的な顔貌が中心の呼称
CATCH22主な症状の頭文字をとった呼び名

CATCH22という呼び名の由来

CATCH22は、この症候群の代表的な症状を英語の頭文字で並べた略語です。語呂合わせのようでいて、押さえるべきポイントがひと目でわかります。

文字意味
CCardiac defects(心疾患)
AAbnormal facies(特徴的な顔貌)
TThymic hypoplasia(胸腺低形成による免疫の弱さ)
CCleft palate(口蓋裂)
HHypocalcemia(低カルシウム血症)
2222番染色体の異常

欠失が起こる染色体の場所

原因となるのは、22番染色体の長腕(q)にある「11.2」というごく限られた領域です。この場所でコピー数が通常の2本から1本に減る、つまり微小な欠失が生じます。欠失する範囲はおよそ1.5〜3メガベース(Mb)。通常の染色体検査(Gバンド分染法)では見つけにくいほど小さいため「微小欠失」と呼ばれます。

同じ22q11.2領域では、欠失だけでなくコピー数が増える変化も知られています。詳しくは22q11.2重複症候群(近位、A-D)22q11.2重複(遠位)症候群もあわせてご覧ください。欠失のなかにも遠位型の欠失(distal, D-E/F)など複数のタイプがあり、染色体レベルの分類は22q11.2欠失症候群の解説でも詳しく扱っています。

どのくらいの頻度で生まれるのか

発生頻度は約4,000〜6,000人に1人とされ、先天性疾患のなかでは比較的多いグループに入ります。ダウン症候群に次いで多い染色体の変化のひとつです。人種や性別による差はなく、世界中で報告されています。

近年は診断技術が進み、症状の軽い方も見つかるようになりました。実際にはもっと多く、2,000〜3,000人に1人ほど存在するのではないかという推計もあります。見過ごされている軽症例が少なくない疾患。そう考えておくと理解しやすいでしょう。

ディジョージ症候群の主な症状と特徴

眠る乳児にそっと手を添える保護者と淡いハートのイラスト

ディジョージ症候群は全身に影響する多系統疾患で、先天性心疾患・免疫の弱さ・低カルシウム血症を中心に、症状の種類と重さには大きな個人差があります。すべての症状が一人にそろうわけではありません。ここが理解のいちばん大切なところです。

まずは全体像を、系統ごとにおおよその頻度とあわせて一覧にまとめます。そのうえで、特に注意したい領域を順番に見ていきます。

系統おおよその頻度主な症状
先天性心疾患約75〜80%ファロー四徴症、離断型大動脈弓、総動脈幹症、心室中隔欠損症
免疫系の弱さ約75%胸腺低形成によるT細胞減少、感染症のかかりやすさ
内分泌系の異常約50%低カルシウム血症、副甲状腺機能低下症
口蓋・構音の異常約70〜80%粘膜下口蓋裂、鼻咽腔閉鎖不全、鼻に抜ける声(開鼻声)
神経発達・精神面個人差が大きい発達の遅れ、学習面の課題、思春期以降の精神症状
腎・骨格・聴覚など約30%〜腎奇形、側弯症、中耳炎による難聴

先天性心疾患(約75〜80%)

もっとも重くなりやすく、早い対応が必要になる症状です。特に心臓の出口にあたる「心臓流出路」の異常が多く見られます。生まれてすぐの時期に見つかることが多く、次のような病気が代表的です。

  • ファロー四徴症
  • 離断型大動脈弓
  • 総動脈幹症
  • 心室中隔欠損症(VSD)

免疫系の弱さ(約75%)

心臓の近くにある「胸腺」が十分に育たないと、ウイルスや細菌と戦う「T細胞」の数が減ります。その結果、乳幼児期に肺炎・中耳炎・副鼻腔炎などを繰り返しやすくなります。免疫の状態によっては、BCGや麻疹風疹などの生ワクチン接種に注意が必要な場合もあります。

私たちも相談の場で「うちの子は感染ばかりで大丈夫でしょうか」と尋ねられることが少なくありません。ただ、悲観しすぎる必要はないとお伝えしています。成長にともなって胸腺以外の場所でもT細胞が作られるようになり、免疫の働きが改善していくお子さんも多くいるからです。

内分泌系の異常(約50%)

副甲状腺の働きが弱いと、血液中のカルシウム濃度を調節するパラトルモンが不足します。特に新生児期には、低カルシウム血症からけいれん(テタニー)を起こすことがあります。いったん落ち着いても、強いストレスや手術のときに一時的にぶり返す場合があるため、長い目での確認が欠かせません。

口蓋・構音の異常(約70〜80%)

口の奥(軟口蓋)の構造や動きに問題が生じ、話し方や飲み込みに影響します。見た目には穴が開いていなくても筋肉がつながっていない「粘膜下口蓋裂」、話すときに空気が鼻へ抜けて鼻声になる「鼻咽腔閉鎖不全」などが代表的です。赤ちゃんの時期には、ミルクが鼻から出やすい、飲み込みにくいといったサインが見られることもあります。

特徴的な顔貌

顔つきの特徴は控えめなことが多いものの、診断の手がかりとして医学的には重視されます。鼻の付け根が広く鼻先が丸い、目もとの印象、耳の位置がやや低い、あごが小さい、といった点が知られています。あくまで手がかりの一つであり、これだけで診断が決まるわけではありません。

神経発達と精神面の特徴

成長とともに向き合っていく課題として、近年とても重視されている領域です。発達の遅れや軽度から中等度の知的な課題を伴うことが多い一方、正常知能の範囲にある方もいます。算数や抽象的な理解は苦手でも、読み書きや記憶が得意といった凸凹が見られることもあります。

言語面では、発音の難しさと言葉の獲得の遅れが重なりやすい傾向。思春期以降には、注意欠如・多動症(ADHD)や不安症などがみられ、約25〜30%の割合で統合失調症に似た症状を経験するリスクが知られています。早めに気づいて支えることが、その後の生活を大きく左右します。

その他の症状

ここまで挙げた以外にも、片方の腎臓がない、または多嚢胞性異形成腎などの腎奇形が約30%に見られます。背骨が曲がる側弯症や手指が細長いといった骨格の特徴、滲出性中耳炎を繰り返すことによる伝音性難聴が現れることもあります。

ディジョージ症候群の原因

一部が欠けたDNA二重らせんを表す抽象的なイラスト

原因は、22q11.2領域の欠失によって約30〜40個の遺伝子が半分の量になり、胎児期の臓器づくりがうまく進まなくなること(ハプロ不全)です。特に第3・第4咽頭嚢の形成が影響を受けます。

数ある遺伝子のなかでも、特に重要とされるのがTBX1という遺伝子です。TBX1は、心臓・胸腺・副甲状腺・顔面の形づくりで司令塔のような役割を担う転写因子。この遺伝子が足りなくなることが、本症候群の身体的な特徴の多くにつながっていると考えられています。

遺伝のしくみと家族への影響

欠失がどこから来たのかは、大きく2つに分かれます。約90%は「新生突然変異」で、両親の染色体は正常なまま、精子や卵子ができる過程で偶然に欠失が生じたものです。残り約10%は「家族性」で、親のどちらかが22q11.2欠失を持ち、50%の確率で子へ受け継がれます。親が軽症で気づかず、子どもの診断をきっかけに親の欠失が判明するケースも少なくありません。

診断がついたときは、ご家族の検査や次の妊娠についての相談も大切になります。遺伝カウンセリングを通じて、正確な情報をもとに落ち着いて考えられる環境を整えていきます。

ディジョージ症候群の診断方法

診断は、22q11.2領域の欠失を検出するFISH法やマイクロアレイ染色体検査(CMA)などの遺伝学的検査で確定します。臨床症状から本症候群が疑われたときに、次の検査を組み合わせて確認します。

検査法特徴
FISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション)22q11.2領域に特異的な蛍光標識をつけ、欠失を直接検出する。現在もっとも一般的
マイクロアレイ染色体検査(CMA)ゲノム全体をスキャンし、FISHでは見えない極小の欠失や、正確な欠失範囲まで特定できる
MLPA法特定領域のコピー数変化を、複数の検体で同時に解析する手法

妊娠中に気になる場合、出生前の検査で染色体の変化を調べる選択肢もあります。ただし出生前スクリーニングはあくまでリスクを評価するもので、確定診断ではありません。結果の意味や次の一歩は、専門家と一緒に確認していくことが欠かせません。

治療とサポート体制

子どもと家族に寄り添う医療スタッフのイラスト

欠失そのものを治す方法は今のところなく、症状ごとの対症療法と、複数の診療科が連携するチーム医療が治療の中心になります。年齢によって、優先すべきケアの重点が移っていくのも特徴です。

外科的な治療

先天性心疾患には、心臓血管外科による根治術や緩和術を行います。口蓋裂に対しては、形成外科が閉鎖術や、鼻声を改善する咽頭弁形成術を担当します。歯並びや咬み合わせは、歯科・矯正歯科が長期的に管理していきます。

内科的・免疫学的な管理

低カルシウム血症には、内分泌科が活性型ビタミンD製剤やカルシウム剤を補います。免疫については小児科・免疫科が状態を評価し、T細胞が著しく低い場合には、感染予防や輸血時の放射線照射(GVHD予防)などの対応をとります。

リハビリテーションと教育的な支援

言語療法(ST)では構音の訓練や食べる練習を、理学療法(PT)・作業療法(OT)では筋緊張の低さや発達の遅れへの働きかけを行います。学びの場では、個別の教育支援計画(IEP)を立て、抽象的な概念の理解や社会性を支えていきます。

思春期以降の心のケア

思春期を過ぎたころからは、児童精神科・精神科による定期的なメンタルヘルスの確認がすすめられます。不安や気分の変化、幻覚・妄想などの予兆を早めに捉え、必要に応じて薬や環境の調整を行うこと。これが生活の質(QOL)を守るうえで、とても大きな意味を持ちます。

当事者・家族が知っておきたいこと

症状に合わせた支援を早い時期から続けることで、多くの方が自分らしい社会生活を送っています。診断名だけで、その人の可能性が決まるわけではありません。

私たちが検査や相談の場で日々感じるのは、同じ診断名でも歩む道は本当に一人ひとり違うということです。実際にX(旧Twitter)では、ファロー四徴症の重い型と22q11.2欠失症候群という二つのハンディキャップを抱えながら、ピアノやバイオリンを舞台で演奏し、仕事とも両立していると発信している方(@kuchanlove1019さん)もいます。当事者の声にふれると、数字や症状の一覧だけでは見えない一面に気づかされます。

乳幼児期は心臓や免疫の管理が最優先。成長とともに、言葉や学習、そして心の健康へと支援の重点が移っていきます。希少な疾患ではありますが、正しい知識を持ち、早い時期から包括的なサポート体制を築くことが、お子さんの健やかな未来につながります。困ったときに相談できる専門家とつながっておく。そのことが、家族の安心にも直結します。

よくある質問(FAQ)

Q. ディジョージ症候群と22q11.2欠失症候群は同じ病気ですか?

基本的に同じ疾患を指します。22q11.2領域の欠失という共通の原因を持ち、着目する症状によってディジョージ症候群、口蓋心臓顔面症候群などと呼び分けられてきました。現在は、これらをまとめて「22q11.2欠失症候群」と呼ぶのが一般的です。

Q. 症状の重さはどのくらい人によって違いますか?

個人差はとても大きいです。重い心疾患があり新生児期から治療が必要な方もいれば、大人になってお子さんの診断をきっかけに軽症だとわかる方もいます。すべての症状が一人にそろうわけではなく、一人ひとり症状の組み合わせが異なります。

Q. ディジョージ症候群は遺伝しますか?

約90%は、両親の染色体が正常で偶然に生じる新生突然変異です。約10%は親から受け継がれる家族性で、その場合は50%の確率で子へ伝わります。次の妊娠を考えるときは、遺伝カウンセリングで正確な情報を得ることが役立ちます。

Q. どのように診断されますか?

臨床症状から疑われた場合、FISH法やマイクロアレイ染色体検査(CMA)、MLPA法といった遺伝学的検査で22q11.2の欠失を確認します。症状が多彩なため、複数の診療科での評価とあわせて総合的に診断していきます。

Q. 治すことはできますか?

欠失そのものを元に戻す治療は、今のところありません。ただし、心疾患の手術、低カルシウム血症への補充、言語や発達の支援など、症状ごとの治療とケアは数多くあります。早期からチーム医療で支えることで、多くの方が自立した生活を送っています。

まとめ

ディジョージ症候群(22q11.2欠失症候群)は症状が多岐にわたるため、複数の専門医が連携するチーム医療が欠かせません。小児科、循環器科、形成外科、耳鼻科、内分泌科、精神科、そして遺伝診療科などが、それぞれの役割で支えます。

乳幼児期には心臓や免疫の管理が優先されますが、成長とともに言葉・学習・心の健康へとサポートの重点が移ります。一人ひとりの症状に合わせて適切な介入を続けることで、多くの方が自分らしい社会生活を送れます。早期から包括的な支援体制を整えることが、健やかな未来への確かな一歩になります。

参考・出典

医師監修 監修日:2026年1月22日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、ヒロクリニック遺伝子検査の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2026年1月22日

堤 修一

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格・所属

  • 元・東京大学先端科学技術研究センター 准教授

この記事は、ヒロクリニック遺伝子検査の編集・監修体制にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。