別名・関連疾患名
- 7番染色体単体性
- −7(マイナスセブン)
- 小児骨髄異形成症候群(MDS)に伴う7モノソミー
- GATA2欠損症(GATA2 deficiency)
- ※生殖細胞系列の遺伝子変異により、続発的にMonosomy 7を来す代表的な疾患です。
- SAMD9/SAMD9L関連疾患(MIRAGE症候群など)
- ※これらの遺伝子変異を持つ場合、造血幹細胞がMonosomy 7を選択的に起こすことが知られています。
対象染色体領域
7番染色体 全体(または長腕の広範な欠失)
通常、ヒトの細胞には2本の7番染色体がありますが、Monosomy 7ではこれが1本しか存在しません。造血細胞において発生する場合、7番染色体全体が失われる「完全モノソミー」と、長腕(qアーム)の大部分が失われる「部分モノソミー(7q-)」が、臨床的にはほぼ同等の病態として扱われます。
【ゲノム上の詳細と病態メカニズム】
7番染色体には、造血(血を作るプロセス)や細胞の増殖制御に関わる重要な遺伝子が多数存在します。
- 7q22、7q31-36領域: これらの領域には「がん抑制遺伝子」が位置していると考えられており、ここが失われることで細胞の増殖抑制が効かなくなり、腫瘍化(白血病化)が進みます。
- ハプロ不全: 遺伝子が1本分になることでタンパク質の産生量が不足し、骨髄内での正常な血液細胞の分化が妨げられます。
発生頻度
小児骨髄異形成症候群(MDS)患者の約10%〜25%
- 骨髄不全・白血病における頻度: 小児の骨髄異形成症候群(MDS)や急性白血病(AML)において、最も頻繁に認められる細胞遺伝学的異常の一つです。
- 先天性症候群における頻度: 遺伝性の骨髄不全症候群(ファンコニ貧血、GATA2欠損症など)を持つ患者では、経過中にMonosomy 7が出現するリスクが非常に高く、これは「白血病化の前兆」として厳重に監視されます。
- 性差・人種: 性別や人種による明確な頻度の差は認められていません。
臨床的特徴(症状)
Monosomy 7そのものが直接引き起こす症状と、それによって生じる血液疾患(MDS/白血病)の症状に分けられます。
1. 血液学的症状(主症状)
Monosomy 7は造血幹細胞の異常であるため、正常な血球が作られなくなる「汎血球減少」が中心となります。
- 貧血: 酸素を運ぶ赤血球が減り、顔色の不良、動悸、息切れ、強い倦怠感が現れます。
- 易感染性: バイ菌と戦う白血球(好中球)が減り、高熱を伴う感染症を繰り返したり、重症化しやすくなったりします。
- 出血傾向: 血を止める血小板が減り、鼻血、歯肉出血、皮膚の点状出血(青あざ)が治りにくくなります。
2. 前白血病状態・白血病化
- 骨髄異形成: 骨髄の中で「質の悪い細胞」が増え、これらが数ヶ月から数年のスパンで急激に増殖する「急性骨髄性白血病(AML)」へ移行します。Monosomy 7を伴う場合、この移行スピードが非常に早いことが特徴です。
3. 先天性疾患を背景とする場合の身体的特徴
Monosomy 7が「GATA2欠損症」や「MIRAGE症候群」などの遺伝子疾患の一部として現れている場合、以下の特徴を伴うことがあります。
- MIRAGE症候群: 骨髄不全、感染症、成長遅滞、副腎不全、生殖器異常、消化器症状など。
- GATA2欠損症: 難治性のいぼ(乳頭腫ウイルス感染)、リンパ浮腫、非結核性抗酸菌感染症など。
原因
Monosomy 7の発生には「体細胞変異」と「生殖細胞系列の変異(遺伝性)」の2つの側面があります。
1. 遺伝的素因(生殖細胞系列)
近年、一部の子供たちにおいて、特定の遺伝子に変異があるために、造血細胞がMonosomy 7を起こしやすくなっていることが判明しました。
- SAMD9 / SAMD9L変異: これらの遺伝子は本来、細胞の増殖を抑える働きがありますが、変異により「抑えすぎる」状態になります。この強い抑制から逃れるために、造血細胞が自ら7番染色体(変異遺伝子が乗っている側)を捨て去り、Monosomy 7となって増殖を始めるという「適応的選択」が起こります。
- GATA2変異: 造血幹細胞の維持に必要な遺伝子で、この変異がある細胞はMonosomy 7を獲得することで白血病化への道を辿ります。
2. 偶発的な体細胞変異
特に遺伝的な素因がなくても、化学療法(二次性白血病)や環境要因、あるいは加齢に伴う細胞分裂のミスによって、特定の造血細胞が7番染色体を失うことがあります。
診断方法
血液および骨髄の精密な解析が必要です。
- 骨髄穿刺・生検:
腰の骨(腸骨)から骨髄液を採取し、細胞の形や数を調べます。 - 染色体核型分析(Gバンド法):
分裂中の細胞の染色体を直接観察し、7番染色体が1本しかないことを確認します。 - FISH法(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション):
7番染色体に特異的なプローブを用いて、欠失を迅速かつ正確に検出します。少数の異常細胞も見逃さないために有用です。 - 次世代シーケンサー(NGS)による遺伝子パネル検査:
背景にSAMD9/SAMD9LやGATA2、RUNX1などの遺伝性疾患が隠れていないかを調べます。これは治療方針(移植のタイミングやドナー選定)を決定する上で極めて重要です。 - Shutterstock
治療方法
Monosomy 7を伴う骨髄不全やMDSは、通常の化学療法(抗がん剤)だけでは治癒が非常に困難であり、**「造血幹細胞移植」**が唯一の根治的治療となります。
1. 同種造血幹細胞移植
- タイミング: Monosomy 7が確認された場合、早期に白血病化するリスクが高いため、可能な限り早期の移植が検討されます。
- ドナー: HLA(白血球の型)が一致する兄弟や骨髄バンクドナーから健康な造血幹細胞を移植します。遺伝性の背景がある場合、家族ドナーに同じ遺伝子変異がないかを慎重に確認する必要があります。
2. 支持療法
移植までの期間や、移植が困難な場合に行われます。
- 輸血: 赤血球や血小板を補充し、貧血や出血をコントロールします。
- 抗生剤・抗真菌薬: 好中球減少に伴う重症感染症を予防・治療します。
3. 自然寛解の観察(特殊なケース)
- 近年の研究で、SAMD9/SAMD9L変異に伴うMonosomy 7の一部には、異常な細胞が自然に消滅し、血球数が回復する「自然寛解」が見られる例があることが分かってきました。ただし、これは極めて慎重な経過観察が必要な例に限定されます。
予後
- リスク: Monosomy 7を伴うMDS/白血病は、細胞遺伝学的に「高リスク(不良)」に分類されます。化学療法への反応が乏しく、再発率が高いことが課題です。
- 移植後の見通し: 早期に適切な条件で造血幹細胞移植が行われれば、長期生存が期待できます。移植技術の向上により、成功率は年々改善しています。
まとめ
Monosomy 7(7番染色体モノソミー)は、血を作る「工場」である骨髄の中で、大切な設計図の一部が失われてしまう状態です。
これは単なる血液の異常ではなく、放置すると重い白血病へと進んでしまう「赤信号」の意味を持っています。
特に小さなお子様で見つかった場合、背景に生まれつきの遺伝的な体質が隠れていることもあり、ご家族への詳しい調査が必要になることもあります。
診断がついた際、非常に不安を感じられるかと思いますが、現在は検査技術の進歩により、白血病になる前の段階で発見し、造血幹細胞移植という根本的な治療に繋げることが可能です。血液内科、小児科、遺伝診療科がチームとなり、最新の知見に基づいてお子様の未来を守るための最善のスケジュールを立てていきます。
参考文献元
- Hasle, H., et al. (2007). Monosomy 7 and deletion 7q in children and adolescents with seminatural and therapy-related myeloid neoplasms. Leukemia.
- (小児における7モノソミーの予後と臨床像をまとめた大規模研究。)
- Narumi, S., et al. (2016). SAMD9 mutations cause a novel multisystem disorder, MIRAGE syndrome, and are associated with monosomy 7. Nature Genetics.
- (MIRAGE症候群と7モノソミーの関連、およびそのメカニズムを世界で初めて解明した重要論文。)
- Wlodarski, M. W., et al. (2017). Prevalence, clinical characteristics, and prognosis of GATA2-related myelodysplastic syndromes in children and adolescents. Blood.
- (GATA2欠損症における7モノソミーの出現頻度と予後に関する詳細な報告。)
- Kennedy, A. L., et al. (2017). Genetic predisposition to albuminuria and myeloid neoplasia associated with monosomy 7.
- (7モノソミーを伴う骨髄腫瘍の遺伝的素因に関する包括的レビュー。)
- GeneReviews® [Internet]: SAMD9-Related Monosomy 7 and Myelodysplastic Syndrome. (NCBI).
- (最新の診断基準と管理指針が網羅されている世界的データベース。)
- 日本小児血液・がん学会: 小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2024.
- (日本国内における標準的な治療フローチャートの情報源。)
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