アルコール依存症患者と家族の向き合い方【医師監修】 | ヒロクリニック

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アルコール依存症患者と家族の向き合い方【医師監修】

「朝からお酒を飲まずにいられない」「やめようと思えばいつでもやめられる。病気なんかじゃない」アルコール依存症は他の疾患と大きく異なり、自分だけじゃなく周囲を巻き込み、とてつもない大きな問題になってしまいます。まずは正確に知って下さい。必ず役に立ちます。 目次 1 アルコール依存症とは 2 アルコール依存症の及ぼす危険性 3 アルコール依存症の治療法 4 アルコール依存症患者と家族の向き合い方 1 アルコール依存症とは 1−1 症状・診断基準 アルコール依存症は、長い期間大量にお酒を飲み続けることによって進行し、アルコールに対し病的に強い欲求をもちお酒無しではいられなくなる病気です。わかりやすく言えば自分でお酒の量を調節できないんですね。初めは単なる習慣のつもりで飲んでいても、お酒を飲まないと気分が晴れず、お酒に頼ってつい手が出るようになり、耐性がついてくるのでそのうち少量では酔えなくなっていきます。さらにアルコールが切れるとイライラする、不安になる、手が震える、夜眠れない、汗をかく、食べたものを吐くなどの症状いわゆる“離脱症状”が出てきます。また、一度お酒を飲み始めるとひたすら飲み続け、食事も摂らずに飲んで寝る、を繰り返すこともあり、通常の規則正しい生活を送れなくなってしまう場合もあります。 アルコール依存症はお酒を飲む人なら性別・年齢を問わず誰でもかかる可能性のある病気です。患者数は、全国で100万人を超えると言われていますが、実際に依存症の専門治療を受けている方は、その中の数万人にすぎません。 1−2 離脱症状が見られる アルコール依存症の患者さんでは、体内のアルコール濃度が下がってくるとさまざまな離脱症状が見られます。脳というのは非常にアルコールに強い影響を受けます。アルコール依存症になるとその酔っている状態が「通常である」というように脳は認識するようになってしい脳の思考力、判断力、記憶力、 が低下し、“離脱症状”という様々症状が出てきてしまう訳です。離脱症状というのは起きる時期によって異なり、早期離脱症状と後期離脱症状の2つに分けられます。 早期離脱症状は飲酒を止めて数時間すると出現し、手や全身の震え、発汗、不眠、嘔吐、吐き気、血圧の上昇、、集中力の低下、不整脈、イライラ感、幻聴などがみられます。後期離脱症状では飲酒を止めて2~3日で出現し、幻視、自分のいる場所や時間が分からなくなるなどの見当識障害、興奮などのほかに、発熱、震えがみられることもあります。これらの離脱症状はアルコール依存症でよく見られる兆候の一つです。これだけではなく、周囲の人にアルコールを控えるよう促される、飲むと口論になったり手が出ることもある、などもアルコール依存症の兆候です。 まずはこうした症状がないかどうか確認し自覚することが大きな第一歩となります。 2 アルコール依存症の及ぼす危険性 2−1 様々な臓器障害の併発 肝機能障害 アルコールの代謝は90%以上が肝臓で行われており、最もよく見られるのが肝機能障害です。初期によく見られる典型的なものは「アルコール性脂肪肝」。さらに飲み続けると致死率の高い「アルコール性肝炎」を起こしていることもあります。そしてさらに悪化すると最終段階である「肝硬変」になります。 膵炎 膵炎には、急激に腹痛をおこし、治療をすれば1ヵ月程で良くなる「急性膵炎」と、症状はそれほど激しくありませんが痛みや糖尿病・消化吸収障害どの症状を伴い、何年間か慢性的に持続する「慢性膵炎」があります。「急性膵炎」は様々な原因により膵液が外に漏れ出て、膵臓やその周囲に激しい炎症を起こすことがあります。 みぞおちから背中にかけて激しい痛みが続きます。「慢性膵炎」は、「急性膵炎」に比べ、症状は穏やかですかが、炎症が何年も持続し 膵臓が段々と硬く萎縮して膵機能が低下していきます。膵炎の恐ろしいところは更に同時に、例外なく糖尿病が発症することです。 糖尿病により腎機能が徐々に低下していき、腎不全に至ることもあるのです。悪化すると人工透析などを行う必要が出てくるため、健常人の生活からどんどん離れていくことになり、精神的な苦痛も増加していきます。 癌 アルコールは発癌リスクを高め、通常の人よりも何倍も癌になりやすくします。特に口腔癌、咽頭癌、食道癌。肝臓癌、大腸癌などが飲酒に関連した癌として挙げられます。 急性アルコール中毒 若年者・女性・高齢者などでリスクが高く、死に至る可能性があるのです。 急性アルコール中毒は飲酒により脳の中枢機能が低下することにより意識レベルも低下し、呼吸・循環機能が抑制されてしまいます。 嘔吐、呼吸困難などの症状が見られます。最近では特に大学生や新社会人ではその場の雰囲気に飲まれたりして、一気飲みをして過度のアルコール摂取により死亡に至るケースが毎年発生しています。 周囲に急性アルコール中毒が疑われた場合、適切な処置や対応法を取ることが必要不可欠です。死亡例で多いのは吐物が喉に詰まることによる窒息死。意識が低下しているためうまく吐き出せないことがあります。 それを防ぐためにも 以上のことに気をつけながら介護しましょう。悪化する様子が見られれば救急車を呼ぶという判断を素早くすることが重要です。 こうした多くの病気の早期発見のためにも、アルコールが好きでよく飲むという人は、アルコール依存症とは関係なく、定期的に病院に行き健康診断などの検査を受けることが大切です。 離脱症状だけでなく、臓器障害を併発している場合の治療では離脱症状への対応と、臓器障害の治療の両方を並行して進める必要があります。 2−2 仕事・私生活に支障をきたす アルコール依存症という疾患は他の病気とは大きく異なる点があります。 それは患者の身体だけでなく、仕事、家庭など周囲の人への悪影響をもたらすこと。人は皆少なくても誰かしらと関わりを持ちながら生きています。自分のことなんだから関係ない、というわけにはいかないんです。 例えば、家族では経済的な問題、家族間での喧嘩にも発展し、別居や離婚など深刻な問題に直面することもあります。本人は自覚していなくても家族との不仲の原因が  “アルコール” だったりもするんです。こうして毎日一緒にいる家族に多大なる負担や心配をかけることになり、負のルーティンができてしまうのです。 重症化すれば会社で職場の上司や同僚に、仕事上のトラブルで迷惑をかけたりと、気付いたら自分では思いもしないようなことになってしまうことも。さらには飲酒運転などによる重大事故の発生などにつながる恐れもあります。 しかし患者さんはこのように問題が起きても、家族や周囲の人の注意や説得を聞こうとしません。自分が病気であるという自覚はないんですね。仮に問題が起きても自分に都合よく考えたり、自分が原因だと認識していないため周囲の人との関係も悪化していきます。また、自分のことをとがめる周囲に反発を感じ、依存症の悪影響を否認するようになったり、自分では飲酒の問題にうすうす気づいていながらも周囲との距離をとるようになり、誰に何を言われることなくズブズブとアルコールの沼にハマって行ってしまうのです。 3 アルコール依存症の治療法 …

幻聴がみられる原因と対策法―心の病気について【医師監修】

誰かの話し声や変な音が聞こえてくる場合、幻聴といわれる症状かもしれません。幻聴が繰り返し起こると、本人にとって辛い経験となります。この記事では、幻聴の原因や考えられる病気て、対処方法について紹介します。 目次 「誰かの話し声や変な音が聞こえる」とは? 幻聴の種類 自分に聞こえている声や音が幻聴かどうかを確かめる方法 話し声や音が聞こえるときに考えられる心の病気の種類 幻聴が聞こえるメカニズム 幻聴が与えるさまざまな影響 幻聴を予防する工夫と起きたときの対策 幻聴がみられるときは医療機関へ受診しよう まとめ 「誰かの話し声や変な音が聞こえてくる」そんな悩みを抱えていませんか?もしかしたらそれは幻聴といわれる症状かもしれません。幻聴が繰り返し起こると、本人にとって辛い経験となります。この記事では、どのような形で幻聴がみられるか、原因や考えられる病気について、幻聴への対処方法について紹介します。自分だけが聞こえる話し声や音に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。  「誰かの話し声や変な音が聞こえる」とは? 周囲に誰もいない場所などで、話し声や変な音が聞こえる場合、「幻聴」という症状の可能性があります。幻聴は、実際には聞こえないはずの声や音が、本人の頭の中などから聞こえる症状をいいます。幻聴の症状の現れ方には、個人差があり、以下のような聞こえ方がみられます。 など 幻聴の種類 ひとことで幻聴と言っても、聞こえる声や音にはいくつかの種類があります。具体的な幻聴の種類には、以下のものがあります。 要素性幻聴 話し声などの言語ではなく、単調な音が聞こえる幻聴です。ベル音のような音が聞こえます。 複雑性幻聴 要素性幻聴よりも、複雑な音が聞こえる幻聴です。単調な音ではなく音楽のように複雑に組み合わさった音が聞こえます。 言語性幻聴 話し声や言葉が聞こえる幻聴です。自分に話しかける声、自分の噂話をする声などが挙げら、それに反応することを「対話性幻聴」といいます。対話性幻聴は、周囲の人からみれば、本人が独り言や空笑いしているように見えます。 自分に聞こえている声や音が幻聴かどうかを確かめる方法 本来ないはずのない話し声や音が聞こえ方は、人や状況によってさまざまです。健康な人でも、疲れていたり寝不足だったりしたときに、本来ないはずの声や音が聞こえてくることもあるでしょう。一方で、自分だけに話し声や音が聞こえることが頻繁に起こるという人は、幻聴の可能性があるかもしれません。正体不明の声や音がするときに、大切となるのが本当に幻聴かどうかを確かめることです。幻聴かどうかを確認するには、その場にいる自分以外の人に話し声や音が聞こえるかどうかを聞いえてみましょう。もし、自分だけが聞こえている声や音が頻繁にあるのなら、幻聴による症状の可能性があります。また、周囲に人がいない場合は、話し声や音が聞こえるときに、録音をしてみるのもおすすめです。録音した内容に、自分が聞こえてた声や音が確認できなかった場合も、幻聴による症状の可能性があるでしょう。 話し声や音が聞こえるときに考えられる心の病気の種類 誰かの話し声や音が聞こえてくるという症状は、心身が疲れているときにもみられる症状です。一方で、幻聴の症状が頻繁に起こっている場合、心の病気が原因であることがあります。幻聴がみられる心の病気には、以下のものがあります。 統合失調症 心の病気の代表的な疾患の1つで、主な症状には、幻聴や幻覚、妄想、ちぐはぐな思考や行動、他人とのコミュニ―ケーションの障害など、さまざまなものがあります。統合失調症の多くは、青年期に発症して、長い経過をたどります。統合失調症の症状が、人格に影響を与えるケースもみられます。話し声などが聞こえる言語性の幻聴が多いのが特徴です。特に、本人に話しかけたり、命令したりする対話性幻聴が多くみられます。 PTSD(心的外傷後ストレス障害) 衝撃的な体験をした後にみられる精神的な障害のことをいいます。ショックな体験は、大きな心の傷となりトラウマになります。PTSDになるとみられる症状のひとつが、フラッシュバックで、過去の体験が、今現在起こっているように感じることがあります。フラッシュバックが起きているときは、原因となった体験を再体験するため、当時の声や音が聞こえている状態になります。このためPTSDでは、フラッシュバックを避けるために、原因となった体験と似た状況を避ける傾向があります。 薬物による幻聴の症状 覚せい剤や大麻、コカインなどの薬物は、脳の中枢神経に直接作用します。多くの薬物が多幸感をもたらすので依存しやすくなります。繰り返し、薬物を使用し続けると、幻聴などの妄想や異常な行動を起こすようになります。出来心で薬物を使っても、依存性が高いため、やめられなくなることがほとんどです。タバコや飲酒などが薬物使用への入り口になることもあるため、注意が必要です。 話し声や音が聞こえるそのほかの病気 上記に挙げた心の病気以外にも、ないはずの音が聞こえることがあります。幻聴ではないものの、聞こえないはずの音が聞こえる病気が難聴です。難聴で聞こえるのは声ではなく音になります。具体的には「キーン」「ザーザー」という音が聞こえ、耳鳴りと呼ばれています。脳の聞こえる力が弱くなると、感度を上げようとするので、壊れたラジオのように耳鳴りが聞こえることで起こります。 幻聴が聞こえるメカニズム 本来ないはずの話し声や音が聞こえるのは、どのようなメカニズムがあるのか気になる人もいるでしょう。幻聴によって話し声や音が聞こえるとき、ほとんどの場合、本人の気持ちや考えからくるものです。幻聴は、寝ている間にみる夢の中で聞く声や音に似ています。夢を見ているとき誰かと会話したり、話し声や音が聞こえたりするものです。しかし、それは他人が発したものではなく、自分の頭の中で考えていることによります。幻聴もまた、自分の気持ちや考えを反映したものが、話し声や音となって現れるものです。特に、自分の心の中にあるネガティブな感情は、幻聴の元となりやすくなります。例えば、何か後悔があり自分自身を責める気持ちあると、攻撃するような幻聴が聞こえることがあるでしょう。また、自分で気づいていなくても、心の底で誰かに反発していると、その相手への攻撃をしかけるような幻聴が聞こえることもあります。また、「あの人は自分の事をこのように思っているだろう」という考えが、他人の声として聞こえるケースもあります。  幻聴が与えるさまざまな影響 幻聴によって、話し声や音が聞こえると、日常生活にさまざまな弊害をもたらします。幻聴が与える具体的な影響には、以下のものがあります。 自分が混乱したり、周囲の誤解を招いたりする 幻聴がひんぱんに起こると、仕事や勉強などやるべきことに集中できなくなります。特に、心の病気による幻聴は、ネガティブな内容が聞こえることも多く、本人が混乱する原因になります。ここで誤って、あるはずのない声や音に反応すると、他人から「独り言をいう変な人」とみられてしまうことがあります。また、幻聴に反応しなくても、「神や霊の声が聞こえる」など、本人が誤った認識を持つ可能性もあります。 症状が悪化して妄想が起こる 幻聴が起こると、「自分の個人情報がさらされている」「自分の考えが周囲の人に伝わっている」と感情を抱くことがあります。このような感情が起こると、周りで起こっている事象が、すべて幻聴と関連しているような思い込みを起こすことがあります。思い込みが続くと、「嫌がらせを受けている」「尾行されている」などの妄想を起こすことがあります。幻聴をきっかけに妄想が起きると、症状の悪循環を生む原因になります。 幻聴を予防する工夫と起きたときの対策 心の病気が原因で幻聴が起きている場合、まずはどのような状況で起こるのか把握することが大切です。幻聴が起こりやすい状況は、以下のような状況です。 上記の4つの項目は、心身の疲れを引き起こして、幻聴を誘発するものです。例えば、疲れているときに幻聴が聞こえる人は、心身の休息に重点を置いてみましょう。不安が高まっているときに幻聴が現れる人は、心がリラックスできるような環境を作るのもよいでしょう。自分の幻聴がみられやすい状況を把握して、対策を取ることが大切です。 すでに幻聴がみられているときの対策 ないはずの話し声や音が繰り返し聞こえるとき、状況や内容にパターンがあることに気づく人もいるでしょう。幻聴が聞こえるときは、「声や音は自分の気持ちによって生じてる」という事実を再認識することが大切です。例えば、統合失調症の幻聴では、テレビやラジオを聞いているときに、自分の個人情報が一緒に聞こえる、という症状を訴える方がいます。本人には実際の声や音と聞こえたとしても、「他人の声や音ではない」ときちんと自覚することで、不安感を和らげることができます。また、幻聴で聞こえる声や音にしてはいけないのが、反応することです。聞こえてくる声や音に対して、言葉をかけたり、むきになったりしてしまうと、幻聴が現れる頻度が増えたり、内容が激しくなることもあります。幻聴がみられるときは、無視することが大切です。幻聴が聞こえても、聞き耳を立てたり、対話を始めるのは避けましょう。上記の方法を試しても、どうしても幻聴が気になる方は、以下のこと試してみるとよいでしょう。 幻聴がみられたときに有効な対策法は、個人差があります。いくつかの方法を試して、自分に効果的方法を探してみましょう。 幻聴がみられるときは医療機関へ受診しよう ないはずの話し声や音が聞こえる場合、「自分は変になってしまったのではないか」「自分だけが異常なのか」という不安を抱いてしまう人もいるかもしれません。心の病気によって幻聴の症状がみられるときは、治療によって症状を改善させることができます。幻聴をそのままにしておくと、妄想が生じて症状に悪循環を生じさせることがあります。心療内科への通院に対して、抵抗感のある人も多くいます。しかしながら、症状を悪化させないためにも、早めに医療機関を受診することが大切です。 幻聴で行われる薬の治療について 幻聴を引き起こす病気には、抗精神病薬の投与を行います。抗精神病薬にはさまざまな種類があり、不安を和らげる効果のあるものや、不眠を改善する効果のあるものなどを投与します。抗精神病薬の投与することで、幻聴が起こりやすくなる状況を改善し、心の過労を和らげます。また、幻聴がみられる心の病気で使われる抗精神病薬の中には、気力をアップさせるものもあります。やる気の低下や気分の落ち込みを改善することで、周囲の人との交流する意欲を助け、幻聴のリスクとなりやすい孤立感を和らげます。 抗精神病薬の副作用について 心の病気によって幻聴などの症状が現れるとき、お薬を飲むのに抵抗感がある人も少なくありません。特に、抗精神病薬の服用をやめてしまうきっかけとなりやすいのが、副作用が現れたときです。抗精神病薬による副作用には、以下のものがあります。 …

活動的な行動をしていた人が急に引きこもりに?双極性障害の症状、原因、治療法の詳細【医師監修】

双極性障害は「軽躁症状」や「躁症状」がみられる躁状態と「抑うつ症状」がみられるうつ状態を繰り返す症状です。症状や治療法を知ることで、ご本人だけでなく、ご家族や友人が症状に気付いて医療機関での治療に繋がることができるように紹介していきます。 目次 はじめに 双極性障害の症状 双極性障害の治療法 双極性障害かな?と思ったら ご家族や友人のみなさんへ おわりに はじめに みなさんの周りの人に「突然お金をいっぱい使ったと思ったら、家から一歩もでなくなった。」という方がいらっしゃいませんか?もしくは、ご自身が経験されたという方はいませんか?浪費などの躁状態、意欲低下などの抑うつ状態がみられることは、双極性感情障害(躁うつ病)が疑われます。今回は、双極性障害の症状や治療法の紹介を行います。また、ご自身や周囲の人達のなかで双極性障害の症状があるのではないかとを疑い、治療が必要だと想定される場合の行動についての助言を行っていきます。 双極性障害の症状 双極性障害の症状の特徴として、「軽躁症状」と「躁病症状」による躁状態と「抑うつ症状」の状態を繰り返していく症状があります。ここでは、軽躁症状と躁病症状、抑うつ症状について紹介します。 ①軽躁症状 気分の高揚、多弁、睡眠時間が短い、考えが次々と思い浮かぶ、注意散漫、衝動的、活動的、過剰な投資や買い漁る行動、怒りやすくなる等といった状態が4日以上続く場合は、軽躁症状(双極II型障害)であるとされています。軽躁症状の方は客観的に見ると問題のない言動で日常生活を過ごしているように見えます。しかし、家族や友人から見るといつもの言動と違うのではないかという判断ができる状態になっています。 ②躁病症状 気分の高揚、多弁、睡眠時間が短い、考えが次々と思い浮かぶ、注意散漫、衝動的、活動的、過剰な投資や買い漁る行動、怒りやすくなる等といった状態が1週間以上続き、日常の仕事や社会的活動が妨げられるほどの重症度がある時場合は、躁病症状(双極I型障害)があるとされています。躁病症状では、「私はすごい人間だ」「私はこのなかで一番偉くて権力を持っている」等の誇大妄想の症状が出てきます。周りの人達に迷惑をかける、人間関係をかき乱すような言動をすることも少なくありません。 ③抑うつ症状 鬱々した気分が続く、悲観的な感情、興味や意欲の減退、無気力、食欲がない、精神的に疲れやすい、身体がだるい、不眠、自責感、自殺念慮、発言や行動ができない、思考力、記憶力の低下、涙もろい、身だしなみに無頓着、性欲がない等の症状が抑うつ症状として出てきます。双極性障害は①・②の躁状態と③の抑うつ症状が繰り返して出てきます。症状の期間には個々の症状で期間が様々です。抑うつ症状や軽躁症状、躁病症状でもない寛解期を含めて約半年単位で症状に変化がある方もいれば、数年単位の方もいます。また、混合性の症状として、1日のような短期間で抑うつ症状と軽躁症状もしくは躁病症状を急速な変化で繰り返していくになることがあります。また、軽躁症状もしくは躁病症状と抑うつ症状の変化の時期に、気分の低下や不安が増している等の抑うつ症状と考えが次々と思い浮かぶ軽躁症状もしくは躁病症状の症状が混合する「混合状態」の症状になる場合があります。双極性障害の方が医療機関に受診する時は以下のケースが多いです。 抑うつ状態の時に自分から、誰かに勧められて受診をする場合 抑うつ状態になってしまい、日常生活に支障が出てきた時に受診に繋がることがあります。その時の症状を診るだけでは「うつ病」と診断される可能性があります。診察時に日記等による自身の行動記録や家族や友人からの話等主治医が客観的に判断できる場合は、双極性障害である診断できることがあります。 躁状態で興奮した状態の時に家族や友人に連れて来られた場合 軽躁症状や躁病症状の時点だけでは「自分は病気じゃないから通院する必要はない」と考えてしまうことが少なくありませんので、自分自身で医療機関へ受診に繋がることが難しい状況になってしまいます。家族や友人達からの説得に応じずに受診してくれない場合は無理矢理連れて来られて受診をすることも少なくありません。無理矢理連れて来られて受診すると継続した治療を本人が拒否することも考えられます。出来れば本人に受診する意思が持てるようにすることが望ましいですが、本人がどうしても受診を拒む場合は医療機関に相談をしてどのように関わっていくことが良いのか、状況に応じて医療機関に関わってもらえるのかを確認しておくと良いでしょう。 双極性障害の治療法 双極性障害の治療は薬物療法と精神療法で行います。薬物治療、精神療法を併用して行なうことで症状の回復や症状の再発予防に向けて効果的な治療を行うことができます。 ①薬物療法 気分安定薬と非定型抗精神病薬を中心に使用していきます。双極性障害の症状によって用いられる薬の種類を調整していきます。躁状態(軽躁症状と躁病症状)の時には気分安定薬と非定型抗精神病薬を使用していきます。抑うつ状態の時は気分安定薬と非定型抗精神病薬を使用していくことになります。不眠症状がある場合は睡眠薬と非定型抗精神病薬を使用します。症状によって使用する薬の種類を調整することで症状が安定するように治療を行っていきます。薬物治療には副作用があることを知っておきましょう。服薬する薬の種類によって副作用は様々ですが、下痢、食欲不振、のどが渇く、多尿になる、手の震え、ふらふらして歩けなくなる、意識が朦朧とする等が紹介されています*¹。主治医と相談をしながら服薬調整を定期的に行うことが大切になります。 ②精神療法 認知行動療法 抑うつ症状や躁状態を乗り切るために物事を客観視して肯定的に捉える考え方ができるように練習を行います。抑うつ症状がある時は否定的な認知、躁状態では自分のことを過大視する認知の状態になります。客観視をすることで日々の過ごし方から自分自身の考え方の癖を見つけていくことで気分の変化による思考や行動パターンの変化に注目することで症状による行動の影響を最小限にすることができるようになります。 対人関係・社会リズム療法 家族や職場、友人等との人間関係を回復させて、対人関係の問題によるストレスを解決して再発を防ぐ、日々の生活リズムを整えるために行う精神療法です。決められた服薬ができない、ストレスフルな状況にある、生活リズムの乱れが生じていること等で抑うつ状態や躁状態の症状がある時に対人関係・社会リズム療法を行うことで症状を安定させることができるようになります。治療は薬物療法と精神療法等の医療機関だけでなく、ご自身の日常生活の過ごし方が治療との関係性が深く関わってきます。 自分を知ること 自分自身を知ること、自分の長所や短所、コミュニケーション力という人間性や症状との付き合い方について知ることで日常生活を自分のペースで、無理しない様にすることができるようになります。 生活リズムを整えること 睡眠時間を整えるだけでなく、朝の起床から夜の就寝までの生活リズムを決めて実行することが大切です。医療機関から処方される薬を定期的に服薬続けるためには生活リズムを整えておかないと服薬を忘れてしまう原因にもなります。また、睡眠時間が短くなると症状が再燃する可能性もありますので注意しておきましょう。逆に、睡眠時間が長くなった時も自分のエネルギーを消費しないまま1日を終えてしまうことで睡眠に影響が出ることがあるので注意してください。 治療目的を明確に自分で把握しておくこと 自分自身が医療機関での治療をどうして続けているのかを把握しておきましょう。治療目的が分からないままでは継続した治療の必要性を感じることができなくなってしまい、治療が中断してしまいます。治療が中断してしまうことで症状が悪化する可能性があります。躁状態の方は「自分は病気ではない」と考えることがあり、治療が中断してしまう可能性があるので注意が必要です。症状の回復という大きな目標設定も大切ですが、個々の症状の変化等の小さな目標を定期的な通院時に主治医と確認してみると良いでしょう。 ストレスとの付き合い方を知る ストレスの蓄積が双極性障害の症状を出現させる原因の1つであると言われています。日頃の生活で生じてしまうストレスとどのように付き合っていくのか、ストレスを解消するためにはどのような行動をするのが良いのかを自分自身で知っておきましょう。気分転換の方法を見つけることやストレス要因がある環境から離れることができる場合は離れてみることを行動する等をしてみましょう。主治医と相談しながらストレスとの付き合い方について確認をしていくことで治療に反映することができるようになります。 治療の経過を焦らない 症状を早く治したいと焦る人は少なくありません。焦ってしまうことで焦燥感が出現してしまい、症状の回復に時間がかかる、治療を中断してしまう可能性も考えられます。双極性障害は抑うつ症状と躁状態による症状を繰り返していきます。症状の期間の長短も個々の症状で様々です。薬物療法と精神療法等を継続することで日常生活を営むことが少しずつ出来るようになっていきます。焦らないで定期的に治療を続けていくようにしましょう。 医療、福祉に関する制度の活用 治療を続けていくことで費用がかかってしまうことがあります。みなさんの経済状況から支払いが難しくなる方もいます。治療費が払えないから治療しないのではなく、医療や福祉の制度を活用することで治療を続けていくことができます。高額療養費制度、自立支援医療制度といった医療費に関わる制度、精神保健福祉手帳や障害者年金、生活保護制度等の生活に関わる福祉の制度、デイケアや就労継続支援、就労移行支援や就労定着支援等の日中活動に関わる社会資源等を活用することができます。医療や福祉に関する制度の申請、利用に関しての相談は行政機関等で相談も出来ますが、医療や福祉に関する制度の利用申請の際に主治医の診断書が求められることが多いです。まずは、医療機関の主治医やスタッフ、ソーシャルワーカーに医療や福祉に関する制度を利用したい旨を相談してみましょう。 双極性障害かな?と思ったら ご自身を振り返って、「双極性障害かな?」と考えた場合は医療機関への受診をおすすめします。現在、うつ病等の他の精神疾患で治療をしていても、双極性障害かな?と考えることがあれば診察時に主治医に相談をしてみてください。主治医が日記等で客観的に判断できる記録がある場合はどうして双極性障害であると考えたのかという背景を掴むことができて治療に関係付く場合もありますので、受診時に持参して主治医に相談してみてください。 ご家族や友人のみなさんへ 抑うつ状態になっている時に励ます行為や気晴らしになる行動をするのは控えるようにしてください。励ましや気晴らしの言動で抑うつ状態が改善されることはありません。逆に励ましや気晴らしの言動がきっかけで精神的に追い詰めてしまうことになってしまう可能性があるので気をつけてください。軽躁症状や躁病症状の時に普段と違う言動をしていることを客観的に気付かせることができるのはご家族や友人等の関わりが大切になってきます。軽躁症状や躁病症状がある時に軽躁症状や躁病症状の行動をしていると自分自身で気付くことは難しい状況です。「自分は元気になった」、「自分は病院に行く必要は無い」と話をするかも知れません。客観的に振り返る機会を作ること、治療を続けていく必要性を伝えてあげてください。治療を中断してしまうと軽躁症状や躁病症状における症状と抑うつ症状が再燃してしまい、症状の悪化、回復に時間がかかってしまうことになります。また、双極性障害の理解を深め、ご家族が協力して治療に立ち向かうことを目的とした家族療法があります。治療しているご本人だけでなく、ご家族も双極性障害に関する病識を身につけることで双極性障害の治療に協力していく精神療法です。ご家族が感情的な言動をしている、病識を持てない状況があることは治療をしているご本人のストレスを増加させてしまい、症状を悪化させてしまう悪循環が生じてしまう可能性が考えられます。共に双極性障害に向き合い、治療に前向きに取り組むことで症状の改善だけでなく、再発予防にも繋がることができます。ご家族や友人からの協力が回復の道しるべとなることができることを知っておきましょう。 おわりに 今回は双極性障害について紹介をしてきました。まとめると以下のようになります。 今回取り上げた双極性障害の症状について少しでも自分や家族に当てはまる、気になることがあれば、医療機関に相談、受診してみることをお勧めします。

もしかして病気?性格が全く違う人みたいと言われたら【医師監修】双極性障害についてなどを解説

あなたは性格が全く違う人みたいと言われたことはありますか?気分の浮き沈みは誰にでもありますが、周囲に迷惑をかけたり、あなた自身が信用を損ねてしまう場合、何らかの疾患の可能性があります。考えられる疾患をまとめたので参考にしてください。 目次 こんな言動に思い当たるふしはありませんか? 疾患について 双極性障害について 解離性同一性障害について 統合失調症について 境界性パーソナリティ障害について まとめ こんな言動に思い当たるふしはありませんか? あなたは、性格が全く違う人みたいと言われたことはありませんか? そして、以下のような言動に思い当たるふしはありませんか? と思えば、一方で以下のような言動をしている・・・。 気分が沈んでなにもやる気が起こらない、そうかと思えば明るく元気に物事に取り組んだり、気分の浮き沈みはほとんどの人が経験があると思います。 ですが、家族や友人、知人の周囲の人たちから、「性格が全然違うね」とか「なんかいつもと違うね」といわれるようになり、周囲の人たちに迷惑をかけたり、あなた自身の信用や信頼を失ってしまうようなことであれば、ただのその時の気分によるものではなく、何らかの疾患、つまり病気かもしれません。  可能性のある疾患を次に紹介します。 疾患について 性格が全く違う人みたいといわれる場合、考えられる疾患として次の4つが挙げられます。 これから、この4つの症状の特徴・原因・治療について解説していきます。 双極性障害について 初めに、双極性障害について紹介します。 双極性障害は、かつては躁うつ病と呼ばれた疾患で、躁状態とうつ状態を交互に繰り返します。 双極性障害の特徴 双極性障害は、以下の2つに分類されます。 双極Ⅰ型障害は、日常生活に影響を及ぼすほどの躁状態をいいます。躁状態というと、明るく元気でハイテンション、ポジティブなイメージをする方もいるかと思いますが、実はそうでもありません。夜は寝ることがなく動き続けたり、止まることなく話し続けることで家族や友人など周囲の人たちに迷惑をかけたりすることがあります。また、やる気があって物事に取り組みますが最後までやり遂げられないことも特徴の1つです。さらに、大変なことに高価な買い物をして借金をつくってしまうなど、社会的信用や仕事を失うといった場合もあります。双極Ⅱ型障害は、躁状態ではあるのですが軽い「軽躁状態」になることをいいます。双極Ⅰ型障害の躁状態とは異なり、日常生活に影響は及ぼさないほどの躁状態です。自分自身は明るく元気で日常生活を送れていたり、仕事も順調にいっていると感じています。そのため、自分がおかしいと感じることはほとんどないようです。一方、周囲の人たちや当人をよく知っている人たちからすると、迷惑をかけるほどではないのですが、おかしいと感じる部分が多くあるようです。躁状態と軽躁状態も本人に自覚がないことが問題となっています。そのため、家族や友人など周囲の人たちが迷惑がっていることに本人は気づいていません。そして、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害のどちらにも共通する症状がうつ症状です。症状は、ある程度イメージができるかと思います。具体的には、気分が落ち込んだり、物事に対する興味関心がなくなる症状が挙げられます。朝早く目覚めたり、食欲がなくなる、体重が増えたり減ったり、自殺願望や自分はダメだと思うことなどの症状が2週間以上続くとうつ状態になっているといえます。双極障害に悩んでいる人が一番つらいのは、うつ状態と考えられています。 双極性障害の原因 実は、双極性障害の原因は明確には解明されていません。今、考えられているのは、遺伝、本人の性格、仕事などの社会的・心理的なストレスが加わることによって発症するといわれています。ですが、ただの「こころの病気」ではないため、他の精神疾患で行われる精神療法だけではなかなか改善に結びつかないのが現状です。 双極性障害の治療 気になる双極性障害の治療は、薬物療法と精神療法(心理療法)があります。双極性障害は、ただの「こころの病気」とは異なり、カウンセリングだけで改善は期待できません。薬物療法を中心に精神療法(心理療法)を組み合わせて治療を行っていきます。双極性障害の薬物療法は、薬によって躁状態とうつ状態を発症させないようにする予防効果と、躁状態とうつ状態の症状自体を弱めることを目的としています。双極性障害に用いられる薬は、副作用も比較的多いので、医師から指示された飲む量と飲む回数をしっかりと守って服用することが重要です。双極性障害の薬物療法は、気分安定薬といわれる薬を中心として治療します。気分安定薬は、躁状態とうつ状態の両方の疾患を抑制し、気分の浮き沈みをコントロールすることや予防に効果的な薬です。気分安定薬だけでは効果が得られない場合は、統合失調症で使われる非定型抗精神病薬の併用や単独使用も考慮される場合があります。双極性障害の薬物療法における注意点があります。通常のうつ病に使用する薬は、双極性障害のうつ状態には効果がほとんどありません。双極性障害のうつ状態に使う薬は、うつ病で用いられる薬では違うので、この点は注意が必要です。双極性障害のもう1つの治療法である精神療法(心理療法)について紹介します。精神療法、心理療法と2つの名称がありますが、どちらも同じ意味と考えてよいです。双極性障害の治療は精神療法のみで行うことは難しいため、薬物療法と併せて行うと効果的です。双極性障害に用いられる精神療法は、他の精神疾患で行われるカウンセリングとは異なっています。疾患についての知識を持ち、疾患を受け入れ、自分自身が双極性障害の症状をコントロールすることを支援する意味合いがあります。精神療法を行う意義は、双極性障害が再発の兆候を自分で把握して対処できるようになることです。双極性障害の再発を早く自覚し、自身で対処できることで、治療を早く始めることが可能になります。ここまでみてきたように、双極性障害はただのこころの病気とは異なるため、医師の治療を一方的に受けるだけではなく自分自身が双極性障害を勉強して把握し、疾患と向き合っていくことが大切です。双極性障害がどのような病気か、用いられる薬の効果と副作用、再発の兆候などを自分自身で理解することなどを学びます。また、不規則な生活をやめ、規則正しい生活にしていくことも大切です。夜型の生活だった方は朝型の生活に変え、散歩やジョギングなどで日光を浴びる習慣をつけましょう。 解離性同一性障害について 次に、解離性同一性障害について解説します。解離性同一性障害は、以前は多重人格障害と呼ばれていた精神疾患です。一人の人の中に、何人もの違う性格を持つ人格が現れてしまうという症状です。この何人もの人格は、性格だけでなく性別や話し方、文字の書き方まで異なっています。 解離性同一性障害の特徴 解離性同一障害の主な症状を紹介します。解離性同一性障害の症状の1つに健忘、つまりもの忘れの症状があります。忘れることや覚えていないことは誰にでもありますが、子どもの頃の出来事やパソコンのスキルなど一度自分が習得した技術などの使い方を忘れてしまう場合には注意が必要です。さらに、自分には身に覚えのない品物や手紙など自分の部屋で見つけたときや、なぜ自分がその場所にいるのか思い出せない場合があります。自分が言ったことや行動をしたことを覚えておらず、家族や友人、知人から指摘される場合もあります。次に複数の人格が現れる症状があります。この症状には憑依型と非憑依型があります。憑依型の症状は、自分の中に他人の人格が現れていることが、友人や知人、家族にも分かるようになります。普段の自分とは明確に違う言葉や態度になるため、まさに他の人間に憑りつかれている状態になります。非憑依型の症状は、周囲からはそれほど気づかれません。どういうことかというと、自分が話している言葉や行動、態度などを客観的に見ているように感じます。自分が言った言葉や行動が、自分自身では認識しているので、自分が変わったように感じることもあります。具体的には、好きな食べ物やファッションの好みなどが一時的に変わることがあります。非憑依型は、周囲にはそれほど分かりませんが、こうした嗜好の変化は周囲にも分かるようになります。また、自分の中に現れる複数の人格同士が知り合いである場合や、現れた人格が怒っている場合は、家族や友人、知人を怒ってしまう場合もあります。従いまして、自分に身に覚えのないことを周囲から指摘されるようになったり、そのせいで自分の信頼や信用を損ねるまでの状態になっときは、一度、しっかりと医療機関を受診してみましょう。 解離性同一性障害の原因 解離性同一性障害の原因は、ある時期に経験したつらい体験を、自分ではないもう1人の自分が引き受けることで別の人格が形成されると考えられています。子どもの頃の虐待や、親など大切な人との死別、ショックを受けるような体験を繰り返すことで、強いストレスがかかったり、強いトラウマを抱えたりすることが原因といわれています。例えば、子どもの頃に虐待を受けている場合、その子どもはつらい現実や環境から逃げ出そうとする方法として、自分ではない別の人格を作り上げられてしまいます。子どもは成長する過程で得られる複数の情報や体験をまとめて1人の人間として成長していきます。ですが、この成長過程で虐待などのつらい体験やショックを受ける体験を何度も繰り返していると、1人の人間としての成長に影響がでてしまいます。解離性同一性障害の治療解離性同一性障害の治療は、精神療法と薬物療法があります。ただ、薬物療法は今のところ、有効な薬剤はないといわれています。精神療法の治療の目的は、自分の中にある何人もの人格を1人の人格にまとめていくことです。ただ、毎回うまくいくとは限らないので、まとめていくのが難しい場合は何人もの人格に正しい役割を与えるようにしていきます。精神療法は、なかなか厳しく精神的にもつらい治療法になります。なぜなら、何人もの人格を呼び起こしたり、虐待など過去に体験した衝撃的な経験を思い出すことで精神的に参ってしまう状況に置かれます。このつらい治療を乗り越え、過去のつらい経験と対峙できるまで何回か入院が必要になる場合もあります。精神療法の治療内容は、自分で精神を落ち着かせる方法や、過去の虐待やショックな経験への対処法があります。 統合失調症について 統合失調症について解説します。統合失調症は、自分の話や行動、考え方や気持ちに一貫性がなくなったり、妄想や幻覚、認知機能が劣るなどの症状がみられる疾患です。 統合失調症の特徴 約100人に1人が発病するといわれており、10代の後半から20代の発病が多いといわれています。一方で、40代の後半になると、発病率は下がる傾向にあります。症状は、陽性の症状と陰性の症状に分かれます。陽性の症状は妄想や幻覚、陰性の症状はやる気や意欲がなくなったり、感情を表にだすことが少なくなる症状をいいます。陽性症状である幻覚は、誰かの声が聞こえる幻聴であったり、妄想は自分が何かの被害にあっていると思いこんだり、実際は関係がないのに自分に関係があると思いこんだりする症状が現れます。陰性症状は、人付き合いをしなくなるため、自宅での引きこもり状態になることがあります。統合失調症は、前兆期、急性期、消耗期、回復期の4つの経過をたどります。最初に訪れる前兆期は、不眠やイライラが起こり、明らかにおかしいとは思わないものの、若干変な感覚を覚えます。急性期は、妄想や幻覚の症状が起こるようになります。自分自身は、何かおかしいと思いながらも病気と思っていませんが、友人、知人や家族からみると、言動がおかしいと思われることがあります。消耗期は、陰性症状であるやる気や意欲がなくなったり、感情が乏しくなる症状があらわれます。回復期は、徐々に症状が良くなってきます。少しずつ、元の生活に戻るように行動の範囲を広げていきます。 統合失調症の原因 統合失調症の原因は、遺伝が原因ともいわれていますが、実は明確には分かっていません。遺伝については、統合失調症を患った母親から生まれた子どもが統合失調症になる可能性は、約10%といわれています。そのため、遺伝以外にも、脳の中の神経伝達物質の異常、進学や就職などの環境の変化や強いストレスもきっかけと考えられています。そして、統合失調症は、もともとその人が持っている素因と環境のどちらも影響しているといわれています。 統合失調症の治療 統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会療法の2つがあります。統合失調症は、長期的な経過をたどることが多いですが、症状の緩和を図り日常や社会生活に戻ることを目的とします。薬物療法は、抗精神病薬を中心として、抗不安薬や睡眠薬を用いることもあります。抗精神病薬は、従来から使われてきた定型抗精神病薬と新しい非定型抗精神病薬の2つに分けられます。定型抗精神病薬は陽性の症状に、非定型抗精神病薬は陽性症状と陰性症状に有効と考えられています。どんな薬にも副作用がありますが、抗精神病薬の副作用を抑えることを目的として、抗パーキンソン病の薬や便秘薬を用いることもあります。心理社会療法、知識を学習する疾患の教育や認知行動療法を盛り込んで治療を行います。日常と社会生活に戻ることを目的として、レクリエーションやデイケアにおいてリハビリを行う場合もあります。そして、統合失調症の治療は、入院での治療もしくは外来での治療の場合も、薬物療法と心理社会療法の2つを実施し相乗効果を狙いとします。統合失調症は、症状がよくなって抗精神病薬の服用を中止した場合、一時的症状が回復したように見えますが、しばらく経ってからストレスなどをきっかけに症状が再発する場合もあります。そのため、治療は医師と相談しながらしっかりと治療と向き合うことが必要です。 境界性パーソナリティ障害について パーソナリティ障害という疾患があります。パーソナリティ障害は、人の考え方や行動が、他の人と比較して、明らかに異なった状態になる疾患です。日常生活、職場、学校での生活などで人間関係で問題が発生することがあります。パーソナリティ障害にはいくつかの症状の種類がありますが、性格が全く違う人みたいと言われることで可能性のある症状として境界性パーソナリティ障害という症状があります。この境界性パーソナリティ障害は、複数あるパーソナリティ障害の種類の中で、多い症状といわれています。次に、境界性パーソナリティ障害について解説します。 境界性パーソナリティ障害の特徴 境界性パーソナリティ障害は、衝動的に感情が変化することから、友人や知人、家族など周囲の人たちは気を使って接するなど、接し方が大変になります。本人は、相手の気持ちを理解することが得意なため、相手のために尽くしたり相手がよいと思う行動をとることが多いです。一方で、精神的な面、行動面、人間関係が安定せず、日常生活や職場、学校生活で問題を起こしたり信頼や信用を失ってしまう状況になってしまうこともあります。そのきっかけとして、自分は相手のことを考えて行動をしたのに、相手は自分のことを思ってくれない、自分からは離れて他の人のところにいってしまうと感じると、精神的な不安や怒りの感情が沸き起こり、自分の感情の抑えがきかなくなってしまいます。怒りが冷めていったん冷静になってみると、なんであんなことを言ってしまったんだろう、なんであんなことをやってしまったんだろうと自分を責めて自己嫌悪に陥ってしまいます。そのため、境界性パーソナリティ障害の人は、一人になることができず、自傷行為や他人に構ってもらいために自殺をほのめかしたりする場合もあります。 境界性パーソナリティ障害の原因 境界性パーソナリティ障害は、遺伝や環境といった要因が複数絡み合っていることが影響して発現すると考えられています。具体的には、遺伝の場合は、家族の中で親から子どもへ境界性パーソナリティ障害が受け継がれる可能性があります。家族の中で一番近い近親者が境界性パーソナリティ障害の症状を患っている場合、普通の人よりも発症する可能性が数倍高くなります。環境が要因の場合は、子どもの頃に経験した虐待や、恋人や親から見捨てられることを怖く感じるようになり、気持ちの不安定さから衝動的な感情の変化が現れることがあります。 境界性パーソナリティ障害の治療 境界性パーソナリティ障害の治療は、薬物療法と精神療法の2つがありますが、精神療法の方が中心的です。境界性パーソナリティ障害の薬物療法は、主に気分安定薬と抗精神病薬、抗うつ薬が用いられます。境界性パーソナリティ障害の中心である精神療法は、自殺に関する行動とうつ状態を軽減させ、日常生活や社会生活を一般の方と同じように送るのをサポートすることを目的とします。精神療法には、弁証法的行動療法、STEPPS と呼ばれるトレーニング、メンタライゼーション、転移焦点化精神療法、スキーマ療法、一般的な精神医学的管理があります。弁証法的行動療法は、個人もしくはグループで精神療法家とのセッションを週1回行います。境界性パーソナリティ障害の治療の中では、一番効果があり、自殺抑制や怒りの感情を調節することに効果があるといわれています。STEPPSも、週1回、グループセッションを行います。感情の調節の方法を学ぶことで自分をうまくコントロールしていく技術を習得します。メンタライゼーションは、自分と他人の考え方や感情を理解し、どのように他人と関わっていくかを学びます。転移焦点化精神療法は、精神療法家とコミュニケーションをとることで、他人との関係を保つことを学びます。スキーマ療法は、ネガティブな感情や考え方を健全なものに変換していくことを学ぶ治療法です。一般的な精神医学的管理は、専門医が行うのではなく、専門外の医師が行えるよう設計された治療法です。週1回の個人療法や薬物療法があります。 まとめ 家族や友人、知人から性格が全く違う人みたいといわれた場合の、考えられる疾患についてまとめてみました。ただの気分の浮き沈みであれば、誰にでもあり得ます。ですが、その性格の違いが周囲に影響を及ぼしたり迷惑をかけたり、自分自身も信頼を失ってしまうことがあれば、病気の可能性があります。 自身を振り返ってみて、思い当たるようなふしがあれば一度、医療機関の受診をしてみてください。

「眠れない」が続いてしまう原因・リスクとは?適切な治療が必要です【医師監修】

寝付けない、夜中に目が覚めて眠れないなどの睡眠障害は、日常生活に大きな影響を与えるため適切な治療が必要です。本記事では睡眠障害の原因・リスク・治療法についてくわしく解説しています。睡眠に関する問題でお悩みの方は、ぜひ一読ください。 目次 睡眠障害の症状 睡眠障害の原因 睡眠障害によるリスク 不眠症の治療法 まとめ 「布団に入ってから寝付けないことが多い」 「夜中に目が覚めてしまい眠れない」 「たくさん寝ているのに眠気が取れない」 このような睡眠に関する問題が、日常生活に支障をきたすことを「睡眠障害」といいます。 睡眠障害は決して珍しいものではありません。一般人口の21%が不眠で悩んでいるという調査もあり、人々の身近に潜む問題だといえるでしょう。 ただ、そうはいっても症状が長びく場合には、医療機関での適切な治療が必要となります。その際の診療科は精神科、あるいは心療内科です。 本記事では、睡眠障害の症状と原因、日常生活に与える影響、適切な治療法について網羅的に解説していきます。睡眠障害を克服するためにも、ぜひ最後までご覧くださいね。 睡眠障害の症状 睡眠障害の症状は次の4タイプです。 それぞれの特徴を以下で解説していきましょう。 入眠障害 体は疲れているのに、眠りにつくまでに1〜2時間ほどかかってしまい、苦痛を感じる睡眠障害です。不安・緊張が強いときに起こりやすくなります。 中途覚醒 一度寝付いたあと、夜中に目が覚めること自体は珍しくはありません。しかし何度も目が覚めてそのまま眠れない日が続き、生活に支障をきたしたり、精神的苦痛を感じているときは中途覚醒と呼ばれる睡眠障害にあたります。 早期覚醒 理想の起床時間よりも2時間以上はやく目覚めてしまうのが早期覚醒。もっと寝ていたいのに、眠りたくても眠れません。 高齢者・うつ病の患者に多い症状です。 熟眠障害 睡眠時間は充分であるにもかかわらず、眠りが浅く熟睡感がありません。昼間につよい眠気があり、疲れ・肩こり・頭痛などに悩まされますが、本人が気づきにくいことも多いです。 多くの場合、睡眠時無呼吸症候群・周期性四肢運動障害といった病気が関連します。 以上4つの症状は、実際には組み合わさって生じることも少なくありません。 もしも「自分は睡眠障害かもしれない」と感じたときは、まず原因を知り、そのうえで適切に対処していきましょう。 睡眠障害の原因 睡眠障害の主な原因は次の5つ。 ここからそれぞれの原因をくわしく解説していきます。睡眠障害に正しく対処していくためにも、ぜひ最後までご覧ください。 生理的な原因 生活習慣、睡眠時の環境などが快眠を妨げているケースです。 ここで重要なのが「メラトニン」という睡眠ホルモンの働き。このメラトニンは、分泌されることで人を眠りに誘う効果があり、睡眠には欠かせません。しかし睡眠障害では、このメラトニンがうまく分泌されていない可能性があるのです。 メラトニンの分泌をコントロールする要素は、体内時計・明るい光の2つになります。 まず体内時計。人体には起床から14〜16時間の間は、メラトニンを抑える機能が備わっています。つまり夜になるとメラトニンの抑制が解除され、睡眠の準備がはじまる仕組みです。 そしてもう一つ、太陽や室内の照明、電子機器のディスプレイから発せられる「光」にも、メラトニンを抑える効果があります。そのため、夜間に明るい光を浴びつづけることは、睡眠障害の原因になりえるのです。 以上をふまえると、次のような生活習慣は睡眠障害につながりやすいといえるでしょう。 またメラトニンの他にも、環境・体温などが眠りに適していない可能性が考えられます。生活習慣の改善については、後ほどくわしく解説しているためそちらをご覧ください。 心理的な原因 仕事や学校、プライベートなどで精神的なストレスがあると、脳が興奮して、睡眠障害の原因になりえます。 ストレスは必ずしも悪い出来事・不安・心配事に対してのみ生じるものではありません。新しい環境にうつったとき、嬉しいことがあったときにも、無意識にストレスを感じていることはあるでしょう。 加えて睡眠障害が不眠恐怖、つまり眠れないことへの恐怖につながることも問題です。「また眠れないのではないか?」というネガティブな思考が、不安・焦り・体の緊張をつくりだして眠りを妨げ、循環的にさらなる不眠恐怖の原因となることもあります。 このような不眠恐怖がある場合には、睡眠に対しての偏った考えを修正していかなければなりません。こちらもくわしくは後述しています。 飲食物・薬などの影響 眠れないからという理由で睡眠前にアルコールを摂ると、脳の活動が低下することで寝付きはよくなる反面、眠りが浅くなり睡眠の質は低下します。 またコーヒーなどに含まれるカフェイン、煙草のニコチンなども脳を覚醒させるため、睡眠障害の原因となりうるでしょう。 加えて薬の副作用によって眠れないというケースも。具体的にはステロイド薬、インターフェロン、パーキンソン病の薬、抗うつ剤、降圧剤、甲状腺治療薬、喘息の薬などは睡眠の妨げになる可能性があります。薬を服用している場合、まず医師に相談してみてください。 身体的な原因 下記のような身体状態は、睡眠障害の原因となりえます。 何らかの外傷や病気によるものであれば、まずはそれらの原因に対処していくことが重要となるでしょう。 精神疾患の影響 精神疾患の多くは睡眠障害を併発します。代表的なものは下記のとおり。 うつ病中途覚醒・早期覚醒が多い統合失調症入眠障害が多い不安障害入眠障害が多い双極性障害中途覚醒・早期覚醒が多い …

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