父子鑑定のさまざまな肯定率の求め方

父と子

父子鑑定の肯定率は、各STR座位で求めた父権指数(Paternity Index, PI)を掛け合わせた「総合父権指数(CPI)」を、事前確率50%を用いたベイズ推定で確率に変換することで求めます。この記事では、1座位ごとのPI計算から、複数座位を統合するCPI、そして最終的な父性肯定確率(%)に変換するまでの流れを順を追って解説します。

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この記事でわかること

1座位ごとの父権指数(PI)の求め方

複数座位を統合した総合父権指数(CPI)の求め方

CPIから父性肯定確率(%)へ変換する計算方法

肯定率の土台となる「父権指数(PI)」

父子鑑定の肯定率は、1つの座位だけで判断するものではありません。まず座位ごとに父権指数(Paternity Index, PI)を求め、それらを組み合わせていく手順を踏みます。

1座位あたりのPIは、次の式で求められます。

PI = X(被検者が父親である場合に、子供に該当アリルを伝える確率)÷ Y(無関係な男性が同じアリルを伝える確率=集団内のアリル頻度)

被検者が該当アリルについてヘテロ接合(2つの異なるアリルを持つ)の場合はX=1/2、ホモ接合(同じアリルを2つ持つ)の場合はX=1として計算します。1座位ごとの具体的な計算例は親子鑑定の尤度比を求める方法で紹介しています。

複数座位を統合した総合父権指数(CPI)

実際の鑑定では、1座位だけでなく複数のSTR座位を分析します。各座位のPIをすべて掛け合わせたものが「総合父権指数(Combined Paternity Index, CPI)」です。

CPI = PI1 × PI2 × PI3 × … × PIn

分析する座位数が多いほど、CPIの値は大きくなりやすく、統計的な確からしさが増します。ヒロクリニックでは常染色体STR27座位・Y染色体STR25座位の合計52座位を分析しており、座位一覧はヒロクリニックのNIPPT検査項目で公開しています。

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CPIから父性肯定確率(%)への変換

報告書に記載される「肯定率」は、CPIをそのまま示すのではなく、事前確率(一般的に50%)を仮定したベイズ推定によって、パーセンテージに変換した値です。

父性肯定確率(%)= CPI ÷(CPI + 1)× 100

計算例(仮の数値による説明)

仕組みを理解しやすいよう、仮にCPIが10,000だった場合で計算してみます。

父性肯定確率 = 10,000 ÷(10,000 + 1)× 100 ≒ 99.99%

このように、CPIの値が大きくなるほど、父性肯定確率は100%に近づいていきます。ただし実際の数値は、分析した座位の組み合わせや各アリルの集団頻度によって鑑定ごとに異なるため、上記はあくまで計算の仕組みを示す一例です。実際の結果は鑑定報告書でご確認ください。

肯定率の判断基準

父性肯定確率がどの程度であれば「父子関係が認められる」とみなすかは、国際的な目安が存在します。

父性肯定確率目安となる判断
99%以上非常に高い確率で父子関係が認められる。国際基準(AABB)でも、この水準を実質的な証明の目安としている
90%〜98.9%高い確率だが、極めて高いとまでは言えず、追加の座位や証拠が求められる場合がある
50%〜89.9%父子関係の可能性はあるが、決定的な水準ではない
50%未満父子関係が否定される可能性が高い

それぞれの水準がどのような意味を持つかは父性肯定確率とは?でさらに詳しく解説しています。ヒロクリニックでは52座位という多くの座位を分析することで、CPIの値を大きくし、肯定率・否定率のどちらの場合でも高い水準の結果を目指しています。

父子関係が否定される場合の考え方

分析した座位の多くで子供と被検者のアリルが一致しない場合、CPIは極めて小さい値、または0に近づき、父子関係は否定されます。ただし、STR座位には0.1〜0.4%程度の頻度で突然変異が生じることがあるため、1〜2座位の不一致だけで直ちに否定と判断せず、全体の傾向を踏まえて総合的に評価します。不一致マーカーの扱いについては親子鑑定の尤度比を求める方法でも解説しています。

共同監修者の堤修一は「肯定率も否定率も、突き詰めれば統計的な確率にすぎません。数値の意味を正しく理解したうえで結果を受け止めていただくことが大切です」と、報告書の数値を読む際の心構えについて話しています。

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よくある質問

父権指数(PI)と父性肯定確率はどう違いますか。

PIは各座位で「父親である場合」と「無関係な人物である場合」の確率を比較した比率です。父性肯定確率は、複数座位のPIを掛け合わせたCPIを、事前確率50%のもとでパーセンテージに変換した最終的な数値です。

肯定率が100%になることはありますか。

理論上、CPIをどれだけ大きくしても計算式の性質上100%には達しません。一卵性双生児の存在なども踏まえ、DNA鑑定では99.99%以上といった非常に高い数値で「実質的な証明」として扱います。

なぜ事前確率を50%と仮定するのですか。

被検者が父親である確率も、そうでない確率も、鑑定開始前は五分五分(50%)とみなすのが一般的な考え方だからです。この中立的な前提のもとで、DNA型の一致・不一致というデータだけをもとに確率を計算します。

検査機関によって肯定率の求め方は異なりますか。

基本的な計算方法(PI、CPI、確率への変換式)は国際的に共通した考え方です。ただし、分析する座位数や採用するアリル頻度データベースは検査機関によって異なるため、同じサンプルでも数値がわずかに異なる場合があります。

分析する座位数が多いと肯定率にどう影響しますか。

分析する座位数が多いほど各座位のPIを掛け合わせるCPIが大きくなりやすく、父性肯定確率が高い水準になりやすい傾向があります。座位数が少ないと、追加検査が必要になる場合もあります。

まとめ

父子鑑定の肯定率は、1座位ごとの父権指数(PI)を掛け合わせた総合父権指数(CPI)を、事前確率50%を用いたベイズ推定でパーセンテージに変換することで求めます。座位数が多いほどCPIは大きくなりやすく、結果の信頼性が高まります。

ヒロクリニックでは52座位のSTR型を分析し、算出した肯定率・否定率を報告書でわかりやすくお伝えしています。計算の仕組みについてご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。

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医師監修 監修日:2024年8月6日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年8月6日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Essen-Möller L. Die Beweiskraft der Ähnlichkeit im Vaterschaftsnachweis; theoretische Grundlagen. Mitt Anthrop Ges Wien. 1938;68:9-53.
  2. Gjertson DW, Brenner CH, Baur MP, Carracedo A, Guidet F, Luque JA, et al. ISFG: Recommendations on biostatistical evaluation of patterns in forensic DNA analysis. Forensic Sci Int Genet. 2007;1(3-4):223-231.
  3. Morling N, Allen R, Carracedo A, Geada H, Guidet F, Hallenberg C, et al. Paternity testing Commission of the International Society of Forensic Genetics: recommendations on genetic investigations in paternity cases. Forensic Sci Int. 2002;129(3):148-157.
  4. Bayes T, Price R. An essay towards solving a problem in the doctrine of chances. By the late Rev. Mr. Bayes, F. R. S. communicated by Mr. Price, in a letter to John Canton, A. M. F. R. S. Philos Trans R Soc Lond. 1763;53:370-418.

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