兄弟鑑定の結果の見方

兄弟鑑定は、共通の父親または母親を持つかどうかを、STR型(短鎖反復配列という遺伝子マーカー)の一致度から統計的に判定する検査です。

このページでは、実際のSTR比較データをもとに、結果の数字がどのような意味を持つのかを解説します。

「数字が完全に一致していないと兄弟ではない」と不安になる方も少なくありません。ですが、常染色体STRとY染色体STRでは読み方が異なるため、まずは基本の考え方を確認しておきましょう。

この記事でわかること

  • 兄弟鑑定でSTR型を比較する基本的な考え方
  • 常染色体STRとY染色体STRで結果の意味が異なる理由
  • 実際のSTR比較データの読み解き方(具体例つき)
  • 兄弟鑑定と親子鑑定で判定の考え方が異なるポイント
  • 結果の見方に迷ったときの相談先

兄弟鑑定とは

兄弟鑑定とは、2人以上の人物が共通の父親または母親を持つかどうかを、STR型の一致パターンから統計的に判定する検査です。

兄弟姉妹には、両親がともに共通する全血兄弟と、父または母のどちらか一方のみが共通する半血兄弟の2パターンがあります。全血兄弟はSTRの一致率が高くなりやすく、半血兄弟は一致率がやや下がるのが自然な傾向です。

ヒロクリニックでは、STR法(13〜20座位を分析する手法)を採用しています。検体は自社ラボである東京衛生検査所(CAP・ISO9001取得)で解析しており、外部機関への委託を挟まない一貫した体制です。

相談窓口でお話をうかがっていると、「STRの数字が全部同じ値でないと兄弟と言えないのでは」という声を耳にすることがあります。実際には一部の数値が異なっていても、兄弟である可能性は十分にあります。

結果の見方・読み解き方

STR比較表の数字は、各遺伝子座(マーカー)における対立遺伝子(アレル)の組み合わせを表しており、一致の度合いから血縁関係を統計的に読み解きます。

実際の結果報告書では、この一致パターンをもとに血縁関係の可能性が確率(パーセンテージ)で示されます。表の数字だけを自己流に読み取るのではなく、報告書に記載された確率を判断の基準にしてください。

常染色体STRの見方

常染色体のSTRは、父親由来と母親由来の両方の情報が混ざって現れます。一方、女児が含まれる場合は常染色体のみを比較することになります。父または母親のSTR情報がないと、完全に血縁関係を肯定することが難しいケースもあります。

STRは数字による判定方法のため、SNP(一塩基多型)の一致だけを比較する方法に比べて、格段に精度が高いことが特徴です。実際の比較データを見ながら確認してみましょう。

常染色体のSTR
D1S165616,1716,16
D2S44111,1311,11
D2S133817,2323,23
D3S135814,1715,16
D4S24089,99,9
D5S8189,129,10
CSF1PO12,1210,12
D6S104319,1912,17
D7S82010,119,10
D8S117912,1512,14
D9S112213,1313,13
D10S124814,1414,14
TH016,76,7
vWA17,1816,17
D12S39118,1817,18
D13S3178,129,12
PentaE15,158,15
D16S5399,129,10
D18S5115,1613,16
D19S43313,1313,14
D20S48213,1313,14
D21S1128,2928,32
PentaD11,139,11
D22S104515,1515,16
AmelogeninX,YX,Y
常染色体のSTR比較

上記の例では、D4S2408やD9S1122のように弟と兄で完全に一致する遺伝子座がある一方、D2S441やD6S1043のように一致しない遺伝子座も見られます。これは血縁関係を否定するものではなく、両親から半分ずつ遺伝子を受け継ぐ過程で自然に起こる差です。

実際の判定では、一致・不一致の数を単純に数えるのではなく、各遺伝子座の出現頻度をもとにした統計計算によって血縁関係の確率を算出します。数値の見方に迷ったときは、結果報告書に記載された確率の説明を確認してください。

Y染色体STRの見方

男児同士の兄弟鑑定は、比較的判定しやすいケースです。Y染色体は父から息子へそのまま受け継がれるため、父方が同じであればY染色体上のSTRは基本的に同一の値になるからです。

Y染色体のSTR
DYS3931313
DYS5051414
DYS5701818
DYS5761818
DYS5221111
DYS4812121
DYS191515
DYS3911010
DYS6352020
DYS4371414
DYS4391111
DYS4381313
DYS3902222
DYS6431313
Y-GATA-H41212
DYS5491212
DYS4481818
Y染色体のSTR比較

上記の例では、弟と兄のY染色体STRがすべての遺伝子座で一致しています。これは2人が同じ父方の血筋にあることを示す結果です。ただし、Y染色体STRの一致だけでは、母親が共通しているかどうかまでは判定できません。

母方の血縁関係も確認したい場合は、常染色体STRの結果もあわせて確認する必要があります。実際のご相談でも、「Y染色体の数字が全部同じだったので、もう安心していいですか」というご質問をいただくことがあります。父方の血縁は強く示されていても、母方については別途確認が必要になる場合がある点は、あわせてお伝えするようにしています。

また、Y染色体STRは父方の血筋をたどる型であるため、同じ父方の親族であれば同一の型になります。個人を一意に特定するものではなく、あくまで血縁関係を判定するための材料のひとつとして扱われている点も知っておくと安心です。

親子鑑定との違い

兄弟鑑定は、親子鑑定に比べて確率計算の考え方がやや複雑になる場合があります。親子鑑定では子と父親候補のアレルを直接比較できますが、兄弟鑑定では共通の親のデータがない状態で統計的に判定することが多いためです。

親子鑑定は、子のアレルの片方が必ず父親(または母親)由来であるという前提のもとに比較するため、判定の考え方は比較的シンプルです。

一方、兄弟鑑定は全血か半血かによって一致率の目安が変わり、両親のデータがない場合は特に統計的な判定に頼る部分が大きくなります。それでも、精度の高いSTR分析を用いれば、全血兄弟か半血兄弟かを高い確率で判定できます。

断定的な結論を急がず、結果報告書に記載された確率や説明を確認しながら判断してください。

なお、鑑定の料金体系は検査の種類によって異なります。私的鑑定と法的鑑定の費用の違いについては、DNA鑑定の費用(私的、法的鑑定の比較)で解説していますので、あわせてご確認ください。

出生後兄弟鑑定の検査対象や申込みの流れについては、DNA出生後兄弟鑑定についてで詳しく紹介しています。料金は検査内容によって異なるため、個別にお問い合わせいただくか、こちらのページでご確認ください。

よくある質問

兄弟鑑定の結果について、相談窓口でよくいただく5つの質問にお答えします。

Q1. STRの数字が完全に一致していない場合、兄弟ではないということですか?

A. いいえ、一致しない遺伝子座があるからといって、兄弟関係が否定されるわけではありません。半血兄弟の場合や遺伝の組み合わせによっては、一部のSTRが一致しないことは自然に起こります。自己判断はせず、結果報告書に記載された統計的な確率を確認してください。

Q2. 両親のDNAがなくても兄弟鑑定はできますか?

A. 可能です。両親のDNAがあれば精度は高まりますが、なくても兄弟姉妹同士のSTR比較から統計的な判定を行えます。ただし、片親のみ共通する場合の確率計算は、両親のデータがある場合よりやや複雑になります。判定結果に不安がある場合は、追加でご両親のいずれかの検体を提出できないか、あわせてご相談ください。

Q3. Y染色体STRの一致だけで兄弟だと判定できますか?

A. Y染色体STRは、父方の血縁関係を確認するためのものです。これだけでは母方の血縁関係まではわからないため、常染色体STRの結果もあわせて確認する必要があります。

Q4. 結果はどのくらいの期間で受け取れますか?

A. 検体を返送いただいてから、私的鑑定であればおおよそ5.5日程度が目安です。法的鑑定など手続きが加わる場合は、あらかじめ依頼時にご確認ください。

Q5. 兄弟鑑定の料金はいくらですか?

A. 検査内容(私的鑑定か法的鑑定か、対象人数など)によって料金は異なります。最新の料金はよくある質問ページまたは個別のお問い合わせでご確認いただけます。

まとめ

兄弟鑑定の結果は、STR型の一致パターンを統計的に読み解くことで導き出されます。Y染色体STRと常染色体STRでは確認できる血縁関係の範囲が異なり、半血兄弟の可能性がある場合は判定の考え方がより慎重になります。

数値の見方に迷ったときは、一人で判断せず結果報告書の説明を確認するか、よくある質問もあわせてご覧ください。まずは気になる点を相談することから始めてみましょう。


執筆・医療監修: 岡博史(医療法人社団福美会 理事長/ヒロクリニック統括院長/医学博士/CAPラボディレクター)
共同監修: 堤修一(博多駅前院院長/医学博士/ゲノム医学が専門)

医師監修 監修日:2024年11月16日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年11月16日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。