1. 出生後DNA鑑定を行う理由
1.1 法的な理由
- 相続・財産分与において、子どもの法的地位を明確にするためにDNA親子鑑定が必要になることがあります。
- 認知訴訟や親権問題で、裁判所がDNA鑑定を命じるケースも。
- 移民・国籍取得の場面でも、血縁関係の証明手段として利用されます。
1.2 心理的な理由
- 自分の子かどうか確かめたいという不安の払拭。
- 不貞行為の疑念を解消したい。
- 家族関係の中で抱えてきた遺伝的な疑問を明らかにする目的。
1.3 医療・事故由来の理由
- 出生時の取り違えや人工授精の取り違えを疑っての確認。
- 病院で起きた医療ミスの可能性をDNA親子鑑定で解明するケースもあります。
2. 親子鑑定の基本情報
出生後DNA親子鑑定とは、親と子のDNAを比較し、遺伝的な親子関係の有無を確認する検査です。
2.1 検体の種類
- 口腔粘膜(頬の内側)の細胞採取が一般的
- 毛髪・血液・爪など、DNAが含まれる検体も使用可能
2.2 DNA解析の方法
- STR解析(Short Tandem Repeat):DNA上の短い繰り返し配列の一致を調べる手法。
- 通常、23~52箇所のSTR領域を解析します。
- STRは各親から半分ずつ受け継がれるため、高精度で親子関係の判定が可能です。
2.3 精度と結果
- 親子関係あり:99.99%以上の確率で肯定されます。
- 親子関係なし:99.99%以上の確率で否定されます。
- 検査結果の通知日数:平均5.5日程度(メール通知)
3. 兄弟鑑定について
兄弟鑑定は、検査対象者が同一の両親を持つかどうかを確認するDNA鑑定です。
3.1 鑑定方法
- 兄弟二人と共通の親のDNAを揃えることで精度が高まります。
- 両親の検体がない場合は、確率的な推定評価になります。
3.2 使用検体と分析方法
- STR領域の一致度を分析します。
- 兄弟関係では、完全一致でなくても高い相関がある場合に「兄弟の可能性が高い」と判断されます。
4. 出生後DNA鑑定の流れ
4.1 検査の手順
- サンプル採取(病院や自宅でも可)
- 検査機関への送付
- DNA抽出とSTR分析
- 結果報告書の送付(平均5.5日)
4.2 病院での対応
- 一部の医療機関や産婦人科ではDNA鑑定に対応。
- 法的鑑定では医師立ち合いのもとサンプル採取・署名付き報告書を発行。
5. 法的DNA鑑定と私的DNA鑑定の違い
項目 | 法的鑑定 | 私的鑑定 |
---|---|---|
証拠能力 | 裁判で使用可 | 使用不可 |
身分確認 | 必須(本人確認書類) | 不要 |
医師立ち合い | 必須 | 不要 |
結果送付 | 書類+メール | メールのみ(通常) |
費用 | 高め(手続きあり) | 比較的安価 |
6. DNA鑑定に使用される検体
検体 | 特徴 |
口腔粘膜 | 最も一般的、簡単・無痛 |
血液 | 高精度だが採血が必要 |
毛髪 | 毛根付きのみ使用可能 |
爪・皮膚・歯ブラシ | 特殊処理で利用可能 |

7. 鑑定費用の目安
鑑定種別 | 被験者数 | 費用(税込) | 実施機関 |
親子鑑定(法的) | 2名 | 68,800円 | Generio.jp |
兄弟鑑定(法的) | 3名 | 143,000円 | Generio.jp |
- 私的鑑定の場合は2〜5万円台で提供されることも。
- 法的効力を求める場合は医師の立ち合い・署名が必要になります。
8. DNA親子鑑定が活用される主な場面
- 法的紛争:認知・親権・養育費問題
- 相続問題:財産分与、遺言執行時
- 出生届:届け出に不備がある場合の補完資料
- 心理的確認:家族間の確証を得るため
- 移民申請・国際結婚:血縁確認が必要な場面
まとめ
出生後DNA鑑定は、親子や兄弟関係を科学的に高精度で証明できる非常に有効な方法です。病院での法的鑑定、STR解析による判定、メールや郵送での結果通知、検体の柔軟な選択肢など、技術的にも制度的にも大きく進化しています。
「DNA親子鑑定を病院で受けたい」「どの程度の精度があるのか知りたい」「兄弟関係も証明できるのか?」といった疑問を持つ方に向け、この記事が判断の助けとなれば幸いです。
よくある質問
参考文献
National Institute of Justice. (2012). DNA Evidence: Basics of Analyzing. https://nij.ojp.gov/topics/articles/dna-evidence-basics-analyzing
Butler, J. M. (2010). Fundamentals of Forensic DNA Typing. Elsevier. https://www.elsevier.com/books/fundamentals-of-forensic-dna-typing/butler/978-0-12-374999-4
日本法医学会. (2020). DNA型鑑定ガイドライン. https://www.jslm.jp/