複数の男性と性行為があった時期が重なり、「お腹の赤ちゃんの父親が誰なのか、はっきりさせておきたい」と考える方は少なくありません。誰にも相談しづらく、一人で気持ちを抱え込んでしまう方も多いのではないでしょうか。
相談窓口には、「妊娠がわかってから初めて時期が重なっていたことに気づいた」という方から、「以前から気になっていたが、誰にも言えずにいた」という方まで、さまざまな背景の方が問い合わせてくださいます。状況は人それぞれですが、確信が持てないまま出産を迎えることへの不安は、多くの方に共通しているようです。
結論からお伝えすると、月経周期や性行為の時期から父親を推定する方法には限界があり、父子関係を科学的に確定できる方法はDNA鑑定のみです。この記事では、自己判断が難しい理由と、父親候補が複数いる場合の検査の進め方、検査を受ける際に知っておきたい配慮について解説します。
この記事でわかること
- 月経周期や排卵日の推定だけで父親を特定することが難しい理由
- 父親候補が複数いる場合のDNA鑑定の進め方と費用の目安
- DNA鑑定が父子関係をどのような仕組みで判定するのか
- 検査を受ける際に知っておきたいプライバシーへの配慮
- 検査のタイミングや費用に関するよくある質問
自己判断が難しい理由|月経周期や排卵日の推定には限界があります
排卵日や妊娠しやすい時期は、月経周期の記録や体調から大まかに推定できますが、あくまで目安であり、特定の1日を確定できるものではありません。個人差も大きいため、推定だけで父親を判断するのは難しいのが実情です。
性行為の相手が複数いる場合、特定の男性が父親であると確実に断定するには、妊娠の可能性がある周期中に、他の男性との性行為がなかったことが確認されている必要があります。理想的には、妊娠しやすい時期(排卵日の前後)に一人のパートナーとのみ性行為を持つことで、父親の特定は容易になります。
出産前に父子関係を確実に確認
不安を早めに解消
しかし、実際には性行為の間隔がどれくらいあれば「安心」と言えるのかは、一概には言えません。排卵日を特定し、その前後の期間を避けたとしても、父親の特定に迷いが生じるリスクをゼロにはできません。性行為の間隔が短い場合は、出生前親子DNA鑑定などの科学的な方法に頼ることになります。
女性が妊娠しやすいのは排卵日の前後です。一般的には排卵日の約5日前から排卵日の翌日までが妊娠しやすい期間とされ、この期間は「受胎可能窓」と呼ばれています。精子は女性の体内で最大5日間生存できるため、排卵の数日前に性行為があった場合でも妊娠する可能性があります。
排卵は、通常次の月経開始予定日の約14日前に起こるとされていますが、個人差が大きく、同じ人でも月によって変動することがあります。排卵日を把握する手がかりとして、排卵検査薬を使う方法や、基礎体温を記録する方法があります。いずれも、推定の精度を高めるための一つの手段。特定の1日を100%確定できるものではありません。
相談を受けていると、「排卵日はだいたい覚えているので大丈夫だと思っていた」という声を聞くことがあります。記憶や記録は目安として役立ちますが、それだけで確信を持つのは難しいというのが実際のところです。
こうした推定方法は、あくまで可能性を絞り込むための目安に過ぎません。特定の男性を父親と確定したい場合や、候補者が複数いる場合には、次でご紹介する検査を検討する必要があります。
複数の候補者がいる場合の検査方法
父親候補が複数いる場合は、候補者ごとに検体を採取し、母親の血液と一人ずつ照合することで、それぞれの父子関係を判定できます。
出生前親子鑑定は、妊娠6週以降であれば受けられる検査です。母親の血液と、父親候補となる男性の頬の粘膜(口腔粘膜)を採取し、STR法(52座位の解析)で照合することで、99.99%以上の精度で父子関係を判定します。
候補となる男性が複数いる場合は、候補者の人数分の検体を用意し、一人ずつ個別に検査を行います。候補者を1名追加するごとに、33,000円〜43,000円程度の追加費用がかかりますので、あらかじめおおよその人数を確認したうえで申し込むと安心です。
検査の流れは、次の4ステップで進みます。初めての方でも、事前に流れをイメージしておくと当日の不安を減らせます。
- お申し込み・ご相談:電話またはWEBから予約し、候補者の人数を含めて検査内容をご相談いただきます
- 検体の採取:母親の血液と、候補者となる男性それぞれの頬の粘膜(口腔粘膜)を採取します
- 検査機関での解析:自社ラボ「東京衛生検査所」でSTR法による解析を行います
- 結果報告:医師から候補者一人ずつの結果についてご説明します
検査の基本費用は、私的鑑定と法的鑑定で異なります。裁判所への提出や認知手続きなど法的な用途がなければ私的鑑定で十分ですが、将来的に法的手続きの可能性がある場合は、法的鑑定を選んでおくと安心です。
結果は、候補者お一人ずつについて個別にご説明します。候補者同士で結果の内容が共有されることはなく、それぞれのプライバシーに配慮した形でご案内していますので、その点もあわせて安心して申し込んでいただければと思います。
| 検査内容 | 費用の目安(税込) |
|---|---|
| 私的鑑定(基本) | 108,000円 |
| 法的鑑定(基本) | 149,800円 |
| 候補者1名追加ごと | 33,000円〜43,000円程度 |
他院との費用比較や、私的鑑定と法的鑑定それぞれの特徴については、出生前親子鑑定の費用相場|他院4社比較と選び方で詳しく解説しています。
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不安を早めに解消
検査を受ける際の心構え・プライバシー配慮
医療機関には守秘義務があり、ご本人の同意なく検査に関する情報が第三者に伝わることはありません。
問診の際も、性行為に至った経緯や関係性について根掘り葉掘り尋ねることはありません。医療機関のスタッフは、検査を必要とする方の状況を判断するのではなく、正確な検査を安全に実施することを役割としています。安心して来院していただける環境づくりを心がけています。
複数の男性との性行為があったことについて、来院時に事情を細かく聞かれるのではないかと不安に思う方もいらっしゃいます。ですが、検査を受ける理由や背景を詳しくお話しいただく必要はありません。必要なのは、母親の血液と、候補者となる男性の検体のみ。
検査を受けるかどうかまだ決めかねている段階でも、相談だけを行うことができます。一人で抱え込まず、まずは検査の流れを確認するところから始めてみてください。
検体の採取方法や来院のタイミングなど、不安な点がある場合は、事前に相談窓口へご確認いただくと当日の流れがイメージしやすくなります。
相談窓口で話を聞いていると、「パートナーとどう切り出せばいいか分からない」という声を受けることも少なくありません。候補者となる男性への伝え方に決まった正解はありませんが、検査の目的や流れを先に整理しておくと、話し合いを進めやすくなります。
候補者への伝え方で意識しておきたいこと
候補者となる男性に検査を伝える際は、責めるような言い方を避け、事実確認が目的であることを落ち着いて共有することが大切です。感情的なやり取りになりやすい話題だからこそ、伝え方を事前に整理しておくと、その後の関係にも影響しにくくなります。
- 責めるのではなく、「はっきりさせておきたい」という事実確認の目的を伝える
- 検査は口腔粘膜を綿棒でこするだけで終わることを伝え、負担が少ないことを説明する
- 結果が出るまでの期間や、費用がどちらの負担になるかを事前に相談しておく
- 直接伝えるのが難しい場合は、相談窓口に間に入ってもらえるか確認する
候補者となる男性の中には、検査そのものに戸惑いや抵抗感を示す方もいます。そうした反応も自然な受け止め方の一つですが、検査を受けるかどうかは最終的にご本人の判断です。一人で説得しようとせず、必要であれば相談窓口も交えながら、双方が納得できる進め方を探ってみてください。
DNA鑑定はどのようにして父親を特定するのか|判定の仕組み
DNA鑑定では、母親の血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAと、候補者一人ひとりの口腔粘膜のDNAを、複数の遺伝子座位で照合することで父子関係を判定します。候補者が複数いる場合も、この照合作業を候補者ごとに個別に行うため、それぞれについて独立した結果が得られます。
STR法では、52箇所の遺伝子座位(DNA上の特定の場所)を比較します。子は、両親それぞれから1つずつ遺伝子型を受け継ぐため、生物学的な父親であれば、ほぼすべての座位で子の遺伝子型の一方と一致します。一致しない座位が複数見つかった候補者は、統計的に父子関係が極めて低いと判定され、逆にすべての座位で一致した候補者は、99.99%以上の精度で父子関係が認められます。
この仕組みにより、候補者が複数いる場合でも、感覚や記憶に頼ることなく、候補者ごとに客観的な結果を得られます。一人ずつ検体を追加していく形になるため、まずは可能性のある候補者の人数を整理しておくと、申し込みの際にスムーズです。
よくある質問
検査のタイミングや費用について、特にお問い合わせの多い7つの質問にお答えします。その他の疑問についてはよくある質問ページもあわせてご確認ください。
まとめ
月経周期や排卵日の推定は、あくまで大まかな目安であり、特定の男性を父親と断定できるものではありません。父子関係を科学的に確定できる方法は、DNA鑑定のみです。
複数の候補者がいる場合でも、候補者ごとに検体を採取すれば、一人ずつ確実に判定できます。検査を受けるかどうか迷っている段階でも構いませんので、まずは相談窓口にお問い合わせください。
結果が出るまでの間、不安な気持ちで過ごされる方も多いと思います。ですが、結論が出ないまま日々を過ごす方が、かえって気持ちの負担が大きくなることもあります。お一人で抱え込まず、まずは検査の流れと費用を知ることから始めてみてください。それが、次の一歩を落ち着いて考えるための土台になります。
監修:岡博史(医療法人社団福美会 理事長/ヒロクリニック統括院長/医学博士/CAPラボディレクター)
略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Wilcox AJ, Weinberg CR, Baird DD. Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. N Engl J Med. 1995 Dec 7;333(23):1517-21.
- Stirnemann J, Samson A, Prat-Ellenberg L, et al. Day-specific probabilities of conception in fertile cycles resulting in single and multiple pregnancies. Hum Reprod. 2013 Apr;28(4):1110-6.





