
顔面神経麻痺とは?
顔の動きをつかさどる「顔面神経」が障害されると、まぶたや口角が下がったり、表情が作れなくなったりします。これを顔面神経麻痺といいます。
- 原因:ベル麻痺(特発性)、耳下腺腫瘍、外傷、手術後、脳疾患など
- 問題点:見た目の左右差、目が閉じにくいことによる角膜障害、口から食べ物がこぼれる、発音がしにくい、表情の喪失による心理的ストレス
顔面神経麻痺形成手術の目的
- 表情の回復(口角やまぶたを動かせるようにする)
- 目の保護(角膜の乾燥や損傷を防ぐ)
- 口の閉鎖機能改善(飲食や発音を助ける)
- 顔の左右差を改善し、整容的にも自然な見た目に近づける
手術方法の種類
症状の程度や麻痺の期間、年齢によって方法が異なります。
- 神経移植・神経吻合術
- 健側(動いている側)の顔面神経や舌下神経、大耳介神経などを利用して、麻痺した側の顔面神経に接続する方法
- 発症から1年以内など、神経や筋肉がまだ生きているときに有効
- 健側(動いている側)の顔面神経や舌下神経、大耳介神経などを利用して、麻痺した側の顔面神経に接続する方法
- 筋肉移植術
- 太ももの筋肉(薄筋など)を顔に移植し、血管・神経をつなぐことで新しい筋肉を動かせるようにする方法
- 長期間麻痺が続き、筋肉が萎縮してしまった場合に行う
- 太ももの筋肉(薄筋など)を顔に移植し、血管・神経をつなぐことで新しい筋肉を動かせるようにする方法
- 吊り上げ術(Static sling 法)
- 体の腱や人工素材を使い、口角やまぶたを吊り上げて位置を整える
- 動かす機能は回復しないが、見た目や口・目の閉鎖を改善できる
- 体の腱や人工素材を使い、口角やまぶたを吊り上げて位置を整える
- 眼瞼形成術
- まぶたに金属プレート(ゴールドプレート)を埋め込み、重みで閉じやすくする方法
- 角膜保護が目的
- まぶたに金属プレート(ゴールドプレート)を埋め込み、重みで閉じやすくする方法
手術時間と入院
- 吊り上げ術 → 数時間、短期入院または日帰りも可能
- 神経移植・筋肉移植 → 数時間以上、数日〜1週間程度の入院が必要
メリット
- 表情や機能の改善で、生活の質(QOL)が大きく向上
- 見た目の左右差が減り、心理的負担の軽減
- 目や口の機能障害(乾燥、誤嚥など)の改善
デメリット・リスク
- 神経や血管の吻合がうまくいかないと効果が出にくい
- 移植した筋肉が十分に動かないことがある
- 感染や出血、移植組織の壊死などのリスク
- 機能回復まで時間がかかる(数か月〜1年かけて神経が再生)
術後の注意
- 退院後はリハビリが重要(顔の表情筋の動かし方を訓練)
- 神経再生には時間がかかるため、経過観察が必要
- 表情のアンバランスや不随意運動(シナキネシス)が出る場合もある
まとめ
顔面神経麻痺形成手術は、失われた表情や機能を回復し、生活の質を改善するための形成外科手術です。
症状や経過によって「神経をつなぐ」「筋肉を移植する」「吊り上げて整える」など方法が選ばれます。動きを取り戻せるケースもあれば、見た目や機能を改善することが目的になる場合もあります。













