血液を使う出生前親子鑑定は医療行為か

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出生前親子鑑定(NIPPT)で母体から血液を採取する行為は、法律上「医療行為」にあたります。血液を採取する「採血」は、目的が親子鑑定であっても医師法上の医業に含まれると法律で明確に定められているためです。この記事では、その法的根拠と、ヒロクリニックで採血を医療機関で行っている理由を解説します。

この記事でわかること

  • 採血が医療行為にあたる法的根拠
  • 採血を行える資格者の範囲
  • 血液を使わない検査方法との違い
  • 採血に伴うリスクと当日の流れ

採血が医療行為にあたる法的根拠

母体からの採血は、目的が親子鑑定であっても、法律上「医療行為」に位置づけられます。「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」第30条は、「業として人体から採血することは、医療又は歯科医療のためでなくても、医師法第17条に規定する医業に該当する」と定めています。つまり、採血の目的が親子鑑定であっても、この規定により医業とみなされます。

加えて、採血には神経損傷や、血管迷走神経反射による立ちくらみ・気分不快といった身体的なリスクが伴います。こうしたリスクに対応するには医師の判断と技術が必要という考え方も、採血が医行為とされる理由のひとつです。この法律はもともと、採血された血液を輸血用の血液製剤として安定的に確保する目的で整備されたものですが、採血という行為そのものの安全管理を重視する趣旨から、目的を問わず医業に含める規定になっています。

なお、ここで扱う「医療行為に該当する」という整理は、あくまで採血という行為そのものの法的な位置づけに関する一般的な説明です。個別の状況によって法解釈や必要な手続きが異なる場合もあるため、法的な手続き(裁判所提出等)に関わる具体的な判断が必要な場合は、弁護士や専門家にご確認ください。

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採血を行えるのは誰か

採血を行える人は、法律によって医師・看護師・臨床検査技師など一定の資格保有者に限定されています。無資格者が業として採血を行うことは、医師法違反にあたるおそれがあります。

資格採血の可否
医師可能
看護師医師の具体的な指示があれば可能(保健師助産師看護師法第37条)
臨床検査技師医師の具体的な指示があれば可能(法令上の要件あり)
無資格者不可

ヒロクリニックでは、医師の診察・指示のもとで、有資格者が採血を実施しています。ご自宅での自己採血や、採血した検体だけを郵送する方法には対応していません。

看護師や臨床検査技師が採血を行う場合も、あくまで医師の具体的な指示のもとで実施される点がポイントです。医師が診察を行わずに採血だけを他の職種に委ねることは想定されておらず、来院時には必ず医師の診察を経てから採血の工程に進みます。この診察の段階で、妊娠週数や体調、既往歴などを確認したうえで、安全に採血を進められるかどうかを医師が判断します。

頬の内側の粘膜(スワブ)を使う検査との違い

推定父親側の検体はスワブ採取が中心であり、母体からの採血とは法律上の扱いが異なります。出生後親子鑑定や、出生前鑑定における推定父親側の検体は、頬の内側の粘膜を綿棒でこすり取る「スワブ」による採取が中心です。この方法は体への侵襲がほとんどないため、医行為にはあたらないと考えられており、私的鑑定であれば自宅での自己採取キットも利用できます。

一方、母体からの採血は血管に針を刺す侵襲的な行為であるため、先ほどの法律に基づき、医療機関での実施が必須です。同じ「検体採取」でも、血液かスワブかによって法律上の扱いが大きく異なる点を押さえておいてください。

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私的鑑定と法的鑑定で採血の手続きは変わるのか

採血という行為自体は私的鑑定・法的鑑定のどちらでも医療機関での実施が必要ですが、法的鑑定ではさらに本人確認や検体管理の記録が厳格に求められます。目的によって求められる手続きの厳密さが異なる点を理解しておくと、申込み時に迷わずに済みます。

私的鑑定は、ご自身が納得するために結果を知りたいという場合に選ばれる方法です。採血自体は医療機関で行いますが、本人確認の厳密さは法的鑑定ほど求められません。一方、裁判所への提出や戸籍上の手続きなど、法的な効力を持たせる目的で行う法的鑑定では、採血時に運転免許証などの身分証明書で本人確認を行い、採取から検査、報告書作成までの一連の過程を記録に残す「Chain of Custody(証拠保全の連鎖)」に配慮した運用が必要とされています。

どちらの鑑定を選ぶべきか判断が難しい場合は、検査を申し込む前にクリニックへご相談ください。私的鑑定の結果を後から法的な用途に切り替えることはできないため、目的が定まっている場合は、最初から法的鑑定を選んでおくことが大切です。将来的に法的な手続きに発展する可能性が少しでもある場合は、あらかじめ法的鑑定を選択しておくと、後になって検査をやり直す手間を避けられます。

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ヒロクリニックで採血を医療機関が担う理由

ヒロクリニックでは、医師の管理下で有資格者が採血を実施し、検体の管理体制まで含めて安全性を確保しています。ここまでの法律に基づき、ヒロクリニックでは医師の管理下で、看護師等の有資格者が採血を実施しています。採取した検体はバーコード管理で取り違えを防止し、医療機関から検査機関へ直接配送する体制を整えることで、紛失リスクも抑えています。

私自身、来院された方から「なぜ採血だけのために来院が必要なのか」と聞かれることがありますが、採血は法律上、医師や有資格者でなければ行えない行為である点を必ずご説明しています。手間に感じられるかもしれませんが、安全な検体採取のための必要な手続きだとご理解ください。

採血に伴うリスクと当日の流れ

採血に伴う身体的な負担は、健康診断で行う通常の採血と同程度であり、過度に心配する必要はありません。出生前親子鑑定の採血は、健康診断などで行う通常の採血と同程度の負担です。まれに内出血や、血管迷走神経反射による軽い気分不快が起こる場合がありますが、医療機関で実施するため、その場で対応できます。私自身、採血に不安を感じる方には、通常の健康診断と同じ流れで進む旨を事前にご説明するようにしています。

妊娠6週以降であれば検査を受けられますが、体調がすぐれない日は無理をせず、来院前にクリニックへご相談ください。当日の流れとしては、受付のあと医師の診察を受け、問診で体調や妊娠週数を確認したうえで採血に進みます。採血自体は数分程度で終わり、来院から検査終了までの滞在時間もそれほど長くはかかりません。

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妊娠中の採血に関するよくある不安

妊娠中の採血について、胎児への影響や貧血への不安を感じる方は少なくありませんが、通常の妊婦健診で行う採血と同じ範囲の負担にとどまります。不安な点は、来院前や診察の際に遠慮なく医師にご相談ください。

母体からの採血量は、一般的な血液検査と同程度であり、胎児に直接針を刺すわけではありません。羊水穿刺のように子宮内に器具を挿入する検査とは異なり、母体の腕の静脈から少量の血液を採取するだけのため、胎児への直接的なリスクは想定されていません。ただし、貧血の程度や体調によっては採血後にめまいを感じる方もいるため、当日の体調に不安がある場合は事前にお伝えください。

私自身、診察の際に「注射が苦手で不安」とおっしゃる方にお会いすることがありますが、通常の採血と同じ手技であるため、過度に心配する必要はないとお伝えしています。それでも不安が強い場合は、横になった状態で採血を行うなど、体調に応じた対応を医師にご相談ください。

採血後は、針を刺した部分を数分間しっかり押さえることで、内出血を防ぎやすくなります。当日は激しい運動や長時間の入浴を控えめにし、体調の変化があれば早めにクリニックへ連絡してください。妊娠中は体調が変化しやすい時期でもあるため、採血当日から数日は無理のないスケジュールで過ごしてください。

血液検体の管理と個人情報保護

採取した血液検体とDNA解析結果は個人情報保護法上の機微な情報にあたるため、ヒロクリニックでは検体管理と情報管理の両面で厳格な体制を整えています。検体の取り違えや情報の漏えいを防ぐ仕組みを理解しておくと、安心して検査に臨めます。

  • バーコード管理:採取した検体には個別のバーコードを付与し、他の方の検体と取り違えることのないよう管理しています。
  • 直接配送:医療機関から検査機関へ検体を直接配送する体制を整え、第三者の手を介さないことで紛失リスクを抑えています。
  • 結果の管理:DNA解析結果は、個人情報保護法に基づき厳重に管理し、ご本人の同意なく第三者に開示することはありません。

特に法的鑑定の場合は、検体採取から報告書の発行までの過程が裁判所などの第三者機関にも提出され得る記録となるため、通常の私的鑑定以上に厳密な取り扱いが求められます。ヒロクリニックでは、採血を担当する有資格者と検査を行う東京衛生検査所との間で、検体の受け渡し記録を残す体制を整えています。

ご自身の情報がどのように扱われるか不安な場合は、申込み前にクリニックへご確認ください。

まとめ

母体からの採血は法律上の医療行為にあたるため、ヒロクリニックでは医師の管理下で有資格者が実施し、検体の管理から個人情報の取り扱いまで一貫した体制を整えています。出生前親子鑑定における母体からの採血は、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」第30条に基づき、医療行為にあたります。そのため、医師の管理下で有資格者が実施する必要があり、ご自宅での自己採取や郵送には対応していません。DNA解析そのものの位置づけについては親子鑑定は医療行為にあたるのかもあわせてご覧ください。

私的鑑定・法的鑑定のいずれを選ぶ場合も、採血自体は医療機関でしか受けられません。目的に応じて必要な手続きの厳密さが変わるため、迷った際は事前にクリニックへご相談ください。個別の法的な判断が必要な場合は、専門家への確認もあわせてご検討ください。

安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律 第30条(e-Gov法令検索)

よくある質問

血液を採るのは母親だけですか?

はい、出生前親子鑑定で採血が必要なのは母体のみです。推定父親側の検体は、頬の内側の粘膜(スワブ)で足ります。

採血は痛いですか、リスクはありますか?

通常の健康診断の採血と同程度です。まれに内出血や気分不快が起こる場合がありますが、医療機関での実施のため、その場で対応できます。

自宅で採血して郵送することはできますか?

できません。採血は法律上、医療機関で医師または医師の指示を受けた有資格者が行う必要があるためです。

なぜ採血が「医療行為」に分類されるのですか?

「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」第30条により、業として行う採血は目的を問わず医師法上の医業に該当すると定められているためです。

DNA解析自体も医療行為にあたりますか?

いいえ、DNA型を比較する解析自体は、病気の診断や治療を目的としないため、医療行為にはあたらないと整理されています。詳しくは親子鑑定は医療行為にあたるのかで解説しています。

私的鑑定と法的鑑定で採血の方法は変わりますか?

採血自体はどちらも医療機関で有資格者が行いますが、法的鑑定では本人確認書類の提示や、採取から報告書作成までの過程を記録する厳格な手続きが追加で求められます。

妊娠中の採血で胎児に影響はありますか?

母体の腕の静脈から少量の血液を採取するのみで、胎児に直接針を刺す検査ではないため、胎児への直接的なリスクは想定されていません。体調に不安がある場合は、来院前に医師にご相談ください。

関連記事として、親子鑑定は医療行為にあたるのか法的用途の出生前親子鑑定は、万が一に備えた衛生検査所登録機関で行うべき理由もあわせてご覧ください。

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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定

ヒロクリニックDNA出生前親子鑑定NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。

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医師監修 監修日:2024年9月11日

岡 博史 (おか ひろし)

医師・医学博士 ヒロクリニック統括院長

YouTubeチャンネルなどを通じて、遺伝子やNIPT(新型出生前診断)についてわかりやすく発信しています。

略歴

  • 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
  • 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
  • 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
  • 2009年 医療法人社団福美会 理事長
  • 2015年 医療法人社団福美会 理事

資格・所属

  • CAPラボディレクター
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 日本医師会 産業医
  • 東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2024年9月11日

堤 修一 (つつみ しゅういち)

医師・医学博士 ヒロクリニック博多駅前院 院長

略歴

  • 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授

発信・関連リンク

この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

参考文献

  1. Lo YM, Corbetta N, Chamberlain PF, Rai V, Sargent IL, Redman CW, Wainscoat JS. Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum. Lancet. 1997 Aug 16;350(9076):485-7. PMID: 9274315.
  2. 最高裁判所第二小法廷. 判決 昭和43年3月15日. 刑事判例集(刑集). 1968;22(3):291.(医業・医療行為の定義に関する最高裁決定)
  3. 厚生労働省医政局. 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発第0726005号). 2005年7月26日.
  4. 日本法医学会. 親子鑑定などの遺伝子解析検査に関する指針. 法医学の実際と研究. 2017;60:1-5.

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