親子鑑定が「医療行為」にあたるかどうかは、DNA型を比較して判定する「解析」と、検体を採取する「採取」を分けて考える必要があります。結論からいうと、DNA型を比較して親子関係を判定する解析そのものは、病気の診断や治療を目的としないため、医師法上の「医業」の中心的な行為には該当しないと整理されています。一方で、検体の採取方法によっては医療行為にあたる場合があります。「病院で受けるべきか」「自宅でも検査できるのか」という疑問をお持ちの方は少なくないので、この記事で整理していきます。
この記事でわかること
- 「医行為」の法律上の定義
- DNA解析そのものが医療行為にあたらないと整理される理由
- 検体採取の方法によって扱いが変わる理由
- 検査を行う施設側にも登録義務がある理由
- 親子鑑定と健康保険の関係
「医行為」とは法律でどう定義されているか
医師法上の「医行為」にあたるかどうかは、体に危害を及ぼすおそれがあるかどうかで判断されます。医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。ここでいう「医業」とは、厚生労働省医政局長通知(平成17年7月26日付医政発第0726005号)において、「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)」を反復継続する意思をもって行うことと解釈されています※。
つまり、体に危害を及ぼすおそれがあるかどうかが、医行為にあたるかを判断する重要な基準になります。親子鑑定を考えるときも、この基準に沿って、行為ごとに丁寧に整理していく必要があります。
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「反復継続する意思」も医行為の判断に関わる
医行為に該当するかどうかは、危害のおそれに加えて「反復継続する意思」の有無も判断材料になります。同じ行為であっても、業として繰り返し行うことを前提としているかどうかで、法律上の扱いが変わることがあるためです。
親子鑑定のための採血は、検査機関やクリニックが業務として継続的に実施する行為であるため、この「反復継続する意思」の要件を満たします。したがって、危害のおそれがある採血という行為とあわせて考えると、医師法上の医行為にあたることは明確です。この点を正しく理解しておくと、なぜ自宅での採血ができないのかが納得しやすくなります。
一方で、口腔内スワブによる採取は、体への侵襲がほとんどなく、危害を及ぼすおそれという要件を満たしにくいため、繰り返し行われる行為であっても医行為には該当しにくいと整理されています。同じ「DNAを採取する行為」であっても、方法によって法律上の扱いが大きく異なる点が、この分野を分かりにくくしている理由のひとつだと感じています。
DNA型鑑定という「解析行為」自体は医療行為にあたらないと整理されている
DNA型を比較して血縁関係を判定する解析作業そのものは、体に処置を加える行為ではないため、医行為にはあたらないと整理されています。親子鑑定のDNA解析は、病気の診断や治療を目的とした行為ではなく、遺伝子の型を比較して血縁関係を判定する技術的な検査です。人体に対して何か処置を加えるものではないため、先ほどの基準に照らしても、医師でなければできない行為とは考えにくいものです。
そのため、実際の解析作業は、臨床検査技師など検査機関の専門スタッフが担当することが一般的です。臨床検査技師は、臨床検査技師等に関する法律に基づく国家資格であり、医師の指示のもとで血液学的検査や生化学的検査などを行う専門職です。ヒロクリニックが検体の分析を委託する東京衛生検査所も、CAP・ISO9001を取得した専門の検査所です。私自身、解析に医師の立ち会いが必要かと聞かれることがありますが、専門の検査機関が担うため同席は必須ではないとお伝えしています。ただし、結果を受け取った後にその内容をどう理解し、どう向き合うかという場面では、医師による説明が大きな意味を持つと感じています。
一方で、検体を採取する方法によっては医療行為にあたる
「鑑定」と「検体の採取」は分けて考える必要があり、採取方法によって医行為にあたるかどうかが変わります。ここが誤解されやすいポイントです。
| 採取方法 | 体への侵襲 | 医行為への該当 | 採取できる人 |
|---|---|---|---|
| 口腔内スワブ(頬の内側の粘膜) | ほとんどない | あたらないと考えられている | 本人・保護者による自己採取が可能 |
| 採血(静脈血) | あり | 医行為にあたる | 医師または医師の指示を受けた看護師等 |
- 頬の内側の粘膜(口腔内スワブ)での採取:体への侵襲がほとんどないため、医行為にはあたらないと考えられており、私的鑑定であれば自宅での自己採取キットを利用できます。
- 血液を採取する「採血」:体への侵襲を伴うため、医師法上の医行為にあたります。医療機関で、医師または医師の指示を受けた看護師等が行う必要があります。
出生前親子鑑定(NIPPT)では、母体からの採血が必須です。この採血の部分が、まさに医行為にあたる箇所にあたります。法的根拠や当日の流れについては、出生前親子鑑定は血液を扱うことが医療行為になる?で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
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私的鑑定の自己採取キットを利用する際の注意点
自己採取キットは口腔内スワブを使うため医行為にはあたりませんが、採取の手順を守らないと正確な結果が得られないことがあります。キットに同封された説明書のとおり、綿棒でしっかりと頬の内側の粘膜をこすり取り、採取後は指定された方法で乾燥・保管することが大切です。
特に、飲食直後の採取や、採取した綿棒同士の接触による混入には注意が必要です。私自身、私的鑑定のご相談を受ける際には、採取方法に不安がある場合は無理に自己採取にこだわらず、来院での採取に切り替えることも選択肢としてお伝えしています。結果の正確性を左右する部分だからこそ、少しでも不安があれば遠慮なくご相談ください。小さなお子さんの検体を採取する場合は、ご本人が動いてしまい採取が難しいこともあるため、保護者の方が落ち着いた環境で行っていただくことをおすすめします。
ヒロクリニックで検体採取を医療機関が行う理由
採血を伴う出生前親子鑑定は、法律上、医師の管理下で実施する必要があるため、ヒロクリニックでは医療機関での検体採取を徹底しています。ヒロクリニックでは医師の診察・説明のうえで検体を採取し、バーコード管理により検体の取り違えを防ぐ体制を整えています。
私自身、「なぜ病院で採血する必要があるのか」というご質問を受けることがありますが、法律上、採血は医師や医師の指示を受けた看護師でなければ行えない行為だからだとお伝えしています。ご自宅での採血や郵送はできませんので、あらかじめご了承ください。

検査を行う「衛生検査所」にも法律上の登録が必要
採取した検体を解析する検査機関も、法律上の登録を受けた「衛生検査所」であることが求められます。臨床検査技師等に関する法律では、病院やクリニック以外の場所で検体検査を業として行う施設を「衛生検査所」と位置づけ、都道府県知事(保健所を設置する市や特別区の場合はその長)への登録を義務付けています。
ヒロクリニックが検体の解析を委託する東京衛生検査所は、この登録を受けた検査所です。採血という医行為を医療機関が担い、解析という技術的検査を登録済みの衛生検査所が担うという役割分担によって、検体採取から結果報告までのプロセス全体が法律に沿った体制で運用されています。法的鑑定としての利用を検討している場合は、こうした登録の有無も確認しておくと安心です。
登録を受けていない検査機関に依頼した場合、解析の技術水準そのものに問題がなくても、法的な手続きの場面で結果の信頼性を疑問視されるリスクがあります。特にインターネット上には海外の検査機関を利用したサービスも存在しますが、日本国内での法的手続きに使う予定がある場合は、国内で登録を受けた衛生検査所を利用しているかどうかを事前に確認することをおすすめします。検査を申し込む前に、検査機関のウェブサイトや案内資料で登録状況を確認しておくと安心です。
法的鑑定として使う場合の注意点
裁判所への提出など法的な用途で親子鑑定を使う予定がある場合は、検体採取の方法や検査機関の体制にも注意が必要です。私的鑑定であれば自己採取が可能な場面でも、法的鑑定では本人確認や採取記録の管理がより厳格に求められます。詳しくは法的用途の出生前親子鑑定は、万が一に備えた衛生検査所登録機関で行うべき理由で解説しています。
また、法的鑑定では、検体を採取した人物が確かに本人であることを証明するための身分証明書の確認や、写真撮影といった手続きが加わることが一般的です。これは、鑑定結果があとから裁判所や行政機関で証拠として扱われる際に、なりすましや検体の入れ替えがなかったことを担保するためです。私的鑑定として気軽に始めたものの、あとになって法的な用途が必要になったというご相談もあるため、少しでもその可能性がある方は、最初から法的鑑定の手続きで進めておくことをおすすめしています。手続きの詳細や必要書類は事案によって異なるため、来院前にクリニックまでお問い合わせください。
まとめ
親子鑑定は、DNA型を比較する解析そのものと、検体を採取する行為を分けて考える必要があります。解析自体は医療行為にあたらないと整理される一方、血液を採取する場合は法律上の医行為にあたり、医療機関での実施が必須です。あわせて、解析を担う検査機関自体にも「衛生検査所」としての登録が求められる点も押さえておくと、検査全体の法的な位置づけが理解しやすくなります。この違いを理解したうえで、検査方法を検討してください。迷った際は、私的鑑定・法的鑑定のどちらを目的としているかをあらかじめ整理したうえで、クリニックへご相談いただくとスムーズです。
※ 「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」厚生労働省医政局長通知(平成17年7月26日付医政発第0726005号)
よくある質問
親子鑑定と医療行為の関係について、よくいただくご質問をまとめました。個別の状況によって最適な検査方法は異なりますので、検討する際の参考にしてください。
関連記事として、出生前親子鑑定は血液を扱うことが医療行為になる?、法的用途の出生前親子鑑定は、万が一に備えた衛生検査所登録機関で行うべき理由もあわせてご覧ください。検査の申し込み方法や必要な持ち物については、事前にクリニックへお問い合わせいただくとスムーズにご案内できます。
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ヒロクリニックでのDNA出生前親子鑑定
ヒロクリニックのDNA出生前親子鑑定(NIPPT)は、全国のヒロクリニック直営クリニックでご利用いただけます。この検査は妊娠6週0日から提供され、1回の来院で検査が完了するため、必要な時間と労力を最小限に抑えることができます。自社ラボ「東京衛生検査所」(CAP認定・ISO9001取得)による検査ですので、安心してお受けいただけます。ただし、ご夫婦そろっての受診をお願いしています。そうすることで、より正確な検査結果を得ることができます。ご興味のある方は、こちらをクリックしてご予約いただくか、お問い合わせください。※料金・再検査対応の詳細は公式料金ページでご確認ください。
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Harcourt AH, Harvey PH, Larson SG, Short RV. Testis weight, body weight and breeding system in primates. Nature. 1981 Sep 3;293(5827):55-7.
- Dixson AF. Primate sexuality: comparative studies of the prosimians, monkeys, apes, and humans. 2nd ed. Oxford: Oxford University Press; 2012.
- Karmin M, Saag L, Vicente M, Wilson Sayres MA, Järve M, Talas UG, et al. A recent bottleneck of Y-chromosome diversity coincides with a global change in culture. Genome Res. 2015 Apr;25(4):459-66.





