この記事の概要
出生前診断に関する基本用語をわかりやすく解説。染色体異常や遺伝子検査など、知っておきたい重要なキーワードをまとめました。
出生前親子鑑定の情報を調べていると、専門用語につまずくことが少なくありません。この記事では、検査結果や他の記事を理解するうえで押さえておきたい基本用語を、やさしい言葉でまとめました。気になる用語だけを拾い読みしていただいても構いません。
この記事でわかること
妊娠6週からできる親子鑑定
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SNP(一塩基多型)
SNP(Single Nucleotide Polymorphism)とは、DNAの中で1つの塩基(A・T・C・G)が個人によって異なる箇所を指します。人の遺伝情報にごく一般的にみられる違いで、個人間の遺伝的な差を生み出す要因の一つです。SNPは遺伝子研究や親子鑑定などに利用され、個々の遺伝的な特徴を調べるための手がかりになります。
STR(短鎖タンデムリピート)
STR(Short Tandem Repeat)とは、DNAの中で短い塩基配列が繰り返される領域を指します。例えば「AGAT」という配列が何度も連続して繰り返される部分がSTRです。繰り返し回数は個人ごとに異なるため、個人識別や親子鑑定に広く利用されています。法医学や遺伝学の分野で古くから使われ、DNAプロファイリング(DNA型鑑定)の基本となる手法です。ヒロクリニックの出生前親子鑑定でも、このSTR法を採用しています。
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尤度比(LR)
尤度比(Likelihood Ratio, LR)とは、ある仮説が別の仮説と比べてどれだけ支持されるかを示す統計的な指標です。具体的には、観測されたデータが特定の仮説のもとでどれだけ起こりやすいかを比較します。
親子鑑定では、観測された遺伝子型が「親子関係がある」という仮説のもとで起こる確率を、「親子関係がない」という仮説のもとで起こる確率で割って計算します。尤度比が高いほど、その仮説がもう一方の仮説より強く支持されることを意味します。計算の具体例はSNPを用いた尤度比の求め方で紹介しています。
法的鑑定
法的鑑定とは、裁判所や行政機関への提出を目的として行うDNA鑑定です。認知調停や養育費の請求といった法的手続きで証拠として扱われることを想定し、検体採取時の本人確認や記録の手続きを厳格に行うことで、結果の信頼性を担保します。ヒロクリニックの法的鑑定では、来院いただいたうえで検査医が検体を採取し、写真付きの本人確認書類をご提示いただいています。
私的鑑定
私的鑑定とは、裁判所への提出を前提とせず、個人や家庭内での確認を目的として行うDNA鑑定です。法的鑑定に比べて手続きが簡易で、費用も抑えられる傾向があります。結果を裁判での証拠として提出することも制度上は可能ですが、証拠としての重みは法的鑑定に比べて低く判断される場合が多いとされています。私的鑑定と法的鑑定の違いはDNA鑑定の費用(私的、法的鑑定の比較)で詳しく解説しています。
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妊娠週数
妊娠週数とは、妊娠が始まってからの週数を指し、胎児の成長や発育の進み具合を示す基準です。妊娠の起点は最後の月経開始日とするのが一般的で、出産まではおよそ40週とされています。出生前親子鑑定を検討する際は、検査を受けられる週数を事前に確認しておくと安心です。ヒロクリニックのNIPPTは妊娠6週目から検査を受け付けています。
遺伝子配列
遺伝子配列とは、DNA分子内にある塩基(アデニンA、チミンT、グアニンG、シトシンC)の並び順を指します。この並び順が遺伝情報を決定し、細胞がどのようなタンパク質を作るかの指示になります。SNPやSTRは、この配列の中に現れる個人差を利用した解析対象です。
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一卵性双生児
一卵性双生児とは、1つの受精卵が分裂して生まれる双子のことです。1つの精子と1つの卵子が結合してできた受精卵が、その後の細胞分裂によって2つの個体に分かれて生まれます。そのため一卵性双生児は同じ性別で、遺伝情報もほぼ同一です。
ここで一つ注意しておきたい点があります。一卵性双生児は「遺伝情報がほぼ同一」ではありますが、発生の過程で生じるごくわずかな体細胞変異により、厳密には完全に同一とは限りません。そのため、標準的なDNA型鑑定では一卵性双生児同士を区別できない場合があります。双子が関わる鑑定をご検討の場合は、事前に検査機関にご相談ください。
二卵性双生児
二卵性双生児とは、2つの異なる卵子がそれぞれ別の精子と受精して生まれる双子のことです。遺伝的には通常の兄弟姉妹と同程度の共通性を持ち、性別が異なる場合もあります。母体内で同時に発育しますが、遺伝情報は一卵性双生児のように同一ではありません。
座位(ローカス)
座位(ローカス)とは、DNA上でSTRやSNPなどの遺伝マーカーが存在する特定の位置のことです。親子鑑定では複数の座位を同時に調べ、座位ごとに一致する対立遺伝子(アレル)があるかどうかを確認します。座位の数が多いほど、偶然の一致による誤判定は起こりにくくなります。ヒロクリニックの検査では52座位を分析し、精度の高い判定を行っています。
対立遺伝子(アレル)
対立遺伝子(アレル)とは、同じ座位に存在するDNA配列のバリエーションのことです。STR分析では、繰り返し配列の回数の違いがアレルとして区別されます。子どもは父親由来・母親由来のアレルをそれぞれ1つずつ受け継ぐため、親子鑑定では子どものアレルが検査対象者のアレルと座位ごとに一致するかどうかを確認していきます。
多型性(ポリモルフィズム)
多型性とは、同じ遺伝子座に複数の異なるアレルが存在し、その組み合わせが個人によって異なる性質のことです。多型性が高いマーカーほど、他人同士が偶然同じ型を持つ確率は低くなるため、個人識別や親子鑑定の精度が高まります。STR法はSNP法に比べて1座位あたりの多型性が高いとされ、この性質がヒロクリニックでの採用理由の一つになっています。
父権肯定確率
父権肯定確率とは、尤度比の計算結果をもとに、検査対象者が生物学上の父親である確率をパーセンテージで表した数値のことです。一般的には99.9%以上であれば父権を肯定する判断材料に、0.1%未満であれば父権を否定する判断材料になるとされています。尤度比の考え方や計算の仕組みは尤度比とは?基準の見方をわかりやすく解説で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
突然変異(ミューテーション)
突然変異(ミューテーション)とは、DNAが親から子へ受け継がれる際に、ごくまれに配列の一部が変化する現象のことです。STR分析では通常、親子で座位ごとのアレルが一致しますが、この突然変異により、極めて低い確率で1座位だけ一致しない結果が出ることがあります。そのため、1つの座位だけが不一致というだけで親子関係が否定されるわけではなく、残りの座位の一致状況もあわせて総合的に判定します。
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「NIPT」と「NIPPT」の違い
NIPTは胎児の染色体疾患の可能性を調べる出生前診断、NIPPTは胎児と父親候補との親子関係を調べる出生前親子鑑定を指し、目的も検査内容も異なります。名称が似ているため混同されがちですが、NIPTは母体血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析し、ダウン症候群などの染色体異常が生じている確率を算出する検査です。一方でNIPPTは、母体血液や口腔粘膜などから採取したDNAを用いて、胎児と父親候補との血縁関係を調べる検査であり、染色体疾患の診断を目的とするものではありません。両方の検査を検討されている場合は、それぞれ目的が異なる検査であることを踏まえたうえで、相談先を確認してください。
| 項目 | NIPT(新型出生前診断) | NIPPT(出生前親子鑑定) |
|---|---|---|
| 調べる対象 | 胎児の染色体疾患の可能性 | 胎児と父親候補との親子関係 |
| 採取する検体 | 母体血液 | 母体血液・父親候補の口腔粘膜など |
| 結果で分かること | ダウン症候群などの染色体異常の確率 | 父親候補との血縁関係の有無 |
口腔粘膜(頬粘膜)採取
口腔粘膜(頬粘膜)採取とは、専用の綿棒(スワブ)で頬の内側の粘膜をこすり取り、DNA解析に必要な検体を得る採取方法のことです。針を使わず痛みもほとんどないため、父親候補や生まれた後の子どもの検体採取に広く用いられています。ヒロクリニックの法的鑑定では検査医がこの方法で検体を採取しており、私的鑑定でのご自宅採取も同様に綿棒を用いる方法が一般的です。
用語を理解したうえで検査を検討する際の注意点
専門用語の意味を事前に理解しておくと、検査結果や医師の説明を落ち着いて受け止めやすくなります。特に尤度比や父権肯定確率といった数値は、日常生活では馴染みの薄い統計用語であるため、数値の意味を医師やスタッフに確認しながら進めることをおすすめします。また、法的鑑定と私的鑑定では必要な手続きが異なるため、検査を申し込む前に目的(家庭内での確認か、裁判所への提出かなど)を明確にしておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
よくある質問
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略歴
- 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
- 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
- 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
- 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
- 2009年 医療法人社団福美会 理事長
- 2015年 医療法人社団福美会 理事
資格・所属
- CAPラボディレクター
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
- 日本医師会 産業医
- 東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
堤 修一 (つつみ しゅういち)
医師・医学博士 / ヒロクリニック博多駅前院 院長
略歴
- 1993年 東京大学医学部医学科 卒業
- 2016〜2019年 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
発信・関連リンク
この記事は、 ヒロクリニックNIPPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Bianchi DW, Parker LA, Wentworth J, Madankumar R, Saffer C, Das AF, et al. DNA sequencing versus standard prenatal aneuploidy screening. N Engl J Med. 2014 Feb 27;370(9):799-808.
- Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, Laurent LC, Ranzini AC, Brar H, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. N Engl J Med. 2015 Apr 23;372(17):1589-97.
- Rose NC, Kaimal AJ, Dugoff L, Norton ME; American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Obstetrics. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020 Oct;136(4):e48-e67.
- Gregg AR, Skotko BG, Benkendorf JL, Monaghan KG, Bajaj K, Best RG, et al. Noninvasive prenatal screening for fetal aneuploidy, 2016 update: a position statement of the American College of Medical Genetics and Genomics. Genet Med. 2016 Oct;18(10):1056-65.
- Wapner RJ, Babiarz JE, Levy B, Stosic M, Banjevic M, Cohen CL, et al. Expanding the scope of noninvasive prenatal testing: detection of fetal microdeletion syndromes. Am J Obstet Gynecol. 2015 Mar;212(3):332.e1-9.
- Gross SJ, Ryan A, Jiri S, Alux P, Martin K, Demko Z, et al. Clinical experience with single-nucleotide polymorphism-based non-invasive prenatal testing for microdeletions. Ultrasound Obstet Gynecol. 2016 Feb;47(2):177-83.
- Mohan P, Lathi RD, Demko Z, et al. Clinical experience with single-nucleotide polymorphism-based noninvasive prenatal testing for single-gene disorders. Prenat Diagn. 2022;42(1):33-41.





